──
新海誠のアニメ「すずめの戸締まり」が公開された。「君の名は。」の大成功と、「天気の子」のやや失敗のあとで、期待を持たせたが、その結果はどうか?
この予告編を見ると、キャラデザインも、風景描写も、「君の名は。」に比べて、かなり劣る。「天気の子」にも劣るようだ。こうなると、「こいつは失敗作だな」と予感される。
その後、ツイッター検索を見ると、評判は悪くなかった。特に、「泣いた」と書く人が多い。「また見たい」と書く人も多い。女性客にはなかなか好評であるようだ。というわけで、「失敗作だ」という私の予想は杞憂に終わったようだ。少なくとも標準レベルを大きく上回る良作であると言えるようだ。
──
では手放しで褒められるかというと、そうでもない。Yahoo の評点を見ると、5点満点で「3.7点」だ。これは、「君の名は。」の「4.1点」よりも少し劣る。
→ すずめの戸締まり の映画情報 - Yahoo!映画
さらに評価コメントを仔細に読むと、評価がほぼ真っ二つに割れることがわかる。
・ 絶賛する人
・ 凡作だと評価する人
後者は、特に「君の名は。」と比較して、大きくレベルダウンを感じている人が多いようだ。私が気に入ったのは、次のコメントだ。
★★☆☆☆ (2点)
【【【ストーリー】】】
恋愛要素は希薄ですずめは草太がイケメンだから好きになったようにしか思えず、
すずめの恋愛を応援したい気持ちが芽生えなかった。
【【【ビジュアル】】】
美しくない。
普通に新海作品の美しさはあるのだけど、
その技術を生かしきれてない。
技術が美の表現に用いられるのでなく、
ミミズの描写や火に覆われる福島などの混沌や禍々しさに用いられていた。
常世は美しいが、序盤から小出しにされ続けているのでインパクトは下がっていった。
君の名はの都市の情景や、天気の子の空のシーンなどの、息を呑むような美しさを描いて欲しかった。
【【【新海誠の性癖】】】
また主人公JKかぁ笑。
……
いや普通にキモイよ笑。
強引目なJKに積極的に来られるのが好きなのかな?
わぁ?気持ち悪りぃなぁという感じ。
( → すずめの戸締まり の映画レビュー・感想・評価 - Yahoo!映画 )
どうやら、「君の名は。」にあった大衆性が失われ、昔の新海誠のキモオタ趣味(少女趣味)が露骨に現れているようだ。
──
ストーリーについても批判がある。
まず、パクリだという批判。(クリックすると表示される。)
諏訪敦彦『風の電話』+古澤健『オトシモノ』+伊藤潤二『うずまき』+乙一『The Book』+...みたいな映画だった。
特に『風の電話』からのいただきはかなり多い。震災で親を失って叔母に引き取られている女子高生が被災地に帰るロードムービーという設定がモロだし、実家跡地の景色もそのまんま。
( → すずめの戸締まりの2秒前のネタバレレビュー・ 内容・結末 | Filmarks映画 )
ヒロインのわがまま行動に対する批判。
終始なんだコイツらって引き気味になった。
全部すずめが悪い。一目惚れした男を追っかけて、勝手に封印解いて(略)、……自ら日本壊滅の危機を招いておいて、それの尻拭いしてるだけなのに男と一緒に居れるからテンション上がって「私達スゴいことしてるんだ!」何がやねん
( → すずめの戸締まりのアイアンサムライのネタバレレビュー・ 内容・結末 | Filmarks映画 )
イケメンに惚れた JK が、勝手にわがままにふるまっていたら、日本が壊滅しかけたが、何とかしているうちに何とかなった……という話らしい。イケメン大好きの妄想オタ女性は大喜び、という映画であるようだ。
( ※ 「君の名は。」では、おっぱいモミモミのサービス画面があったりして、男性ファンにも受けが良かったようだが、今回は女性ファン向けに専念しているようだ。オタ女性ホイホイ の映画。)
────
なお、テーマとして「東日本大震災」が扱われているようだが、これについてはネタバレになるらしいので、あまり言及されていないようだ。
大震災を扱うことの良し悪しについては、賛否両論があるようだ。まあ、テーマをどうするかは、作家の方針の問題だから、私としては特に何も論じないでおこう。
ただ、大震災を扱うということ自体は、ちょっと気になるので、話のついでふうに、本日別項で論じることにする。
→ 大震災の空撮動画の裏話: Open ブログ (次項)
一方で、男性の評価は、あまり高くない。評価する人も少なめだ。悪評もある。
https://anond.hatelabo.jp/20221119161631
結局、これはどうも、女性向けのアニメだね。シン・ゴジラやエヴァンゲリオンが、男性向けだったのとは、対照的だ。
新海誠は、京アニみたいなものなのかもね。
※ 私としては、竜とそばかすの姫 がよかった。後味(読後感)も、とてもよかった。部分的な欠点もあり、そこを不満に思う人も多いようだが、しょせん子供向けのアニメだと思えば、欠点は気にならない。小さな欠点には目をつむり、美点を評価すれば、とても良い作品だったと思う。シン・ゴジラや、君の名は に比べれば、竜と〜 が断然よかったね。
批判の個所についてはまず、イケメン云々は序盤と終盤以外はほぼ描写がないので見当違いも甚だしい
(むしろ、ある理由でイケメン枠のキャラの扱いは相当ひどい)
あと、主人公が勝手に封印をとく云々も見当違い、っていうかちゃんと見ていない、誤読がひどい
主人公は確かにみみずの封印を解いてしまいますがね、これはあの状況だったら抜いてもおかしくないです。これを勝手にっていうのは相当国語力がないか、レビュー稼ぎのあおりですね
私も見て感想を書きました
https://note.com/triple_46/n/nb73323ce6abe
(あんまりまとまっていませんが)
本作品は
「ファルコム(Y's,英雄伝説)ライク、RPG的なアニメ」
です。
物語の基本構造がRPGなんですよ
なので、この作品の美点も欠点もその物語構造に由来します
エンディングも目的地からであった人とのやり取りを描写して、故郷に帰るという逆順の旅が示される、っていうのがその典型ですね
(この辺りは昔のFF3とかDQ2に似ている。新海誠っていまだにゲーム会社にいたときの名残があるんだってびっくりした)
で、さらにややこしいんですが、RPGって基本、「大きな物語」を語るのにつかわれるのですよ。
だけど、すずめの戸締りはRPGのフォーマットを使っているのに世界を救う話になっていない、むしろ、鈴芽自身を救う話になっています。というより物語が進むにつれて、大きな物語から鈴芽自身を救うっていう極めて私的な小さな物語になっていてかなりねじれた作りになっています。
そのねじれた作りを受け入れらる人はめちゃくちゃ楽しめる作品だし、そうでない人はめちゃくちゃ酷評さするでしょう。ただし、ねじれた構造にしたせいで、大衆性を失っているのは確かです
で、これまでのアニメファンの傾向としてそういうねじれた作品は男性受けしませんがなぜか女性からは人気があったりしますね
後、竜とそばかすの姫がすぐれた作品であるというのは同意です
ただ、なぜかストーリがわからないと言ってアニオタからは評判が悪いんですよね
多分、水星の魔女とかいうガンダムシリーズで群を抜いてどうしようもない作品が人気があるあたり、すずが示した
「力を持ったものはその力を弱者のために使うという責務、優しさ」
というのが日本の若い人から失われつつあるからかもしれません