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この謎は、朝日新聞の報道を読んだときに感じた。
2日午後8時10分ごろ、福島県郡山市大平町の市道交差点で、乗用車と軽乗用車が出合い頭にぶつかり、軽乗用車が横転して炎上した。火は約30分後に消し止められたが、車内から4人の遺体が見つかった。
郡山署によると、交差点には信号機がないが、軽乗用車側が優先道路になっていたという。
現場は田んぼなどが広がる地域。近くに住宅はなく、街灯はあるが、夜は暗い場所だった。
( → 軽乗用車側が優先道路 25歳、過失運転疑い 福島・4人死亡:朝日新聞 )
「午後8時10分」ということなので、路上は真っ暗だ。
「現場は田んぼなどが広がる地域。近くに住宅はなく」ということなので、建物で見通しが悪いわけでもなさそうだ。
ではどうして、相手のヘッドライトに気づかなかったのか? これは謎だ。
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そこで情報を漁って、調べてみた。
→ 衝突され車炎上し4人死亡 軽乗用車側が優先道路 福島・郡山 | 河北新報
これによると、現場がわかる。そのストリートビューは、こうだ。
これは乗用車が北から交差点に進入しようとしているところ。軽自動車は画面の右側(西側)から、交差点に進入しようとしている。どちらも見晴らしはいいので、相手の存在に気づくはずだ。
現場の地図や動画は、下記ページにもある。
→ 衝突し軽乗用車炎上4人死亡 軽乗用車側が優先道路 福島 郡山 | NHK
軽自動車が逆方向に進んでいたなら(東から西へ向かっていたなら)、盛り上がった地面や草に遮られるせいで、たがいに相手の存在は見えなかっただろう。しかし今回は、たがいに相手の存在がよく見えていたはずだ。特に夜間は光がよく見えていたはずだ。なのにどうして気づかなかったのか?
加害者の方は、こう語っている。「車に気づかなかった」と。
ブレーキ痕もないので、気づかなかったというのは事実だろう。だが、本来ならば気づかないはずがないのだ。
もしかして、酔っ払っていたのか? いや、事故の直後に本人が通報したので、そのとき警察が飲酒検査もしていたはずだ。飲酒運転ということは考えられない。
上の河北新報の記事では、地元住民が「現場は見通しが悪い」というが、それは、逆方向に進んだ場合のことだ。今回には当てはまらない。(見通しがいい。)
かくて、謎はかえって深まった。見通しがいい場所で、双方が気づいていいはずなのに、どうして双方が気づかなかったのか?
ここまでの情報から私が推理すると、原因はこうだ。
「乗用車も軽自動車も、どちらも猛スピードで運転していた。しかも、どちらも交差点の 100メートルほど手前にカーブがあり、そのとき以前は交差点が見えない。相手の存在に気づくための時間は、100メートルを走る時間だけだ。その時間は、ごく短時間でしかないので、たがいに相手に気づくだけの時間がなかった」
時速 100km で 100メートルを進むのにかかる時間は、 0.1/100 = 0.001 なので、千分の1時間だ。1時間は 3600秒なので、その千分の1は、 3.6秒。つまり、判断ができる時間は3秒余りしかない。相手の光がチラリと見えたとしても、「あれ? そうかな? どうかな?」などと判断に迷っている間に、あっというまに交差点に突入してしまう。
というわけで、私としては、「スピード違反による前方不注意」が原因だと推定する。一方、「見晴らしが悪かったから」という説は取らない。
ただし、ミラーや反射板などを立てておけば、多少の前方不注意があっても事故は避けられた可能性は高い。
したがって、直接の原因は「スピード違反による前方不注意」となるだろう。だが、根本原因は、「信号のない交差点で、ミラーも反射板も立てなかった自治体の安全意識の欠如」だったと思う。地元民が危険を感じて要望していたのに、それを無視していたのだから、自治体の責任が最も大きいだろう。
地元住民からは「危ない交差点だとみていた。心配していた事故が起きてしまった」と残念がる声が上がった。
「どちらが優先道路なのかは、地元の人でないと分かりづらいかもしれない。いつか事故が起きるのではないかと感じていた」
「交差点を車で走行中に何度もヒヤリとしたことがある」
交通量が少ないためか、速度を上げて通過する車が多い。
「止まれ」の標識やミラーなどの設置を関係機関に働きかけられないか探り始めたところだった。
( → 衝突され車炎上し4人死亡 軽乗用車側が優先道路 福島・郡山 | 河北新報 )
危険性はもともとわかっていたのだ。それを放置した自治体に責任があると言えよう。東日本大震災にのあとで、やたらと地元の振興のために大金を投入しておきながら、交通事故死者を防ぐためには金を惜しんでいたのだから、しょせんは「金儲け優先で人命軽視」という体質は、何も変わっていない、と言えよう。
[ 付記1 ]
ミラーを設置すればいい、と述べたが、このミラーは通常よく見る球面型のミラー(カーブミラー)ではない。
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このような球面型のミラーは、あくまで近距離用である。速度も低速の場合に限られる。距離が大きくなると、映る対象は豆粒のように小さく見えるので、何が何だかわからなくなる。
今回の交差点のように、距離が長くて速度が高い場合には、球面型のミラーではなく、(ほぼ)平面上のミラーにする必要がある。サイズもかなり大サイズにする必要があるだろう。こういうミラーを設置することは困難になるかもしれない。
だが、そういうものがないわけでもない。たとえば、これだ。
→ エスコ フラット型凸面機能ミラー
→ フラット型凸面機能ミラー(通路左右用)
[ 付記2 ]
ミラーだけでなく、赤色の反射板(リフレクター)を設置するといいだろう。
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これは、相手の車の光を反射するのではなく、自分の車の光を反射するものだ。これを交差点に設置することで、そこに交差点があることがわかるから、自動車は自然に減速することになる。
夜間に常に点滅する赤色信号( or 黄色信号)みたいなものだが、設置費用が格安で済むのが利点だ。信号みたいに維持費もかからない。それでいて、ほぼ同等の効果をもたらす。
今回も、このような赤色の反射板(リフレクター)が設置されていれば、双方が減速していたはずなので、悲惨な事故は免れていた可能性が高い。
【 追記 】
本項の執筆後に気づいたが、次の動画ニュースがある。
「コリジョンコース現象」を理由としているが、それはないでしょう。なぜなら、現場は真っ暗な夜間だったからだ。見えるのは、相手の車体ではなく、ヘッドライトだけだ。
上の動画の説明(コリジョンコース現象の例)は、現場が暗闇だったということをまったく失念している。馬鹿馬鹿しい。専門家でさえ、これほどにも無知なものなのか。
仕組みとしてはフレネルレンズを使っているのだと思いますが、説明したページが見つけられないです。。