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太古の巨大なペンギンの化石が見つかった。150kg 以上もある。
ニュージーランドの海岸の岩から新種のペンギンの化石が2種発見された。そのうち1種は知られているものとしては過去最大級のペンギンで、体重は約154 kgと人間をはるかに上回る。
このペンギンは5950万〜5550万年前のものと推測されており、白亜紀末の5度目の大量絶滅の後に誕生したと思われる。
彼らはなぜそれほどまでに巨大化したのか?
( → 過去最大級の巨大ペンギンの新種の化石が発見される。体重なんと150kg越え : カラパイア )
ここには「なぜそれほどまでに巨大化したのか?」という疑問がある。同様の疑問は、他の記事にも見られる。
ペンギンの「巨大化」にはどんなメリットがあった?
( → 重さ150キロを超える「史上最大の新種ペンギン」を発見! - ナゾロジー )
こう疑問を出した上で、次のように答える。
「ペンギンの巨大化には、体を重くすることで潜水に適応したり、冷たい海中で体温を維持するなどのメリットがあった」
巨大化はおそらく、飛行能力を失った直後に水中環境に適応するための自然選択だったのでしょう。
疑問は出さなくとも、「巨大化」という概念で語る記事もある。
米ブルース博物館のダニエル・セプカ博士は「巨大化したペンギンの祖先はニュージーランドから世界の各地に広まることができたはずだ」としている。
巨大化したペンギンの祖先が真っ先に新たな環境に進出したらしい。
( → まるでゴリラ?巨大ペンギン化石 NZで発見、6千万年前に生息 体重150キロか:朝日新聞 )
以上のいずれも、「巨大化」というふうに語っている。
だが、私はそれとは逆の結論を下そう。「ペンギンは、巨大化したのではなく、縮小したのだ」と。つまり、こうだ。
「鳥類は、もともとは巨大な地上性の恐鳥類だった。それは空を飛ぶことができない鳥類だった。それが小型化して、走鳥類(ダチョウなど)が誕生した。それがさらに小型化して、少しだけ飛べる鳥類であるキジ類が誕生した。(この段階で竜骨突起が生じた。)その後、空を飛べる一般的な鳥が誕生した。そのうちの一部は、飛ぶ能力をなくして、水中を泳ぐペンギンとなった」
上のシナリオでは、ペンギンは巨大化したのではない。もともと巨大なペンギンしかいなかったのだ。順序で言えば、「巨大な別の鳥」がいて、それが「巨大なペンギン」となり、さらに「小さなペンギン」となった。そこには「巨大なペンギン → 小さなペンギン」という進化だけがあった。「小さなペンギン → 巨大なペンギン」という進化はなかった。従って、「ペンギンが巨大化した」という事実はなかったのだ。
当然ながら、「ペンギンはなぜ巨大化したのか?」という質問は無意味である。ペンギンは巨大化していなかったからだ。
また、「ペンギンの巨大化」という概念そのものが無意味である。ペンギンは巨大化していなかったからだ。
かわりにあったのは、「巨大な鳥のペンギン化」である。何らかの巨大な鳥があって、それがペンギン化した(水中を泳ぐ鳥になった)のである。いわば、クジラではない動物がクジラになったように。
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では、ペンギンではない鳥(ペンギンの元になった鳥)とは、何なのか? 候補としては、二通りある。
・ 地上性の鳥 (恐鳥類)
・ 空中性の鳥 (飛ぶ鳥)
そのどちらか? それは、ペンギンに竜骨突起があるかどうかを見ればわかる。すると、「竜骨突起がある」とわかる。
左からK. フォルディセイ、P. ストーンハウセイ、コウテイペンギン(白い部分が見つかっている骨格)
/ Credit: University of Otago ? Paleontology powerhouse honoured by former students(2023)
出典:ナゾロジー
竜骨突起がある空には、先祖は地上性の恐鳥類ではなく、空中性の飛ぶ鳥であったはずだ。そしてそれはサイズが巨大であったはずだ。飛ぶといっても、翼をバタバタと はばたかせるというよりは、滑空するようなものだっただろう。アホウドリのように。
アホウドリは、現存では最大級の鳥(飛ぶ鳥)だが、サイズは限定的だ。一方、太古の鳥には、より大きな鳥(飛ぶ鳥)がいたはずだ。そこから分岐する形で、「地上を歩く鳥」が出現し、さらにそこから「水中を泳ぐ鳥」が出現したのだろう。(巨大なサイズで)
なお、(巨大なサイズで)「地上を歩く鳥」としては、ドードーもいる。すでに絶滅したが。
→ ドードー ( Wikipedia )
Wikipedia による画像もある。
【 関連項目 】
→ 走鳥類とドードー: Open ブログ
→ 恐鳥類と走鳥類: Open ブログ
→ 走鳥類は翼を失った?: Open ブログ
【 関連サイト 】
→ 巨大コンドルは170kmを「1回も羽ばたかず」に飛べる - ナゾロジー
【 追記 】
文中に、次の記述があった。
「ペンギンの巨大化には、体を重くすることで潜水に適応したり、冷たい海中で体温を維持するなどのメリットがあった」
巨大化はおそらく、飛行能力を失った直後に水中環境に適応するための自然選択だったのでしょう。
これは「ペンギンが巨大化した理由」だが、この理屈は成立するまい。雁にこれが成立するなら、現存のペンギンは「小型なので不利」ということで絶滅しており、巨大なペンギンだけが生き残っているはずだからだ。
一方で、「クジラは巨大化すると有利」という原則が成立していて、多くのクジラが非常に巨大化した。
では、ペンギンは小型の種が生き残り、クジラは巨大な種が生き残ったという、両者を区別する理由は何か? たぶん、次のことだろう。
「クジラはずっと水中にいるので、巨大化しても問題ない。ペンギンは原則として地上にいて、餌をとるときだけ水中に潜るので、巨大化すると問題がある。体が巨体だと、水中から陸上に上がることが困難だからだ」
元記事 には、「巨大ペンギンが砂浜に上陸する」という想像図が描かれているが、南極には砂浜なんかは存在しない。すべてが氷床だ。海中から氷床に上がるには、体が巨大化していては困難だ。ゆえに、巨大化は不利なので、南極では巨大ペンギンは生存できないのだ。
「巨大化した方が有利だった」(だから巨大化した)という推定は、成立しないのである。逆に、「巨大ペンギンは不利だった」(だから巨大ペンギンは絶滅した)と見なすべきだろう。
※ 巨大ペンギンは、南極にいたのではなく、ニュージーランドにいた。だから、上の想像図は間違いではない。だが、ニュージーランドでは一時的には存在できても、やがては有袋類が発達するので、有袋類に食い殺されてしまったのだろう。
※ 住みやすい温暖な地は、ライバルが多いので、生き残りにくいのだ。逆に南極は、住みにくいので、ライバルが少ないから、(小型)ペンギンは生き残れた。しかも、たいていのライバル(有袋類)は、ニュージーランドから南極まで泳ぐことができなかった。
「ペンギンが巨大化した理由」の否定。