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梨泰院の現場を調べよう。Google マップを見る。図の中央の道が該当箇所だ。
地図上では太い道のように見えても、現実には幅が 3.2メートルしかないし、車も通れない狭い道だとわかる。(ストリートビューの車も通っていない。)
この道の 100メートルほど西にも、道がある。だが、これもまた狭い道だ。下記の通り。
これらの道はいずれも狭い道であり、しかも坂道となっている。その点では、渋谷のスペイン坂に似ている。下記。
道の条件としては、スペイン坂の方が悪い。
・ 道幅はさらに狭い。
・ 途中で折れ曲がっている。
・ 坂道の上側の方では、道が階段になっている。
密集した人が倒れるとしたら、その危険性はスペイン坂の方がずっと高い。ではなぜ、梨泰院では事故が起こり、スペイン坂では事故が起こらなかったのか? そもそも、梨泰院の事故の原因は何だったのか?
どうもわかりにくい。困った。どう理解すればいい?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい解釈を出そう。こうだ。
「梨泰院には狭い道が少しあるだけだが、渋谷には太い道がたくさんある」
つまり、こうだ。
「梨泰院では、例の道以外には、ろくに道がないので、多くの人々が例の道に密集した。渋谷では、スペイン坂以外にも、太い道がたくさんあるので、多くの人々がスペイン坂に密集することはなかった」

上の図では、密集した人を黒点で概念的に示している。このように特定箇所に黒点は密集している。
一方、渋谷の場合には、黒点は各場所に分散して配置されている。なぜなら、道はたくさんあるので、あちこちに分散可能だからだ。特定の道しか存在しない梨泰院とは違う。(特に、「公園通り」という太い道がある点が、決定的に異なる。なお、スペイン坂は、左の「内田ビル」のあたり。)
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以上のことから、道の量が決定的な差だ、とわかる。
・ とても細い道が少しあるだけ。
・ 太い道がいくつもある。
こういう差があるのだから、単位面積あたりの人数(人口密度)には大差が生じることになる。たとえ集まった人数がともに 10万人だとしても、前者の人口密度は異常に高くなり、後者の人口密度はあまり高くならない。
なお、ハロウィン当日のスペイン坂はこれ。(2枚目は渋谷センター街)
スクランブルとかセンター街の画像だけみたら、渋谷がカオスに見えるだろうけど、スペイン坂にずれただけでこんな状態だし、おそらくコロナ前のハロウィンに比べたら激減してるんじゃないかな。
— SAISAI (@SyuuzouA) October 31, 2022
ちなみに渋谷で働いてる身としては多少迷惑な面もあるけど、それ以上に風物詩として楽しんでます?? https://t.co/WOOLLVfU6K pic.twitter.com/s0fWRIyQbG
スペイン坂を下ったあとの出口の大通りは、これ。
ホールから、遊び半分でスペイン坂を降りて後悔しました。 pic.twitter.com/rkUD5X5nrC
— Take witch (@shinyatakeuchi) October 31, 2022
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以上は、分析だ。
このあとは、対策を考えよう。(梨泰院で)
(1) 当日対策
当日対策をするとしたら、この狭い道を通行禁止にするべきだった。あるいは、一人だけが通れる狭い改札を設置して、人数制限をするべきだった。どっちみち、人口密度を下げる必要があった。
そうすると、狭い道の前に大量の人が滞留することになるが、そこは幅広い車道なので、人があぶれても、特に問題はない。歩行者天国になるだけだ。
(2) 将来対策
将来対策をするとしたら、「道が足りない」という根本問題を解消するべきだろう。つまり、一帯を都市再開発するべきだろう。狭い住宅を取り壊して、区画整理して、たくさんの太い道を設置して、かわりに高層ビルを建てる。こういう都市再開発をすることが必要だ。
こういう狭い道は、東京でも下町には残っている。だが、たいていのターミナル駅周辺では、再開発がなされて、高層ビルが並んでいることが多い。遅れ気味だった渋谷も、近年では再開発が進んでいる。取り残されているのは、新宿駅のそばの一画ぐらいだろう。(南西部の代々木のあたり。狭い道と低い家が並んでいる。)
一方、韓国では、まったく再開発されていない場所が、結構たくさん残されているようだ。非文明的だとも言える。もうちょっときちんと都市再開発を考えた方がいいだろう。(長期的な将来設計というのは苦手なのかもしれないが。)
