2022年09月11日

◆ 保育園児の戸外置き去り

 保育園児が戸外に置き去りにされる事例があった。それへの対策はどうすればいい? IT技術で解決できるか?

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 朝日新聞に記事がある。戸外に園児が置き去りにされる事例があった。それへの対策として、腕時計型の Bluetooth 端末を使っているそうだ。
 きっかけの一つは、2年前の「置き去り」だ。運営する園で、遊んでいる途中に園児が公園から出てしまい、一時行方不明になる事案がおきた。園児は近くのコンビニエンスストアで保護され、けがなどはなかった。昨夏には、福岡県で通園バスに置き去りにされた園児が熱中症で死亡する事故もあり、「保育者のミスの代償が子どもの命では言葉がない」と危機感を強め、ITの活用を模索し始めた。
 活用したのは、凸版印刷が開発した、工場で働く作業員の労務管理のシステムだ。園児に端末をつけると、近距離無線通信(Bluetooth)で、園内の各部屋の人数や、部屋の移動が把握でき、園内のカメラの映像と合わせることで、園児ごとの行動がわかる。腕時計型の端末では、脈拍やストレス値などの生体データ、転倒回数も測定でき、体調の変化も察知できる。
( → 園児の置き去り、ITで防げ 「ミスの代償が命では…」危機感 腕時計型・名札型端末で位置情報把握:朝日新聞

 なるほど。「園内の各部屋の人数や、部屋の移動が把握でき」というのは、Bluetooth 端末ならではのことだ。だが、それは屋内での検出をするためであり、屋外で検出するためではない。それは屋外への置き去り対策としては適切ではない。
 「そばに別の幼児がいれば、間接的に発見できる」
 と思うかもしれないが、そばに幼児がいないように孤立した場合(一人だけの置き去りの場合)には、検出が困難となる。困った。どうする?

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 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。といっても、平凡な案だが。
 「 GPS タグで、幼児の現在位置を検出する」

 これならば、戸外のどの位置にいても、うまく検出できるはずだ。
 では、具体的には、どんな機種がいいか? ……そう思って探したところ、とんでもない事実が判明した。

 ――

 「GPSタグ」というキーワードで Amazon を検索すると、一覧が表示される。
  → https://amzn.to/3BuaIb8

 そこでは、千円前後から、数千円のものまで、さまざまな価格の商品が提示される。安い物では 800円ぐらいで、ごく軽量のものもある。



https://amzn.to/3d5eDlf


 「これはいいや」と思って、ポチりたくなるが、その前に注意。「 Bluetooth 何たらかんたら」という説明がある。「何だろう?」と思って、よく読むと、意外なことがわかる。
 これは、GPSタグとして売られているが、実は GPSタグではなく、Bluetoothタグである。羊頭狗肉だ!
 どういうことかというと、その端末自体は Bluetooth 端末であるが、そばにあるスマホと連携して、スマホに Bluetooth で情報を送る。するとそのスマホが自分の GPS機能を使って、Bluetooth 端末の位置を教える、というわけだ。
 GPS機能そのものは、スマホの機能を使うのだから、これはただの Bluetooth 端末であるにすぎない。有効範囲も、「スマホから 15メートル」という範囲内だけだ。その範囲内では、Bluetooth の電波を使って、端末の位置をスマホに教える。だが、それだけだ。機能としてはただの Bluetooth タグであるにすぎない。こんなものを「 GPSタグ」として販売するのは、羊頭狗肉だし、詐欺も同然だろう。こんな悪徳商法がどうして許されるのか、まったく不思議である。

 ――

 では、本当の GPSタグは、どこにあるのか? どうやら、Amazonではあまり売っていないっぽい感じだ。なぜかというと、そのような商品は、GPSの探索機能というサービスを込みで、月額料金で金を払うサービスになっているからだ。
 わかりやすく言えば、「超簡単な単機能のスマホ」である。スマホから電話やコンピュータの機能をすべてそぎ落として、GPS の機能だけを残す。そういう簡易版のスマホを、月額料金を取ることで販売する。
 通常、月額 500円ぐらいの料金だが、「本体と2年間のサービスを込みにして販売する」というふうにして、1万円〜1.5万円ぐらいでセット販売しているようだ。いろいろあるのを紹介する記事もある。
  → 【子供用GPS】絶対おすすめ8選 小型・安い・シンプルはコレ!契約不要で親のスマホアプリから追跡!
 最安では 9900円となっている。これで2年間の接続サービスが付く。

