2022年12月08日

◆ ヘディングで脳を損傷する

 (サッカーの)ヘディングで脳を損傷するという明白な証拠が出た。では、ヘディングを禁止するべきか?

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 ヘディングをすると脳を損傷するという明白な証拠が出た。これまではいくつか証拠が出ていたのだが、近年になって、研究が進んで、いろいろと証拠が出た。
 ヘディングのリスクについて、英国では近年、プロの現場でも激しく議論されている。19年には英グラスゴー大が「元選手は認知症などの神経変性疾患で死亡する可能性が一般より約3.5倍高い」と発表。1966年W杯で優勝したイングランド代表の選手たちが相次いで認知症になったことも重なった。
 英スターリング大が、指針を評価した上で「脳は23歳ごろまで発達する。11歳までで十分か」と指摘したからだ。同大は2016年、コーナーキックを想定した練習の前後、選手に記憶テストを行った。すると24時間以内に回復したものの、20回ヘディングした選手たちの脳機能は練習前から41〜67%低下したという。
( → (子どもとスポーツ)ヘディングの危険:上 得点量産の父、「ヘディングに殺された」:朝日新聞

 小学3年だった長男はこのころ、頭痛を頻繁に訴えていた。すごく痛いわけではない。学校に行けないわけでもない。ただ、それが数カ月、続いていた。
 大学病院で精密検査を受けると、診断は「硬膜下血腫」だった。画像をみると、血腫が大きく広がっていた。どこで、脳を損傷するほどの衝撃を受けたのか。普段の生活やサッカーでは覚えがない。
 「原因はヘディングでしょう」
 医師はそう話した。長男に聞くと、ヘディングの練習は、2人組で2メートルほど離れて投げたボールを頭で返す練習をしてきた。
 治療の中で、長男には先天性の「くも膜のう胞」があることもわかった。脳を覆うくも膜が膨らみ、中に脳髄が水風船のようにたまる状態で、硬膜下血腫を起こしやすい。
( → (子どもとスポーツ)ヘディングの危険:中 「頭が痛い」温泉で泣いた長男:朝日新聞

 ガイドラインでは、通常よりも軽いボールなどを使って頭への負荷を減らし、幼児期から中学生まで段階的に技術を習得する方法を例示する。
 JFAは、先行事例として、「サッカーの母国」イングランドの取り組みを参考にした。イングランドは、ヘディングの反復が子どもの脳に悪影響を与える可能性を指摘し、「11歳以下の練習禁止」を決めた。
( → (子どもとスポーツ)ヘディングの危険:下 禁止せず、発達に応じて練習:朝日新聞

 脳への衝撃が脳を損傷するということは、ボクシングにおいて広く知られている。パンチドランカー症とも言われるパーキンソン病になりやすい。「あしたのジョー」で有名だが、モハメド・アリもこれに罹患した。
 ボクシングの場合には、あまりにも強烈な衝撃が脳にかかるが、サッカーの場合には、衝撃の強さでは下回るものの、ヘディングの回数(練習および試合の最中に)がとても多いし、プレーする人口が多いので、患者の数も無視しきれないようだ。
 英国でヘディングによる脳障害が注目されたのは20年ほど前になる。きっかけは、ヘディングで得点を量産した身長約180センチのFWジェフ・アストル氏の死だった。
 ジェフ氏は、ウェストブロミッジ(イングランド1部)で活躍し、1970年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会のイングランド代表。2002年に59歳で亡くなった。
 検視の判断は「職業病による死」だった。娘のドーンさんは、検視に立ち会った病理学者の説明を鮮明に覚えている。「ボクシングの選手のようなひどい外傷が脳に見つかった。何度もヘディングしたことが最大の原因とみられると言われた。
( → (子どもとスポーツ)ヘディングの危険:上 得点量産の父、「ヘディングに殺された」:朝日新聞デジタル

 こういうことであれば、もはやヘディングは一切禁止した方がいい、とすら言えそうだ。
 とはいえ、いきなり禁止すると、従来のプレーに慣れた人々から不満がわんさと出そうだ。
 それならせめて子供だけでも「ヘディング禁止」にしたいところだが、現場の抵抗が多いようだ。


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 ただ、ヘディングを減らしたいという、別の動機もある。それは、ヘディングによるゴールがやたらと多すぎることだ。
 サッカーは本来、フットボールと呼ばれるように、足の競技であるはずだ。なのに現実には、ヘディングによるゴールの比率が高すぎる。これでは「フットボール」でなく「ヘッドボール」だろう。
 たとえば、4年前の「日本・ベルギー戦」では、3点のうち2点をヘディングで奪われた。





 こんなにヘディングばかりでは、もはやフットボールではない、とすら言える。
 特に、コーナーキックやフリーキックの後におけるヘディング・シュートが多すぎる。
 これではサッカーの妙味・醍醐味が失せる、とも言える。興醒めだ。
 困った。どうする?

