2022年09月10日

◆ ガソリン税を上げよ

 ガソリン税を上げるべきだ。かわりに、電気料金を下げるべきだ。

 ―― 

 政府の物価対策


 政府は(物価対策のために)、ガソリンへの高額の補助金を維持することを決めた。(当初は補助金を域下げる予定だったが、それをやめた。)
 一方で、電気やガスの料金の引き下げのために、補助金を出すことを検討していたが、取りやめた。
 政府は9日、「物価・賃金・生活総合対策本部」を首相官邸で開き、……ガソリン価格の高騰を抑える補助金の延長などを柱とする物価高対策を決定した。
 9月末で期限が切れるガソリンや灯油などへの補助金は年末まで延長する。ガソリン価格を1リットル 168円程度に抑えるため、石油元売り会社に1リットルあたり上限35円を補助する仕組みなどを維持する。3カ月の延長にかかる費用は1兆3千億円程度で、補助金を出し始めた1月下旬からの合計は 3.2兆円となる見通し。
( → 非課税1600万世帯、5万円給付 ガソリン補助、減額せず延長 物価対策、政府が決定:朝日新聞

 《 時間切れ、結局は給付金 電気・ガス料金対策も検討したが 》
 8月上旬以降、給付金のほかに減税など複数案が上がっていた。
 補助金で価格の上昇を抑えるガソリンのような仕組みを電気やガス料金にも採り入れる対策案も浮上。だが、導入には時間がかかる。案がまとまらないまま、……
( → 朝日新聞

 ガソリンの補助金は何と 3.2兆円という超巨額。
 一方で、電気やガスにはビタ一文も出さない。

 すると、どうなるか? 生活困窮者は生活が破綻する。
 単発で現金を配ることを繰り返す対策の手法の限界も見え出している。賃金の上昇は物価高騰に追いつかず、政府が無利子でお金を貸す「特例貸し付け」などの制度では、自己破産する人も相次いでいる。
( → 時間切れ、結局は給付金 電気・ガス料金対策も検討したが:朝日新聞

 特例貸し付けはコロナ禍で減収した世帯を幅広く対象にし、2020年3月から始まった。「緊急小口資金」「総合支援資金」の2種類があり、一時は最大200万円(現在は最大80万円)が借りられた。
 無利子・保証人なしで迅速に借りられる一方、減収の状態が長期化し、貸し付け後も返済の見込みが立たずに自己破産に追い込まれる事例も相次いでいる。
( → 「特例貸し付け」9月末で終了 今後は低所得向けに 厚労省:朝日新聞

 ガソリンをガブ飲みするレクサスやベンツやポルシェみたいな車の持ち主には多額の補助金を与え、生活が破綻する困窮者のためには電気代もガス代も補助しない。ほんの1円すらも与えない。

 ガソリン税の今昔


 「ガソリン代に補助金を出すのは当然だ。ガソリン代やガソリン税はもともとすごく高いんだから、困ったときぐらいは減税してもいいはずだ」
 という主張もある。だが、本当にそうか?

 (1) ガソリン代

 「ガソリン代は高い」という見解があるが、ガソリン代は昔に比べると大幅に安くなっている。正確に言えば、名目価格はほとんど上がっていないのに、物価や賃金は大幅に上がったので、ガソリン代の実質価格は大幅に下がっている。
 名目価格のグラフは下記だ。


gasoline-suii.png
出典:車査定攻略ネット

 
 これの最初を見て、「昔は 50円だったのか。安かったな」と思う人もいそうだが、そのころのガソリン代は馬鹿高かったのが真実だ。
 ちなみに、GDP や賃金は、当時に比べて、約3倍になっている。ガソリンの料金も、約3倍になっている。その数字だけを見れば、ガソリン代は昔も今も変わっていない。だが、実際の支出は、大幅に異なる。なぜなら、近年は燃費が劇的に改善しているからだ。昔のターボ車全盛の頃のシーマやセドリックは、4km/L ぐらいしか走らないのが普通だった。今やその 5倍ぐらいにまで燃費が改善している。つまり、ガソリン消費量が 5分の1ぐらいに激減している。ということは、ガソリン代の負担も 5分の1ぐらいに激減していることになる。

