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トヨタが年頭の抱負を示している。朝日新聞の2面分を使って、見開きの大広告。

これで宣伝しているページは、下記だ。
→ 年初に読むべきトヨタイムズ記事10選
「トヨタ主義」を意味する「トヨタ・イズム」かと思ったら、「トヨタ新聞」を意味する「トヨタ・タイムズ」だった。なのにそれを「トヨタイムズ」と書くわけだ。まぎらわしい。(もしかしたらトヨタは社名を「トヨタ」から「トヨ」に変えたのかもしれないね。)
そこで、以下では、トヨ社について論評しよう。
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トヨタの未来の計画については、先日、朝日新聞が報じた。
トヨタ自動車は、電気自動車(EV)向けの専用ラインを、国内工場に設ける検討に入った。採算性を高めるため、EVの設計も骨格から見直しを進める方針。「出遅れ」が指摘されていたEVの巻き返しを図る。
トヨタ初のEV専用モデルのSUV(スポーツ用多目的車)「bZ4X」向けに専用ラインをつくり、2025年にも増産を始める方向だ。
現在は元町工場(愛知県豊田市)で他の車種と一緒に組み立てられており、……年間10万台ほどの生産に対応できるとみられている。
トヨタ社内では以前から、量産効果を十分に出してコスト低減を進めるには「EV専用ラインが必要」との声があった。
ガソリン車やHVの生産ラインにも対応した現在の車台の設計を改め、利益率を高めるための開発も進める。
( → トヨタ、国内工場にEV専用ライン検討 25年にもSUVを増産へ:朝日新聞 )
これは朝日新聞の取材した報道なので、トヨタ自体の自発的な広報ではない。だからどこまでトヨタの方針を正確に記しているかは、確実ではない。そのことをわきまえた上で、論評しよう。
記事の要旨は、「トヨタは EV の採算性・利益率を高めることを狙って、EV専用ラインを設けることを検討している」ということだ。その理由は「専用ラインによって量産効果を高めるため」らしい。
だが、この報道が事実だとすれば、「あまりにもひどい」と評価するしかない。本当にトヨタがこれを方針としているのだとしたら、トヨタはあまりにもみじめな状況にあると言うしかない。
(1) 2025年
専用ラインを設けるのが 2025年だというのは、あまりにも遅すぎて、判断の遅れが致命的だと言える。フォルクスワーゲンは 2016年ごろからすでに同様の決断をしていたし、日産自動車はすでに専用工場を稼働させている。日産の新工場については前に紹介したこともある。
→ 日産アリアがついに発売: Open ブログ
日産の新工場ができたのが、2021年10月。ならばトヨタは新工場の建設をとっくに決めている必要があるし、すでに建設中でなくてはならない。なのに、いまだに建設するかどうかも決めておらず、現時点では「検討中」でしかない。あまりにも後手に回りすぎている。時代の流れに取り残されている。周回遅れになる。(日産に4年も遅れたら、4週遅れだ。ひどいね。)
記事が本当なら、トヨタの現状と未来は、惨憺たるありさまと言うしかない。
(2) 量産化
専用ラインを設ける狙いが、採算性・利益率を高めるためだという。これが本当だとしたら、トヨタは工場建設の理由をまったく理解できていないと言える。
トヨタの現在の EV は、「採算性・利益率がよくない」というようなレベルではない。「圧倒的に高コストであって、市場における競争力がない」というようなレベルだ。
だから、それを全面改定するためにこそ、抜本改革をした新工場が必要となる。その意味は、こうだ。
・ 車台(プラットフォーム)を全面変更する。
・ 生産工程を全面変更する。
・ まったく新たな技術を導入する。
特に大切なのは、「熱管理」や「ギガプレス」を取り入れた、全面的に新しい車体構造を導入することだ。なのに、トヨタはその技術的な必要性を理解できていない。これは致命的だ。
→ トヨタが EV 戦略を見直し: Open ブログ
EV 専用ラインが必要なのは、「それによって金儲けができるから」というような理由ではない。「従来の自動車とはまったく別の、新世代の車体構造を持つ車種を生み出す必要がある」ということであり、「全く新しい技術を導入する必要がある」ということであり、「さもなくばトヨタ自体が生き残れない」ということだ。そういう自らの存亡にかかわることが理由だ。金儲けのためではないのだ。
