中国からのミサイル攻撃を受けると、日本の戦闘機は甚大な被害を受ける。では、どう対処するか?
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( ※ 本項の実際の掲載日は 2023-02-17 です。)
中国からのミサイル攻撃を受けると、日本の戦闘機は甚大な被害を受ける。前項では「90%が地上で破壊されて、壊滅的な被害を受ける」と記したが、最後に訂正したように、これは不正確だった。「全機の 90%が地上で破壊される」のではなく、「破壊された機数のうち、 90%が地上である」(残りの 10%は空中である)という意味であるようだ。
しかしそれでも、「被害数の 90% が地上である」という事実は看過しえない。いくら「ステルス機だから空中戦では優位だ」と誇っていても、地上で駐機している最中に破壊されてしまっては元も子もない。ステルス機には重大な穴があることにある。(そこが見過ごされていた。)
では、どう対処すればいいか? 前項では「ダミー(デコイ)をたくさん用意する」という方法を用意した。
しかし、これだけでは済まないだろう。敵がミサイルの機数を圧倒的に増やせば、ダミーもろとも、大多数の戦闘機が破壊されかねない。もっと根源的な対策が必要だ。それには、どうすればいい? 困った。
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「攻撃は最大の防御なり。ゆえに、反撃力としての長距離ミサイル(射程 1500km程度)を、たくさん配備する」
一方、現状で自衛隊が採用している戦略は、こうだ。
・ イージスシステムの配備
・ 巡航ミサイルの配備
だが、これらの方針は駄目だ。かわりに、長距離ミサイルを配備するべきだ。その理由を以下で示す。
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まず、現状の戦略は駄目だ。
(1) イージスシステム
これが駄目だということは、これまで何度も述べてきた。敵の飽和攻撃であっさり無効になるからだ。このことについて、政府もようやく気づいてきたようだ。
「北朝鮮が(数で相手の対処力を超える)飽和攻撃を訓練しているのは深刻だ。ミサイル防衛で対応しきれない。抑止力を高めるために反撃能力(敵基地攻撃能力)が早く必要だ」
( → 政府、長射程ミサイルを量産化 極超音速も開発へ - 産経 )
お馬鹿な政府も、ようやく気づいてきたようだ。(そのわりにはイージスシステムの配備を中止するとは言わないのが駄目だが。)
(2) 巡航ミサイル
ステルスでなければ撃墜されやすいので、中国向けには無効である。また、コストが高いのも難点だ。コストが3倍なら、配備できる数は3分の1になる。コスパが悪すぎる。
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そこで、代替策として、「長距離ミサイルを配備する」という案が、政府方針にも出てきた。これは本項の方針と合致する。
他国への抑止力を持つ上で中心的な役割を担う長射程ミサイルについて、防衛省の10年先までの見通しが明らかになってきた。当面は海外産を活用するが、射程1千キロ以上に改良した国産ミサイルを量産化する。
( → 政府、長射程ミサイルを量産化 極超音速も開発へ - 産経ニュース )
「ほう。ならば本項と同じだな。問題ないな」と思う人が多そうだが、さにあらず。政府方針はこうだ。
最大のポイントは中国大陸まで収める射程1千キロのミサイルの確保だ。
国産の「12式地対艦誘導弾」は百数十キロ程度のため、1千キロ以上に延伸した改良型の配備を8年度以降に目指す。
( → 政府、長射程ミサイルを量産化 極超音速も開発へ - 産経 )
これでは全然ダメだ。理由は二つ。
第1に、射程が 1000km では全然足りない。仮に九州に配備するとして、「九州・上海」間の距離は、850km ぐらいだから足りるが、「九州・北京」間の距離は、1400km ぐらいだから足りない。北京にまで脅威を与えるには、どうしても 1500km は必要だ。
第2に、「12式地対艦誘導弾」を製造するのは、三菱重工だが、この会社にはミサイルの技術がろくにない。先に MRJ だ大失敗したという経歴のある駄目会社だ。こんな駄目会社に日本の命運を委ねるというのでは、軽薄のそしりを免れない。
