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本項は話が紆余曲折するので、話の筋道が追いにくいかもしれない。そこで最初に要点を述べておく。こうだ。
「台風のときには、避難所の情報を提供している。それをパソコンやスマホで見ればわかるようにしているはずだ。しかし実際には、見ようとしても見えない状態になっている。IT技術に問題があるせいだ。この問題を直視するべきだ」
これと似た例は、他にもある。
・ HER-SYS に入力しようとしても、うまく入力できない。
・ マイナンバーに申し込もうとしても、うまく申し込めない。
こういう例は、これまでも何度か取り上げたが、「不十分だ」という程度で済んだ。また、人命に関わるほどの問題ではなかった。
一方、避難所の問題は、もっとひどい。
・ 避難所を探そうとしても、避難所がまったく表示されない。
・ 人命に関わるほどの問題だ。
こういう大きな問題があるのだ。
以上は、核心だ。ただし、いきなりこの核心に踏み込むわけではなく、最初は軽い話題から入っていく。
宴のあとの混乱
福岡で華やかなコンサートがあった。矢沢永吉のコンサートだ。他の人のコンサートは、台風で軒並み中止を決めたが、この人だけはコンサートを強行した。すると案の定、コンサート自体は成功したが、その後に帰宅難民が大量に発生した。交通機関がストップしたからだ。
そこで、会場(福岡ドーム)の隣にあるホテルに、コンサート客が大量に押し寄せた。
コンサート客は、ホテルに来たホテル客に、「部屋を譲ってくれ」と強談判に及んだ。ホテルマンが「迷惑だから出て行ってくれ」と要求しても、強引に居座って、トラブルが生じた。
これを報じたツイートがあって、話題を呼んだが、今では削除されている。ただしキャッシュがあるので、見ることができる。
仕事の都合で福岡市内に宿泊してるんですけど。昨晩チェックインするときにずぶ濡れの観光客らしき人が大勢ロビーに居て、チェックインしようとしてる俺に部屋を譲って欲しいと迫ってくるし。ホテルのスタッフさんから退去するよう言われても出ていかず追い出すのかと迫る始末。(つづく)
 ̄ ̄
持ち物からみて明らかに地元住民が避難しているわけではなく、矢沢永吉氏のファンなのは明らか。昨夜、ドームコンサートをしたそうで…帰宅の足が無くなった人たちが彷徨ってきたんでしょう。しかし、宿泊客に部屋を譲ってくれと迫ったりホテルのロビーに居座るのはどうなんだろう?(つづく)
 ̄ ̄
朝食を食べるためにロビー横の食堂に降りたら帰宅難民の人たちがホテルが貸したであろう毛布を使ってソファーや床に寝ていたり座っているし。結局、ホテルが折れたんでしょうね。朝食は入り口でカードキーを提示して入るんですが、スタッフさんが数名かなり厳しくチェックしてましたし。(つづく)
( → ツイッター・キャッシュ )
この件では、「中止するべきだった」「運営がまずかった」などの批判が多く寄せられた。
→ はてなブックマーク
実は、このとき、福岡市内のホテルは、台風ゆえに大量の宿泊キャンセルが発生しており、ホテルの空き室は大量にあった。泊まろうとすれば泊まることはできた。ただし、福岡ドームは繁華街の西端に位置しており、そのそばにあるホテルは、該当のホテルだけだ。他の多くのホテルは、東側にあり、しかも、0.5〜2km ぐらい離れている。それだけの距離を通る必要がある。台風の豪雨の中では困難かもしれない。とはいえ、タクシーを使えば、何とかなる問題ではある。
まあ、本質的に言えば、コンサートを開催するべきではなかったが、いったん開催してしまったものは仕方ない。その段階で何らかの対処策を採るとしたら、どこかに移動するしかあるまい。
ここで、うまい案を出した人がいた。
「台風のときは、避難所があるから、そこに行けばいい」
なるほど。それは名案かも。全員が押し寄せても困るが、ある程度なら収容も可能だろう。
では、そう思いついたとして、避難所に行くことは可能だっただろうか? ……それがテーマとなる。
パソコンで検索
