2023年03月28日

◆ EV の他に 合成燃料車も

 欧州が「内燃エンジン車は不可」という方針を改めて、(炭素排出が実質的にゼロになる)合成燃料車ならば可」という方針に転じた。

 ──

 朝日新聞の記事を引用しよう。
 欧州連合(EU)は25日、2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売をすべて禁止するとしてきた方針を変更し、環境に良い合成燃料を使うエンジン車は認めると表明した。エンジンの全面禁止により電気自動車(EV)シフトを世界に先駆けて進めてきたEUの政策が大きく転換した。
 再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素からつくられる合成燃料「e―Fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の新車販売は、35年以降も可能にする。
( → EU、エンジン車の販売2035年以降も容認へ 全面禁止の方針転換:朝日新聞

 「再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素からつくられる合成燃料」というのは、バイオエタノールなどのことだろう。水素燃料も含まれるかもしれない。
 こういう話を聞くと、「トヨタの方針は妥当だった」などというトヨタ賛美の声を出す人もいる。だが、それは見当違いだ。
 こういう形で合成燃料を導入しても、コストが滅茶苦茶に高くなる。エネルギーそのものの生産コストは同等だとしても、以後で多大なロスが生じるからだ。
  ・ 電気ならば送電だけで済むが、合成燃料は運搬費がかかる。
   (特に水素ならば、莫大な圧縮運搬費がかかる。)
  ・ モーターならば効率が高いが、内燃機関は効率が低い。

 このように多大なロスが生じるので、合成燃料は EV に対して勝ち目がない。

 《 加筆 》
 生産コストについての記事も出た。
 合成燃料にはコスト面で課題もある。経済産業省の試算では、イーフューエルの生産コストは1リットルあたり700円で、ガソリンの数倍。
( → EU、エンジン車を2035年以降も一部容認 日本メーカー歓迎:朝日新聞

 ──

 以上のような難点があっても、内燃エンジン車が生き残るとしたら、それはニッチな市場に限定される。具体的には、寒冷地だ。寒冷地では、暖房に電気を使うのは非効率だ。むしろ、排熱を暖房に有効利用すれば、排熱を捨てずに済むので、エネルギー効率が上がる。だから、寒冷地では内燃エンジン車が有利だ。
 ただしその場合も、PHV という形になるのが自然だ。つまり、PHV という形を取れば、寒冷地限定で、内燃エンジン車も生き残れるはずなのだ。……これは、前から私が言っていたとおりだ。
 PHV ならば、冬はガソリン車としてガソリン暖房を使えるし、春・夏・秋には、近距離を EV として経済的に使える。これで万能となる。(寒冷地では。)
( → 寒冷地の EV の炭素排出量: Open ブログ

  ・ EV は基本的には寒冷地向きではない。
  ・ PHV を残すべきだ。

 
 改めて考えると、やはり寒冷地では PHV を残すべきだ。教条主義的に PHV を禁止するべきではない。環境保護よりは人命の方が大事であるはずだ。そんな簡単なことがわからないのが、環境至上主義者だ。環境重視のためには人の命を奪ってもいい、という主義だ。これではプーチンと大差ないね。
( → 雪のなかの EV で助かるには?: Open ブログ

 結局、今回の欧州の方針は、私が前から言っていた方向に沿って修正された、と言えるだろう。その意味では、私の予想通りだが、「ちゃんと是正された」という意味合いもある。馬鹿な教条主義で EV 一辺倒になっていた欧州も、ようやく正気に戻ったと言える。
 最初から Open ブログを読んでいれば、迷走することもなかったのにね。

posted by 管理人 at 23:35 | Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 朝日新聞の本日記事
  → https://digital.asahi.com/articles/ASR3X6WG9R3XULFA00G.html

 他の記事もある。
  → https://x.gd/pbThp
Posted by 管理人 at 2023年03月29日 11:39
>「再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素からつくられる合成燃料」というのは、バイオエタノールなどのことだろう。水素燃料も含まれるかもしれない。

⇒ この合成燃料(e-fuel)は、バイオ燃料とは違います。CO2は、大気から捕集します(DAC:Direct Air Capture 法)。また、H2の原料としては、水(を電気分解する)か、MCH(メチルシクロヘキサン)やアンモニア(NH3)から取り出します。

>(特に水素ならば、莫大な圧縮運搬費がかかる。)

⇒ 水素は、水素キャリアといって、上で示したMCHやアンモニアなどの水素を含む物質として運搬、供給します。気体水素を圧縮したり、極低温の液体水素の形態で運搬はしません。

 https://www.sbbit.jp/article/cont1/95962

 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gosei_nenryo.html
Posted by かわっこだっこ at 2023年03月29日 22:52
 バイオ燃料とは違う合成燃料だ、という点は、本記事を書いたあとで、朝日の記事で解説されていましたね。コメント欄の1番目の記事。

 ──

 MCH の件は、そう言えば前にも書いたことがあるな、と思い出した。
 そこで検索したら、下記項目で言及していました。
  → http://openblog.seesaa.net/article/455800755.html

 そこに こうある。

> 「これはうまい方法だ」と思われるかもしれない。だが、これにも、「圧縮には多大なコストがかかる」という問題を免れない。
Posted by 管理人 at 2023年03月30日 00:09
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