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少子化と結婚
政府がこれまで取ってきた政策は、「児童手当」や「保育所の充実」だった。(前項で述べたとおり。)
その意味は、「結婚したあとで出産する意欲がないようなので、出産する意欲を増大させる」というものだった。
しかし、結婚した世帯に限れば、出生率はあまり低下していない。2.2 から 1.95 に低下したが、極端な少子化が起こったというほどではない。

出典:厚労省
ではなぜ、(既婚者以外を含む)国民全体では、極端な少子化が起こっているのか? それは、未婚者の割合が増えているからだ。

出典:厚労省
つまり、少子化の原因は「結婚したのに子供を産まない」のではなく、「そもそも結婚しないから子供を産む条件が満たされない」のである。
これはどういうことかというと、政府は次のことを理解していないのだ。
「子供を産むためには、セックスが必要である」

出典:Renaissance painting
換言すれば、こうだ。
「子供を産むためには、男と女の双方が必要だ。双方が子供を生むための行為をすることによって子供は生まれる」
換言すれば、こうだ。
「男や女が単独で子供を産むことはない。つまり、男と女が結びつく関係(結婚という関係)が、出産の前提となる」
この前提が満たされていないことが、少子化の原因なのだ。
※ 政府のこれまでの対策は、いずれも既婚者向けの対策だった。しかし、既婚者向けの対策をしても、効果はないのだ。なぜなら既婚者はどっちみち平均して子供二人をもつことになるからだ。どうしても既婚者向けに対策をするのならば、「子供二人から子供三人に増やす」ということに絞って対策するべきだ。つまり、三人目の子供だけに限って、超大幅な優遇策をとるべきだ。例。児童手当は三人目だけに出す。金額は月 10万円。他は出さない。
※ だが、既婚者向けの対策よりは、未婚者向けの対策こそが本道だ。以下で示す。
原因は晩婚化
未婚率が上がっていることについては、「結婚が遅くなっているからだ」(晩婚化しているからだ)という認識もできる。本サイトでも前にこう記したことがある。
昔は、女性は 23歳ぐらいで結婚して、2〜3人ぐらいの子供を産んでいた。23歳から 33歳まで、10年間もあったから、多くの子供を産むことができた。しかるに今や、女性は 30歳ぐらいで結婚するのがざらである。
平均初婚年齢は、どのくらいか?
2020年のデータでは、「夫31.0歳、妻29.4歳」である。
2022年のデータでは、「夫31.2歳、妻29.6歳」である。
こうなると、妊娠可能期間が減るので、少子化になるのは必然的となる。つまり、少子化の真因は、晩婚化なのである。
( → エロは世界を滅ぼす: Open ブログ )
では、晩婚化の理由は何か? 上記項目では、こう記した。
では、人々はなぜ晩婚化していくのか? ここで、私が思いついたのは、こうだ。
「人々が結婚するのは、繁殖活動をするためである。繁殖活動とは、性行為をすることだ。性行為をする欲望は、特に男では強い。何が何でも性行為をしたい、と思うほどにも強い。特に、若い時期にはそうだ。
ところが、昔と違って今は、その欲望が ITによって満たされてしまう。無料の AV 動画があふれているし、無料のエロ漫画もあふれている。おまけに、アニメにはかわいい萌え絵の少女があふれて、非モテ男性を疑似恋愛にも誘ってくれる。……こうなると、精神的にも肉体的にも欲望が満たされてしまうので、現実女性と交際して性行為をしようという意欲が薄らぐ」
要するに、男たちはネット上のバーチャル女性に抜かれてしまうのである。
というわけで、
「エロは世界を滅ぼす」
という状況が成立しつつあるのだ。
これはいかにも、面白おかしい理屈なので、眉に唾を付けて呼んだ人も多いだろう。私としても冗談半分で書いたわけだが。
一方、自民党の麻生太郎は、「少子化の原因は晩婚化である」と、本年になって言明した。(つい先日のことだ。)
→ 自民・麻生副総裁 少子化の最大の要因は“晩婚化”と指摘
これは、政治家の発言としては「無責任」のそしりを免れない。政府の政治責任を無視しているからだ。そのせいで、各界で批判を浴びた。
とはいえ、晩婚化という事実そのものはあるので、このことは否定できないように思えた。
原因は非婚化
ところが新たに統計的な詳細を記して、学術的に批判する見解が現れた。こうだ。
