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日産の EV
日産はルノーとの提携関係を改訂した。
→ 日産とルノー、株式15%相互保有で合意 3社アライアンスの新たな取り組みを発表
→ ルノー・日産・三菱自動車、提携の新たな章を開く
新たな提携関係を構築するとして、この先、どうなるのか? とりより、どうするべきなのか? 両者ともよくわかっていないようだ。
報道によれば、ルノーは電気自動車や自動運転の技術開発で遅れているので、世界トップクラスの日産の先進技術を供与してもらいたいらしい。そのために「株式保有率を低下させろ」という日産の主張を呑み込んだらしい。背に腹は代えられないので、虎の子の日産株を差し出したわけだ。
とはいえ、これでは、日産としては技術を出すばかりで、一方的に損をすることになる。技術料をもらうとしても、あまりお得な話ではない。
一方で、「ルノーも日産もともに弱小メーカーであり、トヨタや VW や テスラには会社規模や利益額で大幅に劣っている」という難点を抱えている。研究開発費でも大きく見劣りする。ルノー・日産・三菱が束になると、台数だけはトップクラスだが、売上げ・利益・研究開発費では、とうていトップクラスとは言えないのだ。こうなると、EV 開発の先行きも見通しが暗い。いったい、どうなるのか? どうすればいいのか?
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そこで、とりあえず、「私ならこうする」という案を示しておこう。
EV や自動運転の技術開発は、日産に統合するべきだ。特に、パワートレーンの部分はそうだ。EV のモーター・電池・駆動部分については、設計も研究開発も、日産に全面的に委ねるべきだ。ルノーは一切、研究開発を停止するべきだ。要するに、ルノーは金だけを出して、研究開発は日産に統合する。日産は、ルノーの研究開発費ももらって、大規模な研究開発費を投入する。ルノーの EV 開発担当者は、日産の社員に転籍する。
このようにして、「開発組織は一本化して、日産の開発費はほぼ倍増とする」(かわりにルノーの開発費はゼロにする)というのが、あるべき姿だ。このようにしてこそ、他の大メーカー(トヨタや VW やテスラなど)と対抗できる。逆に言えば、このようにするのでなければ、日産とルノーが提携する意味はない。
ルノーとしては、日産の親会社としての位置を捨てて、対等の立場も捨てて、日産の軍門に降ることになる。それはルノーのプライドが許さないかもしれない。もしそう思うのであれば、日産はルノーとの提携を解消するべきだ。「統合せよ」「日産の軍門に降れ」という条件を突きつけて、「受け入れなければ提携解消」と告知するべきだ。
なお、これを聞いたルノーは、プライドを傷つけられるだろうが、実利としては「お得だな」と感じるはずだ。なぜなら、従来通りの研究開発費を払うだけで、日産の技術をもらうことができるからだ。仮に、受け入れずに、自力開発すれば、従来通りの研究開発費を払いながら、自社のポンコツ技術を使うことになる。それは最悪だろう。(倒産するしかない。)
というわけで、プライドを傷つけられるにしても、ルノーとしてはそれを受け入れるしかないのである。
なお、EV のパワートレーンと自動運転の技術を除いた部門については、ルノーが独自開発してもいい、としよう。
EV のシャシー(プラットフォーム)については、事実上、統合するしかないだろうが、これは従来通り、両者の技術者が別個に担当しながら、すりあわせて共通化すればいいだろう。つまり、ルノーの技術部門が解消されるわけではない。
一方、商品としての自動車の外装・内装(デザインなど)は、両者が完全に別個に担当するべきだ。日産のサクラと三菱の eKクロスみたいな関係でいい。設計は日産でも、商品化や生産は三菱が独自に担当してもいいのだ。
以上のような「設計の一本化」を基本として、「商品化は別個に担当する」というふうにするのが、日産とルノーのあるべき姿だろう。そうでなければ提携の意味がない、とも言える。
トヨタの EV
トヨタは新たな EV 戦略を公表した。2026年を目途に、新世代 EV を投入するそうだ。EV 専用のプラットフォームもそのとき投入するそうだ。
2026年を目標に、設計や生産方法などを見直した次世代の電気自動車(EV)を投入する方針を明らかにした。モーターなどを載せる基礎部分「車台」や電池、生産方法などをEVに適した効率的な形に改め、高級車ブランド「レクサス」向けに発売したい考えだ。
( → トヨタ、26年に次世代EV 設計見直し、「レクサス」で:時事ドットコム )
呆れる。VW や 日産がとっくに実現していることを、トヨタは 2026年まで実現できない。しかも、実現するとしても、トヨタ本体ではなく、少量生産のレクサスブランドで実行するだけだ。あまりにもペースが遅い。
とはいえ、だからといって「 2025年や 2024年に早める」というわけにも行かない。急いでやれば、拙速となり、中途半端な未完成品が出るだけだ。今から始めるとしたら、どうしても 2026年の発売になってしまうのだ。……とすれば、「今から始める」という経営判断の遅れが致命的だった、と言える。今さら決断しても、すでに手遅れなのだ。
比喩的に言えば、癌を放置して手遅れになってから、「癌を治してください」と頼むようなものだ。医者としては、「手遅れになる前に来るべきでしたね。そうすれば手術で助かったのに」と言うしかない。「あなたの判断が遅すぎた。自分で自分を殺したも同然だ」と。
思えば、トヨタは1年ほど前に、「 EV 推進に転換」という方針を大々的に示した。(2021年12月14日)
本サイトでも言及した。
→ トヨタが EV 推進に転換: Open ブログ
このとき「 EV を 16車種も発売します。ほれ、このとおり、16車種をお見せします」と公開した。
ところがその大半は、ただの粘土製のモデルであると判明した。
→ トヨタの EV モデルは粘土製: Open ブログ
だが、モデルが粘土製であっても、最終的にはそのモデルが発売されるのであれば、まだ良かった。
ところが現実には、以上の 16車種は「お蔵入り」になることが決まったも同然だ。なぜなら、以上の 16車種は「従来のプラットフォームの上に設計された車種」だからだ。一方、トヨタが 26年以後に出すのは「 EV 専用のプラットフォームの上に設計された車種」となる予定だ。それも、レクサスブランドだ。
そのなかに、上の 16車種が含まれている可能性は、まずない。上の 16車種は、もはや「お蔵入り」になったと考えていいだろう。
「天下のトヨタが大々的に発表したことだから、信じていいだろう」と思った人も多いだろうが、トヨタの前言は、あっさり撤回されたことになる。羊頭狗肉も同然だ。
なお、クラウンが4車種出るというのも、まず実現不可能と見るべきだろう。現行の「クラウン・クロスオーバー」で打ち止めになりそうだ。
今後のトヨタは、2026年の EV の開発に取りかかりになることになりそうだ。それに全力集中で、他のことをやる余裕はあるまい。ここ数年に豊田章男・社長がやっていたことは、ただの無駄な足掻きにすぎなかった、と言えそうだ。
(さっさと辞任すれば良かったのにね。せめて1年前に、16車種を出すと口にした時点で、辞任するべきだった。画像では、U型に手を上げているが、「お手上げ」になっていると見なすべきだろう。だから、さっさと辞任するべきだったんだよ。)