2022年12月08日

◆ 年車受賞にサクラは不適

 カー・オブ・ザ・イヤー(年車)は、日産サクラに決まった。だが、これは適切ではない、と私は考える。

 ──

 カー・オブ・ザ・イヤー(2022 - 2023)は、日産サクラに決まった。三菱の兄弟車も含まれるが、どっちみち日産が開発して、ちょっといじっただけの車だから、実質的には、日産サクラと呼んでいいだろう。

 詳細は下記だ。
  → 第43回 2022 - 2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー | 日本カー・オブ・ザ・イヤー公式サイト
1位  日産 サクラ/三菱 eKクロス EV (日産/三菱)
2位  ホンダ シビック e:HEV/シビックタイプR (本田)
3位  トヨタ クラウン (トヨタ)
4位  マツダ CX-60 e-SKYACTIV D 3.3 (マツダ)
5位  日産 エクストレイル (日産)
6位  ヒョンデ IONIQ 5 (ヒョンデ モビリティ ジャパン)
7位  日産 フェアレディZ (日産)
8位  ルノー アルカナ (ルノー・ジャポン)
9位  BMW iX (ビー・エム・ダブリュー)
10位   ランドローバー レンジローバー
11位   スズキ アルト (スズキ)

 
 カー・オブ・ザ・イヤーがどうなるかは、事実の問題ではなく、人の主観の問題である。だから、いちいち批判するには当たらない、とも言える。
 だが、同様の主観によって、勝手に不満を言うことも人の自由だろう。そこで私の個人的な見解を述べる。


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 軽自動車は不適


 軽自動車をカー・オブ・ザ・イヤーに選出したのは、今回が初めてだ。
  → 【2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー】軽の受賞は史上初(Response.jp)
 だが、過去の歴史は別として、軽自動車をカー・オブ・ザ・イヤーに選出するのは不適切だ、と考える。軽自動車は日本独自の規格であって、外国に輸出されることはないからだ。日本独自のガラパゴス規格の特殊車両であるがゆえに、あまりにも内向きの車であって、顕彰するには足りないからだ。
 この件は、1年前にも述べたことがある。コメント欄で。(国内専売車である日産ノートのカー・オブ・ザ・イヤー受賞に反対している。)
 ま、明確な「資格」の規約があるわけではないので、「規約違反」を理由には資格喪失にはできないが、いわば「倫理的な不適格」で資格喪失にしたい感じだ。

 ノートも同様だ。世界販売できないような、日本国内限定モデルというのは、軽自動車と同様で、ドメスティックすぎる。規約では資格喪失ではないとしても、倫理的・心情的に認めがたい。

 その意味では、今後、画期的な軽自動車が出たとしても、私は反対する。来年、日産が軽自動車の EV を出すようだが、それがどれほど画期的で優れていたとしても、日本国内専売というのであれば、反対する。(外国にも輸出するのならば、反対しない。)
( → 年車受賞にノートは不適: Open ブログ

 まるで1年後に起こる「サクラの受賞」を予想しているかのような口ぶりだ。予言者みたい。
 ともあれ、1年前に述べた理由そのままの理由で、サクラの受賞には反対したい。

 ※ 「補助金をもらうと 178万円で買える」というのが受賞理由の一つであるようだが、それで貢献しているのは法外な補助金を出す日本政府だ。日本政府をカー・オブ・ザ・イヤーに選ぶのならばまだわかるが、サクラの方を選ぶのは見当違いだ。
 ※ そもそも 178万円で買えるというのは、誇大宣伝である。詐欺師の嘘である。なぜなら、55万円の補助金をもらえるのは、特別に高額な付属品を買った場合に限られるからだ。通常は 45万円しかもらえない。このことは、下記で解説した。
  → 日産の EV の詐欺商法: Open ブログ
  こんな詐欺商品をカー・オブ・ザ・イヤーに選ぶなんて、専門家たちは詐欺師にコロリとだまされているね。ひどいものだ。

 アリアなし


 最も不服を唱えたいのは、日産アリアが候補にさえ含まれていないことだ。私の個人的見解としては、日産アリアがカー・オブ・ザ・イヤー受賞にふさわしい。なぜなら、この車だけが、日本におけるまともな EV だからだ。唯一の 国際的 EV と言える。
 仮に、アリアがなかったら、日本の EV は壊滅状態だったと言える。世界で評価される EV は、日本には一つもなかったことになる。日本の EV 産業全体が世界的に落後していたことになる。サクラという日本国外では売れないガラパゴス車しかなかったことになる。あまりにも悲惨だ。
 ところが唯一、アリアという車だけがあった。そのおかげで、日本は EV の世界的な競争から落後しないで済んだ。かくて日本の自動車産業の壊滅を免れた。……それほどにも、アリアには大きな意義がある。
 ゆえに、アリアは日本における唯一の希望の星として、十分に受賞の価値がある。

