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新型プリウスは、車高が低くて、前面ガラスが傾斜していて、いかにもデザイン優先だ。そのせいで機能性が劣りそうだ。

この観点から、前に批判したことがある。「日光が座席に直射して、日焼けしそうだ」と。
ほぼ真上から降りかかる日光が、ハンドルや腕に直射しそうだ。これだと、手や腕は日焼けしてしまう。また、室内がまぶしすぎるせいで、顔も日焼けしそうだ。
( → 新型セレナ/新型プリウス: Open ブログ )
その後、現物を見たところ、この心配は不要だとわかった。たしかに前面ガラスは傾斜しているのだが、ガラスの上端が後方移動しているのではなく、ガラスの下端が前方移動しているのだ。これなら、屋根の面積は変わらないので、日焼けする心配はない。「なるほど」と思った。
では、それで万事解決か? いや、そんなことはない。上端部分では問題がなくなったが、下端部分に問題が生じるようになった。というのは、傾斜したガラスの全体があまりにも前方に移動したせいで、前方視界が悪くなったからだ。
このことは、多くの人が最初から懸念していたようだ。ネット上で「新型プリウス 視界」で検索すると、「視界が悪そうだ」という心配がたくさん見られる。
その後、実際に試乗した体験記の記事を見ると、次の評価が多かった。
「思ったほど視界は悪くない。ピラーは斜めに傾いているが、ピラーが細いし、ピラーの下の三角窓が広いので、意外にも視界はかなり良い」
このように、「思ったよりも視界は良い」という評価が多いので、特に問題はなさそうに思える。だが、本当にそうか?
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私が現実に新型プリウスの室内を見たときには、「いかにも室内が狭いし、前方視界が悪い」という印象だった。なのに、実際に運転した人の感想は、「思ったよりも視界は良い」という評価だった。第一印象と走行印象とは違うようだ。ではなぜか?
それを語るには、具体的な視界の画像を見るといい。下記だ。
→ ベストカーの画像
ここから、次の特徴がわかる。
・ ピラーが前方に伸びているので、前面ガラスの範囲は狭い。
(右下と左下が削られている感じだ。)
・ しかしかわりに、三角窓の範囲が広い。だから、死角となる範囲は少ない。
このことから、次の結論を得られる。
・ 高速で直進している限りは、特に何も問題ない。
・ 低速で住宅地を走っていると、急な飛び出しに反応しにくい。
特に、後者が重要だ。
低速で住宅地を走っていると、横から自転車や歩行者が急な飛び出しをすることがある。たいていは、車道の脇に出てくるだけで、車道には飛び出さない。とはいえ、運転している自分の車が、道路の脇の方を走っていると、飛び出した相手と接触しそうになることがある。つまり、人身事故だ。そいつはやばい。
これでヒヤリとすることはしばしばある。通常、ハンドルを中央側に切ったり、急ブレーキを踏んだりして、接触を避けるわけだが、「もうちょっとでぶつかりそうになった」という感じで、ヒヤリとした体験をもつ運転者は多いだろう。
また、歩行者や自転車の人にとっても、「もうちょっとで轢かれそうになった」と感じる人も多いだろう。
さて。こういうときに、自動車の運転手は何をしているかというと、「横から誰かが飛び出したな」と判定してから、ハンドルやブレーキを操作するのではない。「何かが現れたな」と感じると同時に、考えるまもなく、自動的に手や足が勝手に動いて、ハンドルやブレーキを操作している。それはほとんど反射的な動作だ。
これが問題となる。
このとき、視界に歩行者や自転車などの形が見えれば、反射的に手や足が動作をする。だが、視界に見えたものが、歩行者や自転車ではなくて、その一部分だけだとしたら、どうなるか? たとえば、こうだ。
