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自転車のヘルメットの努力義務化が実施される。4月1日から。
→ 4月1日から自転車用ヘルメット着用が努力義務化 あなたはどうする? | NHK
あくまでも努力義務なので、かぶらなくても罰則はない。その意味では、特に難点はない。また、事故を減らす効果は明らかにあるので、ヘルメットをかぶるのに越したことはない。とすれば、何も問題はないように思える。
だが、上の記事を読むと、「変だな」と感じる点が見つかる。
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この記事では、「ヘルメットをかぶっていたので(頭が)助かった」という事例と、「ヘルメットをかぶっていなかったので(頭を打って)死んでしまった」という事例が紹介されている。
このことから、「ヘルメットをかぶることは生死を分ける.それほどにもヘルメットは重要だ」と結論づけている。
だが、この論理には重大な見落としがある。下記だ。
「この二つの事故には、共通点がある。それは、どちらも交差点事故だ、ということだ」
ヘルメットが生死を分けたことばかりが着目されているが、そもそも「交通事故はなぜ起こったのか?」という点で、「交差点のせいで事故が起こった」という根源的な問題があるのだ。
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実は、交通事故の過半数は、交差点で起こっている。
警察庁が発表している統計によると、令和3年に発生した交通事故305,196件のうち、交差点内や交差点近辺で発生した事故は172,656件となっています。
つまり、交通事故の約56.6%が、交差点内や交差点の近辺で発生しているのです。
( → 交差点では事故が多発!過失割合と事故を防ぐ安全運転のポイント | アトム法律事務所弁護士法人 )
では、交差点では、どのような形で事故が起こっているか? それについても、上の記事で分析がある。たいていは車両同士の事故だが、車両と歩行者の事故も少なくない。
車両と自転車の事故の例も紹介されている。
信号機のない交差点における、自動車と自転車の出会い頭の衝突事故。自転車は規制に従わず、一時停止をせずに交差点に進入した。自動車は約20kmで進行しており、ブレーキをかけたが間に合わず、自転車と接触した。
自転車の不注意が原因であったわけだ。こうなると、ヘルメットをかぶること以前に、「交通法規を守ること」ということの方が重要になる。いくらヘルメットをかぶっても、交通法規を守らないのでは、お話にならない。
他にも、「交差点における、自転車と自動車の事故の例」が、下記で多用に紹介されている。(過失の割合も。)
→ 自転車も過失が問われる?自転車と車の事故の過失割合を状況別に図解 ★
これらの事故例では、多かれ少なかれ(10%〜100%)、自転車の側にも過失がある。換言すれば、自転車の側に十分な注意があれば、これらの事故を避けられたはずなのだ。たとえ自動車側が無謀な運転をしたとしても、自転車の側が十分な注意をしていれば、事故は避けられたのである。
とすれば、ヘルメットの着用以前に、こちらを重視するべきだろう。
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さらには、別の要因もある。
この交差点では、事故が多発している。なぜか?
動画を見ればわかるように、見通しが悪い。事故の直前まで、おたがいに相手の車の存在に気づかない。気づいたときには、ブレーキをかけても、もう遅い。
では、ミラーはあるか? あることはあるが、球面ミラーなので、視認性は極めて悪い。走行中にミラーを見ても、横から来る自動車はわからない。
( ※ いったん一時停止すれば、球面ミラーでわかるが、走行中ならば、見てもわからない。)
( ※ そもそもミラーは左右の二つを見る必要があるが、一つしか設置されていないこともある。また、二つが設置されていても、走行中に二つを見るのは困難だ。)
ここでは根源的に「事故が起こりやすい」という状況がある。
動画では、自動車同士の事故があったが、自動車と自転車でも同様だ。事故が起こりやすい状況があるので、ヘルメットをどうするかということ以前に、事故が起こりやすい原因を解消する必要がある。
では、事故が起こりやすい原因とは? この交差点に関する限り、理由は明らかだ。「見通しが悪いこと」である。それというのも、高い生け垣が自動車の視界を遮っているからだ。
だから、ここでは、「高い生け垣を低くして、横から来る自動車に気づきやすくする」という解決策が考えられる。そのためには、行政の側から、何らかの補助策をとってもいい。(例。固定資産税の減免を、年間1万円程度。)
あるいは、「このように危険な交差点には、信号機を設置する」という手も考えられる。
去年1年間に5件も事故が起きている「危険な交差点」
( → YouTube )
ということなので、信号機を設置することには、十分に意義がある。
( ※ 一時停止を義務づけられている側の路線に対して、赤信号を常に点滅させる、という方式でもいい。これで一時停止を強制する。)
あるいは、小さな球面ミラーを設置するかわりに、大きなフラット型ミラーを設置すれば、横から来る自動車にも気づきやすくなるだろう。
※ フラット型ミラーについては、下記項目の [ 付記1 ] で紹介した。
→ 福島で交差点の衝突事故: Open ブログ
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ともあれ、事故の分析をして、交差点の状況を改善するべきだ。そのことの効果は圧倒的だ。
なるほど、ヘルメットをかぶることは、走行中または停止中における交通事故で頭部を守ることには有効だろう。だが、交通事故の過半数は交差点で起こっている。とすれば、何よりも大切なのは、交差点で事故を起こさないように、最大限の注意をすることなのだ。また、行政の側としても、交差点で事故を起こさないように、最大限の施設改善をするべきなのだ。そういうことの方が、圧倒的に大きな効果をもたらす。
ヘルメットをかぶることで、頭部の事故は免れるかもしれないが、体を丸ごと轢かれてしまっては、生きながらえることはできない。「事故が起こっても死なない工夫」をすることも大事だが、それよりもまず「事故を起こさない工夫」をすることが重要なのだ。
事故の起こっていないところで(頭部を守るための)対策をするよりは、事故の起こっているところで(事故を起こさないための)対策をするべきなのだ。
※ 「両者は別個のことだから、別個に対策すればいい」という意見もあるだろう。それはその通り。とはいえ、現状では「ヘルメットばかり重視されて、交差点事故の対策はなおざりだ」という状況にある。この点に留意しよう。
※ 頭だけ守って、体を守らないのでは、意味がない。これがホントの「頭隠して、尻隠さず」だ。
警察の取り締まりが自転車に対してはとにかく甘い。
あと、電動アシスト自転車は体力のない人でも高速で自転車を運転することが可能なため、電動アシスト自転車の普及が自転車事故を誘発してるのかな?と感覚的ではありますが思っています。
個人的な経験ですが、年配の女性の運転する電動アシスト自転車に突っ込まれそうになったことは一度や二度ではありませんので。。。