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Twitter はイーロン・マスクが横暴をふるっている。
→ ツイッター、CNNやNYタイムズ記者のアカウント凍結 対抗SNSマストドンも - CNN.co.jp
→ マスク氏、TwitterからMastodon排除か URL投稿禁止、リンクに有害判定、公式アカ凍結 - ITmedia NEWS
NYタイムズ記者のアカウントを凍結したというのは、NYタイムズが「 Twitter のやばい事情」を明かす記事掲載したせいらしい、とも言われる。その記事は下記だ。( Seattle Times に転載されたが、同一記事。)
To cut costs, Twitter has not paid rent for its San Francisco headquarters or any of its global offices for weeks, three people close to the company said. Twitter has also refused to pay a $197,725 bill for private charter flights made the week of Musk’s takeover, according to a copy of a lawsuit filed in New Hampshire District Court and obtained by The New York Times.
Twitter’s leaders have also discussed the consequences of denying severance payments to thousands of people who have been laid off since the takeover, two people familiar with the talks said. And Musk has threatened employees with lawsuits if they talk to the media and “act in a manner contrary to the company’s interest,” according to an internal email sent last Friday.
コストを削減するため、Twitter はサンフランシスコの本社やグローバル オフィスの家賃を数週間にわたって支払っていないと、同社に近い 3 人の関係者が語った。 ニューヨーク・タイムズが入手したニューハンプシャー地方裁判所に提出された訴訟の写しによると、ツイッターはまた、マスクの買収の週に行われたプライベートチャーター便の197,725ドルの請求書の支払いを拒否した.
ツイッターの経営陣はまた、買収後に解雇された何千人もの人々への退職金の支払いを拒否することの結果についても話し合った、と会談に詳しい2人の関係者は語った。また、先週金曜日に送信された社内メールによると、マスクは従業員がメディアに話しかけ、「会社の利益に反する方法で行動する」場合、訴訟を起こすと脅迫しています。
( → Musk Shakes Up Twitter’s Legal Team as He Looks to Cut More Costs | The Seattle Times )
こういうやばい事情を暴露されてしまったので、頭に来たようだ。
また、マストドン( Twitter の代替アプリ)へのリンクを禁止したというのは、次の事情がある。
飛行機の航路は、国の航空局が常にリアルタイム情報を公開している。そこで、ここから情報を仕入れて、イーロン・マスクのプライベートジェットの情報を常にリアルタイムで公開しているTwitterのアカウントがあった。イーロン・マスクはプライバシー情報をさらされてしまうので、怒髪天を突く感じだったが、相手は合法的にやっているので、どうにも止めようがない。そこで6兆円をかけて、 Twitter を買収して、この暴露アカウント(@elonjet )( https://twitter.com/elonjet )を停止した。すると相手は、 Twitter のかわりに、マストドンのアカウント( https://mastodon.social/@elonjet )で情報公開を始めた。これではせっかく Twitter のアカウントを停止してやったことの意味がない。そこで、せめてものつもりで(あるいは腹いせで)、 Twitter からマストドンへの接続をいろいろと制限ししてしまった。(完全に切断するというのとは違って、さまざまな方法で邪魔している。詳細は → ITmedia )
以上のようなイーロン・マスクの方針に対して、はてなブックマークでは悪評だらけだ。
→ はてなブックマーク
→ はてなブックマーク
こんなに悪評だと、Twitterの利用者も減りそうだし、 Twitter への広告の出稿も減りそうだ。後者はすでに具現化している。
→ アップル、Twitterへの広告ほぼ停止か? イーロン・マスク氏は抗議! | GetNavi web ゲットナビ
アップルだけでなく、他社もそうだ。
Volkswagen、General Motors、General Millsなどの大手企業は出稿を見合わせている。
( → Appleの担当広告代理店、クライアントにTwitterへの出稿停止を奨励 | ゴリミー )
こんなことだと、 Twitter 社は倒産しかねないぞ……と思っていたら、イーロン・マスク自身が「倒産しかねない」と言っているそうだ。上記記事では、上記部分に続いて、こうある。
