日本にも独裁者はいたか? 文字通りの独裁者はいなかったが、独裁者っぽい人はいた。安倍首相だ。
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安倍首相(当時)は、それまでの首相とはまったく違った点があった。それまでの首相はいずれも頭のいい秀才だったので、「法律を守ることが大切だ」ということを理解しており、それを逸脱しようなどとは毛頭考えなかった。
しかし安倍首相は違った。「法律を守ることが大切だ」とは微塵も考えなかった。「民主主義を守る」「法を守る」という基本的な倫理が欠落していた。彼にとって大切なのは、「自分の権力を守ること」だけだった。……その点では、プーチンや習近平のような独裁者と、うり二つだった。
・ 集団的自衛権で憲法無視
・ 国会召集で憲法無視
これらは明白な憲法無視(憲法違反)だった。まともな頭のある人なら、こんな堂々たる憲法違反はやらないものだが、安倍首相は平気の平左で憲法違反を強行した。
※ これらが憲法違反であることは、別に、私の独自解釈ではないし、野党系の人々の我田引水でもない。法律学者のほとんどが一致して「違憲だ」と判定している。詳しくはググればわかるはずだ。(法律関係者ならば常識だ。当時、散々「違憲だ」と話題になったことだからだ。)
ともあれ、以上の体質からして、安倍首相は「法律の上に君臨する」という独裁者体質丸出しであったことがわかる。
では、どこがプーチンや習近平と違うか? それは、次の点だ。
・ プーチンや習近平は、全分野で独裁者だった。事実上の憲法停止。
・ 安倍首相は、上の二点以外では、独裁者ではなかった。憲法遵守。
つまり、上記の二点では、安倍首相は独裁者だったが、上記の二点以外では、安倍首相は民主主義国家の首相としての分を守っていた。首相というだけで実質的には何でも自由に決められたのだから、それでよかったのだろう。その意味で、安倍首相は完全なる独裁者ではなかった。
そう評価していいだろう。
[ 付記 ]
ただし、もし戦争が起こって、日本もそれに巻き込まれれば、そうも言っていられない。たとえば、トランプ大統領がイランと戦争を始めたりすれば、日本はそれに巻き込まれて、自衛隊を派遣して、自衛隊の隊員に戦死者が出ることも考えられる。
「中東戦争に、日本が巻き込まれて、戦死者を出すだと? そんな馬鹿なことがあるわけがない。日本の自衛隊は、自衛のためにあるのだから、中東なんかで戦争をするはずがない」
というのが、日本国民の常識だろう。ところがそれをひっくり返して、「中東に自衛隊を派遣して戦争をする」という方針を決めたのが、安倍首相だ。そのための法律が「集団的自衛権」の法律だ。
ここでは、日本や日本国民を守るためではなく、米国の軍人を守るために、日本の自衛隊が命を差し出して戦うわけだ。
※ より詳しい説明は、後述の [ 補足 ] で示した。
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ここで思い浮かべた事例がある。テレビの「テッパチ」というドラマだ。そこでは自衛隊員が日本国民の生命を守るために、必死に鍛錬する姿が描かれていて、感動的な場面が多かった。白石麻衣も美人だった。
→ 【 第5話 】「テッパチ!」町田啓太&白石麻衣(動画)

ここで登場する自衛隊員は、自己犠牲という崇高な理念に従う使命感をもっていたし、実に立派なものだった。ただしその彼らが奉仕しようとした相手は、国民だ。国民のために必死に奉仕しようとした。そして、それは、「日本の自衛のため」という目的を持つ限りは、きわめて正当なものだった。
しかし集団的自衛権は違う。トランプが勝手にイランと喧嘩をして戦争を始めるかもしれない。ちょうどプーチンが勝手にウクライナに侵攻したように、トランプも勝手にイランに侵攻するかもしれない。(何しろ、イランとの核放棄の合意という条約を勝手に破棄して、イランの核開発を認めてしまった、という前歴がある。メチャクチャぶりにもほどがある。プーチン並みのメチャクチャぶりだ。)
こういう国を相手にして、集団的自衛権を結ぼう、というのが、安倍首相の方針だった。そして、その方針が成立した以上は、日本の自衛隊員はいつでも、中東に派遣されて、トランプの気まぐれのために命を差し出す可能性がある。
彼らは本来は「日本国民を守るため」という崇高な意思を持っていた。その彼らの意思を利用して、トランプや安倍の自分勝手な政治的気まぐれのために、彼らの命を踏みにじろうとするわけだ。……これはもう、プーチンと同様であると言える。まったくの独裁者気質丸出しだ。
そして、その結果は? あとに残るのは、自衛隊員の棺ばかりである。その棺が大量に並ぶことになるのだ。
この件については、かつて別文書で論じたことがある。そちらを参照。
→ 自衛隊への勧誘ページ

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なお、集団的自衛権の違憲性については、下記項目で論じた。
→ ( 集団的自衛権は合憲か? ): Open ブログ
→ 集団的自衛権とタカ・ハト・ゲーム: Open ブログ
→ 集団的自衛権という欺瞞: Open ブログ
→ 集団的自衛権は自衛か攻撃か?: Open ブログ
→ 集団的自衛権の憲法判断: Open ブログ
[ 補足 ]
「中東への派遣」というのは、どういうことか?
