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自衛隊には弾薬不足という問題がある。これについては先に指摘した。
たとえば、「銃を購入するが弾薬を買わない」というような馬鹿げた方針を捨てる。
ちゃんと弾薬の予算請求をしないで、オスプレイのような目立つ大型兵器ばかりを予算請求していたのは、当の防衛省だ。
日本の自衛隊は、戦争で備品を使い果たしたわけでもないのに、すでに備品が貧弱になっているわけだ。(最初からだ。)……これではまともに戦争もできないだろう。日本の自衛隊は、最初から今のロシア軍のように「備品不足」に陥っているのである。「銃はあっても弾丸はない」「戦闘機はあっても格納庫がない」というふうに。
( → 敵基地攻撃能力の評価: Open ブログ )
こういう点を問題視したのだが、その後、防衛省はこの問題に対処する方針を示した。
防衛省が、ミサイルを含む弾薬や航空機などの部品不足に危機感を募らせている。
岸田文雄首相は今月6日の衆院本会議で、「自衛隊の継戦能力、装備品の可動数は必ずしも十分ではない。十分な数量の弾薬の確保や装備品の可動数の増加が重要だ」と認めた。
防衛省は21日、ミサイル防衛(MD)で使う迎撃ミサイルの保有数が必要と試算する数量の約6割しか確保できていないと公表。
同省幹部は「新しい装備品の購入を優先し、弾薬などの手当ては後手後手だった」と認める。
航空機などの部品不足も深刻だ。可動しない機体から部品を取り外し、他の機体に転用する「共食い整備」が行われており、2021年度は約3400件に上る。
自民党の国防族からは「計画的な予算配分を怠ってきた防衛省の責任は大きい」と厳しい指摘も出ている。
( → 弾薬、部品不足が深刻化 防衛省、継戦能力に危機感:時事ドットコム 10月31日 )
防衛省は10月20日に首相官邸で開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」で、今後5年間で「弾薬・誘導弾(ミサイル)の数量を増加」「有事に備え、主要な防衛施設を強靱(きょうじん)化」とする目標を提示した。
継戦能力をめぐっては、防衛省の弾薬の購入量は過去30年間、2千億円前後で推移しているが、省内の試算では、弾道ミサイル防衛用の迎撃ミサイルは必要量の6割しか確保できていないという。防衛省担当者は、「一定の予算の制約の中で十分な数をそろえられていない」と訴える。自民党国防族の一人は「実際に有事になったら数週間でミサイルの在庫はなくなるのではないか」と話す。
これらの対策が後回しにされてきた理由は、政府が戦闘機や護衛艦といった戦闘に直接使用される装備を重視してきたからだ。ロシアによるウクライナ侵攻を機に、防衛省や自民党から継戦能力を重視する声が高まった。防衛省幹部は「これまでは『平時』の考え方。これからは戦い続けるための能力が非常に大事だ」と話す。(
( → 自衛隊、弾薬足りない?施設は老朽化? 対策の必要性、与党内で一致:朝日新聞 11月2日 )
防衛省は「予算が少ないのが問題だ」という口ぶりだが、それは責任転嫁というものだ。弾薬よりも大型兵器を重視して、弾薬を軽視した(後回しにした)のは、ほかならぬ防衛相自身である。
だから、今後の方針は、「金をもっと寄越せ」ということではなく、「馬鹿げた大型の無駄兵器を購入するな」ということだ。具体的には、オスプレイや陸上イージスのようなゴミ兵器を導入しなければいいのだ。ついでに言えば、巡航ミサイルも不要だ。そうすれば莫大な金が浮く。その金で、弾薬を整備して、無人機(ドローン)や、誘導爆弾を購入すればいいのだ。そうすれば、格安の費用で、大量の武器を導入できるので、継戦能力は大幅にアップする。
これがまともな発想というものだ。
※ こんなこともわからないで、オスプレイや陸上イージスの導入に熱中している軍事オタクは、ただの兵器マニアである子供も同然だ。兵器をオモチャとして扱っているだけで、現実の戦争の継戦能力を考えていない。兵站を無視している、とも言えるね。馬鹿丸出し。
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以上の話は、前に述べたことと重なる。特に目新しい話ではない。以下では、新たな話を記そう。
朝日の上記記事では、防衛省は武器弾薬の一部として、ミサイルの保有数を高めようとしているようだ。(迎撃ミサイルを含む。)
