2023年01月20日

◆ 大震災では分散避難せよ

 大震災のあとでは、被災者は現地に留まるよりは、広く外部地域に分散して避難するべきだ。

 ──

 たとえば、東日本大震災のときには、現地に留まって避難所暮らしをした人が多かった。「仮設住宅の建設を待つ」という人も多かった。その間にも、避難所でバッタバッタと人が死んでいった。(震災関連死)
 この件については私は前に批判した。次のように。
 「被災地に仮説住宅を建設するな。むしろ被災者は、各地に分散して暮らせ。そのために政府は、各地の空き家を借りて提供せよ」
 このようにすれば、仮設住宅を建設するという莫大な費用をかけることなく、多数の命を救うことができたはずだ。


阪神大震災の被害(三宮)

Hanshindaisinsai.jpg
出典:Wikipedia


 それと似た話が、阪神大震災の場合にも適用できる。阪神大震災の 28周年の記念となる記事があった。それによると、阪神大震災の直後に、病弱の1歳女児が死亡したそうだ。それというのも、混乱している被災地で治療を受けられなかったせいだという。
 心臓が弱く、酸素吸入が欠かせなかった。 予備タンクは持っていたが、大人でさえ寒い車中で過ごした3日間は、1歳の幼子にはあまりに過酷だった。 里沙さんは振動に敏感で、エンジンをかけっぱなしにして、エアコンを使うこともできなかった。 容体は悪化し、2月下旬に息を引き取った。
( → (阪神大震災28年)気づき、歩んだ 岡田哲也さん、長谷川重夫さん:朝日新聞

 震災の直後に、自動車はあったが、被災地に留まった。しかし被災地ではまともな治療を受けることもできず、現地の自動車のなかで寒さに震えつつ過ごすしかなかった。そのせいで病弱な赤子が死んでしまった。
 このとき、被災地で過ごさず、他の地域に分散して過ごせばよかった。たとえば、名古屋や関東に移ればよかった。そうすれば、まともな治療や生活をすることができただろう。住宅は、大量の空き家を使えばよかった。さすがに東京は無理だとしても、埼玉や千葉や北関東には大量の空き家がある。

 ──

 現状では、「被災者は被災地に留まって、避難所暮らしをする」という方針が取られている。被災者対策は、あくまで自治体が主導して、政府は直接の関与をしない。そして、自治体が対処するのは、あくまでその自治体の内部のことであるから、「住民を他地域に移動させる」という発想はない。また、他地域の自治体にしても、「別の場所で起こった被災住民を受け入れる」という発想はない。たとえば、東京や神奈川の空き家に、阪神大震災の住民を受け入れるという発想はない。
 このような地域間の移動をするとしたら、国が関与するべきなのだが、被災者対策は、あくまで自治体任せになっているので、国は関与できないでいる。そのせいで、広域の自治体間の住民異動(分散避難)という発想はない。
 それゆえ、被災者は被災地に留まって、まともな治療を受けることもできずにいることになる。かくて、上の記事のように、病弱な赤子が死んでいく。
 
 国の無策が国民を殺すようになっているわけだ。こういう現行制度を改革する必要があるだろう。



 【 関連項目 】
 仮設住宅については、本サイトで何度も批判した。
  → サイト内検索

 東日本大震災のときには、仮設住宅を建設することばかりが重視された。そのせいで、ひどい無駄が生じた。仮設住宅の建設中には、被災者は避難所暮らしが長く続いて、苦しんだ。建設後は、断熱性の低い劣悪な仮設住宅に暮らした。そして一定期間後には、被災者は強制退去となり、使用済みの仮設住宅が無駄に廃棄されることになった。こうして莫大な無駄が生じた。



 【 追記 】
 熊本の震災のときにも、この問題を論じた。そこでは、こう記した。(報道の引用。)
 民間賃貸住宅を借り上げて無償で被災者に提供する「みなし仮設」も2100戸準備している。……が、申し込みは今月3日時点で9件にとどまる。
 仮設住宅の入居対象は、自宅が全壊または大規模半壊した世帯で、罹災証明書が必要だ。しかし、証明書の発行は大幅に遅れている。

 熊本市によると、実質的な現地調査を開始したのは 22日から。震災対応で人手が足りず、調査に割けたのは当初、20人程度にとどまった。
( → みなし仮設と罹災証明: Open ブログ

 これを、こう評価した。
 せっかく、みなし仮設の制度を整えたのに、応募者が極端に少ない。それというのも、罹災証明書が必要であるせいだ。それがまともに発行されないせいで、せっかくの制度が機能していない。何にもなっていない。
 これじゃ、「仏作って魂入れず」みたいなものか。

 県レベルでは広域に受け入れる制度があるのだが、その制度がまともに機能しない。被災調査の人手不足のせいで。……こんなところに、意外なボトルネックがあったわけだ。(だから対策する必要がある。)

 なお、(熊本地震のときの)仮設住宅にかわる「みなし仮設」(民間物件の借り上げで提供)については、下記項目でも論じた。
  → 仮設住宅・みなし仮設の問題: Open ブログ
  → 仮設住宅の不足を解消するには?: Open ブログ
  → みなし仮設と借間人: Open ブログ
posted by 管理人 at 23:58 | Comment(4) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京の場合はオフィスビルやドーム球場などの活用でしょうね。特にオフィスビルは一般住宅よりもしっかり作られており。また非常用電源もあるのでそれらを最大限活用できるように機密保護や法整備なども含めて準備しておくことが必要と思います。でも10階以上はしんどいかな。
Posted by よく見ています at 2023年01月21日 10:03
 東京なら、奥多摩には空き家や空き室が大量にあるので、それを利用すればいいでしょう。
 賃貸  https://x.gd/knLNb
 戸建て https://x.gd/zker5

 23区内はどうするか? 23区内に無料で住めるのなら、私が住みたいよ。そう思っている人は、ゴマンといる。
 そもそも、最低限の住居を提供することが目的なのであって、豪華無料住宅を提供することが目的じゃない。そんな金はない。被災者だけに超豪華仕様を提供する必要はない。
Posted by 管理人 at 2023年01月21日 10:19
東日本の時には、全国のそれなりの数の自治体が公営住宅や一般空き家の借り上げをして避難者を受け入れていたと思いますが、規模としては小さかったし、国の積極的関与は少なかったんでしょうね。
Posted by けろ at 2023年01月21日 12:25
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 熊本の震災のときの、みなし仮設の話。
Posted by 管理人 at 2023年01月21日 13:54
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