具体的には、
「ホルムズ海峡を通る日本の民間艦船やアメリカ軍事艦船を守るのは、集団的自衛権の範疇だ」
というのが、安倍政権の理屈だった。

これは、一見、もっともらしい。だが、イランがホルムズ海峡を封鎖することなどは、現実にはありえない。そこは自分の国の死命を制する場所なのだから、そこを封鎖したら自分が死んでしまう。自分で自分の首を絞めるようなものだ。
比喩的に言えば、日本が「対中制裁をするために、東京湾を封鎖する」というようなものだ。そんなことをすれば、中国が死ぬ前に日本が死んでしまう。自殺行為だ。……だから、自国の港湾を封鎖することなど、とうていありえないことだ。
そして、その「とうていありえないこと」(ホルムズ海峡封鎖)を理由として、日本の自衛隊を中東に派遣して、米国の軍艦を支援する……というメチャクチャな理屈を出したのが、安倍首相だった。
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なお、この屁理屈が認められるなら、次のことも成立するだろう。
「津軽海峡や対馬海峡が日本によって封鎖される危険があるので、それを防ぐために、中国とロシアは津軽海峡や対馬海峡に軍艦を常駐させる。ここは国際海峡なのだから、日本は法的に文句を言えない」
これはまあ、「空母いぶき」という漫画(連載中)では、今まさしくそういうのと似たシーンになっているんだけどね。(ロシアの軍隊が津軽海峡を通過しようとして、日本の自衛隊と交戦中。)……安倍首相の屁理屈は、ほとんど漫画チックだ、ということでもある。
※ ただしこの漫画のなかでは、「津軽海峡や対馬海峡が日本によって封鎖される危険があるので」という馬鹿げた屁理屈は採用されていない。それではあまりにも荒唐無稽であるので、漫画でさえもそれほどひどい屁理屈を採用することはない。なのに、安倍首相はそれと同様の屁理屈を名目として、集団的自衛権を成立させてしまった。その意味で、漫画以上に荒唐無稽な方針を取っているわけだ。事実は漫画よりも奇なり。漫画以上に漫画チックだ。(呆れる。)
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とはいえ、よく考えれば、別の意味もある。
純粋に軍事的に考えれば、自衛隊を中東に派遣することには、きわめて有益な効果がある。それは、(イランによる)ホルムズ海峡の封鎖を(自衛隊が)防ぐためではなく、逆に、自衛隊と米軍が自らホルムズ海峡を封鎖することだ。……特に、「臨検を実施して、イラン艦船だけを選別的に通行禁止にする」という形の封鎖ならば、十分に有効だ。こういう形のホルムズ海峡封鎖は、十分に考えられる。
ただしそれは、「日本の自衛のため」ではない。「米国による世界支配に、日本が米国の犬として協力する」ということだ。そのために自衛隊員は犬死にさせられるわけだ。
独裁者が自らの権力基盤を固めようとする。そのために、尊い自衛隊員の生命は無駄に踏みにじられるのである。ちょうどプーチンの野望を満たすために、ロシア軍兵士の命が踏みにじられたように。
> ・ 国会召集で憲法無視
> これらは明白な憲法無視(憲法違反)だった。
>まともな頭のある人なら、こんな堂々たる憲法違反はやらないものだが、安倍首相は平気の平左で憲法違反を強行した。
国会召集は完全に「明白」でも「まともな頭のある人」でもやらないような憲法違反ではありません。(あとで指摘します)
まずは集団的自衛権について伺います。
日本の義務教育を受けている人間ならば、三権分立、日本国憲法の違憲立法審査権を裁判所が有していることは知っています。
(第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。)
なぜ、明白な憲法違反なのに、最高裁判所は安倍政権を「是」もしくは「是でも非でもない」としたのでしょうか?