【 関連サイト 】
朝日新聞の社説。
→ (社説)ソウルの惨事 知見集め、再発防止を:朝日新聞
その原因分析はこうだ。
なぜ悲劇は起きたのか。当時の現場映像を見ると大勢が身動きできなくなっている。坂道の狭い路地の密集度が極度に高まり、何かのきっかけで「群衆雪崩」に至ったとみられている。
開放感もあったのかもしれないが、度を越した密集は防げなかったのか。どんな仕組みで群衆雪崩が起きたのか。多くの人出が予想されていた中で警備態勢は十分だったのか。解明すべき点は多い。
ただ、警備を過剰にして、かえって混乱を増幅させることがあっては元も子もない。集会の自由が損なわれないようにもしたい。適切な警備とは何かを模索する必要もある。
ここでは「警備と自由」という文学部っぽい発想があるだけで、「人口密度を制御する」という数値的な発想はまったく欠落している。いかにも数字に弱い朝日新聞らしいね。数字ではなく理念のことばかり考えている。……そんなことでは人命は救われないし、事件の再発も防げないのだが。
[ 余談 ]
梨泰院の事故があった当日は、スペイン坂にはテレビ局のカメラがいくつも来ていたそうだ。ツイッターに報告がいくつも出ていた。カメラマンの画像つきで。
で、通行人よりもカメラマンの方が多いくらいだ、という話も。(つまり当日のスペイン坂は閑散としていた。普段から平日は人通りが少ない。)
【 追記1 】
当日はイベントが催されて、大勢の集客を目指していたという。ただしイベントは特定の大規模主催者がいたわけではなく、小規模の店がたくさん個別に開催していたそうだ。
今回の事故は「主催者がいない自発的行事」(韓悳洙〈ハンドクス〉首相)の中で起きたと捉えられている。
法に基づくマニュアルでは、1千人以上の参加が予想されるイベントの主催者に安全管理の計画を出すことが勧告されているが、事故当日は各店などが小規模なイベントを催している状況で、マニュアルの対象から外れていた。
10万人以上を集めた主催者はいないことになるため、法曹界では、安全管理義務などの法的責任を問うのは極めて難しいとの見方が支配的になっている。
( → 「圧死しそうだ」発生前に通報 ソウル雑踏事故、警察の責任も追及へ:朝日新聞 )
特定の主催者がいないとなれば、地域全体を規制するしかないね。こんな狭いところ(狭い道しかないところ)に 10万人以上も押し寄せるのなら、地域全体を規制するしかない。
店の多くは、狭い道の先にある裏通りに並んでいるので、「イベントを催して集客を狙ったせいで、かえって集客ができなくなった」という構造になる。
「火事の映画館で人々が出口に殺到すると、誰も脱出できなくなり、全員が死んでしまう」
というモデルケースに似ている。これを「合成の誤謬」という。
→ Google 検索
【 追記2 】
続報がある。
人波を誘導する警察官の姿が見えないことが気になった。
ハロウィーンの時期には例年、人の流れが一方通行になるように誘導する警察官の姿があちこちにあったと思う。「今年はそうした姿が少なく感じた。丁字路の双方向から人が流れ込んでいた」と振り返る。
( → 街全体が「圧死しそう」 丁字路、双方向から人 ソウル雑踏事故1週間:朝日新聞 )
例年は一方通行だった。図示すると、こうだ。
← ← ← ←
ところが今年は、双方から人が入り込んだ。
→ → ← ←
かくて中央では双方の圧力を受けて、圧迫死が起こった。
詳しい図は、下記にある。
→ 左側の図
人が大勢いくから自分も行くという人と、人が大勢いくから行かないという人がいるようです。東アジア系は農耕民族で前者が多いようです。良い点も多いのですが、今回は悪い面が顕著に出てしまいました。もちろん私やたぶん管理人さんは後者の方です。
→ http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/5984701.html
ソウル雑踏事故 現場に面するホテルが違法増築=密集の一因か | 聯合ニュース
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221101002700882
ハミルトンホテルの違法建築が幅3.2mのボトルネックを生んだ | 中央日報
https://japanese.joins.com/JArticle/297219
ハミルトンホテルだけが違法ではなかった…現場路地の17棟のうち正常な建物は3棟だけ | 中央日報
https://japanese.joins.com/JArticle/297268
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やはり、都市再開発が必要な 違法建築状態が続いていたわけだ。