 (2) ガソリン税

 ガソリン税の負担はどうか? 
 ガソリン代の負担が激減すれば、それに比例して、ガソリン税の負担も激減していることになる。単純に計算しても、そうなのだ。ガソリン税の負担も同時に、5分の1ぐらいに激減していることになる。

 他の減税と補助金


 さらに、別の減税や補助金がある。エコ減税などだ。
  ・ 燃料消費量の少ない車にエコ減税
  ・ EV や FCV に減税と多額補助金
  ・ EV や FCV には、ガソリン税(道路税)の免除


 これらは、減税や補助金の形で、多額の国庫支出がなされている。今回のガソリン補助金だけでなく、毎年毎年、自動車には巨額の国庫支出がなされているのだ。
 そのおかげもあって、今の自動車保有者が国庫に納入する金は、昔に比べて激減している。
 日産アリアのような EV に至っては、国に払う金より、国からもらう金の方が多いだろう。(まるで乞食だ。)

 道路建設費


 自動車が国から支援してもらう金で、最大の金は、道路建設費だろう。
 「いや、道路建設費は、道路特定財源の形で、ガソリン税に含まれているぞ。ガソリン税を払っている時点で、道路の建設費を払っている計算になる」
 という反論がありそうだが、そうはならない。なぜなら、
     ガソリン税の税収 < 道路の建設の支出

 という関係があるので、常に国が差額を補填しているからだ。わかりやすく言えば、道路建設費に 100円がかかるとき、ガソリン税の負担で 90円をまかなうが、10円が足りないので、その分を国に負担してもらっている。(一般道路と高速道路の双方で。)

 それだけではない。道路のための土地の代金は、「国の資産を無料でちょうだいする」という形で、莫大な援助をしてもらっている計算になる。
 通常、私鉄が開業するときには、土地の収容費は私鉄の会社が自腹で払う。そのコストは、私鉄の乗客が払う。
 ならば、自動車の利用者も、道路の収容費のコストを負担するべきだが、その負担をしないでいる。「国の資産(土地)をタダで頂戴する」という形で。

 まとめ


 というわけで、自動車の利用者は、電車などの利用者に比べて、圧倒的に多くの金をもらっていることになる。電車の利用者が電車に乗れば、そのコストをすべて自分で払った上で、税金まで払う。一方、自動車の利用者は、そのコストを自分では負担しないで部分的に国に援助してもらう。また、税金を払うが、払った税金を上回るサービスを還元してもらえるので、実質的には税金を払うどころか補助金をもらっている。……それが、毎年毎年、続いている。
 そして今年はさらに、3.2兆円の補助金まで追加されるわけだ。

 ――

 とすれば、今後は、ガソリン税を大幅に引き上げるべきだろう。特に、石油不足の現在では、石油の消費量を減らすためにも、ガソリン代などの石油製品の価格引き上げが必須だ。
 それとともに、電気代やガス代は、大幅に引き下げるべきだろう。ただし、「単価は上げるが、基本料は下げる」という形にするべきだ。この件は、前に詳しく述べた。 
  → 節電ポイントのあれこれ: Open ブログ の  【 補説 】

    *   *   *   *

 《 加筆 》
 若い人の間では、「若者が高齢者のために高い負担を強いられていて、若者ばかりが損をしている」という見解が強い。たとえば、下記のように。
  → メンタリストDaiGo「多分言っちゃいけないことだけど、若者世代の尊厳を守るために言いますね」

 この意見はさすがに、人々の批判を浴びた。
  → はてなブックマーク・コメント
 
 とはいえ、この人に限らず、似たような感想をもつ若者は多そうだ。
 しかし本項の話を読めば、上の感想が妥当でないことがわかるだろう。日本全国には、多大な道路が整備されている。それは過去の世代が莫大なガソリン税を払うことによって構築されたものだ。その莫大な道路や橋というインフラを、若い人はろくに負担もしないで利用できている。「ただ乗り」という感じだ。何しろ、昔に比べてガソリン税を5分の1しか払わないからだ。EV はガソリン税を1円も払わない。各種の自動車税も、エコカーは減免されている。EV は納税するどころか補助金をもらっている。これほどにも若い世代は優遇されている。そうして過去の世代の遺産をタダ同然で利用している。