まずはパソコンで検索してみる。最初に会場の住所を知る。ヤフードームの住所は、Google マップですぐにわかる。福岡市中央区だ。そこで、「福岡市中央区 避難所」でググる。すると、次のページがヒットする。
→ 福岡市中央区防災マップ
さっそく、クリックして、ページを開く。だが、開くのに時間がかかりすぎる。待機状態だというふうに表示されて、無反応の時間が多い。ゆっくりと少しずつ表示される。まるで大昔のモデムの頃のようだ。ただし、モデムのときには、回線が狭すぎたせいだが、今は光回線なので回線の狭さはありえない。どうやら、台風でアクセスが殺到して、サーバーが負担に耐えきれないらしい。もうちょっとで「 502 bad gateway 」となって非表示になる状態であったようだ。ひどいものだ。
要するに、サーバーが負担に耐えきれないせいで、肝心のときには役立たないサイトとなっている。馬鹿丸出しというしかない。
ちなみに、19日の夜には、いくらか状況が改善して、20秒ぐらいで表示されるようになった。昼間は3分間ぐらいかかったので、それよりはだいぶ改善されている。とはいえ、20秒もかかるのでは、とんでもないことだ。iPad などで開くとしたら、もっと時間がかかりそうだ。
ちなみに、保存してみたら、サイズは 7.8MB もある。これでは時間がかかるのも仕方ない。こんなものを公開するというのが、ITリテラシーの低さを物語っている。
( ※ 何でもかんでも PDF にしてしまえ、という役所気質か。)
スマホで検索
パソコンの場合は、時間はかかるが、最終的には表示されるので、まだマシだ。スマホの場合には、とうとう表示が不可能だった。
そもそも上記ページは、7.8MB もある PDF を表示させるものなので、スマホに対応しているとは言えない。どうするつもりなのだろう、と思って、スマホで該当ページに行ってみたら、全然別のページが表示された。文字だらけのページだ。スマホで接続すると、そちらのページが表示される設定らしい。
で、肝心の情報を探ろうとしたら、「このページは避難所の文字の一覧があるだけなので、避難所を地図で知りたければ別ページをご覧ください」というふうに記してあって、リンクがある。「福岡市 Web マップ」というリンクだ。
そこで、そのリンクを踏んでみたら……
わけのわからない水害地図が表示されるだけだ。そこには避難所の情報はない。検索欄があるので、「避難所」と入力して、検索してみても、検索結果は「0件」と表示されるだけだ。もはやそれ以上の捜し方はわからない。お手上げだ。
結局、ここで詰んでしまった。どうしようもない。つまり、福岡市の避難所をスマホで知ろうとしてるも、知るすべがない。
※ もしかしたら、私の操作がまずかったのかもしれないが、どっちみち、素人でもない私が詰んでしまうのだから、ユーザーインターフェースが最悪の部類であることは間違いない。
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そこで、念のため、逆に「ゴール」から該当ページを探そうとする。上のパソコンページでは、福岡ドームに最も近い避難所は「当仁中学校」だとわかる。
そこで、あらためて「当仁中学校」という語で検索してみる。すると、次のページが見つかる。これが正解らしい。
→ 福岡市 緊急情報(避難情報を発令している地域、開設している避難所など)
ただし残念ながら、現時点では、避難情報は全て解除されている。また、避難所はすべて閉鎖済みだという。
どうやら調べるのが遅かったようだ。出遅れた。残念無念。(キャッシュにも情報が残っていなかった。)
なお、どうすればこのページにたどり着けるのか、それはやはり不明なままだった。本来ならば、「福岡市中央区 避難所」で、このページが真っ先に出てきていいはずだし、さもなくば、他のページのこのページが大きく掲載されていていいはずだ。だが、実際には、そうなっていなかった。
必要な情報にたどり着くすべは用意されていなかった。避難所を探そうとする難民は、ネット上で迷子になるしかなかった。
正しい情報提供
では、どうすればよかったか?
