2022年12月18日

◆ 生活保護課の本末転倒

 (役所の)生活保護課の仕事は、「生活保護をしないこと」「受給を制限すること」になっている。だが、これでは(本来の福祉という仕事に反するので)本末転倒だ。

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 役所の本来の仕事は、国民(住民)のために奉仕することだ。たとえば、住民サービスや福祉などの業務をすることだ。
 ところがどういうわけか、生活保護の仕事に限っては、「生活保護費を出すこと」ではなく、「生活保護費を出さないこと」が仕事となっている。つまり、住民が「生活保護を申請します」と申し出たら、その申請をいかにして妨害するかが役人の仕事となっている。これでは(役所の)本来の目的に反するので、本末転倒と言える。倒錯的だ。……そういう矛盾を指摘したい。(結論)

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 この結論の論拠としては、生活保護課の仕事は、「生活保護をしないこと」だ、ということがある。この事実の裏付けが必要だろうから、示しておこう。

 まず、「たいていは断られる」という実態がある。
  → 生活保護は「7割が役所で断られる」生活保護の申請書をくれない時は
 つまり、申請の7割が断られるという数値があるわけだ。

 さらに、細かく見ると、どういう場合に断られるかがわかる。「申請者が実は貧しくないから」というような場合もあるが、役所の都合で断られることもある。下記の例だ。
何かと理由をつけては、別の福祉事務所で申請するよう勧められます。つまり、たらい回しにされます。
例:A市で生まれ育ち、B市で生活していて、C市に親族が住んでいるホームレスの場合
( → ホームレスは生活保護を受けることはできる?できない? | 生活保護を学ぼう

 上の例では、A市、B市、C市の3市で、生活保護の申請者を押しつけ合って、たらい回しにされる。それで、結局はどこでも受け入れられない。

 では、どういう場合に受け入れられるかというと、「コネ」みたいなものが必要だ。要するに、申請者本人が自分で行くだけでは、生活保護費はもらえない。そこで、本人でなく(援助の)専門家が同行した場合にのみ、役人と交渉ができて、生活保護費をもらえる。

 では、その生活保護の援助の専門家とは? それは、このページに書いてある。
  → (生活保護費をもらえるための援助の専門家の情報)

 要するに、こういう特殊情報を知っている情強の人だけが、生活保護費を受給できる。そうでない情弱の人は、生活保護費を受給できない。だから、貧しくて情弱である人は、ホームレスになるしかない。ホームレスの人がこれほどにも多いのは、制度がそういうふうになっている(簡単にはもらえないことになっている)からなのだ。
  → なぜホームレスたちは生活保護を受けないのか? | 日刊SPA!

 特にひどいのは、空き缶回収・廃品回収などの、わずかな収入がある人たちだ。これの人は、わずかな収入があるがゆえに、「働く能力がある」と見なされて、生活保護の受給資格を失う。そういう制度的な欠陥がある。(嘘みたいだが、本当だ。私が言っているのではなく、下記に書いてある。)
 生活保護法が十分に機能しているのであれば、失業などによりホームレス状態になった人は、そのほとんどが生活扶助や住宅扶助を受けられることになります。
 しかし、実際には要件にある「働く能力がある人」は少なくないため、要件から外れてしまい、生活保護を受けられないことが多いです。
 わずかな収入となる廃品回収が就労とみなされて生活保護を受けられないというのは、本来の目的から逸脱しており、本末転倒といわざるを得ません。
( → ホームレス状態の人がなくならない原因とは?生活保護の問題点や支援方法について

 ともあれ、現状では、以上のようにいろいろと問題がある。困った。どうする?

