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9月24日の記事で報じている。
JAXAはトヨタ自動車と、飛行士が乗って月面を移動する探査車「ルナクルーザー」を開発する。燃料電池で動き、宇宙服なしで乗車できる。最初は地球から運んできた水と酸素が動力源だが、将来は月で採取した水を利用したいという。
( → (宇宙新時代)月へ、新たな一歩 半世紀経て:朝日新聞 )
これは新しい情報ではなく、2019年の時点ですでに大枠が発表されていた。
探査車は、全長6メートル、幅5.2メートル、高さ3.8メートルでマイクロバス2台分の大きさ。空気で満たされる与圧された居住空間は4畳半ほどの13立方メートルで、2〜4人が長期間滞在しながら移動することが可能となる。
FCVは、燃料の水素を酸素と反応させて発電し、モーターで走る自動車。クレーターや丘など月の過酷な環境下でも1万キロ以上走破できる探査車の開発をめざすという。
( → 月面走る探査車を開発へ JAXAとトヨタ、29年目標:朝日新聞 2019年3月12日 )

さて。ここで考えてみよう。
月面探査車なら、常識的には電動式にするのが普通だ。ソーラーパネルで充電すれば、何度でも繰り返し、使用できるからだ。一方、燃料電池車だと、燃料の水素と酸素が必要で、それを使い果たしたら、動かなくなってしまう。そういうものは探査車としては能力不足になりがちだ。
それでも燃料電池車にするのはなぜか? ざっと推察すれば、こうだろう。
「有人探査車なので、大型であり、大出力となる。大型で大出力となると、電動式よりは燃料電池車が適している」
これはどういうことかというと、乗用車ならば EV が圧倒的に普及しているが、トラックやバスでは燃料電池車も大いに有望である。大型で、大出力となると、燃料電池車にも出番が回ってくるのだ。(換言すれば、EV は、大型車にはあまり適していない。電池だけで重量が巨大重量になるからだ。)
ただ、私が勘ぐると、話は逆だと思う。まずは「燃料電池車を使う」という構想がトヨタから出された。しかし月面では燃料電池車よりも EV を使うのが常道だから、JAXA に却下された。そこでトヨタが粘って、「でも大型車ならば、燃料電池車の方が有利ですよ」と売り込んだ。しかし JAXA は「小型の無人車で済むから、大型車なんか必要ない」と却下した。するとトヨタはさらに粘って、「でも有人車ならば、生命維持装置や居住区も必要なので、大型車が必要でしょう? 有人車なら、燃料電池車がいいはずです」と売り込んだ。すると JAXA は渋々、「それほどまでに言うのなら仕方ないな」と承諾した。
しかし、そんな大型の探査車なんかを月面に運ぶには、よほどの大型宇宙船やロケットが必要となる。コストがうなぎ登りになる。やめた方が無難だと思うけどね。
月面探査なら、現在、アメリカが打ち上げ準備中だ。
→ 月を目指すNASAの大型ロケットSLS打ち上げ間近 日本も月面着陸ラッシュへ NHK解説委員室
その二番煎じみたいなことを日本がやっても、あまり意味がなさそうだが。やるにしても、せいぜい、無人の軽量の探査機で十分だろう。それならば、コスト的には大幅に少なくて済む。
無人探査機なら、人間は月面上または月の周回軌道上にいればいい。そこから遠隔操作で無人機を操作すればいい。
とにかく、EV ならば、ソーラーパネルで充電して、いくらでも走行距離を伸ばすことができる、というのが、圧倒的に有利だ。
[ 付記 ]
地球から遠隔操作することはできない。距離が長すぎて、電波が届くまでにタイムラグがあるからだ。地球と月の間で電波が伝わるには、片道 1.28秒、往復で 2.56秒の時間がかかる。
しかも、地球の基地から月が見える時間帯しか操作できない。地球にある基地が月から見て裏側に隠れてしまうと、電波が届かない。
そこで、別の地球基地に交代することもできるが、かなり不便となる。別の地球基地を経由すると、それだけで、0.2秒ぐらい余計にかかるからだ。(光ファイバー経由でなく、衛星電波経由だと、さらに時間がかかる。)
【 関連動画 】
【 追記 】
「燃料電池車は EV よりも、重量の点で優れている」というトヨタの主張を解説した記事。
→ JAXA×トヨタの月面探査車「ルナ・クルーザー」。なぜ燃料電池が必要なのか?
この計算では EV の航続距離を考えるとき、太陽光パネルによる充電のことを考慮していない。最初の充電の分だけで使い切りにする、という前提になっている。自分勝手な主張にもほどがあるね。詭弁。ペテン。……それがトヨタのやることだ。
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なお、燃料電池車の計画にホンダも参画する、という記事もある。
→ ホンダ、JAXAの月探査車開発に参画 燃料電池システム: 日本経済新聞
