2022年12月06日

◆ W杯 クロアチア戦(2022)

 日本は 1−1 で引き分けたが、PK 戦で敗北して、敗退した。その解説。

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 総評


 結果は 1−1 で引き分けたが、PK 戦で敗北。
 動画は下記にある。
  → https://x.gd/6losA ( FIFA 公式)

 失点が1点だったのは、おおむね予想通りだろう。ドイツやスペインやコスタリカにも1失点したのだから、クロアチアに1失点というのも当然だろう。
 ただ、ドイツやスペインの攻撃力は強力だったが、クロアチアの攻撃力はずっと弱かった。組織的な攻撃がなく、個人的な単発的な攻撃だった。何人もが連携する攻撃ではなく、アシストする人とゴールする人との二人だけの攻撃が多かった。このような単発的な攻撃ならば、阻止するのはずっと容易なので、できれば無失点で収めてほしかった。


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 とはいえ、失点した場面は日本が守備で不利になるヘディングの場面なので、こういう状況では、失点したのもやむを得なかったとも言える。(オフサイドのラインの間際のヘディングは、背の低い日本人には防ぎにくい。4年前のベルギー戦 でも、ヘディングで2失点した。)
 総じて言えば、強豪を相手に1失点というのは、おおむね妥当だろう。森保監督の作った守備力重視のチームの、面目躍如というところだ。

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 得点は1点だった。これは物足りない。スペインやドイツに2得点したのに、クロアチアを相手に1得点というのは物足りない。コスタリカを相手にしていたときのような感じがする。いかにも攻撃力不足だ。
 では、どこがまずかったか? それは、前に何度も述べたとおりで、「組織的なサッカー」ができなかったことだ。守備は十分にうまくできたのに、攻撃はまともにできなかった。
 詳しく見ると、日本にとって、大きなチャンスは3回あった。そのうち、1回は得点に結びつけた。この場面は見事だった。しかるい、他の2回は失敗した。そこに問題があった。では、どんな問題か? その詳細を調べよう。(以下で示す。)

 第1のチャンス


 前半 12分に、第1のチャンスがあった。動画は下記。
  → https://x.gd/KwO81 (ABEMA)


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 伊東純也が右サイドからセンタリングして、前田がシュートしようとしたが、間一髪遅れて、間に合わなかった。
 ボールはこのあと左側まで進んで、左側から飛び込んだ長友がシュートしようとしたが、これも間一髪遅れて、間に合わなかった。
 この二つは、本来ならば、間に合うことでシュートしてゴールできたはずだ。なのに、そうできなかった。これは日本チームに「組織的なサッカー」の技量が未熟であることを示す。

 個別に論じよう。
 伊東純也のドリブルとセンタリングは完璧だった。満点と言える。特に、センタリングのパスが左にカーブしていたのは、特筆ものだ。こんなにカーブするパスを打てるのは、素晴らしい。
 前田が間一髪遅れたのは、タイミングが遅かった。0.1秒、タイミングが早ければ、センタリングのパスに間に合ったはずだ。前田は判断が遅れた。それというのも、伊東純也のパスのタイミングをうまく予想できなかったからだ。ほんの 0.1秒、タイミングが遅れたが、この判断の遅さが、致命的となった。
 長友がセンタリングに遅れたのは、仕方ない。彼はもともと守備の選手であって、守備の選手がこんなところまで現れたということの方が驚きだ。長友を責めることはできない。むしろ、「あとちょっと」のところまで追いついたことに、賛辞を向けるべきだろう。

 明らかに駄目だったのは、堂安だ。堂安は前田と長友に大きく遅れて、ゴール前に近づいた。しかし、攻撃の選手がこんなに遅れるというのは、大きなミスだ。実は、堂安は伊東純也がボールを得る直前に、伊東純也にパスをしている。そこで、一呼吸をついた。その呼吸の分、走り出すのが遅れた。だから、堂安はゴールに近づくのが大幅に遅れたのだ。
 同じようなことをしても、香川やエムバペは違う。隣の選手にパスを渡したら、その瞬間に、ゴールに向かって全速力で飛び込む。そして、パスを受けた選手は、香川やエムバペにアシストのボールを送る。それを受けて、香川やエムバペはゴールのシュートを打つ。
 堂安はそれができなかった。伊東純也にボールを送ったあとで、「これで一仕事済みました」というふうに、一呼吸を置いた。そして、伊東純也が前に走り出したのを見て、あわててあとを追いかけた。しかし、それではタイミングが大幅に遅れてしまうのだ。
 要するに、堂安は、ワンツーパスという概念が抜けている。だからパスを送ったあとで、ただちにゴールに向かって全速力で走るということができない。能力が欠けているのではなく、判断力が欠けている。そして、それというのも、監督がそれを教えないからだ。(ワンツーパスの訓練もしていないのだろう。)


