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次期戦闘機を日本と英国で共同開発することになった。
航空自衛隊のF2戦闘機の後継について、政府は英国、イタリアと共同開発する方針を固めた。来月、正式合意する見通し。
日英は同時期に次世代戦闘機の開発を計画しており、敵のレーダーに映りにくい「ステルス性」や無人機との連携など、日英が求める性能が一致していた。これに以前から英国と戦闘機の開発に向けた協議をしていたイタリアも加わることになった。
( → 次期戦闘機、日英伊の3カ国で共同開発 来月に合意へ 将来は輸出も:朝日新聞 )
どうしてこうなったか? 日本と英国がことさら結びつく理由があったのか?
そこで調べてみると、理由はいくつかあるとわかった。
パートナー選び
(1) 日米は不可
日米で共同開発するというのは、日本にとっては理想的だが、肝心の米国がイヤがった。日米には技術的な格差があり、共同開発すれば米国の技術が日本に一方的に流れるだけだ。米国が与えるものは大きく、日本が与えるものはごく少ない。米国の方から、「共同開発はお断り」となる。
※ なお、F-35 の例では、肝心の高度技術はブラックボックス化されて日本に提供されているので、これは「共同開発」ではなく、日本が「米国製品を組み立てているだけ」と言える。プラモデルを組み立てるようなものだ。これは共同開発とは程遠い。
(2) フランスは独自
フランスは独自路線を取っている。自国のラファールを生産することが最優先となっている。現行世代でも、先進国では珍しく、 F-35 の導入を拒んでいるほどだ。
次世代戦闘機はどうか? ドイツとの共同開発を決めているが、ドイツに任せずに自国だけで生産しようと、我を張っている。つまり、ドイツには金だけを出させて、次世代ラファールを開発しようとしている。
→ 仏独の対立は泥沼化、次世代戦闘機の実用化は10年遅れの2050年頃
しかしこれだと、生産面の損得では有利だが、技術面ではフランス単独(スペインがおまけで付いてくる)となるので、かなりレベルが落ちてしまう。
こんな国と日本が組んで共同生産することはありえない。
(3) ドイツは低レベル
ドイツの戦闘機技術は低レベルであるようだ。戦車はすごく高レベルなのだが、戦闘機技術では、次期戦闘機の開発でもフランスのラファールに譲るぐらいで、心許ない。
→ 仏独の対立は泥沼化、次世代戦闘機の実用化は10年遅れの2050年頃
こんな国と日本が組んで共同生産することはありえない。
※ フランスとドイツは共同生産を決めているが、まともに機能していないようだし、計画も大幅遅れ(10年遅れ)となっている。このまま正常に進行するかどうかもわからない。途中でプロジェクトが瓦解すると見込む方がよさそうだ。「日英競争生産に、いっちょ噛みさせて」と言ってくるかも。
(4) 英国はちょうどいい
日本と英国は、組み合わせとしてはちょうどいい。相性がいいとも言える。というのは、それぞれの長所と短所(得意と不得意)が、相補的であるからだ。
日本が強いのは、主翼・胴体・エンジン・ステルス・レーダー・電子などの技術だ。
一方で、基本的な機体制御やシステム統制という、戦闘機の基本技術は弱い。弱いどころか、これまでに独自で戦闘機を開発したことがない。旅客機の MRJ は、途中で開発停止になってしまった。
英国は、その逆だ。すでにユーロファイター・タイフーンを開発済みであり、基本的な機体制御やシステム統制という、戦闘機の基本技術は、十分に備えている。ほぼ満点に近い。
一方で、最先端のハイテク技術には弱い。ステルスや電子機器や半導体技術には弱い。軍事用の特殊な半導体機器を開発するのも困難だ。その点、これらの技術を持つ日本企業(三菱)の能力は、喉から手が出るほどほしい。さらには、炭素繊維による機体製造の技術もある。
だから英国はこれまで何度も、日本にラブコールを送ってきた。「それをくれるなら、こちらの手持ちの技術を全面提供してもいいですよ」と言っていたくらいで、すごくラブコールを送ってきた。
というわけで、日本と英国とは、相補的な関係にある。それぞれが半人前なのだが、それぞれの足りないものを相手が持っている。二人合わせて、完璧となる。凹と凸みたいで、実にピッタリな組み合わせと言える。
というわけで、日本と英国とは、ピッタリな相性であるわけだ。相思相愛的に結ばれるのが当然だと言える。
なお、ここにドイツが入りたがるかもしれないが、遠慮してもらう方がよさそうだ。「生産分担を 33%寄越せ」なんて言われると、かえって損してしまうからだ。
(5) イタリアの役割
イタリアの会社は、何をするか? 実は、イタリアの会社ではなく、イタリアの会社の英国支社が参加する。担当は電子部門だ。会社名はレオナルドUK。詳細は下記。
→ 次世代戦闘機「テンペスト」と「F-X」は日英伊共同開発へ | TOKYO EXPRESS
→ 日英伊、次期戦闘機の共同開発で合意 2035年に配備開始 | ロイター
技術
日英の共同生産にすると、どのような技術的なメリットがあるか? ……これは、専門的な軍事技術の解説が必要となる。下記に説明してあるので、読むといいだろう。
→ 次世代戦闘機「テンペスト」と「F-X」は日英伊共同開発へ | TOKYO EXPRESS

記事の後半で、「主な項目は次の3つ」として、三つの技術が紹介されている。
・ 新空対空ミサイル (JNAAM)