イーロン・マスク氏は、Twitterは「破産もあり得る」と従業員に警告。
まさか、と思ったが、経理を見ると、十分にあり得る。

出典:ガベージニュース
売上げは急上昇しているが、利益率は0%近辺をうろついている。コストカットをすれば、将来的には利益率がすごく高くなることも見込めそうだ。ただしそれは、経営が順調であった場合だ。現実には、マスクの改革が不評で、広告主がどんどん逃げ出している。こんなことだと、売上高は半減することもありえそうだ。そうなったら、一挙に大赤字である。当然、倒産しかねない。
売上げが赤字になるだけでなく、Twitterの社員が大幅に解雇されてしまったので、 Twitter という会社自体が存続しにくくなっている。下手をすると、会社の重要な機密情報にすら、アクセスできなくなるかもしれない。こうなると、 Twitter という会社自体がなかば視認状態となってしまう。生ける屍といったありさまだ。……こうして Twitter は破滅していくのかもしれない。
そもそも、 Twitter という会社は、年間総売上がたったの 50億ドルしかない。そんな会社に、イーロン・マスクは 440億ドルを投入した。売上げの全額がまるまる利益になったとしても、回収には9年間もかかる。現実には事業を維持するための出費が莫大にかかる(現状では売上高とほぼ等しい経費がかかる) 。これではとうてい投資額の回収は望めない。どう考えても、無茶である。
それでもマスクは世界一の資産家だから、自分の莫大な資産を投入することで、 Twitter を維持できる……と思うかもしれない。しかし、マスクが世界一の資産家だったのは去年のことで、そこから現在までに、資産はほぼ半減してしまった。
→ マスク氏の資産、今年14兆円余り目減り−世界の富豪で最大の損失 - Bloomberg
→ マスク氏、世界一の資産家から転落 テスラ株下落が原因 - BBCニュース
テスラ株が暴落したせいで、1000億ドル(14兆円)以上の損失をこうむった。世界一の資産家からも転落してしまった。そして、そうなったのは、 Twitter なんかにかまけて、評判をすっかり落としてしまった(カリスマのメッキが剥げた)からだ。
実を言うと、テスラ株が暴落したのは当然だ。なぜなら、それまでの市場の評価が高すぎたからだ。
時価総額では、2位から 10までの自動車会社すべてが束になっても、テスラ1社にかなわなかった。

出典:THE OWNER
しかし、「 2位から 10までの自動車会社すべてが束になっても、テスラ1社にかなわない」ということを、事業規模において実現するには、将来の電気自動車のシェアの過半数をテスラ1社で占めることが必要となる。だが、そんなことは、現実的には不可能だ。
また、仮にそれが実現したとしたら、テスラは「市場のおいしいところだけを取る」(高級車を買いたがる高所得者だけを相手にする)ということはできなくなり、低所得者の買いたがる低価格車も販売しなくてはならないので、必然的に、利益率が下がってしまう。一般に、ベンツやポルシェのような高級車メーカーは、高所得者を相手に高級な車を売って高い利益率を得るが、大衆車をたくさん売るメーカーは高い利益率を望めないのだ。そして、テスラが市場の過半数を占めたとなると、その時点で、高級車メーカーではありえなくなって、高い利益率を得られなくなる。そうなると、会社価値(時価総額)が高くなることはありえないのだ。
今は電気自動車という分野で、テスラは他社よりも圧倒的に技術のリードを保っているので、高い利益率を得ることができる。しかし将来的に、電気自動車が大量に普及するようになったら、もはや技術の先進性はあまり意味を持たなくなり、単に「安くて動くだけの車」というものが市場で求められるようになる。そうなると、テスラの有利さは一挙に失われてしまうのだ。
結局、テスラ1社で「他の自動車会社すべてを上回る」というような事業価値はない。なのに、株価はそういう過剰な株価になっている。とすれば、現状のテスラ株は、過大評価であって、将来的には株価は下がるに決まっているのだ。テスラ株がどれほど価値を持つとしても、「将来の自動車産業のすべての価値」を上回るはずがない。なのに、現状の株価は、そういう過剰な金額になっている。とすれば、テスラ株は暴落するのが当然であり、マスクの過大な資産は世間の過剰な期待(つまり妄想)の上に成立しているのである。それは砂上の楼閣のようなものであり、やがては波に襲われて一挙に崩壊してもおかしくはないのだ。
そして、その真実に気づかせてくれたのが、Twitterにおける失敗だったのかもしれない。この失敗によって、「天才経営者」というカリスマ性の金メッキは剥がされ、地金が見えてくる。その後は、6兆円のTwitter買収が失敗だと見なされて、一挙に大損する結果になるかもしれない。
なお、マスクがTwitterを買収したとき、資金の全額を自己資金でまかなったわけではない。440億ドルの買収資金のうち、130億ドルを銀行融資でまかなった。
→ 米ツイッター買収融資銀行、債権売却できず=関係筋 | ロイター
この額は、買収資金の3割に当たる。したがって、Twitterの株価が7割下落したら、自己負担の分ではまかないきれず、銀行融資が滞ることになる。それは不渡りを出すということに相当して、一挙に Twitter 倒産になりかねない。
Twitter 買収のときの借金は、マスク個人というより Twitter 社に貸し付けられているらしいが、そのせいで、 Twitter 社には莫大な負債がのしかかっている。
