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まずは、これまでの経緯を示そう。
トヨタは昨年 12月、EV推進という方針に大転換して、 EV 16車種を披露する発表会を開いた。
トヨタはいかにも大得意だったが、これを紹介した私の記事は否定的だった。
トヨタが急激に方針転換した。これまでの EV 軽視をやめて、一挙に EV 推進に大転換した。だが、先行きは暗い。
これでトヨタは EV 推進に成功するか? 世間は「成功する」と踏んでいるようだが、私は「駄目だろう」と推測する。
こんなに低レベルの会社が、たったの1年2カ月で、急激にまともな EV を出せるようになるはずがない。口先でいくら大ボラを吹いても、現実の手足はそれに追いつかないはずだ。
( → トヨタが EV 推進に転換: Open ブログ )
その後、上の発表会のモデルそのものが偽物であることが判明した。
トヨタは 12月に EV を一挙に16台も披露したが、そのうち11台は粘土製だった。ちゃんとした金属製かと思ったが、まんまと、だまされた。
報道によると、これらのモデルは粘土製だったそうだ。日本経済新聞が報じている。
( → トヨタの EV モデルは粘土製: Open ブログ )
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以上が、これまでの経緯だった。
そして、このたびトヨタの新しい方針が判明した。
トヨタ自動車が電気自動車(EV)事業を巡り、戦略の修正を検討していることが分かった。基本設計のプラットフォーム(車台)も見直しの対象に含めており、2030年までにEV30車種をそろえるとしていた従来の計画の一部は既にいったん止めた。想定以上の速度でEV市場が拡大し、専業の米テスラがすでに黒字化を達成する中、より競争力のある車両を開発する必要があると判断した。
見直しの焦点となっているのは、トヨタがEV用に開発した「e-TNGA」と呼ばれるプラットフォーム(車台)。
しかし、EV専業のテスラなどに比べて効率が悪いと、同関係者らは言う。市場が急速に立ち上がり、車両の価格が徐々に下がる中、製造コスト面で太刀打ちできなくなるとの危機感が一部の技術者や幹部の間に広がり始めた。
テスラが生産ラインに導入した大型のアルミ鋳造機「ギガプレス」の有用性も検討する。自動車のプラットフォームは数百点の鋳造品や金型成形品を溶接して組み立てるが、大きな鋳造品を作れるギガプレスはこれを大幅に減らして効率化できる。
関係者3人によると、競争力向上のために重要な技術はさらに2つあり、1つはグループ会社のアイシンが開発している第3世代「eーAxle」。e-TNGAを初めて採用したEV「bZ4X]に積んだ駆動装置のおよそ半分に小型化している。
もう1つは電池やモーターの排熱や車内空調など、熱を一体的に管理する技術。デンソーとアイシンが最優先で開発に取り組んでいると、関係者の2人は話す。e-TNGAを使った現行のEVは排熱を捨ててしまうことがあるが、テスラ車は暖房に活用するなどしている。省電化が可能になることから電池量を減らすことができ、生産コストの削減にもつながるという。
( → トヨタ、EV戦略見直し検討 クラウンなど開発一時停止=関係者 | ロイター )
ここでは、三つの用語が重要だ。
(1) ギガプレス
ギガプレスは、自動車製造で最も多大な工程のかかる溶接作業を、一挙になくしてしまう、という技術だ。多数の構造パーツを溶接して組み立てるかわりに、巨大なプレス機で一回押すだけで作ってしまう。大幅なコストダウンが可能となる。革新的な製造技術だ。
→ トヨタを追いつめる……テスラが爆買いする巨大マシン『ギガプレス』の正体とは? | AppBank
→ テスラが使うギガプレス、自動車メーカーは追従するのか?
