2023年01月08日

◆ 寒さで免疫力低下

 寒さで(感染症への)免疫力が低下する、という医学研究の話。

 ──

 冬にかぜ・インフルエンザ・コロナなどが流行するのは、鼻の中の免疫低下が原因だ、という研究報告が出た。この事実自体はすでに知られていたが、その機序を分子レベルで解明したそうだ。
 寒い季節になるとかぜやインフルエンザ、新型コロナウイルスに感染しやすくなるのは、鼻から入るウイルスなどを取り除く免疫作用が大幅に弱まるのが原因だとして、その仕組みを解明する研究結果が報告された。
 寒さによって免疫反応が制限されることを、生物学的に分子レベルで説明した研究は初めてとされる。
( → 冬にかぜが流行するのは「鼻の中の免疫低下が原因」 米研究チーム - CNN.co.jp

 ウイルスや細菌を攻撃する「細胞外小胞(EV)」と呼ばれる小さな物質を何十億個も作り出す能力があるが、これが寒さのせいで機能低下を起こすそうだ。
 そこで、マスクをして保温をすることで、寒さによる機能低下が防げるので、免疫力がアップして、ウイルスや細菌による感染を防げるそうだ。


masked4.jpg
出典:pixiv



 実は、「マスクで保温ができるので、インフルエンザの感染を防げる」ということは、本サイトでは 2009年に提唱していた。マスクの効果は、ウイルスをフィルター効果で除去することではなく、保温で免疫力を高めることなのだ、と。
 その意図は、「ウィルスを通さないこと」ではなくて、「保温・保湿」である。

 一般に、風邪やインフルエンザにかかる理由は、ウィルスが存在することよりも、「免疫力の低下」である。そして、免疫力が低下する理由は、「低温・乾燥」である。その具体的な理由は、「戸外に出て、鼻や喉を冷やすこと」である。
 だから、それを防護するための策を取ればいい。つまり、「戸外に出て、鼻や喉を冷やさない」ようにすればいい。
( → マスクで予防: Open ブログ

 コロナの流行初期には、岩田健太郎や忽那賢志がマスク着用に反対していた。「医療用の N95マスクと違って、家庭用のマスクは、ウイルスを除去する効果がないので、着用しても無駄だ。マスクをするのは意味がない」と。これは WHO の公式見解でもあったので、彼らは WHO の公式見解に従ってマスク否定論を唱えた。
 しかし私は 2009年から「マスクは保温・保湿効果があるので、免疫力の向上を通じて、インフルエンザの予防効果がある」と唱えていた。
 そして今やようやく、世界も私に追いついたようだ。……と思ったが、まだだね。
 上記の記事では、保温効果には言及しているが、保湿効果には言及していない。片手落ちだ。その意味で、世界はまだ私に追いついていないようだ。
 「インフルエンザウイルスは高温多湿が大嫌い。たとえば温度22度で湿度20% のとき、ウイルスの生存率は66% ほど。これを湿度50% に上げてやるだけで生存率は一気に4% に下がるのです」
( → マスクで予防 2: Open ブログ

 こういうデータを示して、保湿の重要性を示した。(2009年)
 さらに、次の論拠も示した。(2021年)
 冬になるとインフルエンザやコロナの感染者が急に増えるのはどうしてか? それは湿度が大きく影響しているそうだ。
 「湿度が下がると免疫力が低下する」
 というふうに漠然と考えられていたのだが、その細かなメカニズムが判明した。気管支の部分の表面には線毛という部分があって、これがウイルスのような異物をどんどん上方に運んで、体外に排出させているそうだ。ただしその機能は、湿度が下がると急激に低下してしまうという。
 その能力は、湿度が 40%〜60% のときに最大化して、湿度が 10% だとゼロになる。こうなると、ウイルスのような異物を体外に排出できなくなるので、感染してしまうそうだ。
( → NHK のコロナ番組: Open ブログ

 なお、次の項目でも、似た話を論じている。
  → インフルエンザが減ったわけ: Open ブログ



 【 追記 】
 「マスク非推奨」という方針を取っていたのは、岩田健太郎と忽那賢志だけではない。当時の専門家会議全体がそうだった。だから私は何度も批判してきた。「三密禁止ばかりを唱えず、マスク推奨をせよ」と。
 専門家会議の方針が一転したのは、2020年5月4日だ。その翌日に本サイトの記事で評価している。
 専門家会議が初めて、マスク推奨を打ち出した。基本原則三つのうちの一つとして重視している。