 人は、先人から受け取った莫大な遺産のことはすっかり忘れて、先人に対する負担のことばかりをあげつらう。「忘恩の徒」とも言える。幼児のための昔話に出てくる悪人みたいだ。



 [ 付記1 ]
 ガソリン価格との比較で言うと、1966年のころのハガキ代は7円だった。
  → 郵便料金の移り変わり

 今のハガキ代は 63円だから、当時の9倍だ。なのにガソリン代は3倍にしかなっていない。

 [ 付記2 ]
 ガソリン税の値上げが必要な理由は、別にもある。それは、傷んだインフラの補修だ。
 道路もそうだが、特に橋が大切だ。鉄道の橋は別として、道路の橋は道路財源で補修する必要がある。なのに、その金が足りない。橋の補修や更新が必要なのに、それがなされない。全国の各地でそうなのだ。
 前に朝日新聞が「老朽化したマンションを放置しているやばい状態」というのを報道したが、国全体で、「老朽化した橋を放置しているやばい状態」となっている。

 [ 付記3 ]
 その一方で、EV や FCV には、やたらと大盤振る舞いしている。歓心を買うための減税や補助金にばかり金をかけていて、国としてやるべきことをやらない。

 [ 付記4 ]
 東京都が「戸建て住宅で太陽光パネルの設置を義務化する」という方針を出した。
 東京都が9日、戸建て住宅を含む新築建物に太陽光パネルの設置を2025年4月から義務づける方針を発表した。
  都が設置を義務づけるのは、(1)ビルなど大規模建物(延べ床面積2千平方メートル以上)は建築主(2)戸建て住宅など中小規模は住宅メーカーや開発事業者で、「年間で延べ床面積2万平方メートル以上を供給」などの要件を満たす大手約50社を想定する。できた電力は住宅所有者が使ったり売ったりできるが、設置義務は企業に負わせることで、制度の実効性を増す狙いがある。
( → 都が太陽光パネル義務化へ、新築戸建ても 25年4月から 住宅メーカーにノルマ/購入者への補助検討:朝日新聞

 前に報道されたときと同様で、「大手建設会社の分だけ」であるようだ。中小の会社は対象外であるようだ。その点はマシだとは言える。
 しかし、戸建て住宅の電気の買い取り料金は高すぎる。メガソーラーの2倍近くだ。その分、戸建て住宅の持主の負担は軽減されるが、電気を購入する消費者の負担は増える。一種の税だ。
 ガソリンを大量消費する自動車オーナーには多額の金を援助するくせに、少量の電気を消費する貧乏人世帯からは余分の税収を取る。(その金を太陽光パネルの設置者にプレゼントする。)

 国も東京都も、貧者の金をむしり取って、アリアを買うような金持ちにプレゼントする。そういうことばかりやっている。……まあ、自民党なんだから、当り前ではあるが。(統一教会とズブズブで、法を無視した国葬をやる党なんだから、滅茶苦茶をやるのは当然だよね。)

 ※ 東京都の施策への批判は、前に述べた。
  → 太陽光発電の話題を二つ: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 23:20 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 後半に  《 加筆 》 の箇所を挿入しました。 [ 付記1 ] の直前。

 メンタリストDaiGo の意見をめぐる話。
Posted by 管理人 at 2022年09月11日 10:30
ガソリン税は面倒な補助金無くして減税のほうがいいでしょう。
https://president.jp/articles/-/60026?page=1

運送業にとっても増税・補助金で迷惑して流通が渋るより、減税で負担を下げて動きやすくして単価より数でやるのがよろしいでしょう。

あと国債もちと使って銀行の預金を回してもらって。
Posted by もぅがん at 2022年09月16日 18:52
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