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五輪の談合事件があった。11月25日・26日に報道された。
東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会が発注したテスト大会業務の入札で談合した疑いがあるとして、東京地検特捜部と公正取引委員会は25日午前、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、広告最大手「電通」(東京都港区)と、イベント制作会社「セレスポ」(豊島区)に、合同で家宅捜索に入った。
電通は組織委元理事の汚職事件の関係先として7月にも捜索を受けたが、今回は関係先ではなく直接の容疑対象となっ
( → 電通に談合容疑、家宅捜索 五輪テスト大会、受注事前調整か 東京地検・公取委:朝日新聞 )
こうして電通の犯行が発覚したが、これには組織委の内部にいる電通出向者が関与していた。
東京五輪・パラリンピックのテスト大会業務をめぐる入札談合事件で、発注を担当した大会組織委員会の大会運営局の次長(当時)と、広告最大手「電通」から同局に出向していた職員、電通本体の担当社員の3人が受注調整を主導した疑いがあることが、関係者への取材でわかった。
( → 電通出向者ら、談合主導か 五輪テスト大会、各社に意向確認 東京地検・公取委が捜索:朝日新聞 )
電通出向者と、電通本体の社員とが、示し合わせていたようだ。
東京五輪・パラリンピックのテスト大会業務をめぐる入札談合事件で、発注を担当した大会組織委員会の大会運営局の次長(当時)と、広告最大手「電通」から同局に出向していた職員、電通本体の担当社員の3人が受注調整を主導した疑いがあることが、関係者への取材でわかった。
( → 五輪組織委と電通の3人、テスト大会で談合主導か 各社にメールも:朝日新聞 )

電通ビル
記事では事実が報道されているだけだ。そのせいで、問題の本質が見えてこない。だから、私が指摘しておこう。問題の本質は、こうだ。
「事業の受注者である電通と、事業の発注者である組織委とが、どちらも電通社員が担当することで、利益相反になっている」
このことは、実は、前にも指摘した。
この問題の本質は、利益相反だ。
・ 電通は、大会の実務を請け負う業者である。
・ 組織委は、大会の実務を請け負わせる発注者である。
ここで、業者と発注者は、利益が相反する。
・ 業者はなるべく高値で請け負いたがる。
・ 発注者はなるべく安値で請け負わせたがる。
その両者のせめぎあいによって、適正価格が決まる。普通は、それで常識的な価格が決まる。
ところが、今回は電通が組織委を牛耳るようになった。業者が発注者を兼ねるようになった。すると、どうなるか?
( → 五輪組織委の汚職:その本質: Open ブログ )
このあと、「高橋容疑者が〜」というふうに、賄賂事件に至った事情を説明している。
一方、本項では、「電通が〜」というふうに、談合事件に至る事情がある。
それぞれ、個別の犯罪は異なる。しかし、本質はどちらも同じだ。「利益相反」の矛盾した体質を取ることで、電通が組織委の利益をかすめ取っているのである。
そして、組織委というのは、国と東京都が莫大な公金を投入している団体だ。かくて結果的には、公金が(組織委を通じて)電通に流れ込んでいることになる。
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この件では、「五輪を担当するのが、国や自治体ではなく組織という民間団体である」という点が、根本的にずさんである。
莫大な公金を投入するのだから、厳密なチェック体制が必要であるはずなのに、「民間団体だから」という理由で、ずさんな公金支出がなされる。ほとんど湯水のごとく、莫大な公金を無駄遣いする。それを食い物にするのが、電通だ。発注者と受注者の双方を電通が兼ねることで、莫大な公金を食い物にする。
そして、どうしてそういうことが可能かといえば、袖の下を権力者(つまりは安倍首相)に貢ぐからだ。その金が「桜を見る会」の補助金に化けたりする。
まったくもって、ひどいものだ。
【 関連項目 】
五輪に関して、政府は組織委に任せて、ろくに口出しをできないくせに、莫大な金を支出することになっている。これではもはや、ただの ATM にすぎない。その ATM の金を勝手に使って、組織委が好き放題をやっている。
こういう体制を抜本的に改めて、政府が責任をもってコントロールすべきだ……というふうに、前に述べたことがある。そのときは、国立競技場や、組織委の会長の人事をめぐる話題だった。
→ 組織委会長は政府が決めよ: Open ブログ
だが、それだけではない。五輪という事業そのもの(事業本体)において、組織委の金が電通社員によって好き放題に使われている。そういう問題が、今回新たに発覚したわけだ。「賄賂」(高橋容疑者と他社)および「談合」(電通と他社)という形で。
【 追記 】
自民党では、安倍元首相のあとで、保守系の次期リーダーが決まらずに迷走しているという。
《 自民保守系、薄い存在感 リーダー不在、会合次々開くが…「安倍氏の威光頼み、情けない」声も 》
安倍晋三元首相という大黒柱を失った自民党保守系議員連盟・グループが存在感の低下にあえいでいる。勉強会や会合を相次ぎ開くが、……数々の保守系議連を引っ張る次期リーダーは見当たらず、足並みもそろわない。
党内の勉強会では「安倍元首相」の名を冠するテーマがあふれる。「いつまでも安倍氏の威光に頼らざるをえないのは情けない」(閣僚経験者)との声もあるが、かわりに保守系をまとめるリーダーは見えない。
( → 朝日新聞 )
安倍元首相のかわりが見つからないのは当然だ。資金源がないからだ。
安倍元首相には、統一教会という資金源があった。また、電通などから賄賂を受け取るコースもあった。どちらも潤沢な資金源となった。ところが、他の人にはそういう資金源がない。ならば、他人を引きつけることもできない。力の源泉(= 金)がないのだから、リーダーになることもできないわけだ。
逆に言えば、安倍元首相がいかに汚い金にまみれていたか、よくわかるね。