(なお管理人さんの過去ログを読むと、「是でも非でもないという判断を最高裁判所は下した」とありますが、
<明白>な憲法違反ならば最高裁判所は「非」という判断をするでしょう。
<明白>でないから是でも非でもないという結論に達したのではないでしょうか)
それと集団的自衛権についてですが、法案が可決された後、自民党は安倍政権〜岸田政権に至るまで
5回の国政選挙に勝ち抜きました。
この5回、主要野党(ほぼすべての選挙区に候補者擁立)はすべて、「安倍政権は集団的自衛権はじめ憲法、立憲主義を破壊した」と主張しましたが
国民は自民党政権を是とする選挙結果を出しました。
独裁下に入ったナチスや大日本帝国の翼賛選挙と違い、近年の日本の選挙は自由が担保されており5連勝という結果は考慮されるべきでしょう。
国民が政権与党を是認し、野党の主張を退けたことの意味(むしろ、野党の主張を採用すべきだということのほうが立憲主義、民主主義に反している)
はどうお考えでしょうか?
以上の、2点お願いします。
(「明白」「まともな頭」と仰ったので、私としては、「最高裁判所の司法判断と国民の選挙権行使で5連勝して野党の意見判断を退けた」という
日本国憲法に定められた憲法違反を防ぐこの2点を突破したことについての見解を伺いたいと思います)
なお、国会召集についてですが、
https://www.asahi.com/articles/ASN6B4JX7N64TPOB004.htm
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a201276.htm
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b201276.htm
これを読めば分かる通り、
・安倍政権は国会招集を無視したことはない(野党の要求があったのち国会を召集している。)
・日本国憲法第53条には、国会招集規定があるが、いつまで開けという期限は設けていない。
・上記那覇地裁の判決でも、「国会招集に、法的義務であると解され、違憲と評価される<<余地>>はあるといえる。」と述べている。
したがって「明白」でも「まともな頭ならわかる」憲法違反とはいえません。
その可能性が生じるというのが「まともな頭」で判断できる範囲ではないでしょうか?
最高裁は中立ではなく、自民党政権が任命した判事によって構成されるので、自民党寄りの判決を出します。これは日本に限られたことではなく、米国も韓国も同様だ。
特に民主主義の根幹である1票の格差で、2倍を超える格差を認めている(参院で)のは、理屈を超えている。一定時期だけの経過制度で認めるのならまだわかるが、恒久的に2倍を超える格差を認めるのはメチャクチャだ。
つまり、日本ではまともな司法制度が機能していない。最高裁は自民党の犬になっている。日本は民主主義国家ではなく、半独裁国家になっている。だから最高裁が機能しない。
(2)
5連勝は、別に、個別の政策のすべてが是認されたことを意味しない。政権を取ったからといって、あらゆることが是認されたと思うようでは、あなたの頭は民主主義を根本的に誤認しているというしかない。あなたの発想そのものが独裁的だ。
一般に、普通の会社組織でも、上司たるものは常に部下の意見に耳を傾ける必要がある。トップが全権を握ってトップダウンで命令するだけでいい、と思うようでは、もはや上司として失格だというしかない。
あなたの発想はその失格上司と同様だ。
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法的解釈は、私が述べなくても、ネット上に大量にあふれている。「国会召集について」の3点は、被告が弁解しているだけであって、そんな屁理屈は容認されていない。それが法学者の大半の解釈だ。
また、仮に安倍政権の憲法違反はかろうじて回避されても、以後の政権では明白な憲法違反となっている。
→ https://digital.asahi.com/articles/ASPCY44Z3PCYUTIL01J.html
その意味で、独裁体質は、安倍・管・岸田と続いていることになるね。
なお、上記記事によれば、
> 安倍政権は98日間にわたって応じず、臨時国会を開くと冒頭で解散した。この対応が憲法違反ではないか、と野党の国会議員が訴訟を起こしている。
実質的には招集していません。何も審議しないことを「招集」と認定するのであれば、日本では国会審議を何もしなくてもいい、ということになる。招集だけして何も審議しないことを認めるのなら、民主主義は死にます。
ま、あなたは民主主義が死んでも、形式論だけで独裁者を認めるんでしょうけどね。あなたの理屈なら、プーチンも習近平も独裁者ではありません。ロシアも中国も素敵な民主主義国家だ、ということになります。
あなたの論理の基盤(支持率)で言えば、プーチンも習近平も圧倒的な支持を得ていますからね。
なお、日本では1票の格差と、膨大な死票の出る歪んだ選挙制度により、選挙制度はまともに機能していません。
比例区の得票率を見れば、自民党の支持率はたったの 34% です。これで「国民の支持を得た」と威張るのは、おこがましいにもほどがある。
