2023年01月24日

◆ 自動車の半導体が不足 .2

 自動車の半導体不足がいまだに続いている。どうしてか?

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  2020年のコロナ流行の半年後ごろから起こった自動車用半導体の不足は、いまだに続いているそうだ。パソコン用の半導体の不足は解消したし、もはや余剰状態だという。なので、自動車用の半導体の不足は解消したかと思えたのだが、実は(パソコン用の半導体とは違って)自動車用の半導体の不足は解消していないそうだ。これを報じた記事がある。
 トヨタ自動車九州の宮田工場では……半導体不足のためにフル生産ができずにいる。 22年度は4〜6月と10月に、合わせて約30日間にわたり生産が止まった。半導体の供給が滞ったことが原因だ。

 半導体は、コロナ禍による巣ごもり需要の高まりに伴い、パソコンやスマホなどの家電製品向けの引き合いが急増。結果として、自動車向けの供給が細ってしまった。
 中でも、設備投資が限られる古いタイプの半導体は、需要に供給が追いつかず、入手が難しい。
 東海東京調査センターの杉浦誠司氏は「パソコンやスマホ向けの半導体は昨年末に在庫調整しており、余っている。だが、車載向けは足りていない」と指摘。
 「半導体メーカーにとって、車載向けは価格を低く抑えられてもうからなかった。価格引き上げや商慣習の是正を目指して、要求された数を出していない可能性がある」と話す。
( → 半導体不足、車生産なお混乱 レクサス受注制限、納車数年先も トヨタ:朝日新聞

 当初は「パソコンやスマホなどの家電製品向けの引き合いが急増」したせいで、自動車向けの半導体が回ってこなかったのかと思えた。だが、パソコンやスマホなどの家電製品向けの半導体が余剰状態になっても、自動車向けの半導体は不足が続いている。そのわけは、自動車向けの半導体は(線幅が太い)旧式の半導体なのだが、旧式で価格が低いゆえに、あまり儲からないので、生産する会社が「儲からないので作りたがらない」ということが理由であるようだ。

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 実は、この問題については、前にも論じたことがある。
  → 自動車の半導体が不足: Open ブログ
 
 ここでも述べたように、自動車会社は、半導体の買い上げ価格を引き上げることで、半導体を(優先的に)入手すればいいのだ。たとえば、1万円で買っていた半導体を2万円で買うことで、(優先的に)入手する。そのことで、半導体不足を解消して、自動車を生産する。こうすれば問題は解決する。

 ところが、自動車会社はそうしない。なぜなら、「コストダウンをする」ということが最優先になっているので、「価格を引き上げる(コストを上げる)ぐらいだったら、供給が遅くなる方を選ぶ」という方針をとっているからだ。かくて、半導体不足による生産縮小は恒常化する。

 この問題については、冒頭の記事にもこう記してある。
 トヨタでは、自動車1台につき半導体を1千個以上使っている。自動車の性能が上がるにつれて使う量は増えている。1種類でもないと、設計変更や代替部品の調達を強いられ、最悪、生産できなくなる。

 ところが、自動車会社はこの原理をまともに理解できていない。どうしてかというと、「ボトルネック」という概念がないからだ。この件については、先の項目で詳しく説明した。
 ボトルネックは、直列的な生産工程における現象だ。その部分が全体において占める割合が、1割であろうと、百万分の1であろうと、それ一つが欠けたことで、生産量の全部を止めることができる。
( → 自動車の半導体が不足: Open ブログ

 これはいわば、人間における心臓のようなものだ。心臓が止まれば、血流が止まり、全身が死んでしまう。たったひとつの臓器が止まるだけで、全部の臓器が止まってしまう。これは、他の内臓や筋肉にはない現象だ。
 だから、ボトルネックとなる部分については、最優先で手当てをする必要がある。エアコンとかオーディオとかフロアマットとか、そういったものなら、たとえなくても自動車は生産できる。しかし「必要不可欠な要素」については、「なくてもいい」ということにはならないのだ。たとえ割増し価格を払うとしても、何が何でも入手しなくてはならないのだ。なぜなら、それなしには、全体が死んで死んでしまう(生産不可能になる)からである。

 結局、自動車会社が半導体不足に悩んでいるのは、半導体が不足していること自体が理由なのではなく、「高い金を払うくらいなら半導体不足で生産中止になった方がマシだ」というケチ根性のせいなのである。つまり、現状の半導体不足は、あえて自分自身が招いている(甘受している)だけのことなのだ。

 比喩的に言えば、「たとえ大雪で寒さがひどいとしても、暖房代を払うくらいなら、ぶるぶる震えていた方がマシだ」という方針を取って、凍死してしまうようなものだ。「自分の命よりも、暖房代の数百円を節約する方が大事だ」という方針で、死んでしまうようなものだ。
 こういう馬鹿げた話を聞くと、「頭がおかしいんじゃないの?」と思う人が多いだろう。だが、現実には、こういうふうに暖房代を惜しみつつ(低体温症で)死んでしまう極貧の高齢者は多い。同様に、夏には、冷房代を惜しみつつ(熱中症で)死んでしまう極貧の高齢者も多い。
 そしてまた自動車会社も、同様なのだ。半導体に払う金を惜しみつつ(半導体不足で)生産中止になるというふうになる。わずかな金を払うくらいなら死んだ方がマシだ、という方針を取る。

 結局、自動車会社が半導体不足に悩んでいるのは、自ら選んだ愚挙なのである。それを他人や環境のせいにするべきではない。
 大雪の厳寒のさなかで、「金を惜しんで凍死する」という選択をしたなら、その死の理由は、自らの選択(ケチ根性ゆえの選択)にあるのだ。それを「冬のせいだ。冬が悪い。大雪が悪い」などと、季節のせいにしても、自らの愚かさを証明するだけだ。
 自らの愚行を何かのせいにして恨むよりは、まずは自らの命を守ることの方が大切なのだ。……なのに、自動車会社は、それを理解できない。ケチが募ると、命よりも小金を大切にする。


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 【 関連項目 】

 前出項目。(ボトルネックについて原理が詳しく説明されている。)
  → 自動車の半導体が不足: Open ブログ

 
posted by 管理人 at 23:58 | Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自動車用の半導体は配線が太くて、電流がよく流れ、そのため外部からのノイズの影響を受けないので誤作動がない、という事なんでしょう。そのために最近のパソコンに使っている低電力半導体は使えないのだと思います。ですから必ずしも旧式とは言えないように思います。
 最近私のいるマンションで機械式駐車場に止めておかれた車のハッチバックが勝手に開く事故が2回ありました。機械式駐車場から発生したノイズで誤作動したようです。アクセルが勝手に作動することは絶対ないのでしょうか。心配です。
Posted by よく見ています at 2023年01月25日 10:12
カルロスゴーンがやってきてマスゴミがゴーン賛美をしたせいで日本人が愚かなる節約をするようになってしまいました。

日本流の余裕の持った節約を止め、外国のスラム街の、貧相そのもの醜い節約です。

昭和の黒色をしたゴミ袋見たいな内装の日産ノートe-POWER乗って回転寿司食べこそ失われた30年の原因。
Posted by N at 2023年01月25日 10:21
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