2023年03月10日

◆ トリチウムの風評被害

 福島でトリチウムを放出することについて、朝日新聞が危険性を煽っている。新聞による風評被害。

 ──

 福島でトリチウムを放出することについて、朝日新聞が報道している。
 東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水。国と東電は、ほとんどの放射性物質を取り除き、「処理水」として放出する方針だ。
 国は、処理水の安全性が国際基準に合致していることを示すため、国際原子力機関(IAEA)に調査を依頼。放出に反発する韓国などの専門家も含めた調査団が検証中で、今のところ問題があるとの見解は示されていない。
 海洋放出について、地元の不信や反発は根強い。国と東電から15年に「関係者の理解なしには処分しない」とする文書を受け取っている福島県漁業協同組合連合会(県漁連)は「断固反対」の姿勢だ。
( → (東日本大震災12年)原発 処理水、海へ放出準備:朝日新聞

 これは 2023年3月6日 の記事だが、特に偏った点はない。中立的な記事だと言えよう。
 一方、別の記事もある。2023年2月26日の記事だ。こちらはかなり偏った記事だ。
 東京電力福島第一原発の敷地にある高台に、貯蔵タンクが日を追って増えていく。その異観に、原発立地の双葉町や大熊町では「復興の妨げだ」との声もあがる。
 新妻さんは言う。「私は漁業を守りたいだけ。東電や国は私たちに何度、苦渋の決断を迫るのか」
 元職員は「なるべく多くの人の意見を聴いて合意に導こうという努力が感じられない。多くの自治体を巻き込んだ議論をしていれば、福島の復興に協力、応援しようという雰囲気が醸成できたかもしれないのに。今のように進めれば、必ず不信感が増し、あつれきを生む」と話す。
 議員の一人は、「地元だけではなく、他県も含めた多くの人の理解が得られないなら流しちゃ駄目だ」と話す。
( → 海洋放出へ進む準備に揺れる地元 苦渋の決断を迫られ葛藤抱く人たち:朝日新聞

 「トリチウム放出は危険だ」と科学的に指摘するのなら、まだわかる。しかし、そうではなくて、「地元の合意を得ていない」という地元感情だけを理由にして、放出反対論ばかりを長々と書く。その一方で、容認論については、「原子力規制委員会や国際原子力機関(IAEA)は海洋放出計画の安全性を認めている」と1行しか書かない。科学的合理性については、このことが最も大切なことなのに、長い文章のなかで、たったの1行しか書かないのだ。両論併記どころではない。あまりにも偏った記事だと言えるだろう。偏向記事だと言ってもいい。

 朝日新聞がやるべきことは、「トリチウムなんかに危険性はない」という科学的な説明を加えることだろう。こうだ。
 トリチウムは放射線の一種であるβ(ベータ)線を出します。ただしトリチウムが出すβ線はエネルギーが小さく、紙一枚で遮蔽が可能です。そのため外部被ばくによる人体への影響は考えられません。また、トリチウムを含む水は、生物学的半減期が10日で、体内に取り込んだ場合も速やかに体外に排出され、特定の臓器に蓄積することもありません。
( → 環境省_トリチウムの性質

 トリチウムなんかは、大騒ぎするようなことではないのだ。そんなものは、宇宙から降りそそぐ放射線に比べれば、はるかに弱い放射線しか出さないからだ。心配するなら、海の放射線を心配するより、頭上の放射線を心配する方がいいだろう。圧倒的に多くの放射線が降りかかってくるからだ。
 なのに、朝日新聞は、ありもしない放射線の危険性を煽っている。「危険性がある」と嘘をついているわけではないが、誤解して騒いでいる人の尻馬に乗って、さらに大騒ぎを煽ろうとしている。
 だが、それによって困るのは、福島の漁業者だろう。彼らが騒げば騒ぐほど、風評被害が広がって、魚価は下がる。騒ぐかわりに「何も危険性はありません」と科学的に報道すれば、風評被害も減るだろうに、その逆のことをして、あえて風評被害を煽り立てている。

 報道人の使命は、真実を報道することだ。なのに、朝日新聞のやっていることは、その逆だ。「トリチウムの放出には科学的な危険性はない」という科学的真実を報道するかわりに、「放射線は何となく心配だから、微量の放射線であっても心配で仕方ない」という被害妄想患者の妄想をばかりを過大に報道する。そのことで、社会に風評を広げて、漁業従事者に風評被害をもたらす。
 震災 12周年で、福島の復興を助けるのではなく、福島の復興を邪魔しようとする。そのために、科学的真実とは逆の、素人の妄想ばかりを垂れ流す。

 汚染水の垂れ流しよりも危険なのが、朝日新聞の虚偽記事の垂れ流しだ。有害極まりない。



 [ 付記 ]
 朝日新聞は、トリチウムの放出に反対しているようだ。だが、放出しなければ、どうなる? 陸上貯蓄が続くことになる。だが、それはかえって危険だ。汚染水が満杯のまま、保管しきれなくなって、漏出するからだ。
 「放出しなければそれで済む」と思っているのだろうか? 「都合の悪いことは、見ないことにしていれば、それでなくなるぞ」「何もしなければ、問題は消えてなくなるぞ」と思っているのだろうか?
 いや、単に見失っているのだろう。頭が悪いので、頭隠して尻隠さずふうの論理になっている。ひどいものだ。