 驚いたね。「三つの密」は、多くの事例のうちの一つとして埋没してしまっている。「そんなのもあるかね」というぐらいの扱いだ。
 その一方で、「マスク」と「手洗い」は、最重要事項である三つのうちの一つに格上げだ。
 これまでの「三つの密」の重視とは、まったく異なる発想となっている。というか、私の発想とほぼ同じだ。私の発想が取り込まれたと言ってもいいくらいだ。

 私が思うに、これは、今までの執筆者とは違うグループが書いたんだね。たぶん、感染症の専門家ではなく、公衆衛生の専門家が書いた。だから、まったく違う発想になっている。
( → マスクの話題 7: Open ブログ

 ともあれ、専門家会議は 5月4日に劇的に方針を転換して、マスク推奨に転じた。逆に言えば、それまでは片意地なほどにもマスク推奨をしなかった。
 一方で、安倍首相がアベノマスクで「マスク推奨」をしたのが 4月1日だ。これ以後、世間では急激にマスク着用が普及した。専門家会議が無為無策だったのに比べて、安倍首相がアベノマスクでマスク着用を促した効果はとても大きい。この件は、当時も評価した。
 とはいえ、布マスクであっても、「何も配給しない」のよりは、ずっとマシだ。少なくとも「マスクの必要性」を何も言わない専門家会議よりは、ずっとマシだ。
( → マスクの話題 1 (コロナ): Open ブログ

 専門家会議はこの時点で「マスク着用」の必要性を何も語っていない。なのに、安倍首相がアベノマスクを唱えた翌日から、いっせいにマスク着用をするようになった。
 マスクの必要性を言わないで、「マスクをしない」から「マスクをする」に転じたわけだ。説明責任をまったく果たしていない。

 というか、国民には「マスクをすべし」と言わないで、自分たちだけマスクをするなんて、あたかも「国民を死なせて、自分たちだけ助かろう」としているように見える。

 ともあれ、この件では安倍首相には 50点が付けられるので、0点の専門家会議よりは、ずっとマシだ。

 当時の専門家会議は、実にひどかった。日本でコロナ感染が低かったのは、安倍首相のおかげだったとも言える。
 菅義偉や岸田が最悪の記録を次々と更新しつつあるので、今にして思えば、安倍首相の方がずっとマシだったね。
 4月1日、アベノマスクの配布が表明された。これは、「大失敗」と見えるが、結果的には大成功だったと言える。なぜなら、この馬鹿げたマスクを見て、「他山の石」として、人々はマスクを積極的にするようになったからだ。首相がマスクをすると、それにならえで、公務員も専門家会議も、みんなマスクをするようになった。それを見て、マスコミの人々もマスクをするようになった。首相がアベノマスクでピエロを演じたことで、日本全体のマスク着用率は大幅に上昇した。(着用率 80%程度から95%程度へ。つまり、非着用者は 20%から5%に激減した。)これは、外出8割減とほぼ同等の効果があった。
( → 日本の感染者は多いか? (アジア比): Open ブログ

 ちなみに、3月1日には、政府の誰もマスクをしていなかった。(だから私が批判した。)
  → 首相記者会見でマスクなし: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:21 | Comment(3) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コロナの初期にマスク無効論を主張したことで、感染症分野の専門家が世界的にレベルが低いことが明白になりました。くしゃみをしたときのウイルスの広がりのシミュレーションなども感染症分野の人ではありませんでした。がんとかの病気に比べて死亡率が低く、医学部内で優れた人が集まらなかったためと思います。コロナを機会に優秀な人が感染症分野に進むことを期待します。
Posted by よく見ています at 2023年01月09日 10:03
日本の感染症の非専門医はマスクの効果を強調していたのですが、岩田健太郎氏や忽那賢志氏のような欧米仕込みの「感染症専門家」が「EBMでマスクの有効性は否定されている」と喧伝してまわっていたのですよね。
彼ら「感染症専門家」はむやみやたらに抗菌薬を使わないことを主張するなど有益な活動もありましたが、マスクの非推奨は明らかに有害でした。


実際日本では新型コロナが流行する前から今ほどではないにせよマスクをする人は多かったですよね?医師から「風邪が流行る季節だからマスクと手洗いうがいを」といわれた人も多いはず。
Posted by とおりがかり at 2023年01月09日 20:34
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 当時の専門家会議が、マスク推奨をしなかったので、クソだった……という話。
Posted by 管理人 at 2023年01月09日 21:10
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