・ 歩行者の肩から胸の部分だけが見えた。(顔や腰は見えない。)
・ 自転車のハンドル部分と人の腕の部分だけが見えた。(顔は見えない。)
こういうふうに部分的に見えることがある。特に、プリウスの三角窓のような場合には、人の顔がピラーに隠れてしまって、胴体しか見えないことがある。そんなとき、「それは人の姿だ」と認識して、とっさに反射的に運動をすることが可能だろうか? むしろ、よくわからないまま、瞬間的な反応が少し遅れてしまうのではないか? そして、そのコンマ1秒の遅れのせいで、人を殺してしまう可能性もあるのだ。
ここまで考えればわかるだろう。
前方視野については、「死角がなければいい」のではない。「顔が見えずに胴体だけが見える」というような「下半分だけの視界」では不十分なのだ。「横から急に現れる歩行者の姿がすべてきちんと見える」ということが大切なのだ。
その意味では、新型プリウスの視界は、完全に落第点である。「住宅街で事故を起こしやすい、非常に危険な自動車だ」と言える。「自分では見えているつもりだが、視界の一部が欠損しているせいで、反応が遅れてしまいがちになる」という問題が起こるからだ。
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実を言えば、視界の観点からは、「Aピラーはなるべく垂直であることが好ましい」と言える。たとえば、次の車のように。

日産セドリック(Wikipedia)
この車は、Aピラーが前傾するどころか後傾している。だから視界はとてもいい。こういう車があってもよさそうだ。(曲面ガラスを使うと実現できる。昔の車は実現できていたんだよね。)
現代でも、戦闘機は、曲面ガラスを使うことで、ピラーのないキャノピーを実現していることが多い。
ひるがえって、新型プリウスは、視界が悪い。まったく残念なことだ。人命軽視・安全性軽視という、トヨタの体質がくっきりと浮かび上がるね。「格好良くして、売れればいいんだ。人が死のうが、知ったこっちゃない。金、金、金」という、悪魔のような商魂。
[ 付記1 ]
外部サイトでも、新型プリウスのデザインを批判しているページがある。紹介しよう。
大きく傾斜したフロントピラーが視界に悪影響を及ぼすのではないかという懸念は、試乗でさらに高まった。運転者の頭に迫りくるように傾斜したフロントピラーは、真正面の前方視界にはそれほど影響を及ぼさないが、カーブでのすれ違いなどで対向車との距離感を掴みにくい。ことに道幅の狭い屈曲路でのすれ違いには神経を使った。
( → 【トヨタ プリウス 新型試乗】カーデザインは機能を満たさなければ意味をなさない…御堀直嗣 | レスポンス(Response.jp) )
この記事では、後方視界も批判されている。
試乗でより鮮明になったのは、後方視界の悪さだ。これまで、2代目から前型まで、リアハッチバックの傾斜をなだらかにしたプリウスの造形により、後方視界の悪化を補うため、リアウィンドウ下に後方を透けて見通せる窓が設けられていた。しかし新型では、それがなくなっている。このため、ルームミラーで確認できる後ろの様子が制約を受けている。
さらには、斜め左後ろのピラーのところから外を見通しにくくなったため、たとえば車道へ後退して出て行こうとしたとき、後続のクルマの接近をまったく確認できないのだ。これでは、不安で道路へ出ていくことができない。あるいは、勇気を奮ってアクセルを踏むしかなく、万一、障害物や人などに接触しないことを祈るのみだ。
いくら一目惚れするデザインを追求するといっても、カーデザインは絵画ではなく、工業デザインとして機能を満たしていなければ意味をなさない。そこを忘れた造形と感じる。
愛車とは、日々使って永い年月愛着を持てるクルマのことを言うのではないだろうか。一見格好がよくても、出かけることに不安をもたらすクルマに愛着を感じるだろうか?