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このうち、後者が問題だ。三菱重工なんかに委ねては駄目なのだ。
では、どうすればいいか? わが国で長距離ミサイル技術を持つ会社は、一つしかない。それは、固体ロケットを長年作っている会社である IHI だ。
そもそも、長距離ミサイルは固体ロケットとほぼ同じ構造を持つ。弾頭の搭載物が観測機器でなくて爆発物である、という違いがあるだけだ。その固体ロケットの開発は、歴史的には日産自動車が続けてきたが、この事業部門は、 IHI に売却されて、今では IHI が固体ロケットの開発と製造を続けている。その技術もある。一方、三菱には固体ロケットの技術はあまりない。MRJ でも失敗したという経歴があるぐらいだ。ならば、長距離ミサイルの開発は、固体ロケットの技術のる IHI に任せるべきだろう。
なお、H3 ロケットで固体ロケットが不作動だった、という問題が生じた。この固体ロケットは IHI 製だろうが、固体ロケットもけっこう技術的に難しいようだ。IHI に任せれば万全だ、というほど安直でもないようだ。であればこそ、きちんと IHI に任せて、固体ロケットも長距離ミサイルもいっしょに高性能化して開発するべきだろう。
逆に、宇宙ロケットは IHI にして、長距離ミサイルは三菱にする、というのでは、少ない予算がさらに2方面に分割される。これでは、「あぶはち取らず」「二兎を追うものは一兎をも得ず」となりがちだ。
「中国に対抗するために、長距離ミサイルを配備する」という政府の方針は、基本的な方向は間違っていないのだが、具体的な策は、開発元の選定を間違えているので、最終的には失敗になりかねない。このままだと、MRJ の二の舞になりかねない。
※ ついでだが、日本の「 10式戦車」は、軍事オタクの間では「すごい、すごい」と自賛されてきたが、現実には、「ドイツのレオパルト2よりもずっと劣る」という評価が、最近になってバレてしまった。開発費をろくにかけていないという資金の問題がはっきりと発露してしまったわけだ。長距離も同様だろう。ロケット技術のある IHI に任せずに、爆弾技術のある三菱重工に委ねても、肝心のミサイルとしての性能がおぼつかないので、開発は相当に無駄がで蝋だろう。IHI がとっくに開発している技術を、これから莫大な式を投入して開発することになる。ものすごい無駄が発生することになる。狂気の沙汰だ。
※ どうしてそうなった? 理由は電通と同じ。三菱重工は莫大な賄賂を出すが、IHI や日産や博報堂みたいな会社は、莫大な賄賂を出したりしない。だから、電通と三菱重工ばかりが、いつも巨額の受注をする。

【 関連サイト 】
→ イプシロンロケット打ち上げ失敗 日本が宇宙ビジネスに乗り遅れないためには NHK解説委員室
IHI と JAXA は、固体ロケットのイプシロンロケットでも失敗が続いてきた。日本の固体ロケット開発は、研究費も体制も不足気味だ、と言える。ここで、足りない金をさらに三菱重工と分けあったら、もっと悲惨になりそうだ。ここは腹をすえて、開発を IHI に一本化するべきだろう。
[ 付記 ]
長距離ミサイルが北京を狙う必要があるのは、なぜか? 北京に軍事基地があるからではなく、北京に首都機能があるからだ。ここをミサイルで反撃できるということを示しておけば、中国としては、報復を恐れて、日本に戦争を仕掛けることが困難になる。……これはつまり、戦争の「抑止力」になるということだ。
中国が台湾侵攻に際して、沖縄や九州の日本航空機( F-35 )をミサイルで破壊することはできる。だが、その場合には、日本の長距離ミサイルがお返しとして、中国の各地や北京を攻撃・破壊することができるのだ。そうわかっていれば、中国は先制攻撃をしにくくなる。
もう一つ、別の効果がある。上記のことがあるので、中国としては、長距離ミサイルが攻撃の最大目標となる。戦闘機よりも何よりも、日本の長距離ミサイルが攻撃目標となる。とすれば、その分、中国のミサイルを引きつけることができるので、他の部門の被害を減らす効果が生じる。具体的には、日本の戦闘機や首都機能や原発へのミサイル攻撃を減らす効果が生じる。
このような効果は、「他の目標の身代わりとなって敵ミサイルを引きつける」という効果である。これを「身代わり効果」と呼んでもいいだろう。……これはつまり、イージスシステムと同等の結果をもたらす、ということでもある。それも、格安に。(この件は、前項でも述べたとおり。前項の 【 関連サイト 】 の箇所で。)