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朝日新聞が報じている。
ミサイル防衛のため、多数の小型人工衛星を一体的に運用して情報収集する「衛星コンステレーション」について、防衛省が約50基の打ち上げを検討していることがわかった。
衛星コンステレーションは、多数の小型衛星を低高度の周回軌道に打ち上げ、一体的に運用する。特定の地点を高い頻度で観察できるため、相手部隊の動向把握につながる。政府関係者は「敵基地攻撃能力を持つことになれば、攻撃対象の情報収集にも役立つだろう」と話す。
音速の5倍(マッハ5)以上の速度で軌道を変えながら飛ぶ極超音速ミサイルを探知・追尾するための研究実証も計画している。
( → ミサイル情報収集へ衛星50基の打ち上げ検討 敵基地攻撃に利用視野:朝日新聞 )

出典:Wikipedia
「衛星コンステレーション」という構想自体については、私は支持する。情報収集は何よりも大切だからだ。
ただし、利用するなら、民生利用も併用するべきだ。万一の場合の情報収集のためだけに使うのは、もったいない。最も利用するべき使途は、自動運転だ。ちなみに、すでにある低高度の衛星を利用することで、日産のアリアは自動運転で精密制御をすることが可能となった。
「日産 アリア」では、さらに精度を高めるために、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)のシグナルを量産車で初めて利用しました。
GPSの誤差が15m前後なのに対し、CLASの誤差は50cm以下。
( → 「日産アリア」を生み出したマイスターたち #05 | CLUB ARIYA )
こういう用途があるのだから、民生利用も視野に入れるべきだ。(50cm よりもさらに高精度の衛星情報があると、便利だ。)
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一方、ミサイル防衛網に役立てるという意図は、ほとんど意味がないと思う。なぜなら、ミサイル防衛網自体が意味を持たないからだ。これはほとんど「真剣白刃取り」のように難度が高い。金ばかり食うわりには、効果がろくにない。こんなものに巨額の金(1兆円以上)を投じるのは、狂気の沙汰だ。
→ 反撃能力(敵基地攻撃能力) .2: Open ブログ
では、どうすればいいか? それについては、先に述べたとおり。つまり、何もしなくていい。金は何も投じなくていい。北朝鮮のミサイルが飛んでくることなどは、現実的にはありえないからだ。
なぜか? 北朝鮮のミサイルは、先制攻撃のためにあるのではなく、反撃のためにあるだけだからだ。日本に痛みを与えることはできるが、それだけだ。日本に戦争で勝つことはできない。北朝鮮としては、「戦争には負けるが、負けるにしてもハチの一刺しをする」という意味があるだけだ。そんなことのために、先制攻撃を仕掛けることなど、ありえないのだ。(やれば自殺行為である。ロシアだって、弱小国のウクライナに侵攻することはあったが、強国の米国に侵攻することはない。やれば自殺行為だからだ。)
→ 北朝鮮のミサイルは怖くない: Open ブログ
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以上は、すでに述べたとおりだ。その話の続編を書こう。
北朝鮮のミサイルが現実的に飛んでくることはありえない。(あるとしたら、日本が北朝鮮に先制攻撃をした場合だが、そんなことはありえない。あると思うのなら、日本国民が生きるためには、日本の自衛隊をたたきつぶした方がまだマシだ。)
ただ、それでも、ありえないことが起こるかもしれないと想定するのも、悪くはない。「沢口愛華という美人」の項目で紹介したように、「彼女、お借りします」というテレビドラマがあるが、ここでは、主人公の非モテ男が、やたらとモテモテになるということが起こった。ありもしないことが起こった。そういう想像をするのも悪くはない。
そこで想像してみると……
北朝鮮のミサイル数は、数年前の時点で 700発程度。現時点では 1000発程度かもしれない。ちなみに、日本が配備しようとしている巡航ミサイルの数も 1000発程度だ。
→ 長射程ミサイル、1000発規模の保有検討 政府: 日本経済新聞
ただし、1000発程度では、戦況を左右することはできない。
北朝鮮の側から見よう。1000発があるとして、そのうち 230発を東京に打ち込むとしよう。すると、23区で割り算して、一つの区に 10発だけだ。これではあまりにも散発的であり、その被害の量はきわめて限定的だ。
Jアラートが鳴ったら、「怖い、怖い」と思って、すぐに逃げよう、と推奨する人もいる。
→ 地面に伏せることで救える命:ミサイル攻撃に対処する民間防衛(JSF)
→ Jアラートをバカにしてはいけない…軍事ライターが「Jアラートが鳴ったらすぐ建物に避難する」と話すワケ
だが、一つの区に 10発だけのミサイルを、たかが民間の施設に打ち込むという無駄(非効率なこと)をするわけがない。どうせやるなら、次の施設が対象となる。
・ 自衛隊施設(弾薬庫や格納庫)
・ 原発
・ 水力発電所(ダム)
・ 火力発電所
・ 石油タンク・ガスタンク
・ 超高層ビル
こういった施設ならば、10億円以上の損害を与えることができるので、十分に攻撃対象となる。
一方、せいぜい1億円ぐらいにしかならない民家を攻撃することなど、とてもありえない。やればやるほど、損をする。(数億円のミサイルで、1億円の民家を破壊したら、損するだけだ。)
だから、普通の民家にいる限りは、心配することなど何もないのだ。仮にミサイルが飛んでくるとしても、それはどこかのよその施設に落ちるのであって、あなたの家に落ちることはないのだ。