 ちなみに、私と同意見の人は、世界的にも多い。つまり、私の意見が標準的だ。その証拠は、下記にある。
  → 日産『アリア』やスバル『ソルテラ』&トヨタ『bZ4X』、最終選考に…欧州カーオブザイヤー2023 | (Response.jp)
 欧州カーオブザイヤー2023 には、日産アリアと、トヨタ bZ4X (ソルテラを含む)だけが選ばれた。このうち、 bZ4X の方は、ろくに生産されていないし、日本では新車販売さえもされていないので、ほとんど無視してもよさそうだ。となると、欧州の目から見て、評価するに足るのはアリアだけなのだ。それ以外のすべての日本車は無視してもいいのだ。

 シビックが2位


 冒頭の 公式サイト によると、カー・オブ・ザ・イヤーの2位はシビックだ。
 しかし、これも納得できないね。シビックなんて、巷ではほとんど話題にもなっていない。モデルチェンジがあったことすら知らない人が大多数だろう。
 そもそもシビックは全幅が 1,800-1,890 mm もあって、日本国内向けの車ではない。米国専用車と言ってもいいくらいだ。
 車の出来は悪くないようなので、高く評価することはあってもいいが、カー・オブ・ザ・イヤーの2位にするというのは、やりすぎだ。
 「1位は日本でしか売られていない車で、2位は実質的に米国向けの専用車」というのでは、あまりにも実状から懸け離れている。
 たぶん、技術的評価や、車の出来映えの評価で、1位と2位を決めたのだろうが、世間の販売実績とあまりにも懸け離れた評価は、オタク過ぎると言えるだろう。

 クラウンと CX-60


 クラウンと CX-60 が3位、4位に来るのは、妥当だ。逆に言えば、妥当なのはこれくらいしかないね。

 エクストレイルが5位


 エクストレイルが5位というのも呆れる。これは2年前に北米で出たローグそのものだ。二年前の車を今さらカー・オブ・ザ・イヤーに選ぶなんて、時代錯誤も甚だしい。車そのものも、2年前のレベルである。デザインも古臭いデザインだ。(アリアやノートに比べると、あまりにも古い。)
 ま、 e-POWER を使ったところだけは評価できるが、それならば、「2年前に出たローグの追加モデル」という評価になる。そんなものを新車扱いして、カー・オブ・ザ・イヤーに選ぼうとするなんて、馬鹿げている。これをアリアよりも上に位置づけるというのは狂気の沙汰だ。

 さらに、別の難点がある。エクストレイルも搭載される VC-TURBO は、「可変圧縮比エンジン」ということで、「画期的技術による理想のエンジン」という触れ込みだったが、実際には評判が悪い。
 3気筒ガソリンターボエンジンを採用している。日本仕様とは異なり、e-POWERではない。この3気筒エンジンが、「高回転域で特有の振動音を発生する」とユーザーが指摘した。
( → 新型「エクストレイル」が中国市場で不評の誤算 | 東洋経済

 複雑な機構を取っているので、難点がありそうだと予想したが、案の定、「高回転域で特有の振動音を発生する」という難点があるようだ。三菱のバランスシャフト(サイレントシャフト)のような技術を使えば、解決できるかもしれないが、そのためには3気筒でなく4気筒にする必要がある。そもそも、バランスシャフトを使うという発想すらないのかもしれない。
 こんなエンジンを使っている限りは、エクストレイルは「国内専用モデル」となるしかないね。欧州でキャシュカイを販売すると、「高速走行すると特有の振動音を発生する」という悪評が立ちそうだ。
 さらに、「エンジン直結モードがないせいで、高速燃費が悪い」という難点もある。ひどいね。(可変圧縮比の意義を相殺してしまう。)

 というわけで、結局、エクストレイルはまったく評価できない。

  IONIQ 5 が 6位


 IONIQ 5 が 6位になるという順位そのものは順当かもしれない。しかしこれがアリアをしのぐというのは、やりすぎだ。IONIQ 5 とアリアは同レベルであっていいし、場合によってはアリアの方が上であっていい。性能的にはほぼ同格だが、デザインに大差がある。アリアはとてもカッコいいし、高価格に見える。しかし IONIQ 5 は、すごく安っぽい。走っているのを見たら、ゴルフみたいに安っぽく見えた。印象的にはカローラハッチバックに似ているが、それをカッコ悪くしたような、ずんぐりむっくりのダサいデザインだ。
 性能はともかく、デザインがひどすぎる。