→ テスラの未来型自動車製造を支えるイタリアIDRAのギガプレスマシン - 海外情報ナビ
→ 中国EVメーカーもテスラの超大型鋳造プレス機「ギガプレス」を採用へ
→ 6万社の下請けが不要になる…「おもちゃのように車を作る」というテスラ方式| PRESIDENT
→ テスラの新しい車体戦略〜軽量化を進める世界最大の鋳造技術〜 - EVsmartブログ
そう簡単には真似できないだろうが、効果が圧倒的であるだけに、将来的にはこの方向に進みそうだ。無視することはできない。将来を見据えた戦略を立てる必要がある。
ちなみに日産では、自動溶接ロボットを大量導入する、という戦略を取っている。おかげでアリアの生産コストはトヨタの EV より、かなり低いようだ。
(2) eーAxle
自動車のエンジンとトランスミッションに相当するものだ。EV の心臓部に当たる。これを一体的に開発することで、大幅なコストダウンが可能となる。日本電産がこれの世界シェアを大幅に取ろうと狙っている。実際、中国の EV の多くは日本電産製の eーAxle を使用している。これを買って組み立てるだけで、高性能な EV が簡単にできてしまう、というわけだ。
→ トラクションモータシステム「E-Axle」(EV駆動モータシステム) | 日本電産株式会社
日本電産はこれを出血価格の大幅な低価格で販売して、世界シェアを獲得しようとしている。
完成車メーカーへの販売価格はすでに1200─1300ドルまで引き下げている。平均製造コストは1800ドル程度と推定されており、これを大幅に下回ることになる。
( → 焦点:日本電産と日産がジヤトコ巡り綱引き、自動車に電動化の波 | ロイター )
※ これに飽き足らず、独自技術を持つジヤトコを買収しようとしている。親会社の日産自動車に「ジヤトコを譲ってくれ」と頼んで、何度も断られているが、諦めずに食いついている。「どうせ赤字経営の日産は手放すしかあるまい」と見込んでいるようだ。(上記記事。)
(3) オクトバルブ
テスラのオクトバルブは、EV の熱管理を集中制御して、熱の無駄を一挙になくそう、というものだ。EV は、電池からは熱が出るが、一方で、暖房には熱が不足している。それぞれの熱を無駄に捨ててしまっては効率が悪い。そこで、無駄に捨てられる熱をうまく管理して、熱制御することで、エネルギーの無駄をなくして、効率をアップする……というシステムだ。
→ テスラ、熱の司令塔「オクトバルブ」 ソフト時代のハードを問う | 日経
→ 日本初!? テスラモデルYのオクトバルブを展示販売! - ELECTRICLIFE
→ EVの「サーマルマネジメント」が競争激化 先頭テスラを追うのは?【和田憲一郎】
なお、日本企業向けには、デンソーとマレリもオクトバルブと同様の狙いの技術開発をしている。
→ デンソーの熱マネ、25年ごろ統合型へ 部品メーカーの開発競争 | 日経クロステック
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以上の三つの新技術を導入しているのがテスラだが、トヨタはこれらの技術をまったく採用していない。そんな状態で、旧来技術のプラットフォーム e-TNGA を新採用したら、今後 5年間以上は旧来技術を維持しなくてはならない。「それでも大丈夫だ」と見込んだのだろうが、業界の進歩は圧倒的なので、トヨタは大きく取り残されそうだ。するとコスト面で大幅に不利になりそうだ。だから、方針を一挙に転換した……ということらしい。
私の意見を言えば、「気づくのが遅すぎる」となる。同じ判断を、私は昨年 12月に下していた。「こんな古い技術ばかりでは駄目だ」と。
昨年の時点で、すでにアリアは栃木の新工場を稼働して、最新技術を大幅に導入していた。このハイテク工場については、1年前の記事で紹介した。
→ 日産アリアがついに発売: Open ブログ(2021年11月13日)
この時点ですでに日産の EV 生産は最新技術を大幅に導入していた。ギガプレスこそ導入していないものの、できる範囲で大幅に新技術を導入していた。
なのにトヨタは、旧来技術だけで、e-TNGA という新プラットフォームを導入しようとしていた。完全に周回遅れだ。だからこそ私は、トヨタの 16車種の披露を見ても、「駄目だろう」と評価したわけだ。(上記)
