2023年03月14日

◆ ボルボのギガプレス

 テスラの巨大プレス技術であるギガプレスを、ボルボも採用するそうだ。

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 テスラの方はギガプレスというが、ボルボの方は目がキャストまたはメガキャスティングという。テスラだけがやっているのかと思ったら、ボルボも採用するそうだ。朝日新聞が報じている。
 ボルボは昨年、約1300億円を投資して次世代EV工場に変える計画を発表。目玉の一つが、「メガキャスティング技術」への投資だった。
 メガキャスティングは大型のアルミニウム合金を鋳造する技術で、大小100個以上の部品を組み合わせてつくる車体後部の大型パーツが、一つのアルミ部品として形成できるようになる。
 部品のすり合わせ技術が基本とされてきた自動車づくりの常識を覆す発想とされ、イーロン・マスク氏が率いる米テスラが採用して実績を示したことで注目されるようになった。
( → EV専業メーカーへ転身するボルボ 経営者が味わったケータイの失敗:朝日新聞デジタル

 これが優れているのは、大幅なコストダウンになるからだ。多数の部品をあちこちでスポット溶接するのに比べると、数回のプレスだけでボディを作れてしまうので、手間とコストが大幅に削減できる。
 「いったいどうやってテスラはその製造コストを下げたのか」ということですが、テスラのIR担当責任者によれば「…… 生産工程の効率化によるもの」。
 製造原価の低減は …… モデルYの車体やシャーシにメガキャストを導入し、製造工程とパーツ点数を削減したことによると述べています。
( → テスラの1台あたり生産コストは2017年に比較して半分以下の43%にまで下がっていた!そのほとんどは製造工程と設計の最適化によってなされている - Life in the FAST LANE.

 モデル3の車体下部はフロント、バッテリーパック、リアの3つで構成されていて、リア部のアンダーボディは後輪のサスペンションなどを構成する部分になる。
 モデル3のアンダーボディの一体鋳造を可能にしたのは全長20メートル、総重量400トン強の巨大な鋳造機「ギガプレス」だ。イタリアのIDRA社が製造したギガプレスは、高温で溶融したアルミ合金を金型に流し込んで型締力6000トンで成型する。
 ギガプレス登場以前のモデルYのリア部のアンダーボディは、70回におよぶプレス加工、押出成形、鋳造を必要としていたが、それをギガプレスは約100秒で一気に作ってしまう。ギガプレスを使うことで、「製造スペースを30%削減し、約1000台あったロボットから300台を削減できた」とイーロンは胸を張った。
 すでにテスラはモデルYのリア部だけでなくフロント部のアンダーボディもギガプレスで一体鋳造して作り出しており、製造コストは40%削減が可能となった。
( → 6万社の下請けが不要になる…「おもちゃのように車を作る」というテスラ方式はトヨタ方式を超えられるのか 自動車のものづくりを根底から変える「ギガプレス」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 2022年7〜9月期決算を巡り、自動車業界に衝撃が走った。トヨタ自動車の連結純利益は4342億円だったのに対し、米テスラは4542億円と、四半期ベースで初めて両社の金額が逆転した。トヨタは販売台数で8倍近い。一方、1台あたり純利益はテスラが8倍だった。
( → トヨタとテスラ、「1台の格差」8倍に 初の純利益逆転 - 日本経済新聞

 こういうわけだから、テスラは他社に先んじて、圧倒的なコストダウンを実現しているわけだ。
 他社が追いつくのはだいぶ先になると見込まれたが、ボルボはすでに追いつこうとしている。たいしたものだ。(それができた理由は、優秀な経営者がいたから。朝日記事に記してある通り。)

 なお、ネットで調べると、ボルボがメガキャストを採用すると発表したのは、今ではなく、1年余り前のことだ。
  → ボルボ、次世代電気自動車に「テスラ式」メガキャストを採用へ

 テスラであれ、ボルボであれ、プレス機械を作るのは別の会社で、その会社のプレス機械を使うわけだ。

 ──

 さて。それを聞いて思うのは、トヨタだ。トヨタは 2026年に EV 専用のプラットフォームを採用すると決めた。
 「これまで豊田マスタードライバーのもとで、トヨタらしい、レクサスらしいBEVを作る準備を進めてまいりました。その取り組みの中で、自分たちが目指すBEVのあり方が見えてまいりました。機が熟した今、従来とは異なるアプローチで、BEVの開発を加速してまいります」(佐藤次期社長)と、2026年を目標に電池やプラットフォーム、クルマの作り方など、すべてをBEV最適で考えた「次世代のBEV」をレクサスブランドで開発していくとした。
( → トヨタ新体制発表会見、佐藤恒治次期社長は2026年を目標に次世代のバッテリEVをレクサスブランドで開発と表明 - Car Watch

 ここには、ギガプレスという言葉はない。たぶん、そこまで考えていないのだろう。これまでの報道を見る限り、トヨタが開発しているのは「 EV プラットフォーム」という新プラットフォームの開発であって、ギガプレスという新しい生産方式ではないからだ。生産方式を変えるべきときに、プラットフォームを変えれば済むと思っている。
 ひどいね。こんなことでは、トヨタはボルボに比べて周回遅れだ。いったいトヨタはどうなってしまうのだろう。消滅してしまうのだろうか? かつての家電産業のように。

 ──

 なお、朝日の記事の最後には、こうある。
 日本車が「ガラケー」になる日は見たくない。

 しかし、トヨタの行動を見ていると、トヨタはガラケーになろうとしているとしか思えない。その代表が、「燃料電池車」や「水素自動車」にこだわろうとしていることだ。とっくの昔に「時代遅れ」になると判明している技術に、いまだにこだわっている。間違った道に進もうとしている。


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政府の産業政策の失敗: Open ブログ


 かくて、先端技術の EV の流れに取り残される。これじゃまるで、「ブラックベリー」や「iモード」にこだわって、スマホの波に乗り遅れるようなものだ。その時代錯誤さに、トヨタは気づいていないのだろうか? 



 【 関連動画 】








 この二つに続くのが、トヨタ車になるのだろうか。……
 
posted by 管理人 at 22:49 | Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ギガプレスですが、現時点アルミニウムを使ってますね。アルミニウムだと板金不可なので、修理費がとてつもなくかかるという欠点があります。これをどう克服するかがポイントだと思います。発展途上国では使えない技術だと思います。
Posted by やまさん at 2023年03月30日 10:52
 私もそれを考えたんだけど、修理費は個人の負担で、原価低下は会社の利益だから、結果的に、会社側は丸儲け。テスラは滅茶苦茶に儲かっている。トヨタの数倍の利益率だ。

 購入する個人としては、ギガプレスによる新車価格の低下と、事故の場合の修理費をまかなう保険代との兼ね合いで、損得を考慮すればいい。
 例。新車価格が 100万円お得だが、年間の保険代が 3万円アップ。
 
 イヤなら買わなければいいし、よければ買えばいい。
 事故率の低さを考えると、保険代の上昇は十分にまかなえる。新車価格が下がる方がいい。
 事故の場合は、修理しないで、廃車にして、解体してから、部品取りにでも利用すればいい。事故率の低さを考えると、修理よりは解体という方針で大丈夫だ。

 途上国ほど、解体・再利用の人件費が安いので、途上国ほど有利だ。

 なお、最近のギガプレスは3分割方式らしいので、解体しなくても、3分の1だけの交換で済むようだ。これが最善かもね。

Posted by 管理人 at 2023年03月30日 11:23
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