 フェアレディZ が7位


 フェアレディZ は、品質的には異論ないが、販売台数があまりにも少なすぎる。こんな少数販売のスポーツカーをカー・オブ・ザ・イヤーの候補にするというのは、基準がイカレている。よほど画期的な車ならともかく、デザイン以外にはたいして評価するべき点はない。基本的には従来のモデルの延長上にあるので、カー・オブ・ザ・イヤーに選出するほどの車ではない。
 この車の唯一、評価できる点は、「比較的少数しか販売しないスポーツカーを、ちゃんと量産して、安価に販売する」ということだ。そういうスポーツカーは限られているので、「安価に販売する」ということだけで評価できる。
 しかしそれは、カー・オブ・ザ・イヤーの評価基準とはまったく別のことだ。こんな車をカー・オブ・ザ・イヤーの候補にするなんて、頭がイカレているとしか思えない。

 ※ フェアレディZ の性能評価はどうか? ポルシェ・ケイマンとの比較では、馬力では圧勝できるようだが、コーナリング性能では大幅に劣るようだ。ま、値段がずっと安いので、そこは仕方ない。アメリカンに、直線道路を突っ走るための車だろう。



 [ 付記 ]
 RJC カー・オブ・ザ・イヤーも、一足先に、サクラを選んでいる。これもひどいね。(理由は同じ)

 なお、日産アリアは、秋以後に量産すると公表されていたが、現実には、秋以後の販売台数は激減している。数字は下記。
  → 日産 アリア 新車販売台数の推移/売れ行きと生産状況は?
 「輸出向けに国内販売を絞っているのか」とも思えたが、実は、米国でもまだ販売していない。
 一時期は量産していたようだが、その後、量産できなくなっているようだ。生産面に問題があるのかもね。(もしかしたら CATL の電池を入手できなくなっているのかも。その可能性はある。)



 [ 蛇足 ]
 「日産の悪口ばかりを書くな!」と文句を言う人もいるかもしれない。だが、本項は日産の悪口を言っているわけじゃない。日産を高評価する専門家の悪口を言っているだけだ。両者は同じことではないので、勘違いしないように。
 「日産を高評価する専門家の悪口ばかりを書くな!」というのは、ありえそうだが、これもおかしい。なぜなら、「ばかり」ではないからだ。つまり、今回が初めてだからだ。あ、間違えた。二度目だ。一度目は、下記だ。



 【 関連項目 】

 → 年車受賞にノートは不適: Open ブログ

  ※ 1年前のカー・オブ・ザ・イヤーの記事です。



 【 追記 】
 文中に示したが、次の事実がある。
 「 55万円の補助金をもらえるのは、特別に高額な付属品を買った場合に限られるからだ。通常は 45万円しかもらえない」
 一方、高額な付属品を買った場合には、その付属品の価格(約 15万円)が上乗せされる。とすると、払う金は 178万円+15万円 の 193万円となる。
 結局、次の二通りのいずれかだ。
  ・ 188万円 …… 補助金 45万円をもらった場合
  ・ 193万円 …… 補助金 55万円をもらうが、付属品 15万円を買う場合


 そのいずれにしても、178万円では買えない。したがって、「補助金 55万円をもらうので、 178万円で買える」と報じた記事は、誤報であったことになる。
 今回のカー・オブ・ザ・イヤーで「 178万円」という数字を出した報道は、すべて誤報であったのだ。当のマスコミは猛省するべし。

 


 【 後日記 】
 カー・オブ・ザ・イヤー(年車)は、日産サクラに決まったが、その背後には、日産による投票操作があったはずだ。つまり、受賞工作が選考委員になされていたはずだ。
 そもそも、なぜアリアがトップ10 の選考対象に入らなかったか? これはどう考えてもおかしい。少なくともエクストレイルという(2年前に出た)中古車みたいな車に比べれば、ずっと価値があるはずだ。あまりにも不自然である。

 これを説明する理由はただ一つ。こうだ。
 「日産自身が、アリアを選考対象とすることを、辞退したから」
 つまり、受賞辞退である。こうなると、選考委員はアリアを選べなくなる。

 ではなぜ、日産はアリアを選考対象から辞退することにしたか? その理由は、こうだ。
 「アリアとサクラがともに出馬すると、双方に票が割れて、どちらも1位になれなくなる。かわりに別の車(シビック)が、漁夫の利を得て、1位になってしまう。つまり、日産車の共倒れだ」

