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この問題を、朝日新聞が最近になって何度も取り上げている。
(1)
本日(27日)の記事では、JR四国の駅舎がバス停のように簡素になっている、と報じた。
四国各地で「地域の顔」として歴史を刻んできた木造の鉄道駅舎が次々と取り壊され、アルミ製の簡素な施設へと姿を変えている。赤字が続くJR四国がコスト削減策として進めており、すでに13駅が建て替えられ、さらに61駅について自治体と協議中だ。
( → 駅が、まるでバス停に コスト削減、JR四国が次々建て替え 修繕・維持、自治体が負担する駅舎も:朝日新聞 )
新駅舎
阿波中島駅行ってきましたぬ
— たぬきうどんランド?? (@tanutanuland) July 30, 2021
新駅はちょうど完成した所で、新駅と旧駅が並んでいる状態
旧駅は今後8月上旬に撤去される予定だそうですたぬ〜(=´ω`=)?? #阿波中島駅 pic.twitter.com/ilF9GFJGCl
旧駅舎
(2)
その前に、特集記事があった。計2回。
→ (フォーラム)どうするローカル鉄道:1 論点は:朝日新聞
→ (フォーラム)どうするローカル鉄道:2 将来に向け:朝日新聞
後者の記事では、結びの言葉はこうだ。
取材で目にしたのは「空気を運ぶ列車」だった。駅前に住む人たちでさえ「何年も乗っていない」と言う。役割を終えた路線もあると思う。フォーラム面で募ったアンケートでも、今の鉄道を見直すべきだという回答が過半数を占めた。
郷愁は断ち切りがたいが、今のローカル線をそのままにするのは、問題の先送りにしかならない。粘り強く議論を重ねるしかないと感じる。
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上では、記事を紹介した。
一方、本サイトでは前に何度か、私の見解を示した。「大幅赤字の地方鉄道は路線廃止せよ」という趣旨。
→ JR北海道は路線廃止せよ: Open ブログ
→ JR四国は全面廃線せよ: Open ブログ
→ 全国の赤字路線を廃止するべきか? ←両備: Open ブログ
→ JR赤字路線の廃止: Open ブログ
→ JR 路線廃止とバス転換(函館): Open ブログ
→ 只見線の収益性: Open ブログ
→ ローカル線の路線廃止 .1: Open ブログ
基本的には、「大幅赤字の路線は廃止せよ」となる。(ただし、小幅赤字の路線は廃止しなくてもいい。)
以上を踏まえた上で、新たに見解を示そう。
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朝日新聞の記事 (2) では、結びの言葉に、こうあった。
「粘り強く議論を重ねるしかない」
だが、私の見解を言えば、以下の通り。
議論ならば、もう何十年も、議論し続けてきた。今は議論をするべきときではない。むしろ、行動するべきだ。では、行動とは? こうだ。
「赤字の負担を鉄道会社に押しつけるべきではない。赤字の負担を、自治体が負うべきだ。(受益者負担。) そうすれば、現状を放置する場合、自治体に赤字がどんどん貯まるようになる。そのあとは、自治体が自分で最終決断すればいい。赤字と利便性の兼ね合いを考えて、赤字を負担して路線を維持するか、赤字を負担しないために路線を廃止するか、自治体自身が決めればいい。もし決められないでいれば、その間に自治体には赤字がどんどん蓄積していく。そうなると、自治体は無責任に現状を放置することができなくなる」
元はと言えば、次のことが原因だ。
「現状では、大都会の乗客の負担した金で、地方の赤字を埋めている。しかしこれでは不公平である。大都会といっても、JR を利用しない人もいる。私鉄や自家用車で済ませる人もいる。なのに JR を利用する乗客ばかりが、高い負担金を払っていることになる。これでは不公平だ。国税によって全員一律に負担するのならまだわかるが、大都会の JR 利用者だけが負担するのは不公平すぎる」
こういうことがあるので、その不公平さを解消するために、地方の赤字は地方で負担するべきなのだ。その上で、「ローカル線を維持するべきだ」と思うのであれば、自分自身の金で維持すればいい。人の金を奪ってまで維持するべきではない。それは泥棒の論理である。
ローカル線の維持論者は、「ローカル線は必要不可欠だ」と言う。よろしい。その言い分は認めよう。だが、必要不可欠ならば、自分自身の金で維持すればいい。「それが必要だから、他人の金を奪っていい」というのは、泥棒の論理である。そんな論理は認められない。
どうしても「地方振興」を言うのであれば、国が地方に「地方振興費」を一律で払えばいい。その「地方振興費」を受け取ったあとで、その金をどう使うかは、地方の人たち自身が決めればいい。もちろん、「ローカル線は必要不可欠だ」と思って、そこに金を投入してもいい。しかし、そこに金を投入すれば、かわりに他の住民サービスは低下する。その兼ね合いを、自分たち自身で決めればいい。
一方、「金が必要だから、都会の人々から金を強奪する」というような理屈は認められない。
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なお、上記の方針は、現実的にも徐々に取られている。明示的な方針とはなっていないが、暗黙裏の合意という形で進んでいるようだ。
特に多いのは、次の二つだ。
(i)バス転換
鉄道を廃止してバスに転換する、という改革は、しばしばなされている。バスのかわりに、 BRT(バス高速輸送システム)や、LRT(次世代型路面電車)が採用されることもある。どれがいいかは、ケースバイケースであるようだ。地域の事情により、最適なものは変わる。
(ii)上下分離
