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原発の開発でもたついている間に、核融合発電の開発で大きな進展があった。
米エネルギー省は13日、核融合の実験を行い、投入したレーザーのエネルギーを上回るエネルギーを生成することに初めて成功したと発表した。歴史に残る成果だとしている。
実験では2.05メガジュールのエネルギーを供給し、出力は供給を50%超上回る3.15メガジュールだった。実験で出力が有意義なエネルギーの利得が得られたのは初めて。
施設は競技場ほどの大きさで、192個のレーザーを備える。
( → 核融合で投入上回るエネルギー生み出す「歴史的成果」 米エネルギー省 - CNN.co.jp )
米国では浮かれている人が多いようだが、公式発表ですら、「歴史に残る成果」であって、歴史の一里塚にすぎないという位置づけだ。100の階段の第一歩を初めて踏み出した、というような位置づけだろうか。あるいは、2段目に初めて達した、というような位置づけだろうか。いずれにせよ、この先には多くの段階がいくつもあり、目標到達は遠い先ということになりそうだ。
そもそも、レーザー圧縮方式は、核融合を成立させること自体は容易だが、そこから熱を回収することは難しい。小さな点で核融合を成立させることはできるが、大きな規模で核融合を成立させると、その巨大な熱に耐えられる容器がないので、熱を処理できなくなる。
この問題を解決するには、トカマク型やヘリカル型が必要だが、これらはまだ臨界条件にまでは達していないようだ。

出典:Wikipedia
これらは10年ぐらい前までは、かなり研究に進展があったようだが、近年ではあまり大きな成果を聞かない。新施設が建設されていないせいかもしれない。
遠い先の核融合のための研究よりは、すぐ先にある太陽光や洋上風力の技術開発に専念する傾向が強いのだろう。その意味からしても、核融合はもはや時代の寵児ではない。人々の関心もまた、太陽光や洋上風力や EV 開発といった方面に向かいつつある。
忘れられつつあるという意味では、燃料電池車に近い位置づけかもしれない。
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なお、トカマク型やヘリカル型は原理的には実用化に近いが、レーザー圧縮で発電するというのは、原理的には難しそうだ。ひょっとしたら、この道は「行き止まりの道」かもしれない。もしそうなら、今回の大きな成果は「 100の階段の2段目」という位置づけにすらならないかもしれない。なぜなら、その 100段目は途切れていて、途中で終わっているからだ。たとえば、70段目で途切れている。その先には進めない。とすれば、最初の方でいくら早く先に進めたとしても、しょせんはその道は行き止まりであって、早く進むことには意味がないのだ。
( ※ 本当にそうかどうかは はっきりとしないが。)