440億ドル(約6兆5000億円)のツイッター買収が完了し、約130億ドルのデットファイナンスを提供した米モルガン・スタンレー率いる銀行団は、リスクの高い融資債権をいつまでも抱えるわけにはいかない。この先、大幅な損失を出さずにローンを売却するという荷の重い仕事が待っている。
最初のハードルに借り入れコストの急上昇がある。
ツイッターの債務で最もリスクが高い無担保社債にはCCC級の格付けが付与される可能性が高いが、このジャンク債金利は15.4%に大きく上昇。銀行団がマスク氏にデットファイナンスを提供した際に約束した最大金利の11.75%を上回る。
さらに銀行団とマスク氏は、ツイッターのボット問題が結局は問題ではない理由と、一部で年間約12億ドルと推定される金利負担を手当てする方法を説明しなくてはならない。
( → マスク氏のツイッター買収完了、融資銀行のドタバタ劇はまだこれから - Bloomberg )
Twitter 買収の結果、莫大な金利負担がのしかかり、そのせいでかえって Twitter 社は倒産してしまうかもしれない。
イーロン・マスクは、 Twitter 社を買収したが、そのとき、世間一般にひろがる Twitter 株主から株を買い上げた。その株を買うときに、自己資金だけではまかなえず、借金で買った。その借金がのしかかるが、 Twitter の業績が悪化すれば、借金の金利負担ばかりが巨額にのしかかり、 Twitter という資産はただの重荷にしかならない。6兆円でゴミを買ったようなものだ。
王様が自分勝手にふるまったあげく、宝をゴミに変化させてしまい、宝を買ったときの借金に自分は押しつぶされてしまう……ということになりかねない。
……と思っていたら、最新ニュースでは、「テスラ株を大量売却」という報が出た。
借金があまりにもひどくて、 Twitter が倒産しかねないので、前もってその対策をしたようだ。なるほど。これは合理的な判断だ。 Twitter がつぶれるよりは、テスラ株を売却した方がいい。
しかし、テスラ株は、イーロン・マスクにとって虎の子であったはずだ。これを次々と売却するようでは、社内における実権を取る基盤が失われかねない。非常に苦しい決断だっただろう。比喩的に言えば、「息子の心臓が止まるのを防ぐために、自分の右腕を切り落とす」というような苦しさだ。
そして、それというのも、「赤の他人を自分の養子にする」というような形で、 Twitter 社を買収したせいだ。今となっては、そんな馬鹿げた買収をしていることを悔いていることだろう。
元はと言えば、プライベートジェットのアカウントに腹を立てていただけのことだったのだが。
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最後にひとこと。
「 Twitter はつぶれるか?」という問いには、「マスクの全資産を投入すれば、 Twitter をつぶさずに済む」とは言える。だが、そのかわり、本体であるテスラ社の経営が傾きかねない。 Twitter がつぶれるかわりに、本体であるテスラ社が部分的につぶれるような形になりかねない。……どっちがマシかと言えば、 Twitter 社がつぶれる方がマシだろう。
マスクの最善の策は、Twitterからはもはや手を引くことだ。できれば他人に経営を任せて、自分は金の負担だけを考えていることだ。そのことは、マスクも考慮したようだ。
→ イーロン・マスク氏 ツイッター経営を別の人に任せる考え示す
これは4週間前の報道だ。この時点では、こう考えていた。なのに今では、横暴の限りを尽くしている。まるで「走れメロス」の冒頭の王のように。このままではろくな結果にはなりそうにない。
メロスは激怒した。必ず、かの邪智 暴虐 の王を除かなければならぬと決意した。
【 後日記 】
その後、イーロン・マスクは「後任が見つかりしだい辞任にする」と表明した。「これでテスラ社の経営が安定する」と株式市場では好意的に受け止められているようだ。
Twitter 社がつぶれるかどうかというと、後任しだいだろう。後任がまともな方針を取れば、従来と同様になり、 Twitter はつぶれずに済む。しかしそのためには、マスクによるこれまでの改革を全否定する必要がある。
マスクによるこれまでの改革を全否定するような後任を、マスクが任命できるか? マスクにそれだけの度量があるか? ……そこが成否の分かれ目となる。
仮にマスクが、自己の改革路線の踏襲を要求したのなら、現状追認と同じになり、Twitter 社の倒産は不可避だろう。そうなるかどうかは、マスクの決断しだいだ。つまり、彼の度量しだいだ。
【 関連項目 】
本項の続編がある。
→ E.マスクの壮大な勘違い: Open ブログ
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欧州連合(EU)欧州委員会のヨウロバー副委員長は16日、米ジャーナリストのツイッターのアカウントが凍結された問題に懸念を表明し、ツイッターがEU法の下で制裁対象となる可能性があると警告した。
違反した企業には、世界における売上高の最大6%の罰金を科すほか、繰り返し違反した場合はEU内での活動を禁止する。
https://www.sankei.com/article/20221217-IONY3E5LUZIBTC75VN5O4RDFN4/
→ ツイッター マスク氏 有力メディア記者のアカウント停止を解除 | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221217/k10013926331000.html
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