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 だが、堂安よりももっと駄目な選手がいる。上の画像の 15番の選手(鎌田)だ。彼は、その直前に堂安にパスを送ったが、そのあと、堂安のあとをチンタラチンタラと走って追うだけだった。堂安は、走り出すタイミングこそ遅れたが、その後は全力でゴールに向かっていた。単に判断が遅れただけだった。一方、鎌田は違う。走ろうとする判断そのものがなかった。要するに、棒立ちしていたようなものだ。棒立ちではなく、チンタラチンタラ走っているのだが、ゴールに向かうべきときにチンタラチンタラ走るというのでは、プレーをサボっているのも同然だ。最悪である。最初からプレーを諦めているからだとも言える。
 ちなみに、左サイドを見てほしい。右サイドで鎌田がチンタラチンタラと走っているときに、左サイドでは長友が猛然とダッシュしている。ゴールからの距離は、鎌田も長友も同じぐらいだ。なのに、鎌田がサボってチンタラチンタラと走ってプレーをしないでいる間に、長友は猛然とゴールにダッシュして、最終的にはゴールシュートする寸前にまでいった。これぞ、「組織的なサッカー」の見本である。

 長友が素晴らしいプレーを見せているのに、堂安は判断が遅れたし、鎌田はプレーする気がない。長友以外の若手は、これほどにも気が抜けているのだ。(監督が教えないからだが。)

 第2のチャンス


 第2のチャンスは、日本が得点した場面だ。
  → https://x.gd/6losA ( FIFA 公式)
 この場面は、申し分ない。うまくプレーできている。賛辞を送るだけで足りる。分析は不要。

 失点


 せっかく日本が得点したのに、そのあとで失点して、同点に追いつかれてしまう。この件は、先に述べたとおりなので、繰り返さない。

 第3のチャンス


 その後、同点のまま延長戦に入った。延長戦の前半 13分40秒のころに、三笘がドリブルで敵陣を切り裂いて、シュートしたが、GK のパンチングに阻止された。この場面が、日本に残された最大のチャンスだった。この場面を分析しよう。

 動画で見ると、三笘にとっては、シュートするコースが限定されており、かなり無理気味のシュートだったとわかる。
  → https://x.gd/6losA ( FIFA 公式)
 こんなに無理気味なのだから、阻止されたのも仕方ない。
 だが、シュートが無理ならば、アシストすれば良かったのだ。そうすれば、他の選手がゴールのシュートを蹴っただろう。
 だが、現実には、それは不可能だった。三笘が敵陣を切り裂いても、それに同調して敵陣を切り裂く選手(ゴールのシュートを蹴る選手)がいなかったからだ。
 そのことは、次の画像でわかる。


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 左には浅野がいるが、彼は間抜けなことに、オフサイドラインの裏に飛び出てしまっている。ここでボールを受け取ればオフサイドになるので、ここにボールを送ることはできない。浅野は馬鹿すぎる。
 右には伊東純也がいるが、位置があまりにも遅れている。本来ならば、あと1メートル先に出て、オフサイドラインギリギリに位置するべきだった。そうすれば、伊東純也に三笘がパスを送ることができた。しかし、現実には伊東純也は走り出すのが遅れすぎて、位置が後方すぎた。これでは三笘はアシストのパスを送れない。だから、三笘は仕方なく、自分でシュートしたのだ。
 ここでは、三笘の高速ドリブルに対して、他の選手は遅れすぎているのである。つまり、組織的なサッカーができていないのだ。あまりにもノロマなので、三笘に置いてきぼりにされている。

 その具体的な経緯を、画像で追っていこう。(画像はテレビから)


(1)
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 (1) は、やや左下の方で、冨安がボールを蹴ったところだ。ボールは右膝のあたりに重なって見える。このとき、中央上にいる三笘がすでに駆け出していることに注目しよう。冨安がキックしたときには、すでに三笘が駆け出しているのだ。この判断力の速さは特筆ものだ。一方、右上の方では、南野が後ろにのけぞっている。プレーするどころか、逆方向のプレーをしている。馬鹿丸出しというしかない。