固定資本としての鉄道施設の保有を自治体が担って、上物としての電車の運行だけを鉄道会社が担う……という「上下分離」という改革も、しばしばなされる。この場合、自治体による赤字負担が、相当の額になる。それを受け入れた上で路線を維持するかどうか、という問題となる。
これを採用した場合には、自治体が相当額の赤字を負担するので、「都会の乗客が高額の負担をする」という問題は消える。これはこれで解決策となる。
冒頭の(1)の記事でも、この方法は紹介されている。
JR四国は、自治体が駅舎の無償譲渡を受け、自ら改修するという方法もあると提案している。
高知県の土讃線西佐川、斗賀野両駅の木造駅舎は16年度、JR四国から地元の佐川町に無償譲渡された。町の予算から耐震改修費としてそれぞれ約1500万円と約1千万円を支出し、トイレ改修も行った。
隣の日高村にある土讃線日下駅も22年10月、村が木造駅舎の無償譲渡を受けた。
( → 駅が、まるでバス停に コスト削減、JR四国が次々建て替え 修繕・維持、自治体が負担する駅舎も:朝日新聞 )
このような方法で、私の提案した内容(地方が自己負担で維持するかどうかを自分で決める)というが実現しつつあるわけだ。
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なお、このような方針を推進するために、国が何らかの補助金を出してもいいだろう。たとえば、( 10年ぐらいの時限で)固定費負担の3割ぐらいを国が援助する、というふうな。
一方で、路線を廃止するために、過疎地の老人を人口密集地に転居させる、という案もある。人のほとんどいない過疎地に、無理やり鉄道やバスを通すよりは、過疎地の人そのものを、人口密集地に転居させればいい。そうすれば、乗客のほとんどいない(空気を運ぶ)鉄道やバスを通す必要もなくなる。……この方がかえって安上がり、ということもあるだろう。
そもそも、過疎地というのは、自動車暮らしをするのが基本である。なのに、年を食って、自動車の運転ができなくなったなら、過疎地に住むのはやめて、人口密集地に移転するべきなのだ。それが合理的な判断というものだろう。
「住み慣れた住居から離れたくない」
という気持ちはわからなくもないが、だからといって、その個人的な懐旧の思いのために、都会の住民から多額の金を奪うというのは、まったくもって筋が通らない。そんな「泥棒の論理」は成立しないのだ。
なお、過疎地の老人の転居のための費用は、国が援助するように、国に立法化してもらうといいだろう。転居させて、家賃などを補助するにしても、生活保護費よりは安上がりで済むだろう。
[ 付記 ]
ついでだが、首都圏の乗客にとっては、特にひどいのがある。バリアフリー負担金というやつだ。首都圏の私鉄や JR の乗客ばかりが、過剰に負担金を払わされる。ただし、首都圏の乗客にはまったく恩恵がない。
なぜ恩恵がないかといえば、バリアフリーはすでに実現済みなので、今後の負担金などはまったく不要だからだ。今後の負担金でバリアフリーを実現するのは、首都圏ではなく、首都圏外の田舎路線の駅である。なのにそこではバリアフリー負担金を払わない。首都圏の乗客ばかりが高額の負担金を強いられる。踏んだり蹴ったりだ。この件、前に述べたとおり。
→ バリアフリー化で運賃値上げ 1: Open ブログ
→ バリアフリー化で運賃値上げ 2: Open ブログ
→ バリアフリー化で運賃値上げ 3: Open ブログ
【 追記 】
「バスは時刻表通りに来ないのが不便だ。だからバス転換が進まないのだ」
というコメントが寄せられた。そこで、この問題に答えよう。
この問題は、ネット技術で解決できる。バスの位置を常に地図上で表示しておけばいい。そうすれば、一つ前のバス停にバスが到着したころに、目的のバス停にたどり着けばいい、とわかる。
時刻が正確でないことが問題なのではなく、予測が付かないことが問題だ。あらかじめ到着の予測が付けば、時間は少しぐらいずれていても問題ない。
こうして、ネット技術によって、バス転換の問題を回避できる。
※ 各停留所には、電子機器を設置する必要はない。QRコードを掲示しておくだけでいい。あとは各人がスマホでQRコードを読み取るだけでいい。すると自動的に、地図が表示されて、バスの現在位置がわかる。「今は二つ前の停留所にいるな」というふうにわかる。
※ 「スマホが使えない人はどうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。停留所に待っている間に、隣の乗客に質問すればいい。高齢者には、優しく教えてくれるだろう。(隣の乗客は、もともと自分で情報を知っているから、いちいち検索しなくてもわかっている。)
※ 「スマホが使えないで、自宅にいる人は、どうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。自宅にいるなら、パソコンで調べればいい。これで解決。
※ 「パソコンを使えない高齢者はどうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。パソコンを使えない高齢者は、もはやボケ老人も同様だから、まわりの人の世話を受ければいい。まわりの人に頼ればいい。介護施設に入ってもいい。
※ 「スマホを使いたくても、小さな字が読みにくかったり、小さなアイコンを打鍵ミスするのは、どうしてくれるんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。小型タブレットを使えばいい。iPad mini などを使えばいい。そもそも、スマホはもともと小さすぎて、打鍵しにくいんですよ。平仮名も打ちにくいし。
( 私も思ったが、家庭内で使うときには、小型タブレットの方が便利だね。スマホは小さすぎて打鍵しにくい。)
すぐ上のコメントに対する回答。