2022年11月02日

◆ 神童をどう育てるか .2

 「神童」または「ギフテッド」と呼ばれる、特別な才能のある子供をどう育てるべきか? (その2)

 ──

 同じ話題で、前に記したことがあった。
  → 神童をどう育てるか .1: Open ブログ
 その続きを記そう。

 まずは、朝日新聞の記事を紹介しよう。(10月22日の記事)
 「ギフテッド」とも呼ばれる特異な才能を持つ一方、周囲となじめず困難を抱える子どもが円滑な学校生活を送れるように、文部科学省の有識者会議が支援策の提言をまとめた。

文科省の有識者会議がまとめた支援策
 @特異な才能のある子どもに対する教員の理解を深めるための研修促進
 A授業にとどまらない多様な学習の場の充実
 B教員らが才能のある子どもの特性を把握するためのサポート
 C実証研究を実施し指導・支援の事例を蓄積
( → 「ギフテッド」定義避けた有識者会議、その心は 識者「検討続けて」:朝日新聞 10月22日

 こういう提言だが、あまりにも平凡だ。こんなことでは、現実には具体的に何かをしてもらえるとは思えない。せいぜいちょっとした助言程度であって、あってもなくてもいいようなサポートしか得られまい。
 本質的には、何をするかより、何をしないかが重要だ。記事にはこうある。
 有識者会議では、特異な才能を定義することで、それを伸ばすことに教育の力点が置かれるようになりかねないことを危惧する声や、「枠組みをもって定義していくだけでは拾えないもの(能力)が数多くある」との指摘が委員から出された。
 これらを踏まえ、会議ではIQ(知能指数)などをもとに才能を定義すれば、これを持った人を選抜する動きが出てくるとして、能力を持つ一人ひとりに応じた教育を支援するために「定義はしない」と結論づけた。そのうえで、提言では「特異な才能のある児童生徒の抱える困難を丁寧に把握し、それぞれの環境や条件に応じて適した対応を柔軟に講じることが必要」とうたった。

 「才能のある児童生徒の抱える困難を丁寧に把握し」ということだが、これではまるで障害児対策だ。
 その一方で、長所を伸ばそうとする方針は、なおざりだ。
 「特異な才能を定義することで、それを伸ばすことに教育の力点が置かれるようになりかねない」
 とあるが、これでは、なおざりというより、否定的と言ってもいいほどだ。呆れる。
 「才能を定義すれば、これを持った人を選抜する動きが出てくる」
 というふうに述べて、選抜することを否定している。これにも呆れる。

 ──

 先に 神童をどう育てるか .1 では、その逆のことを述べた。その趣旨は、「選抜せよ」ということだ。具体的には、こうだ。
 「神童に対する教育というのは、具体的には特に何もしなくていい。本人が専門分野で知識を得ようとするなら、そのための専門分野の教師を与えるぐらいでいい。能力にふさわしい教育を与えるだけでいい。ことさら特別なことはしなくていい。ただし、神童には仲間を与えるべきだ。切磋琢磨する仲間こそが、何よりも必要なものだ。それは、ライバルでもあり、友でもあり、救いでもある。それは決して上から大人が与えるようなものではない」

 こういう趣旨の話を述べた。そして、仲間を与えるということは、同類の神童を一箇所にまとめるように選抜する、ということだ。これこそが神童への教育の最重要のことだ。

 「神童に必要なものは、教育ではなく、仲間だ」
 それが先に述べたことだ。ところが、有識者会議は、それとはまったく別のことを方針としている。神童に対しては、仲間を与えるでもなく、長所を伸ばすのでもなく、障害児対策をしようとしている。……こんなことでは、神童をつぶしてしまうだけだ。呆れるしかない。

 群盲象を撫でるという言葉がある。愚か者が集まって神童というものを扱うと、対象の意味がわからないまま、見当違いなことばかりを語るのである。
 
 先の項目ではこう述べた。
 要するに、筑駒というのは、そういう学校なのだ。優れた教育をもたらされる場ではなく、才能のある生徒が集まる場なのだ。
 そして、国や自治体がやるべきことは、場を提供することだけでいい。ただそれだけでいい。それだけをやれば、あとは生徒の自発性に任せていいのだ。

 なのに、有識者会議は、その最も肝心なことを否定しようとする。なぜなら、彼らは凡人ばかりだからである。凡人というものは、神童には何が必要であるかを、まったく理解できないのだ。