(2)
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 (2) は、冨安の送ったボールに三笘と南野が反応しているところだ。三笘はボールに向かって一直線に猛然とダッシュしている。南野はモタモタしながら、ボールに少しだけ近づいている。ノロマだね。


(3)
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 (3) は、ボールに三笘と南野が反応しているところだ。三笘はボールにどんどん近づいている。南野はボールに追い抜かれたあと、ボールを追いかけている。愚図だね。


(4)
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 (4) は、三笘がボールを取って、猛然と高速ドリブルしている。南野は三笘に追い抜かれて、あとからモタモタと追いかけている。最初は三笘よりもゴールに近い位置にいたのに、今では三笘よりもずっと遅れている。また、画面の右側では、浅野と伊東純也が走り出している。伊東純也は、この時点では三笘よりも右にいるくせに、このあとでは追い抜かれることになる。


(5)
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 (5) は、三笘がシュートする直前だ。この時点で、浅野はオフサイドの位置にいるので、プレーをしていないのと同じだ。伊東純也はその逆で、最終ラインから少し遅れている。そのせいで、三笘からパスを受け取ることができない。


(6)
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 (6) は、同じ時点を別の視点から撮影した画像だ。解釈は (5) と同じ。

 なお、この画像では、浅野が根本的にポジショニングを間違えている。三笘が左サイドを駆け上がってくるのだから、浅野は中央に位置するべきだった。そうすれば、三笘のパスを受けることができた。なのに、左サイドにいるから、左サイドに選手が二名いて、選手が余ってしまうことになる。その愚かさが、画像で明らかになっている。
 本来ならば、中央には堂安のかわりの南野が位置しているべきだったのだが、南野はこの試合で消えていた。この選手交代は最悪だった。

 ──

 結局、判断の遅れや、判断のミスや、選手交代の失敗などがあったせいで、三笘の高速ドリブルにうまく合わせる選手がいない。そのせいで、組織的なサッカーができずにいる。
 なお、この時点で、堂安がいれば、そこそこうまくできた可能性が高い。だが、この時点では、堂安はすでに交代で退場していた。
 三笘と堂安を組み合わせてこそ、組織的なプレーができるのに、三笘がいる場面で、堂安がいない。これでは、まともに得点できる機会が減ってしまう。この点では、監督の采配ミスがあったと言えよう。
 なるほど、クロアチア戦では久保が負傷欠場していたので、堂安が先発することになった。しかしそれならそれで、三笘も先発出場させるべきだった。なのに、堂安と三笘を切り離して出場させたところに、監督の采配ミスがあったと言えるだろう。(久保が駄目なら、前半だけ田中を出場させる、という手もあったのだが。あるいは、堂安の交代選手として、南野のかわりに田中を使う、という手もあったのだが。)



 [ 付記 ]
 三笘が冨安のパスに反応して、すばやく飛び出せたのには、理由がある。冨安がキックする前に、冨安のキックを予想して、前もって飛び出していたからだ。では、どうして前もって予測できたのか? それは、キックしたあとのボールを見るのではなく、キックする前に足を後ろに引いた時点で、キックを予想できるからだ。この予想によって、0.1秒ほど速く飛び出せる。
 こういう判断力の速さが、三笘の俊敏なプレーに結びついている。三笘は単にサッカーがうまいというだけでなく、頭がとてもいい。だからプレーの予想ができる。
 他の選手は、三笘の頭の良さに学ぶべきだ。特に、森保監督は三笘に学ぶべきだ。
 三笘の頭の良さは、あちこちでいろいろと紹介されているので、そういう情報を得るだけでも少しは有益になるだろう。

 ※ 三笘は筑波大卒。



 【 関連サイト 】

 → 「世界で三笘だけ」筑波大の恩師が明かす“1mmアシスト”三笘薫…陸上関係者を仰天させた話「彼を天才だと言う人もいますが…」 - Number
 


 [ 付記 ]
 日本のファンは、スペインとドイツに勝ったことばかり覚えているようだが、コスタリカに負けたことを忘れてはならない。これこそが大事だ。敗戦にこそ、学ぶべき点は多いのだ。
 
posted by 管理人 at 23:49 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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