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ルール違反の箇所は下記。
新球場の本塁からバックストップ(バックネット)までの距離が、公認野球規則2.01「競技場の設定」の基準を満たしていないことが指摘された。
( → 日ハム新球場「誰も喜ばない」改修という驚く顛末 | 東洋経済 )
ただしこのルール違反は、ルールの方が間違っていたらしい。米国のルールを翻訳するときに、誤訳があったようだ。
この問題が起こってから多くの識者が指摘したのは、「recommended」という言葉の解釈の違いだ。直訳すれば「推奨する」「奨励する」であり、強い強制力はない。しかし公認野球規則では「必要とする」と訳されている。
( → 同上 )
Q 原因は何なの。
A 米国の設計会社が、その距離を50フィート(約15メートル)でデザインしていたんだ。米国の公式規則では「60フィート(約18メートル)以上が推奨(すいしょう)される」と緩(ゆる)やかに定めているからね。でも、日本の規則では「60フィート以上を必要とする」と厳格に決められている。それを日本ハム側と設計会社が見落としていた。
Q なぜ、日本の方が規則が厳しいの。
A きちんとした理由は誰(だれ)も説明できていない。日本の規則は、基本的には米国の規則を和訳している。「誤訳」が、そのまま放置されたとの指摘(してき)もある。
( → 日本ハムの新球場、トラブルになってるね:朝日新聞デジタル )
結果的にどうなったかというと、こうなった。
Q 基準を満たしていない球場は使えないの。
A 昨年11月の会議で日本ハム側が謝罪し、シーズンオフに改修工事を行うことを条件に、今シーズンの使用が認められたよ。
Q せっかく完成したのに、すぐ工事するなんて、もったいないね。
A 改修費用は10億円以上かかるとも言われている。バックネット裏には電子機器など大事な設備があるため、そもそも改修できるのか、という問題もある。
( → 同上 ) )
誤訳が原因で、間違ったルールができてしまった。間違ったルールに合わせるせいで、10億円以上の費用をかける。……本末転倒とは、このことだ。困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「バックネット裏のスタンドを、後方に 10フィートずらす、というのが改修案だ。しかしその逆で、フィールドの全体を前方に 10フィートずらせばいい」
これは、逆転の発想だ。光頭の孫正義も言っている。
「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」

これと同様だ。本塁からバックストップ(バックネット)までの距離を増やすためには、バックストップ(バックネット)を後退させる必要はない。本塁を含むフィールド全体を前進させればいいのだ。孫正義を見習え。

ただし、フィールドを禿げにする必要はない。(当り前だ。)
具体的には、ベースの位置や、マウンドや、芝生の下の土の量などを、改修する必要がある。そのための費用は、1000万円ぐらいはかかりそうだ。1000万円ならば、10億円に比べれば、タダみたいなものだ。だから、「無料で改修できる」というのも同然だ。
「いや。1000万円なら、無料じゃないぞ。それを無料というのなら、1000万円をおれにくれ」
と文句を言う人もいるだろう。それには、こう説明しよう。
「バックネットを後退させると、バックネット裏の観客席の数が減ってしまうので、席の予約システムの改修費に、1000万円ぐらいかかってしまう。さらに、最高の価格帯の席が大幅に減ってしまうので、減収幅は毎年、約 3000万円になる。今後 40年で、約 10億円の減収となる。その減収をなくすことができるのだから、出費に 1000万円がかかるとしても、収入増が約 10億円になるので、大幅に得をする」
つまり、マイナスがゼロになるどころか、プラスが大幅に増えるのである。約 10億円も。……となれば、無料よりも、はるかにお得である。
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ただし、デメリットもある。球場のフィールド全体が狭くなってしまうことだ。特に、内野と外野のサイズが小さくなってしまう。とはいえ、この点はルール違反とはならない。
現状のサイズはこうだ。(メートル)
左翼、中堅、右翼 = 98、122、100
野球規則では、こうだ。
外野スタンドまで250フィート(約76m)必要だけど、両翼は320フィート(約97.5m)以上、中堅は400フィート(約122m)あるといいね、ということです。
( → プロ野球の球場の規定とは!両翼の距離が球場の広さではない? | Naosoutaのブログ )
つまり、規定はあるが、推奨であって義務ではないので、守らなくてもいい。だから、「98、122、100」から 10フィートずつ減らして、「88、112、90」にしても、ルール違反にならないのだ。
かくて、問題は解決する。めでたし、めでたし。
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ただし、これでは本質的な解決策ではない。
・ フィールドが狭くなるというデメリットが生じる
・ もともとは誤訳が原因だったという点が未解決だ
そういう本質から目を逸らしているという問題がある。その意味で、先の解決策は、あくまで小手先の弥縫策であるにすぎない。物事の本質を見失っているのだ。
では、どうする? ルールを改正して、現状を追認するか?
しかしそれだと、ルール違反をした日本ハムばかりが得をして、ルールを守っている他球場が馬鹿を見る。「違反者が得をして、正直者が馬鹿を見る」というのでは、道理が通らない。
損得を優先すれば、道理が通らない。逆に、道理が通れば、損得が不都合になる。あちらが立てば、こちらが立たず。
困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「このルールを一般化して、すべての球団に適用する。同時に、各球団は新ルールに従って、バックネット裏の席を増設する。このことで、各球団は毎年、約 3000万円の増収を得る。40年間で約 10億円の増収を得る」
この方法ならば、すべての球団が得をする。
・ 12球団は、観客席増加で、10億円の増収。
・ 日本ハムは、工事費の無駄がない。10億円の出費を回避。
・ 日本ハムのファンは、球場サイズが現状維持。
(縮小された小さな球場にならない。)
以上のように、良いことずくめとなる。
そして、このようにすべてがうまく行くようになったことの理由は、「物事の本質を見る」ということだ。本質とは、「誤訳ゆえに問題が起こった」ということだ。そこで、この誤訳を是正することで、本来のあるべき姿に戻すのである。そうすれば、すべては丸く収まる。めでたし、めでたし。
[ 付記 ]
年間増収が約 3000万円となることの根拠は、下記。
10フィート(3メートル)の奥行きがあれば、席を前後に5列取れる。(1列は 60cmとする。)左右の席数は、25列ぐらい取れそうだ。掛け算して、125席。
プロ野球の年間試合数は 143試合。本拠地開催は半分の 71試合。年間席数は 125×71=8875席。
バックネット裏の席の料金は 5000〜6000円なので、年間で 5000万円となる。ただし全部の席が売り切れるとは限らない。そこで 6割が売れると見なして、約 3000万円となる。これが年間収益(新ルールによる増収分)だ。
常に満席に近くなる巨人や阪神ならば、3000万円でなく 5000万円(またはそれ以上)の増収となるだろう。
※ ただし、席の増築による工事費がかかるので、増収の分が丸々収益となるわけではない。それでも、かなりの部分が収益となるだろう。
【 追記 】
バックストップまでの距離が 10フィート短くなると、「投手の暴投のあとにホームスチールで得点」という場面は減るだろう。しかし、それはそれでいい。「暴投で得点」というのは、つまらないからだ。手に汗を握る場面が、暴投で決着したのでは、あっけない。正々堂々たる勝負による決戦を見たいのに、つまらない凡ミスで決着してしまったのでは、興醒めだ。
米国ではスポーツは遊び「プレイ」であり、その規則は緩やかにしてそれぞれの場合について妥協しているようです。ボストンの野球場は左翼が狭いのをカバーするために高い壁を作っていますね。グリーン何とかいう名前がついていて、却って名物になっているようです。