2022年10月29日

◆ トマホークより誘導爆弾

 政府は敵基地攻撃のために巡航ミサイル「トマホーク」を導入しようとしている。しかしそれよりは、誘導爆弾の方がいい。コスパがいいからだ。

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 政府は敵基地攻撃のために巡航ミサイル「トマホーク」を導入しようとしている。
  → 政府、米ミサイル「トマホーク」導入検討 敵基地攻撃能力の装備にも:朝日新聞
  → トマホーク購入を米政府に打診 国産は26年度の運用開始、実績重視:朝日新聞
  → 「即戦力」トマホーク 政権、敵基地攻撃能力の保有前提に見切り発車:朝日新聞

 朝日新聞としては、「防御でなく攻撃力」をもつことを心配しているようだ。だが、防御というのは「真剣白刃取り」のように難度が高いので、コストが莫大に高くなる。それよりは攻撃に金を掛ける方がコスパがいい。この点は、前に述べたとおり。
  → 反撃能力(敵基地攻撃能力) .2: Open ブログ

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 とはいえ、(敵基地への)攻撃力を高めるのがいいからといって、「巡航ミサイル」というプランは推奨しがたい。なぜなら、コストがやたらとかかるので、コスパが悪いからだ。トマホークは143万ドル という価格らしい。( → Wikipedia
 この価格は、迎撃ミサイルに比べればはるかに安価だとはいえ、普通の爆弾に比べればずっと高い。価格が高いということは、配備数が少なくなるということだ。その意味で、とうてい推奨できない。
 ちなみに、ロシアはウクライナ戦争で、すでに高精度ミサイルをほぼ撃ち尽くしてしまったようだ。虎の子として、ごく少数を手元に残しているだけで、ほとんどのミサイルを使い果たしてしまった。それというのも、もともとあるミサイルの総数が少なめだからだ。高価なミサイルを大量に用意しておくのは、もともと困難だ。

 ミサイルよりもずっと安価なのが、誘導爆弾だ。本格的な精密誘導爆弾は少し価格が高めだが、普及型の爆弾の尾部に誘導装置(尾びれのようなもの)を追加するだけの誘導爆弾ならば、格安で作ることができる。このような爆弾ならば、コストが格安であるがゆえに、大量に配備することが可能だ。……ここに意義がある。だから、数の限られた巡航ミサイルなんかよりは、安価に大量生産できる誘導爆弾の方がずっと有効なのだ。(国産も可能であるし、いざ戦争となったら大量生産も可能だ。技術的には低レベルだからだ。)
 
 誘導爆弾を投下するには、ステルス機である F-35 が必要となる。F-35 がステルス能力でこっそり侵入してから、誘導爆弾を落とすわけだ。この場合、巡航ミサイルと違って、大型の爆弾を投下することもできるし、小型の爆弾を広範囲に大量投下することもできる。(焼夷弾みたいに。)
 いずれにせよ、数の限られた巡航ミサイルなんかよりは、大量の爆弾を投下することの方が重要だ。戦争とは、量なのである。そのことは、すでに弾切れに近くなったロシアの惨状を見てもわかるし、第二次大戦末期の弾薬不足の日本軍を見てもわかる。
 こんなこともわからないで、「量よりも質」と信じて、高価な兵器を「1点豪華主義」みたいに買う自衛隊は、もはや、実戦的な軍というよりは、高価な兵器をいじって遊ぶだけの軍事オタク(ただのアマチュア)にすぎない、と言っても過言ではないだろう。……戦争が始まれば、あっという間に弾薬切れになって、空砲を撃つことしかできなくなるだろう。



 【 関連サイト 】
 誘導爆弾の機構。
 JDAM(英語: Joint Direct Attack Munition、ジェイダム、統合直接攻撃弾)は、無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置のシリーズ名である。2000年前後にアメリカ合衆国で開発・実用化され、米軍を主体に数ヶ国の軍隊が保有している。
 JDAMシリーズの誘導装置キットを取り付けることで、無誘導の自由落下爆弾を全天候型の精密誘導爆弾(スマート爆弾)に変身させることができる。INSとGPS受信機が組み込まれており、2つの方式を併用した誘導装置が尾部の制御翼をコントロールして、外部からの誘導なしに設定された座標へ精度の高い着弾が行える。

JDAM.jpg

( → JDAM - Wikipedia


posted by 管理人 at 23:59 | Comment(4) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
主旨には賛成ですが、細かいコメントをさせてください。

ロシアは面制圧を主眼とし、
ウクライナは(主にハイマースによる)点制圧を主眼としています。

面制圧と点制圧には、当たり前ですが、それぞれメリット、デメリットがあります。
面制圧は、安い兵器を使えるので、その点でロシア的には大きなメリットがあります。
しかし、物量≒輸送コストというデメリットがあります。
物量が必要なので、大規模集積地がコスト上必要となります。
そこをウクライナは(衛星からの情報をもとに)点制圧でたたいてますね。

かなり雑な意見ですが、上記にはじゃんけんのような関係があります。
じゃんけんである以上、ぐーもぱーもきょきも用意するべきです。
どの割合で用意するかは、まさに軍事機密でしょう。
Posted by サク at 2022年10月30日 00:54
 ロシアは、点制圧のための高価な武器(ミサイル)を、面制圧(民間の建築物の破壊)のために用いる、という非効率なことをしていますね。情報がないせいらしいが。

> ぐーもぱーもきょきも用意するべきです。

 まあ、そうなんですが、ぐーもぱーもきょきも何もない状態から、まずはどれを取るかという順序の問題です。まずはコスパのよさそうなものから取りましょう、と。
Posted by 管理人 at 2022年10月30日 07:46
射程1000キロ超の射程のトマホークを誘導爆弾による近接爆撃で代替するとは素晴らしいアイディアです。
一機数十億の戦闘機を敵地奥深くに侵入させればいいだけですから。
高価な戦闘機と育成に大変な手間がかかるパイロットを失うリスクを天秤にかけても、巡行ミサイルを使うよりトータルでパフォーマンスがいいですもんね。
Posted by なまず at 2022年10月30日 23:06
私もトマホーク導入には反対です。
変な事言ってる人たちは反対の反対なだけでしょ。
その為のステルス超音速巡航弾が12式改であって、トマホークが有効な場面では既に航空優勢が確保されてる状態でありJDAMでも充分という内容。
飽和攻撃が可能なほどの火力を巡航ミサイルで無差別に叩き込むという内容ならV1飛行爆弾の段階で既に失敗していてV2弾道弾に変わりました。
防空網が生きてる段階でのトマホークは全く何の役にも立ちません、自爆ドローンの方が複雑な軌道を仕込めるだけ遥にマシです。
V5トマホークは12式改並に高価どころか売って貰えない可能性の方が高い。旧型なら結局ただのブースター付き有翼爆弾だ。
Posted by mars at 2023年01月16日 18:13
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