──
NHK の「サイエンスZERO」で、ダイヤモンド半導体の番組が放送された。
→ 「限界を超えてゆけ!“ダイヤモンド半導体”開発最前線」 - サイエンスZERO - NHK
そのまとめが下記記事で紹介された。
→ 「ほぼ絶縁体であるダイヤモンドが半導体になるはずがない!」…シリコンの5万倍「ケタ違いの大電力量制御の力」を持つ「ダイヤモンド半導体」が実現に近づいた「別分野の同僚のある一言」(サイエンスZERO)
高出力と高周波数で、シリコンをはるかにしのぐそうだ。大いに期待がもてる。
近年の CPU は、高速化(周波数アップ)が限界に達している。かわりにコア数を増やすことで総合的な性能をアップしてきたが、コア数をアップするのもそろそろ限界に近づいてきた。コア数が4か8ぐらいのころには、コア数を増やすことで性能向上が実感できたが、コア数が 16以上になると、製鋼工場はあまり実感できなくなる。最近ではコア数が 512 ぐらいの高性能 CPU も出てきたが、このくらいまで行き着くと、もはやコア数を増やすことの意味が薄れてくる。
つまり、シリコン半導体を使う限りは、これ以上の性能アップを見込めない。
そこで有力なのが、シリコン半導体の 1200倍ぐらいまで高周波数を使えるダイヤモンド半導体だ。
ダイヤモンド半導体の性能が優れていることは前からわかっていたが、生産することが非常に困難だった。ところが近年、日本の会社の技術開発で、この壁を破るブレークスルーがあった。そこで一挙にダイヤモンド半導体の展望が見えてきたそうだ。
──
以上は NHK の番組に基づく話だが、ネットで調べると、もっと情報がわかる。
(1)
→ 究極のパワーデバイス「ダイヤモンド」、早ければ2030年に普及開始も
この記事によれば、実用化の時期がわかる。早ければ 2030年ごろになるようだ。このころには EV も大幅に普及しているので、EV にも使われるようになるかもしれない。
大容量のダイヤモンド半導体を使えば、高出力の電気制御を小型の半導体で済ませることができるようになり、いろいろとメリットが出そうだ。うまく行けば、大幅なコストダウンも可能になるかもしれない。(その時期は遅れそうだが。)
(2)
→ 新動作原理によるダイヤモンド半導体パワーデバイスの作製に成功 - Orbray MAGAZINE Orbray株式会社
この記事には、次の図がある。

高周波数という点では、窒化ガリウム(GaN)や、ガリウム砒素(GaAs)の半導体も有力だ、とわかる。
特に前者については、この半導体を LED に使った(ノーベル物理学賞の)天野浩による研究開発が進んでいるそうだ。
→ 「性能はシリコン半導体の10倍以上?」青色LEDノーベル物理学受賞者が進める「窒化ガリウム・半導体革命」《電力損失大幅低減》《大容量無線通信》(サイエンスZERO)
パワー半導体では、窒化ガリウム(GaN)が有力だが、低出力で高周波ならば、ガリウム砒素(GaAs)が有望だ。(上の図による。)
ガリウム砒素(別名・砒化ガリウム)の研究開発については、下記記事がある。
→ ガリウム砒素(GAAS)ウエハの世界市場は2027年までCAGR12.2%で成長する見込み|Report Oceanのプレスリリース
→ 【2023年版】ヒ化ガリウム メーカー10社一覧 | Metoree
日本企業も多くあるが、外国企業もある。ガリウム砒素では、日本企業はかなり出遅れているようだ。
ちなみに、窒化ガリウムの LED では日本企業が先行したが、窒化ガリウムのパワー半導体では日本は出遅れた。
→ GaNパワーデバイスの世界ランキング、トップはNavitas社 - セミコンポータル
窒化ガリウムや、ガリウムヒ素で、日本企業はシリコン時代よりもかえって負けてしまうかもしれない。
この先、少子化が進むと、研究開発する技術者の数も減ってしまう。やばいね。
ダイヤモンド時代が来る前に、日本の半導体会社が滅びてしまうことがないように、願いたいが。