話は簡単だ。パソコンとスマホで共通のサイトを掲載すればいい。しかもそれは、PDF なんかは使わないで、軽量の画像で表示すればいい。その方法は、二つある。
(1) PNG 256色
最も単純なのは、PNG の 256色で、地図を掲載することだ。先の PDF だと、やや粗い画像で、次の画像となる。これは 792KB だから、PDF の 10分の1以下のサイズしかない。
クリックして拡大
スマホでは使いにくく思えそうだが、ピンチイン、ピンチアウトして拡大・縮小すれば、見ることも可能だろう。
※ これでは画像が粗すぎると思うのなら、縦横2倍のサイズ(面積4倍)のサイズの画像を用いればいい。ファイルサイズは3倍ぐらいで済みそうだから、2.1MB ぐらいで済むだろう。
※ 地図は、上下に分割にすれば、半分のサイズでも済む。
※ 避難所一覧の文字データは、図ではなく別の文字文書にまとめれば、ファイルサイズはさらに小さくできる。
(2) Google マップ
初心者でも扱えるのが、Google マップだ。Google マップに「マイマップ」という自分専用の Google マップを作成する機能があるので、それを用いて、避難所を一覧表示して、地図も示せばいい。
→ Google マイマップ
この例では、避難所は「当仁中学校」という1箇所が登録されているだけだが、同様にして多数を登録すれば、多数が掲載されたマイマップを表示できる。
それを見れば、誰もが容易にスマホで「避難所一覧」の地図を見出せるはずだ。
デジタル庁のお仕事
自治体が避難所の情報を公開するにしても、その公開の仕方について、IT知識の欠落がひどい。
この点は、デジタル庁が指導して、もっとわかりやすい表示形式で表示するように、修正するべきだ。
デジタル庁は、今のところほとんど何も成果を上げていないようだ。
→ デジタル庁
こんなに無為無策であるぐらいなら、もっと有能な人を選んで、「自治体の Web ページを見やすく改善する指導」でもさせたらどうか? ちょっとまともな Web デザイナーに任せれば、自治体のサイトのユーザーインターフェースを大幅に改善できるはずだ。そういう仕事こそ、デジタル庁に最も求められることだろう。
※ たとえば、「ファイルサイズが過大になると、サーバー負荷のせいで、混雑時にはページが表示されなくなる」という基本を徹底するべきだ。
※ ファイルサイズを大きくしてもいい(画像を PDF にしてもいい)のは、アクセス集中が見込まれないようなファイル(資料ファイル)だけだ。普通の情報提供ページは、PDF を用いず、軽量ページにすることを徹底するべきだ。
スマホだとヤフー防災速報アプリでWEBサイトと同じ情報が取得できるようです。
ただ、当仁中は載ってなかったり市町村の情報が100%反映されてはいなさそうですので、そこから一時ソース(市町村のWEBサイト)にたどるような使い方が良さそうです。
グーグルだけでなくヤフーでは検索しませんでしたか。
ヤフーは福岡市を含め多くの自治体やインフラ企業と災害協定を締結しており、ヤフーの管理するサーバーに自治体のウェブサイトをキャッシュしています。
試してはいませんが災害時にヤフーで自治体名で検索すると、検索結果の上位にキャッシュサイトが表示されるそうです。
ヤフーのキャッシュサイトは多くのアクセスに対応でき、キャッシュを更新する頻度も1分間程度のため、自治体のサーバーの負荷を分散して軽減し、最新の情報を伝達することができます。
災害時にSNSの自治体公式アカウントでキャッシュサーバーのアドレスを通知して誘導したり、通常時から広報誌などで告知しておけばよりよいですね。
災害協定 -Yahoo!JAPAN
https://saigai.yahoo.co.jp/agreement/
東京都文京区:災害時にヤフー株式会社と連携して災害情報を配信します
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/bosai/bousai/osirase/saigaiziyahu.html