※ 勤務先の会社の工場に落ちるかもしれないぞ、と心配する人もいるだろうが、会社の工場なんて、民家と同様に、被害の規模が限定されているので、そんなところに落ちる危険もない。(例外は F-35 の生産工場みたいな軍事工場だけだ。)
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核ミサイルの心配をする人もいるかもしれない。
「北朝鮮はすでに核ミサイルを開発して、数十発の核ミサイルを保有しているという推定もなされているぞ」
と。しかしこれも、二つの点で否定できる。
第1に、先に述べたように、北朝鮮が核ミサイルを先制使用することはありえない。もしやれば、反撃を受けて、自殺行為となるだけだ。一挙に国全体が滅びてしまう。
第2に、核ミサイルが落ちたら、逃げたとしても無駄である。このことは、次の記事にもある。
→ Jアラートをバカにしてはいけない…軍事ライターが「Jアラートが鳴ったらすぐ建物に避難する」と話すワケ 核ミサイルが落ちても、初動で助かることはある
この記事では、「被害のほとんどは爆風によるものだから、あらかじめ伏せていることで被害を減らせる」と論じている。なるほど、それはそうだが、それはあくまで爆心地から遠い場合だ。
一方、爆心地に近いと、こうなる。
爆心から半径1.38kmの範囲で、このレベルの被曝を受けた場合は100%死亡する。
その外側では、十分に助かるケースもあるので、結論はこうだ。
確かに身を伏せたり、物陰に隠れたりするだけではどうにもならない場所も存在するが、そういった致命的な場所は爆心近くに限定され、大部分は短時間生じる熱線や爆風が核兵器の威力の中心となっていることが分かる。
なるほど、現実的にはそうだが、爆心に近ければ、やはりどうしようもない。
こんなことがあると想定しながら、「核ミサイルの爆風を受けても生き残ろう」として、いちいちビクビクして暮らすのは、うんざりだ。それよりは、「どうせ死ぬときは死ぬ」と覚悟しながら、泰然として過ごす方が、長生きできるだろう。
ちなみに、戦後 80年ほどの間、「ソ連や中国の核ミサイルが落ちてくるかもしれないぞ。いざというときには、地面に伏せる対処しよう」と思いながら、常日頃からずっとビクビクして過ごしていた人よりは、そんなことは何も考えないで泰然として過ごしていた人の方が、寿命は長かったはずだ。
過剰な心配こそ、寿命を縮めるのである。心配症は身を滅ぼす。下手な考え休むに似たり、というのにも似ている。余計なこと(ありもしないこと)は、考えない方がいいのだ。
昔の人は、これを一語で示す言葉を教えた。「杞憂」という。
結論。
「北朝鮮のミサイルは怖くない」
[ 付記1 ]
「怖くない」ということは、「 Jアラートなんか、まるきり無視していい」ということでもある。その理由は、別にある。こうだ。
「戦争が始まった後の空襲警報には意味があるが、戦争が始まる前の空襲警報には意味がない」
北朝鮮と日本が交戦状態になった後でなら、Jアラートにも意味があるが、北朝鮮と日本が交戦状態になる前なら、ミサイルは試射にすぎないのだから、いちいちびくついて隠れたりする必要はないのだ。
いちいちびくつくのは、北朝鮮の心理戦に踊らされるようなものだ。まんまと敵の策動に引っかかっているだけだ。みっともないこと、このうえない。
[ 付記2 ]
また、Jアラートが鳴る時点は、すでにミサイルが日本に着弾しているころだ。典拠はこれだ。
→ 有事の国民保護に遅れ Jアラート、ミサイル通過と同時: 日経
こんなことでは、手遅れだ。時期遅れなら、今さら隠れても、意味がない。
[ 付記3 ]
そもそも政府は「イージス艦のミサイル迎撃で、北朝鮮のミサイルを迎撃する」と言っていたはずだ。なのに Jアラートを鳴らすというのは、「イージス艦のミサイル迎撃は無効です」と言っているのも同然だ。
Jアラートを鳴らすくらいなら、ミサイルが日本上空を通過する前に、途中で迎撃してしまえばいいのだ。(もっとも、そうすると、撃ち落としがいくらか生じて、「ミサイル迎撃は機能不全です」とバレてしまうから、張り子の虎みたいなものを使うのには、躊躇しているのだろうが。)
※ 「ミサイル防衛網を機能させるのは、ミサイルが本土に着弾する場合に限られる」という条件がある。だから、本土を通過するミサイルには、ミサイル迎撃を適用しない……というのが、弁明なのだろう。しかし、それが理由なら、Jアラートを鳴らす必要もないはずだ。特に、今回のように、「ミサイルが日本上空に来てから Jアラートを鳴らす」というふうに時期遅れになるような場合には。(ミサイル迎撃をしないと決めた時点で、 Jアラートを解除していいはずだ。)
[ 付記4 ]
Jアラートを無視していいことには、別の理由もある。相手のミサイルが1発だけならば、それは試射であって、本格的な戦争開始ではない(ゆえに日本には着弾しない)、ということを意味するからだ。
仮に日本に着弾するなら、それは戦争開始を意味するし、その場合には、たったの1発ではなく大量のミサイルが日本に飛んでくることになる。ところが現実には1発だけの発射だった。ならばそれは日本に着弾しないことになる。(背理法)
というわけで、論理を働かせるだけで、「(1発だけのミサイルならば)Jアラートは無視していい」と言えるわけだ。
「北朝鮮の(ミサイルの)おかげで選挙に勝てた」と言っちゃう(7年前)ですから
実際上意義がなくても発するのは自民党的には意味がある
北朝鮮にミサイル発射を依頼したという説も否定できない
11月3日の朝のJアラートも、ミサイルが通過したあとの通知だった。
ミサイルが日本上空を通過したと予想された時刻が 7時48分。Jアラートは 7時50分。その後、ミサイルは日本上空を通過していない、と判明した。(日本海に落ちた。)
→ https://digital.asahi.com/articles/ASQC36D22QC3UTFK008.html