 金額的には妥当かもしれないが、あまりお安くない。「こんなに金を取られるくらいなら、いっそのこと、スマホを買った方がマシだ!」と思いたくなるが、いやいや、スマホを買うと、いくら格安にしても、その値段では済まない。そもそも、スマホは、軽い機種はすごく値段が高くなる。安いスマホは、重たくなる。そう簡単には、スマホには乗り換えられない。そもそも、格安スマホが月額 500円だとしても、2年で1万2千円になるから、9900円よりも多くなる。おまけに端末代もかかる。2年で 9900円に比べると、完全に負ける。
 保育園の保育料というのは、(無償化がなければ)かなりの金額になる。それに比べれば、2年で 9900円というのは、やむを得ない金額だとも言える。(いなくなりがちな子供の行方についての)安心代に比べれば、格安だとも言えるだろう。
 子供というのは、やたらといなくなりがちだし、親が心配する事態というのは、何度か発生するものだ。そういうときに、探索サービスで「ここにいるぞ」とわかる安心のためなら、かなりの金額を出しても惜しくはない。「子供がいなくなった!」と騒いだときに、「 3000円出せば、機械で教えて上げますよ」と言われたら、3000円を払うよね。それに比べれば、2年で 9900円というのは、3000円を三回使えば元が取れるから、妥当な金額だとも言える。
( ※ 900円の端数があるぞ、と言われそうだが、その端数は消費税だ。税込みと税別でそろえれば、どっちも同じ金額となる。)

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 なお、9900円の商品は、現在、Amazonでは 9800円で売っている。(2年間のサービス料金込みで。)
 


https://amzn.to/3eImMMX


 「2年では足りないぞ」と思って、期間を延長したい場合には、年額 5500円で1年間の延長ができるそうだ。ちょっとお高いね。(もしかしたら電池交換の手数料を含むのかも?)
 4年の場合には、2年間の機械を2回 買えばいい。これなら、特にお高くはない。

 ※ 他に、Amazon では売っていない商品もある。高額で高機能だ。詳しくは、先に示したリンク(紹介記事)を参照。
 


 【 追記 】
 「 Apple の AirTag もあるよ」
 とコメント欄で教えてもらった。そうだった。これを失念していた。(よく覚えていなかった。)
 AirTag は、Bluetooth だけでなく、UWB という規格を用いている。そのおかげで、電波の到達距離は 100メートル以上(約 10倍)に延びて、位置の精度も 10倍ぐらいに向上した。
 しかも、月払いのサービス料の支払いは不要だ。価格はヨドバシカメラで約 4000円。

 ただし、UWB という規格を使っているスマホは、iPhone11 以降だ。そういう iPhone をもっている必要がある。
 とはいえ、iPhone がなくても、Android でも代用できるらしい。Android で AirTag を検出するアプリをインストールすればいいそうだ。
 また、AirTag のかわりに、同様の商品が Android 用に用意されている。スマートタグ( or スマートトラッカー)という。
  → AirTagはAndroidで使える?代替商品もご紹介

 こちらは、AirTag よりも価格は安くて、3000円以下で済む。
 ただし、UWB という規格を採用している Android 機は多くはないようだ。高級な機能を採用しているのは、高価格の iPhone の方であり、Android は普及率が低い。となると、実用となるのは、価格の高い AirTag の方だろう。
 
posted by 管理人 at 22:50 | Comment(3) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アップルのAirTagなら、GPSはついていませんが(BluetoothとUWB)、世界中で10億台以上稼働しているiPhoneやiPad、MacがAirTagの位置情報を拾い、iCloudを通じて匿名で本人に場所を通知してくれます。
高齢の親の財布や鍵につけており、遠くの畑にいたことも検知できましたので、保育園のあるような場所(住宅や人の行き来のある場所)ならカバーできるのでは、と。そのエリア周辺にどれだけのAppleデバイスがあるかにかかっていますが、特にiPhoneユーザーの多い日本では、ネットワークも密になり精度も上がっていくと思われます。
逆にストーカー目的でAirTagを仕込まれる事案も増えているようですが、それもまた「居場所を知る」という要件をある程度満たしているからでしょう。
Posted by kuro at 2022年09月12日 11:23
 ご指摘ありがとうございました。

 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年09月12日 11:59
 東京都は迷惑防止条例で、GPS の悪用を禁止する。以下、引用。

 ――

 衛星利用測位システム(GPS)を悪用したつきまとい行為などを規制する東京都迷惑防止条例の改正案が都議会で6月15日、可決、成立した。施行は10月1日。
 今回の条例改正は、2021年ストーカー規制法が改正され、GPSの悪用が禁じられたことに伴うもの。
  → https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2206/16/news068.html

 ――

 これを見ると、GPS だけが対象で、エアタグは禁止されていないようだ。だったら尻抜けでは? ……と思って、調べてみたら、下記だ。
  → https://www.alsok.co.jp/person/recommend/2146/

 これによると、「GPS機器等により位置情報を取得」が禁じられており、「等」の文字が入っている。したがってエアタグも含まれることになる。
 尻抜けはしていませんでした。 へえ。
Posted by 管理人 at 2022年09月17日 13:25
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