 ──
 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
 (1) ヘディングによる得点を、ゴール1回で 0.4〜0.5点とする。
 (2) コーナーキックやフリーキックから3分間以内のヘディング・ゴールは、ゴール1回で 0.2点とする。


 以上のようにすれば、足や胴体によるゴール(ゴール1回で1点)に比べて、大幅に軽くなるので、ヘディングをする動機が減る。ヘディングによるゴールが意味を持つ(勝敗を決する)のは、足によるゴールが同点になった場合だけだ。それ以外の場合では、足のゴールの数だけで決まるのが原則となる。(ヘディングによるゴールが足によるゴールに匹敵するためには、ヘディングによるゴールを2〜3回ぐらい重ねる必要がある。)

 こうすれば、ヘディングによるシュートは、ゴールしてもたいして意味を持たなくなるので、普段の訓練でもヘディングの訓練をすることは激減するだろう。
 現状では、ヘディングによる得点も、足による得点も、どちらも同じ点数なので、練習ではどちらも同じぐらいの重要度になりがちだ。
 しかし、上記のように得点の比重を変更すれば、今後は練習でヘディングのために割く時間が激減するだろう。そのことで、ヘディングによる脳の損傷という問題も、大幅に改善されるだろう。

 ※ 将来的にはヘディング・シュートを全廃する、という方針を取るべきだ。そのために、0.4〜0.5点 という点数を、どんどん減らしていくべきだ。5年ごとに 0.1点ずつ引き下げる、というふうに。

 ※ ヘディング・シュート以外のヘディングは、廃止しなくていい。シュートでなければ、強い衝撃は起こりにくいからだ。(シュートするときは、頭を前に動かす。レシーブするときは、頭を後に動かす。前者は衝撃が倍増するが、後者は衝撃が半減する。)

 ※ ついでだが、本項の方針を取った場合には、ベルギー戦やクロアチア戦では、日本は敗北しなかったことになる。ヘディングが得意ではない日本には有利な制度となる。(それが目的ではないが。)

 ※ 経過措置としては、「高校生以下では、ヘディング・シュートの禁止」を試合規定に入れるべきだ。それによって学生サッカーが変質してしまうとしてもやむを得ない。こうでもしないと、「ヘディングの漸進的な禁止」という方向性を取れない。



  ※ 以下は特に読まなくてもいい。細かな話。


 [ 付記 ]
 ヘディングによる得点を、ゴール1回で 0.4〜0.5点とする、と述べた。
 0.5点を上回ると、ヘディングの比重が大きくなりすぎて、「ヘディングを減らす」という所期の目的が達成しにくい。
 0.4 点だと、ヘディング2回でも1点に満たないので、所期の目的を達成しやすい。
 0.5 点だと、ヘディング2回で1点になるので、同点になる事例が多発しやすい。そうなると、(トーナメントで)PK 戦が起こりがちなので、興醒めになる。
 しかし、この問題を回避することもできる。それは、前項で述べた方式だ。つまり、「ゴールポストにボールが当たった回数の多い方が勝ち」(0.1点ぐらいを与える)という方式だ。この方式を併用すれば、0.5点という配点でも大丈夫だ。
     (オマケ)
     なお、この方式を採用することには、別の効果もある。「双方がヘディング得点がなかった場合に、同点となるのを回避できる」ということだ。たとえば、双方が足で2得点して、ヘディングが0得点(0回)だとしよう。ゴールポストにボールが当たった回数が異なれば、それで決着が付く。この方式を採用していないと、「ヘディング得点も同数なので決着が付かない」という問題を回避できる。




 【 追記 】
 日本サッカー協会(JFA)の「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期〜U-15)」の解説がある。
  → 解説文書| サカイク

 ここでは、ヘディングというものを一律にとらえて、「あまり危険じゃないよ」というふうに楽観的にとらえている。問題の所在をまったく理解できていない。
 ヘディングは一律に危険なのではない。ヘディング・シュートという強烈な衝撃をもたらす場合に危険なのだ。だから、禁止するべきはヘディング・シュートであって、ヘディングを一律に禁止するかどうかは問題になっていないのだ。
 日本サッカー協会(JFA)は、どこに問題があるかを、まったく理解できていない。そのせいで、危険の所在を理解できない。日本サッカー協会(JFA)は、サッカー少年を危険にさらしているテロリスト団体だ、と言っても過言ではないだろう。せめて欧州の基準を理解するべきだ。
 
posted by 管理人 at 21:07 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年12月09日 15:44
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