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日本全国の保育所と幼稚園の総数は、3万3千以上だ。
→ 幼稚園9698件・保育所2万3759件 - ガベージニュース
これだけの数の施設があり、それに数倍する送迎バスがあり、(行きと帰りで)その倍の数の送迎がある。1日 20万ぐらいになりそうだ。それが年に 300日ぐらいもあるわけだ。年間 6000万回ぐらいになる。
となると、仮に置き去りの確率が 0.01%だったとしても、年間 6000件の置き去りがある計算となる。これは容易ならざる数だ。
現実にも、(重大事件にはならなかった)置き去り事件が多数報告されているそうだ。
各地の幼稚園、保育園では以前から、バスに園児が置き去りにされるケースが続発していた。結果的に重大事故にならず、園が自治体に報告していない事例も一定数あるとみられ、……
( → 園バスの窓、泣きじゃくる顔 重大事故直前の事例、各地で:朝日新聞 )
たとえば、一例はこうだ。
愛知県の幼稚園では今年5月、置き去り事故が起きた。学校法人などによると、園児16人と添乗員を乗せた通園バスが午前9時45分ごろ、園に到着。約30分後、園を訪れた別の園児の保護者が、真っ赤な顔で泣きながらバスの窓をたたいている園児を発見したという。
さいたま市……では、園児たちを降車場所に降ろして園に戻った後、3歳の園児1人がまだバス内にいるのに気づかず、職員がドアを閉めてしまった。約20分後に他の園児の保護者が車内から窓をたたいている園児を見つけた。降車時の確認を怠っていたという。
さらに事例が列挙されている。
【 17年 9月 】 さいたま市の私立幼稚園。3歳児が約5時間置き去りに
【 18年 7月 】 横浜市の私立保育所。園内でバスを移動させたところ、車内で寝ていた5歳児が目を覚まし、運転手が気づく
【 19年11月 】 さいたま市の認可保育施設。3歳児が約20分間置き去りに
【 20年 8月 】 福岡県久留米市の私立保育園。2歳児が8分ほど置き去りに
【 21年 7月 】 福岡県中間市の私立保育園。5歳児が置き去りにされ死亡
【 12月 】 さいたま市の認可保育施設。園児を降ろした後、車内を確認した運転手が座席で寝ている3歳児を発見
【 22年 5月 】 愛知県の幼稚園。園児が約30分置き去りに
【 7月 】 千葉県の私立幼稚園。車内で寝ていた園児が置き去りに
【 9月 】 静岡県牧之原市の認定こども園。3歳児が置き去りにされ死亡
※自治体への取材などに基づく
これで網羅されたわけではない。
重大事故に至らない場合、園から自治体に報告がない事例もあり、発覚しているのは「氷山の一角」の可能性もある……と記事では記している。まあ、そうだよね。

さて。このように「見えない事故」は多発しているものと推定される。では、これを解決するには、どうすればいいか?
すぐに思いつくのは、「ダブルチェックすること」だが、それはすでになされている、と記事に記してある。それでもダブルチェックをすり抜ける(または職員がダブルチェックをサボる)という事例が多発しているわけだ。だから、ダブルチェックでは足りない。
では、どうすればいいか?
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対策は、特別に難しい方法は必要ない。ダブルでダメなら、もっと多重化すればいいのだ。三重化(トリプル)、四重化、五重化、……というふうに。
この際、同じ人間がやったのでは意味がない、ということに注意。多重化するならば、別の人間が新たなシステムで参加する必要がある。
たとえば、次のように。
(1) バスの添乗員がチェック
(2) バスの運転手がチェック
(3) 到着後に、別の職員がバスの外側から観察
(4) 到着後に、機械(センサー)で常時チェック
(5) 1時間後に、バスの外側から再度観察
(6) 昼休みにも、バスの外側からまた観察
これで六重化となる。機械(センサー)がなくとも、人間だけで五重化している。このくらいのチェックをすればいいだろう。
チェックには、1回あたり1人5分間ぐらいで済むから、たいした手間ではない。
なお、ここで大事なことがある。こうだ。
「それぞれのチェックは、別の担当者が行うこと」
これが絶対的に必要だ。別の人がやるからこそ、他人のエラーを検出できる。逆に言えば、他人によるエラーチェックで「見逃したね」と指摘されるのが怖いから、各人は念入りに自分でチェックする。
なお、誰かが見逃したのが判明したら、見逃した人は大々的に指弾され、それを検出した人は大々的に称賛されるべきだ。人命に関わることなのだから、当然だ。「過失殺人未遂」と「人命救助」ぐらいの扱いでいいだろう。
園としても、このくらいの厳しい方針で臨むことが好ましい。
- 《 加筆 》
「過失殺人未遂というが、そんな法定刑はないぞ。過失致死傷罪と殺人罪があるだけだ。前者に未遂罪はないぞ」という批判がありそうだ。だが、別に、法的に処分するわけではない。園が職員を扱うときの気分を示しただけだ。ただの印象論だし、比喩的な表現なので、法定刑は関係ない。
※ じゃあ何でそういう表現をしたのかというと、職員が点検義務を意図的にサボって園児を死なせたというのは、まさしく「過失殺人」という感じがするからだ。「過失致死」という甘い言葉では足りないからだ。その未遂罪は、過失致死未遂ならば処罰されないが、是非とも処罰の必要があるからだ。
なお、今回の園児死亡の例では、未遂ではないので、責任者は業務上過失致死罪で起訴される見込み。( → 出典 )
[ 付記 ]
書いたあとで気づいたが、東洋経済の記事に、似た話があった。
私の自宅近くにある保育園は、すぐに人数確認の回数を増やし、それを保護者に周知したそうですし、別の幼稚園は送迎バスのチェックを2人がかりで複数回行い、念のため施錠もやめるか検討中と聞きました。
また、事件の余波は、送迎バスの置き去りに関することだけではありません。園児が園内のどこかで身動きが取れなくなったり、園外に出てしまったりなどのケースに対応できるよう、繰り返しの人数確認はもちろん、トラブル時のシミュレーションをあらためて行っているようなのです。
( → 「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済 )
https://twitter.com/tokoroten/status/1303341912733089793
一方、本項では、その逆だ。再掲:
「誰かが見逃したのが判明したら、見逃した人は大々的に指弾され、それを検出した人は大々的に称賛されるべきだ。」
これを併用しないと、チェック回数が増えるたびに、他人任せにしてしまう。そうならない工夫が必要だ。
そうなるのが人間の常でしょ?多重チェックにするなら人間と検知器などを組み合わせた方がよい。まぁ、それでも検知器に故障の可能性はあるが・・・私も少し考えたが、バスに子どもが隠れるような場所をなくし、席はバス長手方向、窓に背を向けて2列だけとする。こうすれば一目で子どもの姿が確認できる。運送効率は悪く改造は大変だが。最終的には送迎バスを辞めることかな。リスクは確実にひとつ減る。
責任が不明確なら、そうです。
責任が明確なら、何らかの罰が付随するので、回避できます。罰は、単なる不名誉や非難を初めとして、減俸や降格や解雇などの実質的な罰も含まれます。