2023年02月12日

◆ 保育所でボロ儲け

 政府は保育所に莫大な補助金を出している。だが、その金は保育所の所有者の私腹に入る。公金をちょろまかして、ボロ儲け。

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 少子化対策のために、政府は保育所に莫大な補助金を出している。だが、その金は経営者の私腹に入る。保育士や父母のために使われるのではなく、経営者の私腹を肥やすために使われるのだ。東京都に情報公開を請求した人が、その実態を報告している。
 《 役員は報酬数千万円、保育士は300万円台…独自調査で見えた、保育運営会社「本部経費13億円」の実態 》
 東京都に情報開示請求を行うと、保育運営会社が本部経費として都内の認可保育園からいくら運営費を回したのかという実態が、初めて明らかになった。
 「さくらさくプラス」は株式を上場しているため、有価証券報告書を見ると役員報酬の合計額が分かる。同社の2022年7月期の有価証券報告書によれば、役員3人の報酬は8500万円となっている。単純計算で一人当たり約2800万円の報酬となる。
 ひとつの保育園から年間2500万円前後の期末残高を取り崩して本部に資金移動しているケースが多かった。
 単純計算ではあるが東京23区は最大で約565万円が公費から出ることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない。
 都が公開する同社傘下の認可保育園の賃金実績を集計すると、2019年度の実績では常勤保育従事者の平均賃金が319万円だった。大筋としては、その差額の分が巡り巡って、流用されることになる。
 都内にある47ヵ所の認可保育園から前年度の期末残高から合計で約10億円を取り崩して本部経費に充てていた。

 グローバルキッズ社は2020年度に、都内84ヵ所の認可保育園から合計で約11億8000万円を本部経費に回していた。
 グローバルキッズ傘下の認可保育園の常勤保育従事者の年間賃金を見ると、2019年度実績で平均361万円だった。

 現在、保育園の年間収入の4分の1もの流用が認められている。
 保育園の収入の大半は人件費。それを年間収入の4分の1も流用できてしまう「委託費の弾力運用」を見直すべきだ。
( → (小林 美希) | 現代新書 | 講談社

 要点は下記だ。
  ・ 保育士1人に、年間 565万円が公費から出る。(人件費)
  ・ 実際に保育士に支払われる金はずっと少ない。
   ( 319万円、361万円、381万円という例)
  ・ 差額は本部に流れる。差額の流用が認められている。


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 以上で指摘されていることは大事だが、私の目から見ると、指摘は甘すぎる。重要な点が二つ抜けている。
  ・ 公費以外にも父母の払う保育料がある。その分も保育園の収入となる。
  ・ 収入で利益を得ているのは、経営者よりも資本家だ。


 特に、後者は重要だ。
 まず、経営者の分はどうか? 上記記事によると、「役員3人の報酬は8500万円となっている。単純計算で一人当たり約2800万円の報酬となる」とのことだ。だが、会社全体の園児数を見ると、「85ヵ所、4458人」とのことだ。こんなに多数の園児を預かる会社ならば、従業員数も数百人になるだろうから、「役員3人の報酬は8500万円」というのは、会社規模からして不当だとは言えない。つまり、経営者の分は、特に問題視しなくていい。
 問題は、資本家に回す分だ。それはどれだけか? 有価証券報告書を見ようとしたが、会社が公開しているのは 2023年の分だけだ。そこに掲載されている会社利益はとても小さい。売上高に比して利益の額があまりにも小さい。
 そこで「ほんとかよ?」と私は疑った。「もしかしたら、コロナのせいで、今年は所得が激減しているのでは? ならば、過去の分を調べればいい」
 そう思って、調べてみる。すると、過去の有価証券を記載しているサイトがあった。
  → 株主プロ 【 さくらさくプラス (7097) 有価証券報告書一覧ページ 】

 そこから 2018〜2020年の分を抜粋すると、こうだ。


sakurasaku.gif


 2018年には、売上高比の経常利益率は 23% だ。親会社に入れる分の利益は 11% だ。普通の会社の利益率が 3〜5% であるのに比べると、圧倒的に高い。ボロ儲けしているので有名な NTT Docomo や au でさえ、20%ぐらいのことが多かったので、スマホでボロ儲けしているケータイ会社を上回るボロ儲けだと言える。
 そして、これほどにも保育園でボロ儲けができるのは、経営者が優れているからではなく、(政府や自治体が払う)公金をかすめ取っているからだ。いわば、公金を盗んでいるようなものだ。(その金は本来は保育士に支払われるべき金だから、実質的には保育士から盗んでいるのも同然だ。)

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 さて。実を言うと、この問題は、本サイトでも前に指摘したことがある。下記項目だ。
  → 保育園への補助金を廃止せよ: Open ブログ

 ここでは、「保育園に莫大な補助金を出しても、経営者の私腹に入るので、補助金を全廃せよ。かわりに父母に金を払え」というふうに指摘した。
 特に、次の箇所が重要だ。
 こうして貯め込んだ金は、どこへ行くのか? もちろん、私腹だ。

> 社会福祉法人の理事長は給与額を自分で決めることができる。こうして「合法的に私腹を肥やす」(認可保育園関係者)のだ。

 つまり、保育士の給与を引き下げて、金をたっぷり貯め込んだあとは、その金を身内と自分への給与の形で、たっぷりと私腹を肥やすわけだ。

 ここで述べたのは、(個人経営に近い)小規模な保育所の場合だった。だから経営者への報酬という形で私腹に入れる。
 一方、冒頭記事のような大規模な保育所の場合には、「利益を親会社が吸い上げる」ことにして、さらに「配当金に回す」という方法を取れる。この場合は資本家への配当という形で私腹に入れる。
 ※ 「配当金に回す」という方法だと、所得には分離課税で 15% の税金しかかからないので、高率の所得税率を回避することができる。

 ともあれ、こうやって、滅茶苦茶にボロ儲けできるわけだ。それも、国・自治体の金を受け取って、保育士に回すはずの金をちょろまかす、という方法で。
 こんなことが合法的に認められているのだから、政府の政策はとんだザル政策であるとわかる。
 結局、国や自治体は、「少子化対策のため」と称して、せっせと保育所予算を投入しているのだが、その金は、保育士に入らず、経営者や資本家の私腹に入っているのだ。だからあちこちで「保育士不足」という惨状が発生する。



 【 関連サイト 】
 熊本県阿蘇市にある認定こども園で“異例の事態”が起きました。保育士など、ほとんどの職員が退職する可能性があるといいます。
 阿蘇市や関係者によると、この園には保育士など職員14人がいて、そのうち1人がすでに退職。11人が3月末に退職する予定だということで、残るのは2人だけに。退職の理由に挙げているのが、新体制となった運営側への“不信感”だといいます。
( → 運営側への「不信感」広がり…保育士“一斉退職”の意向 保護者からも心配の声 熊本・阿蘇市







 ※ では、どうしたらいいのか? ……という話は、次項で。
 
 
posted by 管理人 at 23:17 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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