→ https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/00/hsm12.html
私は憲法違反かどうかを問うたのではなく、そこまで明白で真っ黒な憲法違反かどうかを問うたのです。
度合いの問題です。
私は「合憲だ」とは言ってないです。落ち着いてください。
>最高裁は中立ではなく、自民党政権が任命した判事によって構成されるので、自民党寄りの判決を出します。
>つまり、日本ではまともな司法制度が機能していない。最高裁は自民党の犬になっている。日本は民主主義
国家ではなく、半独裁国家になっている
つまり、行政府(安倍政権)、立法府(自公政権)に加え、司法も自民党の影響を受けているということですね。
その主張ならば三権分立が徹底しておらず、半独裁という評価は妥当でしょう。
>5連勝は、別に、個別の政策のすべてが是認されたことを意味しない。
>政権を取ったからといって、あらゆることが是認されたと思うようでは、あなたの頭は民主主義を根本的に誤認しているというしかない。
>あなたの発想そのものが独裁的だ。
>一般に、普通の会社組織でも、上司たるものは常に部下の意見に耳を傾ける必要がある。
私はそんなことは言ってませんよ(笑)
そもそも個別政策に○×つけるわけじゃないのですから。
自民党が5連勝=野党が5連敗した事実をどの程度考慮する必要があるのか伺ったのです。
>なお、日本では1票の格差と、膨大な死票の出る歪んだ選挙制度により、選挙制度はまともに機能していません。
>比例区の得票率を見れば、自民党の支持率はたったの 34% です。これで「国民の支持を得た」と威張るのは、おこがましいにもほどがある。
投票率が50%ですから、国民全体で言えば、自民党は17%の支持しか得ていませんね。
残り83%の国民は「自民党」と投票していないのは事実です。
ただしこの結果を完全無視するのはまた独裁国家と同じになってしまうでしょう。
>実質的には招集していません。
>何も審議しないことを「招集」と認定するのであれば、日本では国会審議を何もしなくてもいい、ということになる。
>招集だけして何も審議しないことを認めるのなら、民主主義は死にます。
それならば、憲法を改正して、招集の時期について細かい規定を設ける必要がありそうですね。
野党は「憲法改正の論議」自体をサボってきましたが
これが安倍政権の独裁(憲法無視)を助長した側面はありそうですね。
「国を守る」という時多くの人は、『国』として身近な人や地域を想います。これにより『自己犠牲』を厭わない若者が自衛隊に入ります。ここまでは理解できる。
しかし政権側が同じ「国を守る」という言葉を使う時の『国』とは往々にして天皇を頂点とする『国体』だったり単に政権そのものだったりするようです。自民党の内輪の憲法改正論議を聞くと本当に身近な人や地域を守れるのか怪しいまま最近のような首相の自己満足のために『崇高な理念』の若者が実質的な徴兵に駆り出される世の中になりそうです。
これで欧米と「一致する価値観」をもつ、と豪語する自民党www
そんな細かいことまで憲法で規定するわけがないでしょ。せいぜい、普通の法律で立法化するだけだ。
それにしても、「首相が憲法違反しないための法律(首相が犯罪を犯さないための特別法律)を作る必要がある」なんて、恥ずかしいと思わないんだろうかね。
もう常識が通じなくなってきているね。常識が通じない悪党が首相になると、国民は大変だ。
(トランプが大統領選挙を無効化しようとした、というメチャクチャぶりに比べれば、まだマシではあるが、五十歩百歩ではある。)
ちょっと違いますが、採決時は賛成者が起立して様子を議長が眺めて正確な数も数えず「賛成多数と認めます」と決することが多いです。
だから中途半端に腰を上げて、議案賛成派の支持者には「立ち上がりました」また反対派の支持者には「立ち上がっていません」と報告する議員もいます。採決時は議席からの電子投票とし、誰がどの議案に投票したかを公開できるようにすべきとも思います。有権者の負託を受けているのですからその行動を「秘密投票」とする必要はありません。党内の締め付けは強くなるでしょうがそれは別の問題
たびたび失礼しました
恥ずかしいかどうかよりも独裁国家にならないための歯止めとして重要でしょう。
憲法はその国の民度によって違うのではないでしょうか。
政治家が低レベルならば憲法も低レベルな政治家に合わせて歯止めをかけないといけない。
今はまだ大丈夫かもしれませんが、スターリン、ポルポトのような指導者が出てこないためにも細かい規定は必要です。
野党が政権を取ったときにはこうしたことに手を付けてもらいたいですね。
独裁者は法律を勝手に書き換えるし、憲法も(安倍首相のように)無視するし、習近平やプーチンのように憲法を書き換えることもある。憲法を書き換えようとして果たせなかった安倍首相は、半独裁的だが、独裁者とまでは言えない。(ただし上の二点で憲法を無視したので、部分的には独裁者だ。)
いずれにせよ、独裁者は憲法を無視する。だから憲法の規定があっても、たいていは無効になる。そのことを安倍首相は日本で初めて示した。