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朝日新聞の記事を紹介しよう。
次世代計算機「量子コンピューター」の国産機が27日、始動した。まだ基礎段階で、実際に成果が出るのは先だが、異次元の計算力がもたらす未来を見据え、各国・企業がしのぎを削る。
理研の量子コンピューターに使われた量子ビットの原理は1999年、当時NECの研究員だった中村泰信さんが世界で初めて開発した。グーグルやIBMなど世界の主要なマシンも採用している。
当時、日本の研究水準は世界の最先端に肩を並べていた。だが、ほどなく企業が撤退、国の後押しが減って大学でも多くの研究室が手を引いた。一方、米国ではこの間、政府の資金が基礎研究を支えた。育った若手人材がいま、欧州、中国を含めた世界的な研究ブームの一翼を担っている。
( → (時時刻刻)量子技術、未来を変える 国産量子コンピューター稼働:朝日新聞 )
「量子コンピューター」の国産初号機が始動した。かつて日本も最先端にいたが、いまや米中を追いかける。
理研の量子ビットの原理は1999年、NECにいた中村泰信・量子コンピュータ研究センター長らが世界で初めて開発した。グーグルやIBMも採用する技術だ。しかし、その後、日本は企業が撤退し国の支援も減り、最先端から脱落した。
技術革新の萌芽を見抜く眼力を持つのは難しい。科学技術立国を目指すなら、幅広く基礎研究を支え続ける必要がある。
( → (社説)量子計算機 革新生み出せる環境を:朝日新聞 )
どうして日本は落伍したのか? その理由は、最後の一文を見ればわかる。
「幅広く基礎研究を支え続ける必要がある」
これが大事だ。ところが、日本が取った政策は、これとは正反対のものだった。
「基礎研究よりも応用研究を重視して、即戦力となる研究に重点的に金を配分する。特に、有望なものに絞って、重点的に金を配分する」
つまり、「選択と集中」だ。その方針で、日本は基礎的な研究に網羅的に金を出すことを抑制した。以前に述べたのは、「RNA ワクチンの研究費をカットする」という方針だった。
安倍政権がワクチン開発予算を完全カットした。それまでは少ないながらも予算が付いていたので研究開発ができていたが、最後の最後になって(育てた果実が実をつける寸前になって)中断にしてしまった。かくて、せっかく育ったものが、枯れてしまった。……こうして、ワクチン開発は途絶えたのだ。
( → ワクチン開発の遅れの理由 : Open ブログ )
そして今回、「量子コンピュータの開発中止」という事例が追加された。米国や中国では、量子コンピュータの開発のために多額の基礎研究費を投入していたが、日本政府は「選択と集中」という方針の下で、量子コンピュータの研究を削減した。かくて、「日本は企業が撤退し国の支援も減り、最先端から脱落した」(上記)という結果になった。
ああ。すさまじきかな、「選択と集中」! これほどの亡国政策はあるまい。
【 関連動画 】
それらの研究費の内(3),(4),(5)は確かに選択と集中になっていますが、最も多額の(2)の研究費は基礎研究に配分されています。審査体制も6−9名の国立大学研究者です。審査員は東大だけでなく地方大学の研究者も比例配分されています。これ以上考えられないほど公平に配分されています。
日本の大学の研究力低下は教員の高齢化による講座制の弊害の顕在化が原因です。つまり大学が縮小期にはいり若手教員の採用数が減っているのに、若手教員の独自研究を許さない教授が多いためです。まあ企業もそうなんでしょうね。
令和4年度は2600億円余りのようです。
https://www.jsps.go.jp/j-budget/
たったの2600億円で何ができますかね?
ワクチン、オリンピックなどで兆円単位の無駄を発生させるくらいなら、年間1兆円程度を研究開発に充てることくらい簡単にできるでしょうに。
「たったの2600億円」確かに少ないのですが、ノーベル賞研究がおこなわれていた1970-2000 年はもっと少なかったのです。そのころは大学拡張期で若手研究者が助教授や教授になって自由に研究ができていたころです。
それは会社とかでも同じで、大学時代にバカだった人って、ずっとバカなんですよね。
やはり基礎研究は薄く広くが大切ですね。
お時間がありましたら、量子コンピューターについて管理人さんの切れ味鋭く分かりやすい解説を期待しております。
https://blueqat.com/yuichiro_minato2/1d0d49e0-1b08-40b6-b861-cd22fbee36dd
→ https://blueqat.com/yuichiro_minato2/1d0d49e0-1b08-40b6-b861-cd22fbee36dd
最先端の人たちでさえ、大混乱の状態。部外者である私が口出しできる状態ではありません。
私が得意なのは、「全体はほぼわかっているのに、どうしてもわからない謎が一つだけ残っている」というような状態で、名探偵として、謎を解きほぐすことだ。
アインシュタインの特殊相対論みたいな。(ヒラメキで解決できる。)
一方、「全体が大混乱で何が何だかわからない」という状況では、名探偵が解決するのではなく、新たな指針を出す基本骨格が必要となる。
ニュートンの万有引力や微積分の構築みたいな。あるいは量子力学を構築した当時のシュレーディンガーやハイゼンベルクのような。アインシュタインの一般相対論もそうだ。
こういうのは、大規模な構築が必要なので、私には無理。解説だけでも無理。