 そういう馬鹿げた状況が、今回の新たな結論(有識者会議のまとめ)から、明らかになったと言えるだろう。



 [ 付記1 ]
 有識者会議は、神童を選抜することを否定する。ではなぜ、選抜を否定するのか? 
 そもそも単なる選抜なら、どこにでもありふれている。入学試験という物はすべてが選抜であるからだ。選抜が悪いのであれば、あらゆる入学試験を廃止しなくてはならないが、そんなことは無理だ。
 有識者会議が否定したいのは、ただの選抜ではなくて、エリートの選抜だろう。だが、「エリートの選抜はけしからん」というのは、凡人のやっかみ(嫉妬)であるにすぎない。このような凡人の感情で、エリートの足を引っ張ろうとするのは、それこそみっともない意地悪というものだろう。
 結局、有識者会議は、神童を助けることを目的としているように見えて、凡人が神童の足を引っ張るための組織になってしまっている。しかも、そのことを自分たちが自覚できていない。情けないことだ。少しは反省してもらいたいものだ。

 [ 付記2 ]
 では、凡人は神童に対して、どうふるまうべきか? それを教えよう。嫉妬するかわりに、敬意をもてばいい。
 たとえば、囲碁の世界では、早熟の天才というものが現れる。仲邑菫 という少女もいるし、藤田怜央 という少年もいる。これらの児童はまさしく神童と呼ぶのにふさわしい。
 さて。これらの神童は、選抜されて、プロ棋士となった。では、これらの棋士については、有識者会議の「選抜するな」という方針に従って、選抜するのをやめるべきだっただろうか? もちろん、否だ。神童を選抜するな(凡人のなかに埋もれさせよ)というのは、あまりにも馬鹿げた発想なのである。

 [ 付記3 ]
 日本には「受験競争は悪だ」という発想がある。だが、それに従って実行した「ゆとり教育」は、日本の学力低下をもたらしただけだった。
 ひるがえって、韓国や中国では、受験競争を激しい状況に置いた。すると、生徒は必死に勉強をするようになった。そのおかげで、生徒の学力は、今では中国や韓国が日本のレベルを上回るようになった。その一方で、日本のレベルは他のアジア諸国にも負けるようになって、どんどん学力が低下していった。……「受験競争は悪だ」という発想の結果が、こういう学力低下となったのだ。
 そのせいか、日本の企業や大学のレベルも、国際的にはどんどん低下するばかりだ。科学論文のランキングは、下記のように急低下している。


sci-rank.png
→ 中国への頭脳流出: Open ブログ


 [ 付記4 ]
 「受験競争は悪だ」という発想があるのかもしれない。だが、そういう発想は、ただの「なまけていることはすばらしい」というグータラ人間の発想であるにすぎない。日本人がそうしてグータラしている間に、中国や韓国の生徒は、死に物狂いで勉強して、どんどん発展していくのだ。
 なのに、やたらと競争を否定する有識者会議というのは、愚かすぎる。この会議は、有識者の会議ではなく、凡人と愚者の会議であるにすぎない。ならば、名称を「愚者会議」に変更するべきであろう。(皮肉)

 今の大人には、「苛酷な受験競争は生徒に有害だ」という発想があるのかもしれない。だが、「苛酷な受験競争」というのは、今は昔である。受験地獄なんてのは遠い昔の話であって、今の若者はそんな苛酷な競争にはさらされていない。むしろ、スマホ漬け・ゲーム漬けで、だらけていると言える。大甘であって、昔の受験地獄とは対極的だ。今は昔とは違うのだから、昔の発想にとらわれるべきではない。

 [ 付記5 ]
 そもそも、有識者会議の提言を見ると、「神童をどうするか」という問題に対して、「上から与えよう(教えよう)」という方針があるばかりだ。だが、そういう方針は、根本的に間違いだ。「教育」の意味を根本的に誤認している。
 神童に対しては、「教える」ことより「育てる」ことが大切だ。教育では、教えることより、育てることが大切だ。
 そのとき、上から何かを与えることが大切なのではなく、本人の自発的な才能発揮を手伝うだけでいいのだ。そして、そのために何よりも大切なのは、個別にカスタマイズした特殊教育ではなく、同類といっしょに集団的に切磋琢磨する環境なのだ。
 早熟な囲碁の少年少女には、それが与えられた。それというのも、選抜があったからである。選抜を恐れていては、こういう「正解」に達することはできないのだ。
 有識者会議という名の愚者会議が、そういう真実を理解できない限りは、彼らは神童を押しつぶすことしかできないであろう。
 
posted by 管理人 at 23:31 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Googleで「ギフテッド 募集 学校」で検索すると
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そういう学校もあるようですね
https://showa-gakuen.net/examination
Posted by のび at 2022年11月04日 09:40
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