──
事件はこうだ。
地上約50メートルから垂直降下するアトラクションが午後7時ごろ、客の20代の男女を乗せたまま頂上付近で停止。約4時間後の午後11時すぎ、アトラクションを動かして救出した。
( → 地上50メートルに4時間 乗客2人、遊具動かず 大阪:朝日新聞 )
午後7時頃、大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で、約50メートルの高さから垂直落下するアトラクション「ジャイアントドロップ メテオ」が頂上付近で突然停止した。同パークによると、乗客の20歳代の男女2人が頂上付近に取り残され、約4時間後の午後11時頃に救助された。
頂上付近でいったんブレーキがかかる仕組みだが、午後7時頃にブレーキが解除できなくなった。うち2か所は職員が地上で操作して解除し、地上まで降ろしたが、1か所は解除できなかった。従業員が119番したのは停止から2時間近くたった午後8時55分頃だった。
枚方寝屋川消防組合によると、現場に出動したはしご車は地上42メートルまでしか届かず、午後11時頃に消防隊員が頂上付近まで上がり、手動でブレーキを解除。座席を降下させて、2人を救助した。
( → 垂直落下アトラクションの50mの高さに男女2人取り残される…4時間後の深夜にようやく救助 : 読売新聞オンライン )
無事に救助できて、問題なかったように思えそうだ。だが、全然違う。今回はたまたま死なずに済んだが、死ぬ寸前になっていたようだ。
ひらかたパークの取り残され事件の本人です
— ありみん ? (@kuraminn24) December 30, 2022
止まってる際は怖いとか怒りとか何もなくただ寒いが強く、何度か意識飛んでました。 pic.twitter.com/bkuSQgAI6t
この状況を解説する人もいる。
rider250 NHKで「体中が痛かったと話してる」と言ってたがこれって低体温症で死ぬ兆候だからね、吾妻ひでおの「失踪日記」でも寒空で野宿したときに体中が痛かった=死ぬ兆候という話が出てくる。本当にヤバかったんだよ。
porquetevas 降ろす作業がすぐできないなら体調のモニタリングが必要なわけで、改めてもっと早く119番かけなさいよと思った。もっと寒かったら、雨が降ってたら、風が吹いてたら、助かってなかった。
( → はてなブックマーク )
こういう危機的な状況だった。
記事には記していないが、後述の YouTube 動画によると、本人は 20代の若い女性である。(ツイッターを見ると、20代前半だと見える。) それだけ若さがあるから、低体温症で死ぬ寸前になっても助かった。
仮に、これが高齢者だったり、虚弱な体質だったりしたら、死んでいた可能性は十分にある。そして、そういう状況に放置したのは、レスキュー部隊だったのだ。午後8時55分頃に 119番したということだから、現場到着が9時10分頃だろうか。そこから2時間近くも乗客を放置していた。これは怠慢だと言える。
──
では、どうするべきだったか? 当然ながら、「低体温症の防止」つまり「凍死の防止」が必要だった。とすれば、次の措置が必要だ。
・ 防風シート
・ 使い捨てカイロ(大量に)
これらがあれば、「低体温症の防止」が可能だったはずだ。そのために、現場で医師の判断が必要だったかもしれない。医師が観察するべきだったとも言える。現場にはいなくとも、現場をモニターしている医師が遠隔でアドバイスするべきだったとも言える。
また、現場では、乗客にスマホを渡して、寒さの状況などを伝達してもらうことも必要だっただろう。そうすればただちに「寒さがひどい」「寒さで意識が飛んで、連絡不可能になった」という状況を認識できる。
──
なのに、現状のレスキュー部隊は、以上のことをしなかった。これは、レスキュー部隊の隊員が無能であるというよりは、本部の指揮官が無能である。指揮官個人が無能であるというよりは、レスキュー部隊のレスキュー業務のシステムに欠陥がある。
レスキュー部隊は人命救助の点から、もっと生命保護の観点を重視するべきだろう。彼らの仕事は、死んだ人間の肉体を回収することではなく、人間の生命を救うことなのだ。ここを間違えてはならない。死んだあとで遺体を地上に戻しても、意味がないんだよ。
────────────
なお、地上 50メートルの高さにいる乗客二人が、寒風にさらされている状況については、上の新聞記事(二つ)で、それぞれ写真が掲載されている。
→ 朝日新聞の画像
→ 読売新聞の画像
動画もある。
[ 付記 ]
思い出すと、現場の医師とレスキュー部隊との関係を描いたドラマがあった。TOKYO MER というドラマだ。前に言及したことがある。
→ ドラマのヒロインの死(TOKYO MER): Open ブログ
※ この記事と本項とは、特に関係ありません。