だが、この発想には、根本的な難点がある。
(1) 迎撃ミサイル
迎撃ミサイルの数をいくら増やしても、ろくに意味がない。なぜなら、迎撃ミサイルはすべて米国製であって、国産ではないからだ。
いざ戦争となれば、米国は自国に配備するのを優先するから、日本には米国産のミサイルを寄越してくれない。日本がミサイルを追加配備したければ、日本が国内で国産する必要がある。実際、一部の短距離ミサイルは日本でも国産が可能となっている。だから、国内生産して追加配備は可能だ。しかるに、迎撃ミサイルは国産ではないので、追加配備はできない。となると、実際に戦争が始まれば、ある程度を発射した段階で、すぐに弾切れになる。これでは意味がない。
だから、国産ができない迎撃ミサイルなんてものは、あっても無駄なのである。どうせすぐに弾切れになるからだ。(保有数を増やせばいい、という問題ではない。そもそも価格が高価すぎて、あらかじめ大量に保有することは無理だ。)
※ 迎撃ミサイル以外も同様だ。ミサイルというのは、コスパが悪いので、保有数を増やすべきではない。この件は、下記で述べた通り。
→ トマホークより誘導爆弾: Open ブログ
(2) 潜水艦発射ミサイル
潜水艦発射ミサイルを開発することを検討するそうだ。
防衛省が射程延長などの改良を進めている国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」について、新たに「潜水艦発射型」を開発する方向で検討していることがわかった。潜水艦は敵に見つかりにくい特徴があり、政府が検討している「敵基地攻撃能力」を保有した際の手段となる。
12式地対艦誘導弾は、地上の車両から発射して相手の艦艇を狙う。現在の射程は約200キロ。1千キロ超に延ばす改良や、戦闘機や艦艇から発射するタイプの開発を進めている。防衛省は、自衛隊員の安全を確保しつつ、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ防衛能力」を強化する一環としているが、敵基地攻撃にも転用できる装備になる。
政府関係者によると、潜水艦発射型については、年末に決定する新たな中期防衛力整備計画(2023〜27年度)の期間中に研究に着手したい考えという。潜水艦は「秘匿性の高さ」が特徴で、特に日本の潜水艦は静粛性などが他国の潜水艦より優れているとされる。防衛省関係者は「潜水艦はどこにいるかわからない。相手は攻めにくくなり、抑止力を高められる」と言う。
( → 長射程ミサイルの「潜水艦発射型」開発を検討 敵基地攻撃の手段に:朝日新聞 )
潜水艦発射ミサイルは、無意味だとは言わないが、配備するなら、核ミサイルを搭載する必要がある。核ミサイルならば、潜水艦に搭載する意味があるからだ。実際、米国・ロシア・中国・英国・フランスなどは、潜水艦に核ミサイルを搭載している。
しかし、潜水艦に通常爆弾の長射程ミサイルを搭載することは、馬鹿げている。コスパがものすごく悪いからだ。そんなことをする国はほとんどないだろう。
一般に、兵器には、原則がある。「その武器のコストは、その武器が破壊する敵の武器よりも、安価である」ということだ。たとえば、1億円の兵器で、敵の 10億円の戦力を破壊するなら、その兵器には意味がある。一方、10億円の兵器で、敵の 1億円の戦力を破壊するなら、その兵器には意味がない。
一般に、迎撃ミサイルというのは、後者に属する。「10億円の迎撃ミサイルで、敵の 1億円のミサイルを破壊する」というタイプだ。これだったら、何もしないでいる方がまだマシだ、とも言える。(別の観点もあるが、少なくとも戦争の勝敗を考えるなら、迎撃ミサイルは自軍の戦力を減らすばかりなので、かえって負けに近づくだけだ。)
ここで潜水艦ミサイルを評価しよう。次のように言える。
第1に、安価な魚雷や短距離ミサイルで、敵の空母や大型艦船を撃沈することができれば、それは有効である。たとえば、1億円の魚雷や短距離ミサイルで、敵の 1000億円クラスの空母を撃沈できれば、とても有効だ。魚雷や短距離ミサイルをたくさん搭載することもできるので、潜水艦の効果も上がる。
第2に、高価な長距離ミサイルを少しだけ搭載して、それで敵基地を攻撃するのでは、それはほとんど無効である。高価な長距離ミサイルを使っても、その搭載する爆弾の量はたいしたことがないので、敵基地に甚大な被害を与えることはできない。長距離ミサイルの爆弾の量などはたかが知れているのだ。その破壊力はたいしたことがない。なのに、ミサイル本体はバカでかいから、潜水艦に搭載できる数は限定的となる。