トヨタはそのことをまったく理解できていないようだ。(朝日の報道が正しければ、だが。)
(3) 生産・販売
以上の話は、決して誇張ではない。そのことは、トヨタの EV 販売の状況を見ればわかる。
トヨタは1年以上前の 2021年12月14日に、「EV 推進への大転換」を大々的に宣伝した。本サイトでも紹介した。
→ トヨタが EV 推進に転換: Open ブログ
しかし結果的には、これはただの大ボラとなってしまった。2022年のトヨタの EV の状況は、予定とは打って変わって、「まともに生産・販売ができない」という状況だ。
・ bZ4X は、国内販売ができず、サブスクでしか提供できない。
・ bZ3X は、自社開発ができず、中国 BYD に心臓部を提供されている。
これではもはやまともな自動車会社とは言えないありさまだ。
そのせいか、昨秋には、「 EV 推進法方針を全面的に改めて、方針転換を模索する」というふうに転じた。
→ トヨタが EV 戦略を見直し: Open ブログ
ここで述べたのは、「戦略を見直す」ということだった。それで見直したあと、まともな方針を立てたのかと思ったら、「2025年に専用ラインを設けることを検討する」というような段階に留まっている。
今さら「検討する」だと? いったい、何を言っているんだ。あまりにも決断が遅いと言うしかない。呆れる。

→ 画像出典
トヨタに未来はあるか? どうも、なさそうだ。
トヨタは初夢を見ているようだが、その初夢は、「実現しない夢想」となって、目が覚めたら消えてしまうのかもしれない。
結論。
トヨ社 の年頭抱負は、ヨタだった。
[ 補足 ]
「bZ3X は、自社開発ができず、中国 BYD に心臓部を提供されている」
と上で述べたが、その典拠は下記。
どの程度BYDが関与しているかは依然として不明のままであった。パワートレインだけの供給なのか、それとも乗り味に影響するプラットフォーム全体も設計しているのか、はたまたOEM供給のように丸ごとBYD製なのか。
憶測が憶測を呼ぶ事態となったが、今回の情報公開で明らかとなったのは、BYDが関与しているのはbZ SDN改め「bZ3」の駆動用バッテリーとモーターの供給だけという点である。なので、製造はトヨタ(一汽トヨタ)だし、例えばABS部品はトヨタグループの一員である「アドヴィックス」と記載されていることからも、大部分はトヨタの設計となっている。
( → おおぉ…マジかよ!! トヨタ最新EVセダン「bZ3」まさかの中国政府系サイトで初披露をキャッチ!! - 自動車情報誌「ベストカー」 )
[ 付記 ]
ついでに言えば、日産もひどい状況だ。
日産の EV 新工場は、確かに建設できた。しかし、1年以上が立っているのに、ろくに稼働していないようだ。アリアの月産台数は、相も変わらず微々たるもので、開店休業状態だ。
このように生産できないでいる状況について、日産は長らく「半導体不足のせいで」と言い訳していた。
→ 日産:お知らせ(22年10月11日)
だが、世界的な半導体不足はすでに解消した。半導体はありあまっていて、今や生産調整をしている状況だ。ならば、「半導体不足」を理由とした生産減少は、ありえないことになる。
結局、半島体不足が理由ではなく、工場設備(の稼働状態)に難ありなのがバレてしまった、という感じだ。(日産の嘘がばれた。)
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なお、日産の新工場については、次の記事がある。
→ 間もなく発売!日産アリアの生産工場に潜入。栃木工場の「ニッサン インテリジェント ファクトリー」が最新鋭過ぎた!
最新鋭過ぎた、と書いてある。つまり、「最新鋭過ぎて、生産できない」というわけだ。 「 too 〜 to 〜 」という構文だね。( too new to produce )
過ぎたるは及ばざるがごとし、ということか。あるいは、馬鹿にはハサミは使えない、ということか。
日産も、どうなっているんでしょうね。
なお、トヨタも将来、こうなるかもしれない。「2025年に生産ラインを設置したが、まともに生産ができなくて、ちゃんと生産できるようになるにはさらに2年間がかかった」というふうな。
今の日産の惨状を見て、トヨタは「明日は我が身」(4年後に自社もこうなる)と思って、首筋を寒くしているといいかもね。
理工系学生をきっちり教育することが大事ですが、教授がだめなので難しいです。韓国や中国のように大量の学生をアメリカに送り込むのが日本の将来にとってベストと思います。
いっそトヨ多イムズと書いた方がいいかも。