2023年03月27日

◆ ローカル線の路線廃止 .2

 地方のローカル線が赤字で維持できなくなってきている。これをどうするか?

 ──

 この問題を、朝日新聞が最近になって何度も取り上げている。

 (1)
 本日(27日)の記事では、JR四国の駅舎がバス停のように簡素になっている、と報じた。
 四国各地で「地域の顔」として歴史を刻んできた木造の鉄道駅舎が次々と取り壊され、アルミ製の簡素な施設へと姿を変えている。赤字が続くJR四国がコスト削減策として進めており、すでに13駅が建て替えられ、さらに61駅について自治体と協議中だ。
( → 駅が、まるでバス停に コスト削減、JR四国が次々建て替え 修繕・維持、自治体が負担する駅舎も:朝日新聞


新駅舎

旧駅舎



 (2)
 その前に、特集記事があった。計2回。
  → (フォーラム)どうするローカル鉄道:1 論点は:朝日新聞
  → (フォーラム)どうするローカル鉄道:2 将来に向け:朝日新聞

 後者の記事では、結びの言葉はこうだ。
 取材で目にしたのは「空気を運ぶ列車」だった。駅前に住む人たちでさえ「何年も乗っていない」と言う。役割を終えた路線もあると思う。フォーラム面で募ったアンケートでも、今の鉄道を見直すべきだという回答が過半数を占めた。
 郷愁は断ち切りがたいが、今のローカル線をそのままにするのは、問題の先送りにしかならない。粘り強く議論を重ねるしかないと感じる。

 ──

 上では、記事を紹介した。
 一方、本サイトでは前に何度か、私の見解を示した。「大幅赤字の地方鉄道は路線廃止せよ」という趣旨。
  → JR北海道は路線廃止せよ: Open ブログ
  → JR四国は全面廃線せよ: Open ブログ
  → 全国の赤字路線を廃止するべきか? ←両備: Open ブログ
  → JR赤字路線の廃止: Open ブログ
  → JR 路線廃止とバス転換(函館): Open ブログ
  → 只見線の収益性: Open ブログ
  → ローカル線の路線廃止 .1: Open ブログ
 基本的には、「大幅赤字の路線は廃止せよ」となる。(ただし、小幅赤字の路線は廃止しなくてもいい。)

 以上を踏まえた上で、新たに見解を示そう。

 ──
 
 朝日新聞の記事 (2) では、結びの言葉に、こうあった。
 「粘り強く議論を重ねるしかない」

 だが、私の見解を言えば、以下の通り。
 議論ならば、もう何十年も、議論し続けてきた。今は議論をするべきときではない。むしろ、行動するべきだ。では、行動とは? こうだ。
 「赤字の負担を鉄道会社に押しつけるべきではない。赤字の負担を、自治体が負うべきだ。(受益者負担。) そうすれば、現状を放置する場合、自治体に赤字がどんどん貯まるようになる。そのあとは、自治体が自分で最終決断すればいい。赤字と利便性の兼ね合いを考えて、赤字を負担して路線を維持するか、赤字を負担しないために路線を廃止するか、自治体自身が決めればいい。もし決められないでいれば、その間に自治体には赤字がどんどん蓄積していく。そうなると、自治体は無責任に現状を放置することができなくなる」

 元はと言えば、次のことが原因だ。
 「現状では、大都会の乗客の負担した金で、地方の赤字を埋めている。しかしこれでは不公平である。大都会といっても、JR を利用しない人もいる。私鉄や自家用車で済ませる人もいる。なのに JR を利用する乗客ばかりが、高い負担金を払っていることになる。これでは不公平だ。国税によって全員一律に負担するのならまだわかるが、大都会の JR 利用者だけが負担するのは不公平すぎる」
 こういうことがあるので、その不公平さを解消するために、地方の赤字は地方で負担するべきなのだ。その上で、「ローカル線を維持するべきだ」と思うのであれば、自分自身の金で維持すればいい。人の金を奪ってまで維持するべきではない。それは泥棒の論理である。
 
 ローカル線の維持論者は、「ローカル線は必要不可欠だ」と言う。よろしい。その言い分は認めよう。だが、必要不可欠ならば、自分自身の金で維持すればいい。「それが必要だから、他人の金を奪っていい」というのは、泥棒の論理である。そんな論理は認められない。
 どうしても「地方振興」を言うのであれば、国が地方に「地方振興費」を一律で払えばいい。その「地方振興費」を受け取ったあとで、その金をどう使うかは、地方の人たち自身が決めればいい。もちろん、「ローカル線は必要不可欠だ」と思って、そこに金を投入してもいい。しかし、そこに金を投入すれば、かわりに他の住民サービスは低下する。その兼ね合いを、自分たち自身で決めればいい。
 一方、「金が必要だから、都会の人々から金を強奪する」というような理屈は認められない。

 ──

 なお、上記の方針は、現実的にも徐々に取られている。明示的な方針とはなっていないが、暗黙裏の合意という形で進んでいるようだ。
 特に多いのは、次の二つだ。

 (i)バス転換
 鉄道を廃止してバスに転換する、という改革は、しばしばなされている。バスのかわりに、 BRT(バス高速輸送システム)や、LRT(次世代型路面電車)が採用されることもある。どれがいいかは、ケースバイケースであるようだ。地域の事情により、最適なものは変わる。