外観や性能にいくら凝ってみても、混合交通という公共の道路で安心して移動の手助けをしてくれるクルマこそが愛車となって永く役に立つのであり、それを忘れたクルマは奇抜な存在でしかないのではないか。
なかなか厳しい批判だが、まっとうな正論だ。こういう厳しい評価を下すのが、評論としてのあるべき姿だ。
逆に、メーカーにおもねるような態度で、「新型プリウスの視界はとてもいい」と記すような評論もあるが、これは、評者の無能さを暴露するだけだろう。
→ 新型プリウスの後部座席は狭くない!視界も良好とデザインと使い勝手を両立できた理由を開発責任者にインタビュー|KINTO
※ よく見たら、これは KINTO の記事であり、トヨタとコラボしてるものであり、売り手の側の宣伝記事であった。つまり、報道の体裁を取った、広告だ。ほとんど詐欺であり、ひどいものだ。ほとんどだまされかけたよ。
[ 付記2 ]
次の批判もある。
4代目プリウスのCd値0.24から、5代目のCd値は悪化した0.27とはどういう事か。
5代目のCdA値は同等って、これだけ実用性を犠牲にしたのに、先代を超えてないって意味あるのでしょうか。居住性悪化だけの本末転倒なデザインになっています。
本来、ハイブリッドカーの燃費は空力で稼ぐものではなく、エンジンとモーターの総合性能で効率の良さをアピールすべきです。空力で稼ぐって、それでは全く意味が無いのではないでしょうか。
全高1420mmの数値は、後席が狭いと叩かれ、売れ行き不振となった「ホンダインサイトの全高1425mmを下回る低さ」であり、非常に狭い圧迫感を感じさせる、デザイン最優先の車高となっています。
Cd値は先代よりも劣り、何のためのデザインなのか、開発責任者の暴走が見て取れます。
メーターディスプレイ。
フロントガラスの上まで、はみ出し、邪魔なだけです。
ただでさえ、フロントウインドーが傾斜して視界が悪いのに、フロントウインドー上にハミ出す必要あるんでしょうか?。確実に迷走設計ですね。
リアドアハンドルの使い勝手全無視。
Cピラーに埋め込みのドアハンドルです。スポーツクーペならともかく、ファミリーカーにこのドアノブは無いでしょう。
子供や高齢者などを含めたファミリーユーザー層を完全に切り捨てたコンセプトです。
月販4300台が目標。
先代4代目の年間販売台数から、目標値を大幅に削減した数字となっています。
これは、メーカー自らニッチマーケットに絞ったと言えます。
( → 新型プリウスがダサイ、車高の低さで大失敗の予感 | 査定君のくるま情報 )
これもなかなか厳しい評論で、興味深い。
最後の販売目標からすると、売れ線狙いのデザインにしたわりには、売れ行きが鈍いと予想していうようだ。企画段階では売れるつもりだったが、営業の目から見ると「売れそうにない」と判定されたようだ。企画者の唯我独尊が過ぎたようだ。(それは先代プリウスと同じ。)
[ 付記3 ]
次の項目もある。後方視界の話。
→ 新型プリウスの視界ってどうなの? | いろんな車の左後方視界を比較してみました
新型プリウスは後方視界もひどく悪い、とわかる。
あまりにもひどいと自認しているので、「9万円の電子モニター式の室内ミラーを買え。それがあれば後方視界はわかる」とうそぶいているようだ。
しかし、その装置でわかるのは、真後ろだけだろう。斜め後方が見えない問題は解消されない。つまり、理屈にもなっていない。詭弁だ。ひどいものだね。
【 関連動画 】
最後の動画を見ると、住宅街での視界はかなり厳しいとわかる。
【 関連項目 】
先代プリウスのデザインについて。
→ プリウスは危険だ(テール・ランプ): Open ブログ
→ プリウスのデザインは分裂病: Open ブログ
→ https://bestcarweb.jp/feature/column/596997
趣旨は本項と同様だが、情報量は極端に少ない。1行分ぐらいの情報しかない。
Aピラーが立っていることは歩行者の安全への配慮の証であり、寝ていることは売らんが為のデザイナーのエゴに過ぎないとも。
三本氏はメーカーのエンジニアとは熱く語り合いましたが、デザイナーとは生涯縁がなかったのではないでしょうか?動く・止まる・曲がるという基本プラス視界と見切りの良さは自動車の必須要件であり、それらがデザインの犠牲になってはならないという信念がありましたね。
昨今のモータージャーナリストはデザイン志向に過ぎると思います。
商用車両はみなAピラーが立ってますね。
トラックもバスも軽トラも。
安全運行第一が使命の車では常識のことが、
一般車では常識ではないという
メーカーの非常識に消費者も気づくべきでしょう。
外見の格好しか言わないこのごろのモータージャーナリストたちはメーカーの営業マンか提灯持ちにしか見えません。