 【 関連動画 】




 
 福島にあるトリチウムに比べて、圧倒的に多大なトリチウムが、空から降りかかってきている、と教える。
 比喩で言えば、足元にある豆電球の光ばかりを気にして、「この豆電球の光のせいで日焼けしたら大変だ」と言いながら、空から降りかかる大量の光を無視する、というようなものだ。



 【 追記 】
 朝日のような文系の記者は、科学的真実を理解できないようだから、簡単に解説しておこう。
  ・ トリチウムというのは、ウラニウムとは違って、ただの水素である。ただし、放射線としてのベータ線を放出する。そこだけが水素と違う。
  ・ ベータ線というのは、放射線とは言うが、ただの電子線である。いわゆる「電気」と言われるものだ。それが電気コードのなかでなく空中を飛ぶだけだ。
  ・ ベータ線は、放射線ではあるが、影響はほとんどない。ガンマ線は透過力が強いが、ベータ線は透過力がほとんどない。空中でも数メートルぐらいしか飛ばないが、水中ではたったの2mm しか進まない。( → 出典
  ・ ゆえにトリチウムを海中に放出しても、まったく影響はない。
  ・ 「トリチウムが海中に残留して魚に吸収されたら?」という心配をしそうだが、海中に放出されたら、あっという間に稀釈されるので、残留する分は測定限界以下となる。心配は杞憂だ。
  ・ どうせ心配するなら、頭の上から降りかかってくる大量のトリチウムの心配をした方がいい。それこそ本当の「杞憂」になる。
  ・ ともあれ、放射線というものに過剰反応するのは馬鹿げている。放射線というのは、日常的にあふれているものだからだ。その真実を理解するべきだ。……比喩的に言えば、放射線というのは、虫のようなものだ。都会の人は虫を見ると大騒ぎしがちだが、「虫がいた! 大変だあ!」とあたふたとするのは、馬鹿げている。虫というのはもともと自然環境にはあふれている存在なのだ。その真実を理解するべきだ。
posted by 管理人 at 22:45 | Comment(2) |  放射線・原発 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2023年03月11日 11:45
 トリチウムの危険性について(本文と追記など)は、私も同じ理解です。しかしながら、

> [ 付記 ]
 朝日新聞は、トリチウムの放出に反対しているようだ。だが、放出しなければ、どうなる? 陸上貯蓄が続くことになる。だが、それはかえって危険だ。汚染水が満杯のまま、保管しきれなくなって、漏出するからだ。

 の部分のところ(放出すれば処理水の問題はほぼ解決するのか? 実態はそうなのか?)が、現在の心配の種になっているようです。

 そもそも、いわゆる「(ALPS)処理水」については、2018年9月に、朝日のスクープ的な報道がありました(以下URL)。

 https://digital.asahi.com/articles/ASL9X6HQ3L9XULBJ014.html

 この記事によると、「東京電力は28日、一部のタンクから放出基準値の最大約2万倍にあたる放射性物質が検出されていたことを明らかにした。今回分析した浄化されたはずの汚染水約89万トンのうち、8割超にあたる約75万トンが基準を上回っていたという。」となっています。
 つまり、(ALPSで)処理しきれているといいながら(濃度・量ともに)処理しきれていないのではないか、という指摘です。これについて、政府(経産省エネ庁)は以下のように言い訳?しました。

 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/osensuitaisaku01.html

 その言い分を要約すると、

 朝日の指摘は本当だが、いわゆる「処理水」には2種類あって、@本当にトリチウム以外の核種が取り除けたもの:「ALPS処理水」と、A処理途上のもの:「二次処理が必要なALPS処理水」だ。これらを総称して「ALPS処理水等」として公表していたので誤解を招いた(常套句ですね!)。今後は、言葉の定義を変更する。

 とのことです。それで、経産省は2021年4月に、ようやく言葉の定義を変更しました(以下のURL)。

 https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html

 これで初めて、上のレターに書かれているとおり、

 今後は、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することとします。

 と正式に変わったのですが、では、その「本当に環境に放出していい水」と、「一回処理はしたが二次処理が必要な処理途上水」はどのくらいの比率かというと、大体3:7くらいです。
 正確にいうと、先ほどの経産省エネ庁の広報記事には2019年12月31日の推定値が載っていて、これが28:72です。また、下のサイトでは最新のデータが載っていますが、これが34:66です。

 https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/alps01/

 まとめますと、たぶん朝日が言外にいいたいのは、

(1) 東電は前にも誤魔化していて、政府(経産省エネ庁)もそれに加担していた過去があるよね。実は、まだ公開していないウソがあるんじゃないの?

(2) 仮にそれはなくても、タンクにあるのは、本当に環境に放出していい水ばかりじゃないよね。そういう状態にまでした上で、放出のGOサインを待っているのではないよね。基準を満たさない水は、最近ずっと、基準以下の水の2倍くらいあるよね。処理が追い付いていないんじゃないの? そうなると、いつかは基準を緩くして、全部放出せざるを得なくなるんじゃないの?

 ということでしょう。
Posted by かわっこだっこ at 2023年03月13日 09:16
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