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 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 現状のように、役所が生活保護の申請を拒むのは、生活保護の費用を自治体が払っているからだ。かなりの部分は国庫から補填されるが、一部(25%)は自治体の負担となる。その負担をイヤがるので、自治体は申請を拒む。特に、都会の自治体はそうだ。(後述の ※ )
 そこで、生活保護の費用を全額、国庫が負担すればいい。さらに、生活保護の担当者となる役人の給料の分(事務経費)も、国庫が負担すればいい。こうすれば、自治体としては申請を受け入れることに、何の負担もないので、気軽に申請を受け入れることができる。それどころか、過疎地においては、人口の増加というメリットを得る。地元の商店も、住民が増えた分、売上げが増える。かくて、「生活保護の費用の全額国庫負担」によって、問題は解決する。

 ※ 生活保護費の地元負担分は、4分の1であり、4分の3が国庫負担となる。ただし地方の貧しい自治体では、あとでかなりの分を補填してもらえる。(地方交付金の増額という形で。)一方、都会の自治体では、補填してもらえないので、丸損である。

 ──

 なお、このように国が全額負担をすると、生活保護の受給者を広域で処理することができる。
 たとえば、現状では、大阪で申請した人は大阪に居住するしかない。しかし改革後は、(国庫による全額負担になるので)、その人は、大阪で申請したあと、どこで暮らすことも自由にできる。家賃の安い岡山に住もうが、岐阜に住もうが、あるいは京都市内に住もうが、それは本人の自由だ。
 そして、「住む場所にかかわらず、生活保護費は固定された金額を払う(家賃代は場所によって変動させない)」ということにすれば、その人は、「なるべく家賃の安いところに住もう」とするので、どんどん地方に移住するようになる。現状のように、「東京や大阪の都心部に生活保護の受給者がやたらと住みたがる」という問題は起こりにくくなる。そのことで、国の支払額は徐々に低下していく。
  → 生活保護と集団居住: Open ブログ
  → 生活保護は全国一律に: Open ブログ

 そしてまた、生活保護費の全額を国庫負担にすることで、地元の自治体職員は、住民のために奉仕できるようになる。つまり、本来の住民サービスや福祉のために仕事をできるようになる。人でなしの冷たい鬼のような仕事をするかわりに、優しい暖かい慈母のような仕事をすることができるようになる。……これこそ、自治体職員のあるべき姿だろう。

 しかも、こういうふうに誰もが幸福になる道を選ぶと同時に、国庫の負担も減る。なぜなら、住民が都心部から地方に移転することで、余計な家賃を払わなくて済むようになるからだ。無駄の削減である。

 こういう無駄の削減を図ることこそ、何よりも大切なことだ。それは「国が経営意識を持つ」ということだ。
 現状では、多くの場合、国の金のぶんどりあいをするばかりだ。「こっちに金を寄越せ」「いや、こっちに金を寄越せ」というふうに。だが、そういうふうに配分の仕方を考えるだけではいけない。「パイの切り方を変えるのでなく、無駄をなくすことでパイの総量を増やす」というふうに、考え直すべきなのだ。
 それこそが、「国が経営意識を持つ」ということだ。



 [ 付記1 ]
 生活保護費の受給拒否の理由として、しばしば上げられるのが、「扶養義務者である子供に高所得がある」ということだ。
 この件で話題になった事例がある。河本という芸人が、高所得を得ていたのに親を扶養せずに、生活保護を受給させようとした、という事例だ。かつて大きく話題になったので、本サイトでも言及した。(人名でサイト内検索できる。)
 この芸人の場合、数千万円の年収があったはずだが、キャバクラで女遊びをするために大金を消費するせいで、親を扶養せずにいたらしい。論外である。
 こういう問題をなくすには、どうすればいいか? うまい案はあるか? ある。
 生活保護を受給させることにするが、同時に、息子からは費用を強制徴収すればいいだろう。たとえば、こうだ。
  ・ 年収 500万円を越える場合には、所得の 5%
  ・ 年収 1000万円を越える場合には、所得の10%

