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首里城の再建が始まりつつある。
→ 焼失した首里城正殿跡地で起工式 復帰50年にあわせ復元本格化 [沖縄はいま]:朝日新聞
再建するのはいいが、また焼失してしまったら、大変だ。そう思って、調べてみたら……
文書はここに在る。
→ 「首里城正殿の防火対策(案)」について
ここには、意図が記してある。
今般のような火災による焼失を二度と生じさせないよう、消防法に基づく対策は勿論のこと、「国宝・重要文化財(建造物)等の防火対策ガイドライン」(文化庁)等も踏まえ、今後想定される様々な出火要因に対応した防火対策を講じる。
意図はきちんとしているようだ。となると、その意図が現実に具現化しているかが問題だ。
そこで調べると、該当の箇所には、「低照度カメラで監視する」という記述がある。

なるほど、低照度カメラを使えば、暗闇が昼間のように鮮明に見えるので、泥棒などが入っても、たちどころにわかるだろう。その意味で、防犯対策には最適だ。
だが、それは根本的な勘違いだと言えるだろう。目的は、泥棒の侵入を防ぐ防犯対策ではない。出火を発見する防火対策だ。そのためには、火だけを発見すればいいのであって、火以外のものは映らない方がいいのだ。
この目的のために最適のものは、低照度カメラではなく、赤外線カメラだ。赤外線カメラならば、火だけが検知されて、火以外のものは
一方、低照度カメラでは、小さな出火があったとしても、特に目立たないので、見逃されやすい。まわりが白っぽいときに、強い光を放つ火があったとしても、白飛びして白く見えるだけなので、目立たない。「闇夜のカラス」とは逆に、「雪原の白鳥」のような状態になる。……これでは、防火対策の目的には適さない。
防火対策のために必要なのは、低照度カメラではなく、赤外線カメラだ。……なのに、そのことを理解できずにいるとしたら、首里城はふたたび炎上することになるね。
いや、間違えた。炎上するのは、再度ではなく、三度目だ。なぜなら戦中(米軍の沖縄戦のとき)にも、首里城は一度、焼失したことがあるからだ。
→ (天声人語)首里城の起工式:朝日新聞(有料記事)
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教訓。
「失敗を反省して、今度はきちんとやろう」という心構えだけは良くとも、科学的な知見がないと、結局はふたたび失敗を繰り返す。自分の愚かさを理解しない限り、同じ失敗を何度も繰り返すことになるだろう。
では、次に燃えるのは、何十年後になるだろうか。今のうちから、いくらか予測しておいた方がいいだろう。そして、燃えたあとで初めて、「赤外線カメラさえ設置しておけば……」と後悔するのである。「 Openブログの言うことを聞いておけばよかった」と。
それを「後の祭り」という。
※ なお、再建後は、スプリンクラーが設置されるので、その点では改善される。ただしそれで安全とは限らない。センサーが働かないと、スプリンクラーは作動しないからだ。ひょっとすると全電源停止でスプリンクラー不作動ということも。
【 関連項目 】
過去記事
→ 首里城の火災: Open ブログ(2019年)
→ 首里城の焼失の原因: Open ブログ(2021年)
消火栓だと人が居なければ消火の役に立ちませんが、スプリンクラーならとりあえず初期消火ができます。
ただ、電気火災の場合には水をぶっかけても……というところはあります。
> この目的のために最適のものは、低照度カメラではなく、赤外線カメラだ。赤外線カメラならば、火だけが検知されて、火以外のものは真っ暗になる。だから、火だけをうまく発見できる。
⇒ 赤外線カメラは、低照度カメラ(暗視カメラ)と同じように、火などの高熱物以外のものも、(通常の設定では)普通に写るのでは。人間、動物、植物、または建物内のいろいろなものも、モノクロの濃淡で判別できると思います。元々の色の違いなども、白〜黒の輝度の違いとなって出てきます。(「赤外線カメラ)などで画像検索するといろいろ出てきます。)
ただし、特殊な設定によって、火などの高熱物以外は写らないようにすることはできるかもしれません。それと、通常の設定でも、例えばカメラの視野以外の場所(別の部屋など)から出火して、その熱によって壁や天井が高温になっているのをサーモグラフィーのように検知して、火事を早く見つけるということはできるかもしれません。
文中では「火以外のものは真っ暗になる」と記していたので、この箇所を「グレーになる」に訂正しておきました。
当該資料では防火施策を、1.未然防止 2.早期覚知 3.初期消火 …のように時系列で細分化し段階をおって説明しています。
「低照度カメラで監視する」とはその段階のうち、1.未然防止に含まれており、それのみに監視方法が限定されているわけではありません。
2.早期覚知が監視方法の説明であり、アナログ式煙感知器、R型受信機、放火防止センサー、消防署への自動通報装置が含まれています。
このうち「放火防止センサー」が管理人さんの想像する「赤外線カメラ」の役割を果たすのではないでしょうか。
放火防止センサーで検索すると個人で購入できる民生用の商品でさえ、炎の発する紫外線(赤外線ではなく)を検知し、4メートル先から3センチのライターの炎でさえ感知できるとうたっています。
情報ありがとうございました。確かに有益な指摘ですが、「放火防止センサー」は、名前の通り放火に対応するものなので、強い火を発する必要があります。
とすると、前回の火災のように、電線の漏電から発熱して延焼したというケースには、うまく該当しないことになります。
漏電の場合には、火が出る前に過熱している状態があるので、その段階で検知するには、赤外線カメラが必要です。
火が出てからでは遅いんです。
「放火防止センサー」は、放火対策にはなりますが、漏電対策にはなりません。前回事故の再発を防ぐことはできません。
未然防止の項目に次の記載があります。
漏電遮断器 電気機器・ケーブルの絶縁劣化による漏電に備える
感震ブレーカー 地震発生時に電気供給を自動遮断
絶縁監視装置 絶縁機能が劣化していないか日常的に監視
これらが漏電防止をする想定になっています。
前回の漏電では、内部電源から漏電したのではなく、外部電源を持ち込んで漏電したので、上記の漏電対策は無効です。電気系統が別なので。
そもそも、漏電は一例であって、(一挙にではなく)少しずつ加熱していくタイプの火元を発見するには、赤外線カメラが必要です。