それぞれの潜水艦はトライデント II D-5 弾道ミサイル16発を搭載でき
( → イギリスの大量破壊兵器 - Wikipedia )
潜水艦には長距離ミサイルを 16発ぐらいしか搭載できない。それが核ミサイルならば十分な効果があるが、それが通常爆弾であれば効果は限定的だ。通常爆弾タイプのミサイルを搭載するのでは、爆弾を搭載しているというよりは、爆弾を飛ばすためのミサイル(という飛翔体)を搭載しているようなものだ。そして、そんな小さなことのために、潜水艦の能力全体が使い果たされてしまう。もはや敵空母を撃沈するための魚雷や短距離ミサイルを大量搭載することはできなくなる。
要するに、潜水艦に長距離ミサイルを少数だけ搭載するということは、潜水艦の能力全体を大幅に引き下げてしまう。核ミサイルを搭載するか、魚雷や短距離ミサイルを大量搭載するのならば、意味がある。だが、通常爆弾の長距離ミサイルを少数だけ搭載するということは、意味がないのである。それは潜水艦の全体を無能にしてしまうのも同然だ。(搭載できる爆弾量の全体も大幅に小さくなる。かわりに飛翔体の量ばかりが増える。)
結論を言えば、長距離ミサイルを潜水艦に搭載することは、ものすごく高価が悪いのである。おおよそ、次の比較で示せる。
・ F-35 に 誘導爆弾を搭載 …… 1発あたり 2000万円程度。
・ 潜水艦に長距離ミサイル …… 1発あたり 40億円程度。
どうしてこういう大差が付くか?
前者の場合は、誘導爆弾を大量に投下できる。百発でも千発でも投下できる。また、F-35 は無事に帰還する。だから、F-35 の費用は考慮する必要がなく、誘導爆弾の生産コストだけを考えていればいい。
後者の場合は、16発ほどの長距離ミサイルの費用のほか、潜水艦の建造費用( 640億円程度)も込みにする必要がある。なぜなら、16発ほどの長距離ミサイルを搭載したら、それだけで潜水艦の能力は使い果たされてしまうからだ。もはや魚雷や短距離ミサイルを搭載することもできず、他の目的のためには潜水艦を使うことができない。潜水艦はただの長距離ミサイル運搬機になってしまう。せっかく 640億円以上の潜水艦を作っても、その全体がただのミサイル運搬機になってしまうのだ。こうして莫大な潜水艦コストが使い果たされてしまう。

出典:Wikipedia
というわけで、「潜水艦に長距離ミサイルを搭載する」というのは、ものすごく馬鹿げているわけだ。コスパの点では最悪だ、と言える。
そして、こんなこともわからないで、やたらと長距離ミサイルを搭載することばかりを考えている防衛省は、頭がプーチン並みにイカレている、と言える。まともな数字の計算もできないで、費用対効果もわからないで、単に「兵器をたくさんほしいなあ」と夢見ているだけなのだ。
こんな馬鹿な連中が日本の防衛政策を担っているのかと思うと、寒気がするね。こんなことでは、戦争になったら、あっさりと敗北しそうだ。
例1。北朝鮮がダミーミサイルを数百発を発射した。日本の迎撃ミサイルがそれに対応したせいで、迎撃ミサイルはすべて撃ち尽くしてしまった。弾切れだ。そこで、ミサイルを補充しようと思ったが、国産ができないので、お手上げ状態となる。
例2。敵基地攻撃のために潜水艦に長距離ミサイルを搭載した。それで北朝鮮に対応しているつもりだったが、中国またはロシアが艦船で攻撃してきた。それらの艦船に対抗するために、魚雷か短距離ミサイルで撃破しようとした。だが、潜水艦にあるのは長距離ミサイルばかりで、魚雷や短距離ミサイルはあまりにも数が少なかった。搭載してある少数の魚雷や短距離ミサイルを撃ち尽くしたら、すぐに弾切れになってしまった。かくて日本は敗北することとなった。なぜか? せっかくたくさんの潜水艦を配備したのに、それらの潜水艦は、敵基地攻撃のために専用化されていたからだ。潜水艦は、敵基地攻撃のために使われたので、日本本土を守る能力は大幅に削られてしまった。(これを「頭隠して尻隠さず」という。)
[ 付記 ]
では、どうすればいのか? 簡単だ。北朝鮮までの距離はかなり短いので、長距離ミサイルを搭載するのなら、陸上に配備すればいい。陸上のどこにでも、長距離ミサイルを配備できる。
それで済むのに、わざわざ潜水艦に搭載するというのは、あまりにも馬鹿げた発想だ。そんなことをしたら、単に潜水艦を無駄にしてしまうだけだ。