確かに平均初婚年齢の推移をみれば、皆婚時代だった1980年には夫27.8歳、妻25.2歳だったのに対して、2020年には夫31.0歳、妻29.4歳となっており、これだけ見れば、晩婚化していると思うかもしれない。しかし、それだけで晩婚化と断ずるのはあまりに短絡的である。
晩婚化としてしまうと「初婚の年齢が後ろ倒しになったので、いずれ結婚はするだろう」という安易な誤解を招く。
男性は25-34歳、女性は25-29歳での初婚達成率が激減しているが、かといって晩婚化しているかといえばそうでもない。実は35歳以上でみるとほぼ変化はないのだ。
「晩婚化」というのであれば、少なくとも中高年の初婚達成率が上昇していないとおかしい。しかし、20代までの初婚達成率の低下に対して、それが決して30代以降に後ろ倒しになったわけではなく、35歳以上も40年前とたいした違いはないわけで、これは「晩婚化」ではなく、むしろ、「若者が若者のうちに結婚できなくなったから」だと解釈できる。
( → 麻生副総裁のいう晩婚化など起きていない。起きているのは若者が結婚できない状況である(荒川和久) )
これは重要な指摘だ。
「晩婚化」という言葉だけを聞くと、「結婚率(未婚率)は同じままで、結婚する時期だけが遅くなった」という意味で理解しやすい。つまり、「グラフの山の形は同じままで、グラフの全体が右側(年長側)に移動しただけだ」と。しかし、それは正しくない。
現実に起こったのは、「晩婚化」ではなくて、(20代の)「非婚化」だった。つまり、グラフの左半分ばかりが極端に押し下げられたので、結果的には平均値が右側に移動したが、これは、平均値の右側移動として理解するべきことではない。むしろ、全体が大きく引き下げられたと理解するべきなのだ。(ただし右側に限っては、あまり引き下げられなかった。)
ともあれ、ここにあるのは「全体の晩婚化」ではなくて、「20代の非婚化」なのだ。それが正しい認識だ。「晩婚化」という言葉は、間違っているわけではないのだが、正確さが不足している。「晩婚化」というよりは「非婚化」(未婚率の上昇)という言葉の方が正しく、さらに「20代の非婚化」という言葉ならばさらに正しくなる。
これが正確な認識だと言える。
非婚化の原因
少子化の本質は「20代の非婚化」である、と判明した。
では、「20代の非婚化」の原因は、何なのか? それが問題だ。
原因を探っては、次のような見解がある。
本サイトでは、「ネットにあふれるエロのせいだ」と(冗談半分に)言った。
麻生太郎ならば、「国民が勝手に晩婚化しているんだよ」と言いそうだ。
マスコミ上の批判では、「政府の政策がまずいせいだ」という見解が目立った。
では、「政府の政策がまずいせいだ」としたら、具体的には、何がまずいのか? 児童手当や保育所拡大という方針がまずかったのか? いや、そうではあるまい。(それらはむしろ改善の効果があった。)
では一体、何がまずかったのか? 換言すれば、どこを改善すれば、正しい対策となるのだろうか?
この問題については、次項以降で考察しよう。
※ 以下は読まなくてもいい。
[ 余談 ]
結婚を重視する見解には、反論がありそうだ。
「結婚は出産の前提ではないぞ。その証拠に、シングル・マザーは、結婚していないのに子供がいる。結婚しなくても、子供を産めるんだ!」
と。
だが、これは妥当ではない。
シングルマザーは子供を産んだ。しかし今後は子供を産む予定がない。なぜなら、子供の父親となる男がいないからだ。通常、子供が1人いるだけで、2人目を産む予定は立たない。そのままの状態だと、子供が1人だけになるので、出生率は 1 に近づく結果となる。ゼロよりはマシだが、出生率 1 では少子化は解決しない。
シングル・マザーが2人目を生むためには、夫となる男が必要なのであり、そのためにはシングル・マザーが結婚する必要があるのだ。その意味で、シングル・マザーもまた、「結婚するべきだ」という対象に含まれるのである。過去において子供を産んでいるかどうかは、ここでは不問となる。このあと子供を産むためには、結婚していることが必要となるのだ。
( ※ 結婚しないで次から次へと出産する……という人生も考えられるが、そういう破滅的な人生を取る女性はあまりにも例外的なので、さして考慮しないでいい。いるにはいるが、あくまで例外だ。)
人口減少を嘆くのはGDP至上主義者だけと思います。
(2)女性の社会進出だけを優先した
家庭を守る女性の存在を前提にした、拘束時間が長くて生産性が極めて悪い日本の労働環境をそのままにして女性の社会進出だけを進めた。
(3)家が狭すぎる
100平米以下の住宅やマンションは乱開発として禁止すべきだった。