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朝日新聞の記事がある。東日本大震災で、直接的でなく間接的に死に至った「災害関連死」の統計データだ。
被害の大きかった東北の3県のうち、災害によるけがの悪化や避難生活の負担による病気で亡くなる「災害関連死」は、福島県が突出して多い。今年2月現在で計2335人に上り、岩手県(470人)、宮城県(931人)を大きく上回っている。
避難生活で心労が重なったり、将来を悲観したりして自殺した人は、自殺未遂の影響で死亡した人を含め、少なくとも35人に上る。
( → 「災害関連死」福島が突出 2年目以降が4割、避難の長期化が背景に:朝日新聞 )
次の事例もある。
福島県田村市の今泉峰子さんは、震災当時、夫の信行さん(75)と共に、福島第一原発の30キロ圏に住んでいた。原発事故の避難指示で市内の親類宅やアパートを転々とし、2011年8月に市内の仮設住宅に入った。
だが、壁が薄く、常に隣の部屋から話し声が聞こえる毎日がストレスとなり、峰子さんから笑顔が消えた。12年10月29日。朝は「具合が悪い」と寝ていた。信行さんが仕事の合間に3回電話したが、一度も出なかった。峰子さんは、54歳で自ら命を絶った。
( → (東日本大震災12年 3・11の現在地)関連死2027人、心身削られ 開示文書分析:朝日新聞 )
仮設住宅のせいで心身不調になって、自殺するに至ったわけだ。残念なことではあるが、こうなることは前から予想されていた。というのは、「仮設住宅のせいで人が死ぬ」という結果になることは、私が前から何度も指摘してきたからだ。下記のように。
→ 仮設住宅は人を殺す: Open ブログ
ここでは、「(政府は)仮設住宅に入居できるというエサをぶら下げることで、人々が避難所暮らしから抜け出せなくする。そのせいで人々は、避難所に留まって、健康を悪化させる。死ぬこともある」というふうに示している。
ここでは、高齢者の生命を救うために、政府が勧告するべきだろう。
「ただちに避難所を離れて、各地で医療を受けてください」
というふうに。
しかるに、政府は、それとは逆のことをする。
「避難所に留まってください。避難所に留まった人だけに、仮設住宅という素晴らしいご褒美を上げますよ。たっぷりとお金のかかった仮設住宅がほしければ、避難所に留まりなさい。もし避難所から出たら、仮設住宅に入れてあげませんからね」
というふうに。
高齢者が「故郷から離れたくない」という思いは、「自分の命を失ってもいい」と思うほど強いものだ。そこで、仮設住宅に入りたい人々は、次々と死んでいく。そして、その状況を、政府があえて推進する。
政府は、「仮設住宅の建設」という方針を採る。そのことで、国民の税金を、人殺しのために使っているのだ。
他にも、さまざまな理由で、「仮設住宅を建設するべきではない」と述べた。下記の通り。
→ 地震で仮設住宅を設置するな: Open ブログ
→ 被災地の避難で死者: Open ブログ
→ 仮設住宅を建設するな: Open ブログ
→ 復興の幻想を捨てよ: Open ブログ
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では、仮設住宅を建設しなければ、かわりにどうすればいいか? それは、簡単だ。現金を給付すればいい。この点は、朝日新聞も社説で述べている。
災害救助法の「現物支給の原則」を抜本的に見直し、金銭支援を拡大すべきだとも言われている。1戸あたりの価格が仮設住宅1千万円、公営住宅2千万円に対し、被災家屋の修繕費の平均は約500万円だった。
( → (社説)大震災12年 災害法制を進化させよ:朝日新聞 )
なお、仮設住宅のかわりに、現金給付にすると、大幅に費用を削減できる。
・ 仮設住宅 …… 住居費 1000万円 + 土地かさ上げ費(数千万円)
・ 現金給付 …… 500万円程度
土地かさ上げ費は、1戸あたり 3000〜
- 《 加筆 》
土地のかさ上げ費については、過去記事で言及していた。5800万円である。
→ 盛り土費用は1戸 5800万円: Open ブログ
それだけではない。現金給付を受けた人が、現地を離れて、大都会に移れば、そこで仕事を見つけて、幸福な生活を送れるようになる。地元で失業しているよりも、はるかに幸福だ。実例は下記。
我が家は床上浸水で、何とか2階で生活できました。しかし……仕事をするのが難しくなりました。
我が子を普通の環境で育てたいと考え、……引っ越しを決意しました。縁もゆかりもない横浜に移住して12年を迎えます。仕事もすぐに見つかり、近隣の方や仕事を通じてたくさんの出会いがあり、幸せです。
( → 朝日新聞・声欄 2023-03-12 )
この人は、現地(宮城県石巻市)を離れて、大都会に移った。だから幸福な生活を再建できた。仮にこの人が地元に留まったまま、仮設住宅に住んでいたら、こうはならなかっただろう。ひょっとしたら 自殺していたかもしれないね。
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一方、現状はどうか? 政府はいまだに「震災後には仮設住宅を建設」という方針を墨守している。南海トラフ地震でも、その方針だ。
一方で、「そんなに大量の仮設住宅は建設できません」という試算も出ている。
→ 「仮設住宅」に入れない…南海トラフ巨大地震で深刻な不足 対策は? - NHK
だから朝日の社説は、「現金給付にせよ」という解決策を出しているわけだ。
南海トラフ地震の建物の全壊・焼失は239万棟と想定される。そんなに仮設住宅を用意できるはずがなく、現物から金銭への切り替えは急務のはずだ。
( → (社説)大震災12年 災害法制を進化させよ:朝日新聞 )
これは私と同じ見解だ。解決策はこれしかあるまい。
一方、政府の方針は、現実には不可能な空論である。これでは大量の「災害関連死」が出ることになる。下手をしたら、直接の被災死者よりも多くなりかねない。地震よりも、政府の無策が、人を殺す。
【 関連動画 】
【 関連サイト 】
→ トルコの震災地は復興するな: Open ブログ
※ 「新都市を建設するより、全国各地に分散して、空き家で暮らすべきだ」という趣旨。これは日本でなく、トルコ地震の話だ。一方、日本でも、南海トラフ地震については同様の方針を取るべきだ。なのに現状では、「仮設住宅の大量建設」という方針ばかりだ。間違っているね。先が思いやられる。