 このような額を強制徴収する。
 たとえば、息子の年収が 1500万円ならば、年間 150万円を強制徴収する。そのあと、手数料として5万円程度を差し引いたあとで、残額を生活保護費として支給すればいい。
 これだと、息子の年収が 3000万円や 5000万円になると、生活保護費は年間 300万円や 500万円になりそうだが、別に、構わない。家庭内で金の移動が起こるだけだから、別に問題はない。(国が勝手に吸い上げるわけではない。)
 なお、このようにすると、国の受け取る税額は減る。なぜなら、息子が親に払う扶養費の分は、課税対象から外れてしまうので、その分、息子が国庫に納付する税金は減るからだ。たとえば、年収 3000万円の息子は、本来ならば 3000万円に対する税金を払うはずだったのだが、親に 300万円を払うので、課税対象は 3000万円から 2700万円に減ってしまう。その分、国に払う税金は減ってしまう。(所得税も減るし、住民税も減る。)
 しかしまあ、これで貧しい親は幸福になるし、富の再配分ができることになったので、国民全体としては福祉が向上したことになる。状況は改善したと言えるだろう。
 ※ 扶養家族に対する控除額の設定は、新たに設定をすることになる。現状に比べると、金持ちに有利になることになるが、低所得者の親が有利になるというふうに見なせば、特に問題ない。(なお、親が高所得の場合には、控除不可である。)

 [ 付記2 ]
 役所の生活保護課の職員は、鬼のように厳しい人ばかりがいるわけではない。特に、都会の富裕な自治体であれば、生活保護費を払うことにうるさくはないので、職員もまともな仕事ができるようだ。(優しい暖かい慈母のように。)
 そういう役所の生活保護課の職員の実態については、前にドラマ化されたことがあった。住民のために奮闘する新卒職員の姿が描かれている。
  → 健康で文化的な最低限度の生活 - フジテレビ





 これの原作は漫画だ。一部を無料で試し読みできる。



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 なお、このドラマからわかるように、生活保護課の職員は、定期的に受給者の住居を訪問して、生活態度を把握している。したがって「貧困状態」は必ず確認される。
 ゆえに、不正受給で豊かな生活をすることはできない。もしバレれば、即時、支給停止となる。したがって「生活保護を安易に認めると、不正受給が増えそうだ」という心配は、特にしなくてもいいだろう。

 [ 付記3 ]
 生活保護なんて、どうせ他人事さ。おれの知ったこっちゃないぜ……と思う人が多そうだ。だが、決して他人事ではない。影響することがある。
 1年前に、大阪でビル放火事件があったが、その放火が起こったのは、生活保護の申請を断られた人が、自暴自棄になったからだったのだ。
 昨年12月に大阪市の心療内科クリニックで起きた放火事件では26人が犠牲になった。ノンフィクション作家の吉川ばんびさんは「犯人男性は事件を起こすまで生活に困窮しており、生活保護を2度申請するも、いずれも受給できなかった。事件の背景には、生活困窮者の社会的孤立という問題がある」という。
( → 83円を引き出し残高はゼロに…生活保護を2度断られた男は、そしてクリニックに火を放った 社会から孤立した生活困窮者たちはどこに行くのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 この件は、本サイトでも前に扱ったことがある。
  → 放火殺人と生活保護: Open ブログ

 この項目でも、本項と同じような対策案を示している。
 ともあれ、生活保護の人を救うことは、一般人が巻き添え災害を受ける危険を引き下げることになる。情けは人のためならず、だ。
 安倍元首相は、統一教会の被害者を見捨てたことで、銃弾に倒れた。生活保護の被害者を見捨てれば、放火で焼かれることもある。情けは人のためならず、と心得よう。
 
 
posted by 管理人 at 23:32 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
各々の自治体の生活保護課の方針は、生活保護課の課長に依拠すると聞きますが、これが曲者で3〜5年で入れ替わる、後任課長は別部署から配属と、スペシャリストを育てる気が無く、丁寧な引継ぎが行われ難い構造になっています。
あれ?どこの役所も同じでした・・・
Posted by XFER at 2022年12月19日 17:32
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