少子化の政策について、小さな話題を三つ。
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三つの話題を述べる。
(1) 児童手当
児童手当については、支給制限を取っ払って、「高所得者にも児童手当を払う」という方針が出た。
これは、もともとは民主党がその方針を取ったが、自民党が大反対をしたせいで、制限が付いたものだ。さらに 22年10月には、それを強化して、支給額をゼロにする、という極端な制限となった。なのに、そういうのをすべてやめて、民主党の方針に戻す、ということらしい。
さて。これをどう評価するか?
これは、別に悪くはあるまい。高所得者の内部で、児童手当をもらう人ともらえない人がいる、というだけの違いだからだ。また、払っている巨額の税金に比べれば、もらえる児童手当は少額にすぎないからだ。
貧富の格差の是正は、別途、所得税でやればいいのであって、少額の児童手当の有無でやるべきではあるまい。この件は、特に問題ないと言える。
(2) 車椅子代の補助
一方で、ひどい制限がある。車椅子代の補助だ。
子供に重度の障害があると、車椅子代に数十万円がかかる。これに対して、健康保険で3割負担になる……というのなら、まだわかる。しかし現状はそうではない。
・ 一定所得以下なら、無料または1割負担(上限あり)
・ 一定所得以上なら、全額自己負担。
ここで一定所得というのが問題だ。規定は「市民税の所得割額が年46万円以上の世帯」だ。これは年収575万円に相当する。世帯収入だから、夫350万円、妻225万円ぐらいだ。これを上回ると、全額自己負担だ。
これではあまりにも負担がひどいので困る、という意見が投書された。朝日新聞・声欄・2023-04-01 の掲載だ。ネットにはないが、一部転載しよう。
三男に重度の身体障害があり、移動の手段として車いすが欠かせない。支給制度で、負担は無料になるか1割負担(月額上限3万7200円)なのだが、市民税の所得割額が年46万円以上の世帯は全額自己負担だ。子どもは年々体が大きくなり、体に合った車いすが数年ごとに必要。数十万円する車いすを自己負担で購入するのは、かなりの負担だ。
障害のある人、介護をするすべての人が等しく移動手段を得られ、安心して生活できるように、ぜひ所得制限の撤廃をお願いしたい。
ともあれ、この件(車椅子の障害者への冷遇)を、先の (1) と対比するといい。すると、「金持ちには金を与えて、最も困っている人には金を与えない」ということがわかる。
いかにも自民党らしい政策だね。
(3) 消費税と法人税
消費税を 10% に上げるときには、「これを少子化対策にします」「福祉の財源にします」と自民党は公約していた。
ところが、現実には少子化対策や福祉のためには、消費税の金を投入しない。かわりに、防衛費の倍増のために投入する。その分、少子化対策や福祉のための金がなくなると、「社会保険料を値上げします」と言い出す。
まったく、こんな嘘つきにだまされる国民もどうかしていると思うが、それが現実だ。
→ 岸田内閣支持率が45.3%に上昇 ANN世論調査 (前項で既出)
実は、少子化対策や福祉のための金がなくなるというのは、今に始まったことではない。前からずっとそうだった。その理由は、金を「法人税の減税」のために使ってしまったことだ。
消費税の増税で税収が増えた分、法人税の減税で企業向けに吐き出してしまった……ということは、政府が統計データで公表している。このデータは、下記で示した。
→ 法人税と内部留保 : nando ブログ
法人税の逐次的な税率引き下げについては、次のグラフもある。
出典:財務省
前項・前々項のグラフで示したように、国民の税・社会保険料負担率は、低所得者から中所得者まで、28%でほぼ一定だ。ところが、法人税の負担率は、大企業で 23%、中小企業で 15%だ。何ともまあ、甘いね。
実は、この税率には、住民税の分は含まれていないので、その分を込みにして考えると、同じページの最後に数値がある。「29.74%」だという。諸外国よりはほんの少しだけ高いらしい。とはいえ、日本では法人税率の引き下げのせいで、その数値がどんどん下がってきた、とも記してある。
日本においては、2015年度・ 2016年度において、成長志向の法人税改革を実施し、税率を段階的に引き下げ、 37.00%(改革前) →32.11%(2015年度)、29.97%(2016・2017年度)→29.74%(2018年度〜)となっている。
やはり、恵まれるのは企業ばかりであり、一般国民は むしり取られるばかりであるようだ。
※ そこで吸い上げられた金は、どこへ行くかというと、たとえば、下記のところへ行く。
→ 「これ百貨店で買ったの」「値段知らない」「百貨店ってお金いらないじゃない」まるで異世界な外商を利用するお客様の情報が集まる - Togetter
[ 付記 ]
政府の少子化対策(異次元の少子化対策)は、ダメだ。
では、かわりにどうしたらいいか? それは、一昨日の項目の最後の方で示したとおりだ。再掲しよう。
先に、少子化対策についてのシリーズがあった。(全6回)
→ 少子化の対策 .1 〜 少子化の対策 .6
そこで述べたように、少子化の原因は、既婚者が子供を産まなくなったことではなく、未婚者が結婚しないでいること(結婚率が低いこと)である。そして、そうなった理由は、女性労働者の雇用環境が悪いことである。特に、結婚によって解雇されたり自主退職に追い込まれたりすることがある。
( → 立憲が育児女性を差別: Open ブログ )
ここにはシリーズの要約が記してあるが、詳しい話は、上のシリーズ(全6回)に細かく説明してある。少子化対策の正解を知りたければ、このシリーズを読んでほしい。
特に、次の話がある。
人々はこう考えた。
「少子化が起こるのは、人々が子供を産もうとしないからだ。人々が子供を産もうとしないのは、子育てをするための金銭的な不安があるからだ。ならば、子育てをするための金銭的な不安をなくすために、育児手当を出せばいい。そうすれば、少子化は解消するはずだ」
だが、これはまったくの勘違いだ。
正しくは、こうだ。
「少子化が起こるのは、人々が子供を産もうとしないからではない。既婚者を見れば、平均して子供を2人産んでいる。つまり、既婚者の出生率は低くない。なのに全体では出生率が低い。それは全体の結婚率が低いからだ」
出産する気があっても(金がなくて)出産できない……のではない。そもそも出産するための相手(配偶者)がいないのである。人は一人では出産できないのだ。このことが少子化の根源なのである。
とすれば、その対策は、出産費用を出すことではなく、結婚できるための所得を与えることだ。目先の数万円を出すことではなく、(長期的に)年収で数百万円も上げることだ。
( → 少子化の対策 .6(後日記): Open ブログ )
「特に、次の話がある。」以下の部分。