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数日前に、円レートは1ドル=150円を超える円安となった。「このまま奈落の底に落ちるように円安が進むのでは」と感じて、不安に思った人も多いようだ。また、見通し不明の不安感に襲われた人も多いようだ。
その後、日銀の介入により、円安は一服しているが、介入の効果は限られているので、円安がどんどん進行しそうだと思っている人も多いだろう。
そこで、私なりの見解を示そう。
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いきなり結論を言えば、こうだ。
「その件は、10月08日に書いた下記項目で示した通り。
→ 円買い介入の是非: Open ブログ 」
要するに、円安の原因は、基本的には貿易赤字の拡大である。グラフを再掲すれば、こうだ。

これを増幅しているのが多額の投機資金だが、投機資金はあくまで円安を増幅しているだけであって、基調ではない。基調である貿易赤字こそが、円安の根本原因である。
そして、その貿易赤字はどこから来たかと言えば、(ウクライナ戦争による)石油価格の高騰である。このせいで多額の貿易赤字が発生した。
しかるに、この石油価格の高騰は、最近では収束している。したがって、円安もまた収束するはずだ。
以上の話は、上記項目で述べたとおり。
では、その理由は何か? もちろん、実需だ。つまり、石油や天然ガスの高騰だ。このせいで日本の輸入代金が異常に高騰している。貿易赤字も大幅に拡大した。
→ なぜ? 貿易赤字が過去最大 拡大の要因は? 影響は? | NHK
ところが、石油価格(およびそれに連動する天然ガス価格)の高騰は、すでに収まった。( → 前項 で述べたとおり。)
とすれば、日本が外国に支払う額も減るから、貿易赤字も縮小する。と同時に、円安も縮小する。
したがって、中長期的には円安傾向は収まっていく、と見通せる。
ここでは石油価格の動向にも言及しているが、そのグラフは下記だ。

WTI原油 チャート(1年)
10月08日に先の話を述べたときの円レートが 1ドル=145円。そのときに比べると、円安が少し進んでいるが、大きく変動したわけではない。今後も米国の金利上昇に従って、さらに円安が進むことも考えられるが、それも長くは続かないだろう。
どうしてかというと、石油価格の低下にともなって、貿易赤字は縮小しつつあるからだ。
・ 8月の貿易収支、2兆8173億円の赤字
・ 9月の貿易収支、2兆0940億円の赤字
貿易赤字は 2兆8173億円から 2兆0940億円へと、大幅に縮小している。今後もさらに急速に縮小していくはずだ。とすれば、今は投機資金の効果で円安が進んでいるとしても、やがては貿易赤字の縮小の効果が出て、円安もどんどん縮小していくはずだ。
今のところは、投機資金が上の事実に気づいていない(石油価格の低下によって貿易赤字が縮小していることに気づいていない)ので、投機資金は過去の実績に従って未来を予測しているだけだ。
だが、私のように石油価格の変動に着目すれば、未来の円レートの傾向を確実に予言することもできる。「円安は収まって、現状よりも円高になる」と。
その時期がいつになるかは、今のところは明言できないが、おそらく1〜2カ月後には、貿易赤字の縮小が一段と鮮明になるので、円安になりがちだった傾向も収まっていくだろう。
ただ、現時点では、円安に怯えて円をドルに変える投機資金が非常に大きい。「円預金をドル預金に変えた」という人がいっぱいいる。この分だけでも、多大なドル購入の効果が出て、円安が大幅に進んでいる。だが、このような人が次第に縮小すれば、円安の進行も収まっていく。そうなれば、円安は一転して円高になるだろうし、それにともなって投機資金も円高方向にブレていくだろう。
というわけで、中期的には、円レートは円高に戻っていくはずだ。年末か年初のころには、1ドル=130円ぐらいになりそうだ。(おおざっぱに)
[ 付記1 ]
日本の外貨準備高は 100兆円ほどある。これを投入してドル売り介入をすれば、ドルを高く売ることができる。そのあとで、ドルが安くなったら、ドルを買い戻せばいい。そうすれば、ドルを高く売って安く買うことができるから、差益を得ることができる。100兆円の金を使って、10兆円ぐらいの差益を稼ぐこともできるだろう。
この件は、先に述べた。
→ 10兆円を儲ける方法 : nando ブログ
[ 付記2 ]
一方で、日本政府は為替差益と国債評価損をともにかかえている。
・ ドル高の効果で、米国国債の為替差益を得ている。(帳簿上で)
・ 米国の金利高の効果で、手持ちの米国国債の評価損をかかえている。(帳簿上で)
一般に、市場金利が上昇すると、既存の(固定金利の)国債は評価損をかかえるようになる。国債が長期であればあるほど、多額の評価損をかかえるようになる。この件は常識なので、いちいち説明しない。
→ 債券と金利って、どういう関係なの?|投資の時間|日本証券業協会
[ 付記3 ]
上の二点を考慮したら、どうするべきか? 私としては、次のことをお薦めする。
「米国国債の低下幅よりも、円安による為替差益の方が、幅が大幅なので、米国国債を大量に売却するといい」
これによって莫大な為替差益を得る、というメリットが生じる。118兆円の外貨準備が、150兆円で売却できれば、32兆円の為替差益が発生する。(そううまくは行かないが、ある程度はうまく行く。)
このとき、国債売却によって市場金利は高騰するが、別に、問題ない。普段ならば文句を言われるだろうが、今は米国 FRB 自身が金利を上げようとしている状況だ。だったら、先行して市場金利を上げるふるまいをしたからといって、文句を言われる筋合いははない。
( ※ そもそも、日本がそんなことに遠慮しなくてはならないいわれはない。日本は米国の属国ではないのだから、あくまで自分の都合でふるまっていい。……とはいえ、実際には、特に文句を言われる状況ではない。今のところはね。)
( ※ ただし現実には、「日本が米国国債を大量売却する」ということは、ありえない。それを実行するだけの知恵も胆力もないからだ。そもそも、前提となる「多額の円安介入」をするだけの発想もない。なぜなら、「あとですぐに買い戻す」という発想がないからだ。どうせ「多額の介入をしたら、外貨準備高が激減するので、困ってしまう」と心配しているのだろう。そんなことでは、多額の介入は無理だ。それゆえ、米国国債を大量売却することも無理だ。……頭の悪い人は、先を見通せないので、大規模な金融操作をすることはできない。)
[ 付記4 ]
来年春ごろには、ウクライナ戦争が終結する見通しも立ちそうだ。そうなったら、上がった石油価格は暴落するかもしれない。そうなったら、円安は一挙に解消する可能性もある。