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通常の発想では、こうなる。
「原発はなるべく長期間連続して稼働する。ただし定期点検の時期だけは休止する」
新たに提案する発想では、こうなる。
「原発は、電力の需給が逼迫する夏と冬だけに稼働する。それ以外の時期(電力の需給が逼迫しない春と秋)には稼働しない」
この新たな方針は、コスト的には良くない。なぜなら、原発は次の性質をもつからだ。
「原発のコストの大部分は、固定費であって、可変費ではない。稼働する時間が増えても、それによって必要とされるコストはあまり増えない。(せいぜいウラニウムの費用がかかるぐらいだが、その比率は高くない。)むしろ、固定費としての原発建設費や津波対策費の方が、圧倒的に高額だ。……ゆえに、なるべく稼働時間を増やして、出力あたりの固定費負担を減らす方がいい。そうすることで、コストを下げることができる」
だが、このようなコスト重視で言うのなら、そもそも太陽光発電やバイオ発電や地熱発電などを優遇する理屈もなくなる。これらの発電が優遇されるのは、コスト重視が理由だからでなく、環境への影響が重要となるからだ。
だったら、安全性の観点からしても、「危険度の高い原発はなるべく稼働させない」というのが、最も合理的だろう。コストよりも安全性を重視するわけだ。しかも、「コストよりも安全性」というのは、「コストよりも環境保護」よりも、大切である。なぜなら、安全性は人命に関わるからだ。(福島原発の再現なんて、まっぴらごめんだろう。)
ちなみに、前項における高裁判決では、「東電が原発事故を起こしたことには、東電経営陣の責任はない。無罪」という判決である。つまり、いい加減な対策をしてもお咎めなし、ということだ。無責任体制を容認する、ということだ。
これが現在の原発体制の基本原理だ。とすれば、そんな基本原理で運用されている原発なんてものを、信じる方が狂っていると言えよう。
高裁判決が認めたように、日本の原発政策は滅茶苦茶が容認されているのだ。こんな運用の原発など、なるべく頼らない方がマシだろう。
なるほど、夏や冬に電力が逼迫するのは困る。だから、厳冬や猛暑の時期(1、2、7、8月)には、原発を稼働させるのもやむを得ない。しかし、それ以外の時期には、なるべく原発を稼働させない方がよさそうだ。
[ 付記 ]
原子力発電は、長期的には必要だろうか? この先、(既存原発の再稼働でなくて、)原発を新規建設するべきだろうか?
なるほど、化石燃料はどんどん禁止されていきそうだ。しかしそれだと、エネルギー不足になりかねない。太陽光発電は有力だが、夜間や雨天時は発電できないという難点もある。となると、長期的には原発も必要となりそうだ。少なくとも政府は、「長期的には原発を新設する」という方針を取っている。だが、本当にそうなのか?
この問題は、たぶん、風力発電しだいだろう。それも、地上設置には限界があるので、洋上風力しだいだろう。洋上風力がうまく開発されていけば、原子力発電は要らない。それがうまく開発されなければ、原子力発電は必要となる。
洋上風力は、すでにコストが原発を下回るぐらいまで下がりつつあるので、とても有望だ。現状の進展からすると、どうやら洋上風力が発展して、原発を追い出してしまう、ということになりそうだ。その意味で、予想は楽観的となる。
とはいえ、勝って兜の緒を締めよ。洋上風力は勝ちそうだが、勝つと確定したわけでもない。期待を込めつつ、慎重に見守ることにしよう。
※ それでもともかく、洋上風力が急激に技術発展したのは、意外だった。大幅なコストダウンが起こるのは、ずっと先かと思えたが、もはやすでに大幅なコストダウンが(ほぼ)実現してしまった。一方で、小型原発というのが高コストに悩んでいるので、この先は、原発の方が見通しが暗いと言えるだろう。