ガソリン価格が高騰したのは、どうしてか? 世界的な石油不足のせいだと思う人が多いが、実は、ガソリン会社が暴利をむさぼっているからだ。
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「ガソリン価格が高騰したのは、石油の需給が逼迫して、世界的に石油不足になったからだ。だから仕方ない。また、価格を下げるために政府が補助金を出すのは当然だ」
と思う人が多いだろう。しかし、それは誤りだ。
政府は多額の補助金を投入している。だが、その金は、ガソリン価格を下げるためというよりは、石油会社の利益を上げるために使われている。それというのも、石油会社は暴利をむさぼっているからだ。
実際、石油会社はボロ儲けしている。「純利益は3社とも過去最高を更新した」とのことだ。
→ 石油元売り、資源高で純利益最高に 22年3月: 日本経済新聞
どうしてこうなるか? その理由を解説する記事もある。
「安い時期にたくさん買って在庫として持っていた石油を、現在の相場で買ったものと一緒に販売するため、仕入れの平均価格が下がるから」です。そのため、利益が増加するのです。
( → こんなに「ガソリン価格」が“高騰”している今、国から補助金をもらいながら不祥事が発覚している「石油元売り会社」。業績が“過去最高”なのはなぜ) )
これを読んで、「なるほど」と思うようでは、詐欺師にだまされるのも同然だ。「安く買って、高く売るからだ」とのことだが、本来ならば、「高く売る」必然性はない。原価が上がっているわけでもないのだから、高く売る必然性はないのだ。むしろ、市場競争の下で、原価にふさわしい低価格で売るのが当然だ。
ではなぜ、そうしないのか? そのヒントは、次の記事にある。
日本の石油業界がいかに世界の常識からかけ離れているか、「競争の番人」であるはずの公正取引委員会が作り出した“いびつな寡占市場”という大問題である。
( → ENEOS・出光・コスモがそろって過去最高益、ガソリン補助金は必要か徹底検証 )
これは、肝心の話が「有料記事」になっていて、読めない。そこで、かわりに私が説明すると、こうだ。
「日本の石油市場は、3社だけの寡占市場になっていて、競争原理が働かない」
このことは、次の記事のデータからもわかる。
公式ホームページによれば、エネオスの系列給油所数は1万2千か所以上。さらに国内燃料油販売シェアは約50パーセントを占めるという。
なぜここまでエネオスがシェアを伸ばしたのか。簡単に説明すると、石油などを輸入・精製して販売を行う石油元売の統合がここ20年ほどで進んだからだ。
1999年に日本石油と三菱石油が合併。2002年に統合ブランドであるエネオスが誕生して以来、九州石油(2008年)、JOMOのジャパンエナジー(2010年)、ゼネラル・エッソ・モービルを手掛ける東燃ゼネラル(2017年)などを吸収しエネオスは拡大を続けてきた。最近見ないと思ったブランドが下の図に入っているなと思った人も多かろう。
( → あのエネオスは元々どのブランドだったのか - 電車待ちに読むブログ )
市場の最大シェアが 50%になる。それほどにも、寡占化が進んでいる。本来ならば、このように寡占化する合併は、認められないはずだ。なのに、公取委が軟弱なせいで、その合併を認めたようだ。かくて、案の定、寡占化が進んで、市場の競争はなくなった。業界トップの決めた価格に、他所も追随するようになった。こうして、競争は排除され、3社のいずれもボロ儲けするようになった。ウハウハだ。
そして、その分、ガソリンを買うユーザーはぼったくられる。また、政府が補助金を出せば、ユーザーの懐に入るだけでなく、会社の懐にも入る。
かくて国民は 3.2兆円をふんだくられる。ろくに効果もないまま。
ウハウハなのは、ガソリン会社だけ。
「市場競争を排除して、寡占体制にすると、ボロ儲けできるなあ」
と大喜び。

[ 付記 ]
こういう馬鹿げたことがどうして起こったかというと、公取委が軟弱すぎたからだ。当時の報道がある。
《 国内ガソリンシェア50%の石油元売誕生へ---公取がJXの東燃ゼネラル株式取得を認定 》
公正取引委員会は、JXホールディングスの東燃ゼネラル石油の株式取得を承認すると発表した。
JXと東燃ゼネラルは経営統合することで合意し、JXが東燃ゼネラルの株式50%を超えて取得することを公取が審査してきた。
公取は、当事会社が申し出た問題解消措置を講じることを前提とすれば一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認定、JXに対して排除措置命令を行わないと通知した。
ガソリン元売市場のJXのシェアは35%、東燃ゼネラルが15%で、両社の経営統合でシェアは50%となる。
( → レスポンス(Response.jp) )
「競争を実質的に制限することとはならない」と公取委は認定したが、そんな馬鹿げたことがあるわけがないだろう。1強2弱のシェアでは、競争の起こりようがない。1強が価格決定権を握って、他社は追随するだけだ。結果的に、競争はなくなる。それが当り前だ。そして現実に、そうなった。
公取委が狂っているから、こうなったわけだが、これもどうせ、エネオスが自民党に、裏で圧力をかけたせいだろう。五輪の賄賂と同様だろう。賄賂を贈れば、何でもかんでも好きなように政治を動かせる。……それが自民党政治というものだ。