 具体的な予想得票は、こんな感じ。
  ・ シビック 300点
  ・ アリア  290点
  ・ サクラ  280点

 こうなると、「カー・オブ・ザ・イヤーはシビックになりました」となる。日産としては、それをどうしても避けたかった。だから、アリアを辞退することに決めたのだ。

 ではなぜ、アリアでなくサクラを候補者に残したか? その理由は簡単だ。アリアはほぼ生産中止状態だからだ。一方、サクラは順調に生産できている。生産できない車が受賞するより、生産できる車が受賞する方が、金儲けになる。だから、生産できるサクラの方を出馬レースに残したのだ。

 こうして、アリアが候補に現れないことが、きちんと説明される。
 
 ※ アリアの出馬辞退は、公式に決めたのか、あるいは、選考委員にこっそり工作したのかは、不明である。ま、どっちにしても同様だ。表で工作したか、裏で工作したか、という違いがあるだけだ。
 
 ※ というわけで、選考委員は、いわば日産のためにこっそり隠れて、インチキを働いたも同然だ。選考委員は、日産のサクラだったわけだ。 (言いたいだけ。ありゃー。)
 
posted by 管理人 at 23:16 | Comment(9) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年12月09日 22:34
「日本」カー・オブ・ザ・イヤーは、「日本国内で市販される乗用車のなかから年間を通じて最も優秀なものに授賞する自動車の賞である。」

のだから、日本であまり話題になっていないシビックはともかく、日本専売車であるノートやサクラをそんなにディスってもお門違いでは?

まあ、サクラは補助金なしの素の価格で他の車と比較すべきだし、その時に1位にはならないとは思いますが。
Posted by のび at 2022年12月10日 09:34
> 日本専売車であるノートやサクラをそんなにディスってもお門違いでは?

 ノートやサクラをディスっているわけじゃなくて、選考者をディスっている。
 国内専売ということは、大幅な大量生産ができない特殊車両ということで、経営的にもまずいし、世界的にも「これが日本の代表者です」と世界に顔向けができない。恥ずかしい。みっともない。アリアなら、堂々と世界に示せるのに。クラウンでもいいが。

> 日本国内で市販される乗用車のなかから

 そもそも、国内生産されることが条件になっていない、というのがおかしいよね。
 現状の条件なら、テスラ車が毎年受賞してもおかしくないのだが。
Posted by 管理人 at 2022年12月10日 09:59
もちろん管理人さんは少なくともここで批評されている車種は乗った上で批判されているのですよね?
Posted by なまず at 2022年12月10日 12:47
> 乗った上で

 選考者は、乗った上で選考しますが、批判者は、選考権がありません。批判者にとって必要なのは、乗ることではなく、選考結果を読むことです。
 ついでだが、私は別に「これを選ぶべきだ」と代案を示しているわけではない。アリアでもいいが、クラウンでもいい。
 
 なお、私の批判理由は、「海外で販売されていないこと」だが、それを知るためには、「車に乗ること」は必要ない。車に乗らなくても、そのくらいはわかります。
Posted by 管理人 at 2022年12月10日 13:17
ご存知かと思いますが、カー・オブ・ザ・イヤーは、投票によって選ばれるので、誰であれ不適と断ずるのは、それこそ不適。
不満、が適切では?
Posted by Mosquito at 2022年12月10日 13:18
> 不適と断ずる

 断じていません。「これは適切ではない、と私は考える」「私の個人的な見解を述べる」と書いてあるでしょ。
 あなたは、私の話を読まないまま、勝手に曲解・誤認して、批判している。「相手の話を読まないで批判する」というのが、不適切なんですよ。あなたはタイトルしか読んでいない。
Posted by 管理人 at 2022年12月10日 13:44
いやいや、ちゃんと記事は読んでいて、個人の意見だと承知していますよ。
(そのご意見も否定していません。)
その上で、不適よりも不満の方が良いかなと思ったのですが。
Posted by Mosquito at 2022年12月10日 17:21
> 誰であれ不適と断ずるのは、それこそ不適。

 と書いたでしょ。あなたの理屈によると、
 「誰であれ不適だという個人の意見をもつのは、それこそ不適」
 ということになり、個人の意見をもつことを否定するので、言論弾圧になりますよ。習近平かプーチンみたいだ。

 下手に取り繕おうとするから、小さなミスを取り消すことで、大きなミスをすることになる。こういうふうにして大失敗は起こるものだ。

> 不適よりも不満の方が良いかなと思ったのですが。

 もともと文中に、こう書いてある。
 「だが、同様の主観によって、勝手に不満を言うことも人の自由だろう。そこで私の個人的な見解を述べる」

 つまり、あなたの言うとおりにしている。
Posted by 管理人 at 2022年12月10日 18:02
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