2023年04月03日

◆ 米国の EV 輸入障壁

 EV への巨額補助金は、内外無差別が原則だが、米国は北米産の製品のみに補助金を出すと決めた。

 ──

 朝日新聞が報じている。
 米財務省は3月31日、北米でつくられた電気自動車(EV)を買う人の税金の負担を軽くすることを柱とした税制指針を公表した。
 バイデン政権が昨年8月に成立させたインフレ抑制法は、北米で組み立てられたEVとプラグインハイブリッド車(PHV)に限って、購入時に最大7500ドル(約100万円)の税額控除を受けられるようにした。
 米国の自動車メーカーに有利な内容で、日韓欧の各国政府は反発したが、域外生産の車の税優遇は認められなかった。
( → 北米生産のEVを税制優遇 米政府発表 対応迫られる日本勢:朝日新聞

 これと同様のことは、前に中国がやったことがあって、そのときは日本政府が「 WTO 違反だ」と文句を言ったことがあった、というふうに記憶している。(うろ覚えだが。)

 WTO の内外無差別については、ググると情報が見つかる。たとえば、下記だ。
 WTO 協定においては、最恵国待遇と並んで、内国民待遇が基本原則となっている。この原則によれば、輸入品に適用される待遇は、国境措置である関税を除き、同種の国内産品に対するものと差別的であってはならない。
( → 経産省・資料

 従って、今回の米国の方針は、WTO 違反なのであるから、日本政府としては認めるべきではない。

 ──

 では、認めないとしたら、具体的にはどうすればいいか? 
 単に抗議するだけでは、口喧嘩になるだけで、何の意味もない。そこで、実効措置をもたらすものとして、次のことを提案しよう。
 「米国の WTO 違反を理由に、日米貿易協定を破棄する」

 これはどういうことか? 日米貿易協定は、安倍政権時代にトランプのブラフに脅されて、日本が一方的に不利になる屈辱的な(国辱的な)条約となった。日本が大幅に譲歩する一方で、米国からの譲歩はほとんど得られなかった。TPP ならば相互に譲歩するはずなのに、トランプが「自国に一方的に有利になる2国間条約を結ぶ」と公言して、まさしくその通りに実現した。その方法は、極端なブラフをかまして、相手国をビビらせることだ。この方法は、相手が利口ならば通じないが、日本は安倍首相が馬鹿だったので、ブラフにビビって一方的に譲歩した。この事情は、前に書いたことがある。
  → 日米貿易協定が決着: Open ブログ

 トランプはポーカーが上手なので、相手を脅して、だまして、びびらせて、屈服させる、という交渉が大好きだ。外交をゲームだと思って、遊んでいる。そして、こういう交渉が最も下手なのが、日本の首相だ。「仲良くおもてなしをすればいい」と思っている。
 これは、タカハトゲームで、一方がタカになり、もう一方がハトになる、という場合である。当然ながら、タカがハトを一方的に食い物にする結果となる。かくて日本は大敗北。

 そこで、以上の歴史的経緯をチャラにするために、日米貿易協定を破棄すればいいのだ。
 実は、こういう「条約の破棄」は、通常なら、認められない。勝手にやれば、国家間の信義を破壊しかねない。だが、今回に限っては、それが可能だ。なぜなら、米国は WTO 違反の暴挙を取っているからだ。
 そこで、「これ幸い」「これは奇貨なり」とばかり、相手の失策を利用して、日米貿易協定を破棄してしまえばいいのだ。……これで、災い転じて福となす、という結果になる。

 そのあとは、米国が自国産の EV を優遇するのに応じて、日本は米国産の牛肉などに高関税をかけてしまえばいい。すると、米国産の牛肉などの販売数が激減して、豪州産の販売数が激増する。米国の農民はブーブー文句を言う。かくて米国の方針は是正されていくようにあるだろう。また、日米防衛協定も、平等な形で結び直されるようになるだろう。

 《 加筆 》
 日本は「防衛費倍増」の形で、米国から多額の武器を輸入する予定である。たとえば巡航ミサイルの大量購入だ。防衛費倍増で年額5兆円から10兆円に倍増するとしたら、米国からの輸入額も年額4兆円ぐらいは増えることになりそうだ。
 これほど多額の輸入を一方的にやるのは、米国に一方的に譲歩するのも同然だ。この分を「見せカード」にして、交渉の道具にすることも可能だろう。
 なのに、単に金を出すだけで、何もしないで屈服するだけだとしたら、岸田の外交下手はひどすぎる。



 [ 付記 ]
 バイデンの今回の方針は、実は、現時点では日本の EV 業界には痛手とはならない。理由はこうだ。
 (1) 日産はアリアの生産が遅々として進まない。いまだに小規模生産しかできていない。大量生産の予定を立てたのに、いつまでも実行不可能だ。
 (2) トヨタは bz4x の生産に大失敗した。こちらも生産中止になってしまった。ホイールの設計ミスが理由であるようだ。その理由が不明だったが、ようやくわかった。 bz4x は、もともとトヨタの設計ではなく、スバルの設計だった。スバルの設計で、トヨタで生産したが、両者のすりあわせがうまく行かなくて、調整失敗の形で設計不良になってしまったようだ。
「bZ4X」は設計がスバル主導でデザインがトヨタ主導と聞いています。私も「86」をスバルと、「スープラ」をBMWと共同開発しましたが、複数社の共同開発というのは落とし穴だらけです。まさにホイールナットの設計基準って、スバルとトヨタではそもそも大きく違うんですよ。ですから、相当慎重にすり合わせないと、うまくいかないはずなんです。
( → トヨタ最新鋭EV「bZ4X」が「発売即リコール」になってしまった根本的理由(清武 英利,多田 哲哉) | マネー現代 | 講談社

 トヨタも日産も、EV をろくに生産できていない。もちろん北米ではろくに販売していない。だから、バイデンが何を決めようと、日本の自動車会社には(現時点では)何も影響はないのである。……それというのも、日本の EV 産業そのものが衰退している(というより未発達である)からだが。

 ※ 日本の EV は、(旧式技術による)リーフとサクラでほとんどだ。最新型のアリアと bz4x はほとんど生産していない。まったく情けないことだ。ろくに輸出もできていない。バイデンが規制するまでもなく、自滅状態である。

posted by 管理人 at 23:13 | Comment(1) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 [ 付記 ] の前に 《 加筆 》 の箇所を挿入しました。
Posted by 管理人 at 2023年04月04日 07:58
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