※ トヨタの認識が遅れすぎているという点は、衆目の一致するところであるようだ。「今ごろ気づいたのか」という批判がたくさん浴びせられている。まあ、そうだよね。
※ 以下の話は余談なので、読まなくてもいい。
[ 付記1 ]
クラウンについては前に別項で述べた。
→ クラウンがモデルチェンジ: Open ブログ
クラウンは、EV は開発停止になるようだが、ハイブリッドはそうではない。すでに一部が発売されている。9月1日に発売された。
→ トヨタ新型「クラウン」発売開始! 全7グレードの「クロスオーバー」| くるまのニュース
→ 「クラウン・クロスオーバー」に試乗 洗練された快適な走り | 朝日新聞
→ 1ヶ月間の累計受注台数は、月販目標の3倍を超える26,000台
クラウンのハイブリッド版は、二つのシリーズが。ターボありと、ターボなしだ。ターボありの方は、今のところは未発売だ。発売は来年初頭となる。
ターボありの方は、どんなものか? 特徴は、エンジン出力の拡大にともなって、モーター出力も大幅に拡大されたことだ。
→ 新型クラウンのデュアルブーストハイブリッドシステムってどういうこと‐GAZOO
とすると、電動モードのレスポンスがとてもいいはずだ。日産の e-POWER 並み(つまり EV 並み)のレスポンスを誇るはずだ。ドライバビリティの向上があり、高級感があるはずだ。トヨタっぽくないね。
ま、どうせお金がありあまっている人が買うのだろうから、クラウンを買うなら、ターボモデルの方がいいね。ターボなしだと、高級感が不足して、不満になりそうだ。
[ 付記2 ]
bZ4X も惨状だ。いつまでたっても生産できずにいる。
→ トヨタ bZ4X のボルト: Open ブログ
……と思ったら、10月26日にようやく、販売再開となった。
→ トヨタ、初のEV「bZ4X」を販売再開 サブスク値下げで巻き返し:日経ビジネス電子版
ただし、43万円も値下げするそうだ。あまりにも売れなかったので、値下げを迫られたようだ。しかしこんなことでは、赤字が確実だろう。
《 加筆 》
bZ4X の車両本体価格は実質 630万円。
→ トヨタ bZ4X のサブスク: Open ブログ
43万円を引いたら、587万円だ。一方、アリアは 539万円だから、アリアよりもまだ 50万円ほど高いことになる。とうてい対抗できそうにないね。ただしアリアは人気が高すぎて、納車時期が遅すぎる。そこに勝機があるかもしれないが、しかし IONIQ5 や ID.4 にも大幅に負けている。両車に比べて、約 100万円も高い。勝負にならん。
[ 付記3 ]
EV 補助金は、すでに枠が切れたが、補正予算で、補助金は維持されるらしい。
→ 「CEV補助金」11月以降も継続へ ? モビナビ
[ 付記4 ]
ギガプレスには、批判もある。
「事故の修理が難しいので、修理費が高額になる」と。
従来方式なら、破損したパーツだけを交換できるが、ギガプレスではそうは行かないので、修理費が高騰しそうだ、というわけだ。
だが、これは何とか解決できそうだ。
・ 軽度の事故ならば、手作業で構造材を補修できる。
・ 重度の事故ならば、どっちみち修理不能である。
・ 中度の事故は、比率では多くない。
・ 中度の事故には、補強材で補修する、という対策も可能。
実は、事故車の修理より、「事故そのものを起こさなくする」という自動ブレーキ技術の方が、よほど影響しそうだ。自動ブレーキ技術が優秀なら、事故そのものが起こらなくなるし、起こっても軽度で済むようになる。すると、人の死亡が激減するので、対人賠償保険(億円単位)が激減する。自動車の物損の保険よりも、人が死ななくなることの方が、よほど大きな影響をもつだろう。
どうせ心配するなら、ギガプレスにしたときの事故の修理費用より、自動ブレーキの性能向上を考える方がいい。

すなわち、かたちだけ、手を広げすぎ=I
2.4Lターボ:WLTC燃費 15.7km/L
2.5L :WLTC燃費 22.4km/L
⇒ どこの誰だかは知りませんが、最近急遽この関係に駆り出されて、のんびりブログを見たりつまらない冗長なコメントを書き込む時間が減っているみたいですね。