・ IHI と RR(ロールスロイス)の新エンジン
・ AESAレーダー・システム
これらが主要な技術だとして、紹介されている。ただ、それ以外にも、日本のステルス技術も重要であるはずだ。この点は、次の記事でも少し言及されている。
→ 世界が絶賛する、日本の次期戦闘機(F-3)開発全貌 ゼロ戦の夢よ再び、ただAIや高エネルギー兵器開発に遅れ(1/11) | JBpress (ジェイビープレス)
→ マイクロ波兵器など最先端の技術を搭載か? 日本の「新型戦闘機」、ロッキード・マーチン社から技術提供へ
実は、ステルス技術は、電波を吸収する素材の開発が大事だが、その点では、磁性体の研究が進んでいる日本が強いのだ。電波を吸収する素材というのは、だいたいが磁性体であるからだ。
→ https://x.gd/iKxOP
特に、このような磁性体を塗料として塗布するようにするには、高度なハイテク技術を必要とする。
→ https://x.gd/iKxOP
→ https://x.gd/6ylaz
こういう点ゆえに、ステルス技術を持つ日本の企業の能力は、英国にとって喉から手が出るほどほしいものだ。そういう状況がある。
[ 付記1 ]
以上で述べたことは、7年ぐらい前から変わっていない。だからその当時において、「日本はユーロファイターを導入して、魔改造をするべきだ」と私は述べてきた。その趣旨は、現在にも通じている。それが、次期戦闘機の共同開発となったわけだ。ほぼ同じ。新世代に。
なお、上のことを持って、「 Openブログの方針は正しくなかった。ユーロファイターの魔改造よりは、F-35 の導入の方が正しかった」と主張する人もいそうだが、それは勘違いだ。
F-35 の導入は、現時点以降での話だ。それはユーロファイターの導入とは別の話だ。退役する F-4 のかわりに、ユーロファイターを導入するべきだったというのは、今から7〜5年前の時点の話だ。
ユーロファイターと F-35 は、ともに導入するべきだったのである。そして、かわりに排除されるべきは、オスプレイと陸上イージスだ。特にオスプレイは、価格が F-35 とほぼ同額なので、あまりにも金食い虫である。それでいて、あまりにもノロマなので、敵の対空ミサイル一発で撃墜されてしまう。陸上イージスと並んで、最悪のゴミ兵器と言えるだろう。
※ 自衛隊がオスプレイにこだわったのは、離島防衛のためだが、中国は日本の離島なんかを攻撃しない。自衛隊が南方の離島にこだわっている間に、まったく別方向(ずっと北の方)で、中国本土から日本本土を直接たたく。その方がずっと短距離で簡単だからだ。間抜けな自衛隊が離島に出かけて、本土がお留守になっている間に、本土を攻撃してしまえばいいわけだ。
→ 済州島という盲点: Open ブログ
※ その意味で、オスプレイというのは、ゴミ兵器の典型だろう。日本はちょうど、桶狭間の戦いで首を取られる今川義元みたいなものだ。手元を無防備にして、本体を奪われる。
[ 付記 ]
オスプレイはまったく用途がないわけではない。オスプレイは米国の海兵隊のために開発されたようなものだが、日本も海兵隊のような用途には、オスプレイは有効だ。その具体的な用途は? こうだ。
「北朝鮮の全土を支配するために、海岸線からオスプレイで侵入して、北朝鮮の軍隊を壊滅させる」
これはつまり北朝鮮を先制攻撃して、北朝鮮を侵略するための用途だ。そのためには、オスプレイはすごく有効である。
ただしそれは、自衛のための戦争とは正反対で、先制攻撃による侵略のための用途だ。日本にトランプみたいな首相が登場して、日本を侵略戦争に巻き込むつもりなら、オスプレイは有効だ。……では、自衛隊はそのつもりでいるのだろうか? まさかね。単に馬鹿なだけだろう。何のための兵器であるかわからないまま、兵器をオモチャとしていじっているだけだ。
【 関連項目 】
陸上イージスはゴミだ、という話は、前項と前々項で記した。説明はそちらを参照。
で、陸上イージスはゴミだが、かわりに何を配備するべきか、という話をしたのが、本項だ。
※ 陸上イージスよりも戦闘爆撃機を優先するべきだ、ということ。過去に配備するなら、ユーロファイター。現在なら、F-35。将来なら、日英共同生産の機種。
→ (日米安保の現在地 近未来の同盟)戦闘機、米圧力で共同開発へ 英との連携、阻まれた日本:朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14504674.html
F-2 のときに、日米共同開発を目論んだが、結局は F-16 の国産化とほぼ同じで、日本の独自性は盛り込めなかった。(Wikipedia に詳細がある。)
そこで、F-2 後継機では共同開発のために英国との協力を、と防衛省は狙った。しかし安倍首相が米国べったりなので、その方針をくつがえして、日米共同界開発に方針を転じた。こうして F-2後継機 もまた、名前だけの共同開発で、実際には米国機の組み立てだけに終わりそうになった。
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以上が、2020年6月の記事だ。この時点では、日米共同開発(という名の組み立て生産)がほぼ決定していたわけだ。
ところが 2022年に、安倍首相がいなくなった。すると、防衛省は巻き返して、戦闘機の国産化(日英共同開発)に向かうことになった。
例の銃撃事件は、日本の戦闘機の国産化の方針さえも、180度 方向転換させてしまったわけだ。