 (ii)上下分離
 固定資本としての鉄道施設の保有を自治体が担って、上物としての電車の運行だけを鉄道会社が担う……という「上下分離」という改革も、しばしばなされる。この場合、自治体による赤字負担が、相当の額になる。それを受け入れた上で路線を維持するかどうか、という問題となる。
 これを採用した場合には、自治体が相当額の赤字を負担するので、「都会の乗客が高額の負担をする」という問題は消える。これはこれで解決策となる。
 冒頭の(1)の記事でも、この方法は紹介されている。
 JR四国は、自治体が駅舎の無償譲渡を受け、自ら改修するという方法もあると提案している。
 高知県の土讃線西佐川、斗賀野両駅の木造駅舎は16年度、JR四国から地元の佐川町に無償譲渡された。町の予算から耐震改修費としてそれぞれ約1500万円と約1千万円を支出し、トイレ改修も行った。
 隣の日高村にある土讃線日下駅も22年10月、村が木造駅舎の無償譲渡を受けた。
( → 駅が、まるでバス停に コスト削減、JR四国が次々建て替え 修繕・維持、自治体が負担する駅舎も:朝日新聞

 このような方法で、私の提案した内容(地方が自己負担で維持するかどうかを自分で決める)というが実現しつつあるわけだ。

 ──

 なお、このような方針を推進するために、国が何らかの補助金を出してもいいだろう。たとえば、( 10年ぐらいの時限で)固定費負担の3割ぐらいを国が援助する、というふうな。

 一方で、路線を廃止するために、過疎地の老人を人口密集地に転居させる、という案もある。人のほとんどいない過疎地に、無理やり鉄道やバスを通すよりは、過疎地の人そのものを、人口密集地に転居させればいい。そうすれば、乗客のほとんどいない(空気を運ぶ)鉄道やバスを通す必要もなくなる。……この方がかえって安上がり、ということもあるだろう。

 そもそも、過疎地というのは、自動車暮らしをするのが基本である。なのに、年を食って、自動車の運転ができなくなったなら、過疎地に住むのはやめて、人口密集地に移転するべきなのだ。それが合理的な判断というものだろう。
 「住み慣れた住居から離れたくない」
 という気持ちはわからなくもないが、だからといって、その個人的な懐旧の思いのために、都会の住民から多額の金を奪うというのは、まったくもって筋が通らない。そんな「泥棒の論理」は成立しないのだ。

 なお、過疎地の老人の転居のための費用は、国が援助するように、国に立法化してもらうといいだろう。転居させて、家賃などを補助するにしても、生活保護費よりは安上がりで済むだろう。




 [ 付記 ]
 ついでだが、首都圏の乗客にとっては、特にひどいのがある。バリアフリー負担金というやつだ。首都圏の私鉄や JR の乗客ばかりが、過剰に負担金を払わされる。ただし、首都圏の乗客にはまったく恩恵がない。
 なぜ恩恵がないかといえば、バリアフリーはすでに実現済みなので、今後の負担金などはまったく不要だからだ。今後の負担金でバリアフリーを実現するのは、首都圏ではなく、首都圏外の田舎路線の駅である。なのにそこではバリアフリー負担金を払わない。首都圏の乗客ばかりが高額の負担金を強いられる。踏んだり蹴ったりだ。この件、前に述べたとおり。
  → バリアフリー化で運賃値上げ 1: Open ブログ
  → バリアフリー化で運賃値上げ 2: Open ブログ
  → バリアフリー化で運賃値上げ 3: Open ブログ



 【 追記 】
 「バスは時刻表通りに来ないのが不便だ。だからバス転換が進まないのだ」
 というコメントが寄せられた。そこで、この問題に答えよう。

 この問題は、ネット技術で解決できる。バスの位置を常に地図上で表示しておけばいい。そうすれば、一つ前のバス停にバスが到着したころに、目的のバス停にたどり着けばいい、とわかる。
 時刻が正確でないことが問題なのではなく、予測が付かないことが問題だ。あらかじめ到着の予測が付けば、時間は少しぐらいずれていても問題ない。
 こうして、ネット技術によって、バス転換の問題を回避できる。
 
 ※ 各停留所には、電子機器を設置する必要はない。QRコードを掲示しておくだけでいい。あとは各人がスマホでQRコードを読み取るだけでいい。すると自動的に、地図が表示されて、バスの現在位置がわかる。「今は二つ前の停留所にいるな」というふうにわかる。
 
 ※ 「スマホが使えない人はどうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。停留所に待っている間に、隣の乗客に質問すればいい。高齢者には、優しく教えてくれるだろう。(隣の乗客は、もともと自分で情報を知っているから、いちいち検索しなくてもわかっている。)

 ※ 「スマホが使えないで、自宅にいる人は、どうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。自宅にいるなら、パソコンで調べればいい。これで解決。

 ※ 「パソコンを使えない高齢者はどうするんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。パソコンを使えない高齢者は、もはやボケ老人も同様だから、まわりの人の世話を受ければいい。まわりの人に頼ればいい。介護施設に入ってもいい。
 
 ※ 「スマホを使いたくても、小さな字が読みにくかったり、小さなアイコンを打鍵ミスするのは、どうしてくれるんだ」という疑問が出そうだが、大丈夫。小型タブレットを使えばいい。iPad mini などを使えばいい。そもそも、スマホはもともと小さすぎて、打鍵しにくいんですよ。平仮名も打ちにくいし。
( 私も思ったが、家庭内で使うときには、小型タブレットの方が便利だね。スマホは小さすぎて打鍵しにくい。)
 
posted by 管理人 at 23:08 | Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
バス転換が嫌がられる一つの理由は時間が不正確なことです。でもそれはバス優先路線の設置やGPSを使ってバスの現在位置を知らせるなどの解決策はあると思います。各バス停で数分時間待ちするように時刻表を設定しておけば何もしなくても問題は解決するのではないでしょうか。
Posted by よく見ています at 2023年03月28日 10:35
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 すぐ上のコメントに対する回答。
Posted by 管理人 at 2023年03月28日 10:45
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