2022年12月23日

◆ 北陸の大雪の理由は JPCZ

 北陸に大雪が降るのはなぜか? 「日本海から水蒸気を受けるからだ」と言われることが多いが、実は JPCZ のせいだ。
 
 ──
 
 北陸は大雪が多い。本日も大雪が予想されている。
 強い冬型の気圧配置となった影響で、23日は各地で大雪となっている。
 24日午後6時までに予想される24時間降雪量は、いずれも多い所で北陸100センチ▽東北・東海・中国70センチ▽北海道・近畿60センチ▽四国50センチ▽九州北部40センチ▽関東甲信30センチ▽九州南部20センチ。25日にかけても各地で降雪が続く予想となっている。
( → クリスマス寒波、大雪警戒 北日本〜西日本の日本海側中心に|朝日新聞

 北陸が極端に大雪になっている。東北や北海道よりも多い。これは「日本海からの水蒸気を受けるからだ」ということでは説明が付かない。その説明だと、東北や北海道の方がもっと多いはずだからだ。(水蒸気は同じで、温度が低いので。)
 
 ──
 
 この問題は、気象用語で説明されている。 JPCZ という概念だ。
 23日夜からは低気圧が東の海上に抜け、大陸側の気圧が高くなるため、日本列島は西高東低の強い冬型の気圧配置になる見通し。
 こうした冬型の気圧配置の時には、日本海に帯状の雪雲(日本海寒帯気団収束帯、JPCZ)が発達すると、日本海側の同じ地域に雪雲が流れ込み続け、特定の地域が短時間で大雪に見舞われる恐れがある。
 JPCZは、大陸からの季節風が朝鮮半島北部の高い山脈をいったん二つに分かれて迂回(うかい)、日本海側で再び合流し、海上の水蒸気を取り込んでできる帯状の雪雲のことだ。短時間で雪が降り積もると、道路の除雪が追いつかず車両が立ち往生するなどし、大規模な交通障害を引き起こす要因になる。
 福島県と新潟県では18日から19日にかけて、相次いでJPCZによる顕著な大雪が観測され、地元気象台が「顕著な大雪に関する情報」を出して注意を呼びかけた。新潟県の国道8号で、約22キロにわたって大規模な立ち往生が発生し、解消まで約38時間かかった。今回の寒波でも、JPCZが発生して、同様の降雪が観測される可能性がある。
( → クリスマス寒波の日本列島 「JPCZ」発生で大雪になる可能性も|朝日新聞

 もっと詳しい説明は、Wikipedia にある。
 冬の日本海では、暖流である対馬海流などの影響で比較的暖かい海水の上を、寒気団の冷たい風が通り抜けることで、背の低い雪雲(乱層雲)ができる。本来であれば、雲の高さは2,000 mから3,000 m程度である。また、気象衛星の雲画像でも分かるように、雪雲は筋状に何十本も平行に並ぶ(筋状収束雲)。しかし時に、この筋が平行ではなく、一定のラインで衝突することがある。これが日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)である。
 原因としては、朝鮮半島北部にそびえる白頭山やその周囲の長白山脈の影響が指摘されている。最高で2,700 mを超える高い山により、寒気の気流が強制的に二分され、再び合流するときに収束する。雲の高さと山の高さがほぼ同じであるため、上空の雲で見えなくなるようなことがなく、人工衛星からの雲画像でもはっきりと写る。実際、JPCZは白頭山付近から南東に伸びるように位置することが多い。

jpcz2.jpg

 赤い楕円は長白山脈。青い線は長白山脈によって二分された気流を示す。黄色い線は雲パターンの分かれ目を示すもので、黄色破線の下側と黄色点線の上側は雲列が下層風に平行に並ぶ筋状雲パターンの領域、黄色破線と黄色点線の間は雲列が下層風と直交する方向に並ぶ帯状対流雲パターンの領域。帯状対流雲パターンの南縁付近に見いだされる濃い雲の帯がJPCZと考えられる。
( → JCPZ:Wikipedia

 この概念がいかに生じたかは、気象専門家(森田正光)の解説がある。
 日本経済新聞社が運営する新聞・雑誌記事データベースによると、最初にメディアに登場したのは2014年12月だから、まだ10年も経っていない。しかし森田さんは、かなり昔から使われてきた気象用語だと語る。
 「JPCZという用語自体は、気象庁の予報官だった岡林俊男さんが、1969年に初めて提唱したものです。メディアではこれまで、同じ意味の『線状降雪帯』がよく使われてきましたが、それよりも古い用語ですね」
 JPCZは歴史ある気象用語で、気象予報士の間では、当たり前のように使用されてきたものだったのだ。では、なぜ近年になって天気予報番組で多用されるようになったのか。
 「『JPCZ』は1年間に数回から10回ほど現われ、現象としては珍しいものではありません。私自身は、以前から番組でも使ってきました。急にテレビで広まったのは、視聴率の高い番組で使われたことがきっかけかもしれません。こんな専門用語が、普通に使われるようになるとは、おもしろい話ですねえ」
 JPCZが発生するのは山陰から東北までだが、そこに風などさまざまな気象条件が重なって、今回は北陸に豪雪を降らせた。大きな被害が出たことで、JPCZという用語が繰り返し報道される事態になった。
「今年は、日本海の水温が例年より2度くらい高いんですよ。水蒸気の量が増えて雲が大きくなるため、大雪になるのです。12月26、27日ごろからもう一回、4日間くらい豪雪となるでしょう」
( → ニュースで急増する謎ワード「JPCZによる大雪が…」気象予報士・森田正光さんも驚き「こんな専門用語がテレビに出るなんて」

 ともあれ、北陸に大雪が降る理由はわかった。日本海の水蒸気だけが理由なのではない。その西にある高い山が理由なのだ。
 白頭山という山の、その白頭のごとき山頂が、頭で風を割ることで、北陸に大雪をもたらすのだ。


白頭山




 山頂に湖があるという画像。
  → https://x.gd/9YqJZ
 


 [ 付記 ]
 JPCZという用語は、いかにもセンスがない。そこで、私がかわりに別の名称を提案しよう。こうだ。
    白頭山流   the stream of Paektu Mountain (SPM)

posted by 管理人 at 23:48 | Comment(0) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