AIが「考える機械」になるには、どうすればいいか?
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AIの歴史
AIの歴史をざっと示そう。

パーセプトロン
パーセプトロンという概念が現れたのは、1958年だった。
心理学者・計算機科学者のフランク・ローゼンブラットが1957年に考案し、1958年に論文を発表した。
パーセプトロンは1943年に発表された形式ニューロンに基づく。
ローゼンブラットはこの形式ニューロンの考え方を基にしてパーセプトロンを開発した。S層(感覚層、入力層)、A層(連合層、中間層)、R層(反応層、出力層)の3つの部分からなる。S層とA層の間はランダムに接続されている。S層には外部から信号が与えられる。A層はS層からの情報を元に反応する。R層はA層の答えに重みづけをして、多数決を行い、答えを出す。
( → パーセプトロン - Wikipedia )
このあと、「小脳はパーセプトロンである」という仮説に基づいて、伊藤正男が生理学的に大きな成果を出した。
1970年頃、デビッド・マーとジェームズ・アルブスによって小脳はパーセプトロンであるという仮説が相次いで提唱された。後に神経生理学者伊藤正男らの前庭動眼反射に関する研究によって、平行繊維-プルキンエ細胞間のシナプスの長期抑圧が見つかったことで、小脳パーセプトロン説は支持されている。
( → パーセプトロン - Wikipedia )
初期のパーセプトロンは単層のものだったが、それには限界があった。のちに、パーセプトロンを多層にすることで、いろいろと大きな成果が出るようになった。
それでも、何度かブームはあったものの、実用レベルの成果は出せなかった。ところが、2020年ごろから、Deep Learning の技術を導入することで、飛躍的な発展をなしとげて、実用レベルの成果を出せるようになった。
Deep Learning の技術を用いた成果については、前々項でも説明した。
・ 画像認識
・ 囲碁の処理
・ 画像の描画
・ 言語処理
という順で、次々と Deep Learning の技術が大きな成果をもたらしていった。
ここまでが、現在までの歴史だ。
考えない機械
Deep Learning の技術は、飛躍的な発展をなしとげて、人類に新たな成果もたらした。それはほとんど「考える機械」が出たのも同然だった。
しかし、その詳細を探ると、これは厳密には「(真に)考える機械ではない」と判定された。それが前項の趣旨だ。
囲碁にせよ、言語処理にせよ、機械は人間が「考えてやる作業」と同等の成果をもたらすのだが、その過程は人間の「考える過程」とはまったく違うのだ。このことは、比喩的には、次のような差に相当する。
・ 自動車は移動するが、人間の(二本足による)「走る」動作と同じではない。
・ ヘリコプターは山の頂上に達するが、人間の「山を登る」動作と同じではない。
自動車やヘリコプターは、結果だけを見れば人間のやる作業と同様の結果をもたらすのだが、やっている過程は人間が肉体を動かすときの過程とはまったく異なる過程を取っている。作業の結果だけを見て、「機械は人間と同じことをやっている」(運動している)とは言えないのだ。
言語AIも同様である。ChatGPT などの言語AIは、結果だけを見れば人間のやる作業と同様の結果をもたらすのだが、やっている過程は人間が頭脳を働かすときの過程とはまったく異なる過程を取っている。作業の結果だけを見て、「機械は人間と同じことをやっている」(真に考えている)とは言えないのだ。
その意味で、言語AIは「(真に)考える機械」とは言えない。
※ 次項に続きます。
→ AIが考えるには? .2: Open ブログ